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第四章 天羽々斬とコタツのチキチキレース
EP 8
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アクシデント(断線)
罰ゲーム(コーラの買い出し)を終えた俺は、白い息を吐きながらリビングに戻ってきた。
手にはキンキンに冷えた『タロー・コーラ』の瓶が五本。
「ほらよ。戦利品だ」
「わぁい! 竜さんありがとう!」
「負け犬の持ってきたコーラは美味いぜぇ~!」
コタツの魔力に守られた勝者たちは、ぬくぬくとした顔でコーラを受け取り、栓を抜く。
シュワッ、という音と共に、俺も再びコタツの中へと足を滑り込ませた。
「……ふぅ。生き返る」
冷え切った体が再び温められていく。
外は地獄(キッチン)だったが、ここは天国だ。
俺たちは甘い炭酸を喉に流し込み、至福のひとときを噛み締めていた。
その時だった。
「むにゃ……腹一杯だ……もう食えねぇ……」
満腹と暖かさで限界を迎えたイグニスが、豪快な寝返りを打った。
彼の太い尻尾と丸太のような足が、布団の中でゴロンと動く。
その拍子に、何かに引っかかる感触があった。
――ブチッ。
何かが外れる、乾いた音。
そして、それまで微かに聞こえていた「ブォォォォン……」という魔導ユニットの駆動音が、フツリと途絶えた。
「ん……?」
最初に異変に気づいたのは、聴覚の鋭いキャルルだった。
彼女はピクピクと耳を動かし、恐る恐る布団をめくってスイッチボックスを確認した。
「……あ」
彼女の顔から血の気が引いていく。
「ど、どうしたキャルル?」
「……消えてる」
「何がだ?」
「パイロットランプの……赤い光が……消えてるぅぅぅッ!!」
その絶叫と共に、俺たちは戦慄した。
俺も慌てて布団の中を覗き込む。
熱源である魔石の輝きが失われ、ただの冷たい石に戻りつつあった。
そして、視線を辿った先――。
コタツから伸びるコードの先にあるプラグが、壁のコンセントから無残にも抜け落ち、床に転がっていたのだ。
「だ、断線(コンセント抜け)だああああッ!!」
俺の悲鳴が響く。
原因は明白。イグニスの足がコードを引っ掛け、引っこ抜いてしまったのだ。
「な、なんてことを……! イグニスさん! 起きてください! 貴方のせいで生命維持装置が停止しましたわよ!」
リベラがイグニスを揺さぶるが、当の竜人は「グゥ……寒いの嫌い……」と冬眠モードに入っており、起きる気配がない。ただの巨大な重りだ。
その間にも、コタツ内部の温度は急速に低下していく。
忍び寄る冷気。
天国が、急速に冷たい箱へと変わっていく恐怖。
「さ、寒いですぅ……! 足先が冷たくなってきましたぁ!」
リーザがガタガタと震え出す。
「まずいぞ。このままじゃ全員、凍死(風邪)だ」
俺は壁を見た。
抜けたプラグと、コンセントの差し込み口。
その距離、約2メートル。
普段なら一歩で届く距離だ。
だが、今の俺たちにとって、その2メートルは永遠にも等しい『極寒の荒野』だった。
布団から出るということは、防護服なしで宇宙空間に出るのと同じ意味を持つ。
「……誰か」
俺は乾いた唇を舐めた。
「誰か、行ってくれないか? プラグを差しに」
沈黙。
全員が視線を逸らす。
「俺はさっきコーラを取りに行った。ノルマは果たしたはずだ」
俺は正論(言い訳)を並べた。
「わ、私は笑わせ合いバトルの勝者ですぅ! 免除される権利がありますぅ!」
リーザが必死に主張する。
「わたくしはオーナーですわよ? 家賃をまけてあげた恩があるはずです」
リベラが権力を振りかざす。
「私は……私は……うぅ、寒いの嫌ですぅ……」
キャルルが涙目で丸まる。
誰も行きたくない。
だが、誰かが行かねば、この楽園は崩壊する。
残された熱(余熱)が消えるまで、あと数分。
俺は覚悟を決めた。
個人の犠牲ではなく、チームワークで乗り切るしかない。
「……仕方ない。これより『チキチキ・コンセント・レース』を開催する」
俺は真剣な眼差しで、仲間たちに告げた。
「布団からは出ない。このコタツに入ったまま、全員で移動してプラグを差すんだ。……いいな?」
それは、人類(と亜人)の尊厳とぬくもりを賭けた、過酷なレースの始まりだった。
罰ゲーム(コーラの買い出し)を終えた俺は、白い息を吐きながらリビングに戻ってきた。
手にはキンキンに冷えた『タロー・コーラ』の瓶が五本。
「ほらよ。戦利品だ」
「わぁい! 竜さんありがとう!」
「負け犬の持ってきたコーラは美味いぜぇ~!」
コタツの魔力に守られた勝者たちは、ぬくぬくとした顔でコーラを受け取り、栓を抜く。
シュワッ、という音と共に、俺も再びコタツの中へと足を滑り込ませた。
「……ふぅ。生き返る」
冷え切った体が再び温められていく。
外は地獄(キッチン)だったが、ここは天国だ。
俺たちは甘い炭酸を喉に流し込み、至福のひとときを噛み締めていた。
その時だった。
「むにゃ……腹一杯だ……もう食えねぇ……」
満腹と暖かさで限界を迎えたイグニスが、豪快な寝返りを打った。
彼の太い尻尾と丸太のような足が、布団の中でゴロンと動く。
その拍子に、何かに引っかかる感触があった。
――ブチッ。
何かが外れる、乾いた音。
そして、それまで微かに聞こえていた「ブォォォォン……」という魔導ユニットの駆動音が、フツリと途絶えた。
「ん……?」
最初に異変に気づいたのは、聴覚の鋭いキャルルだった。
彼女はピクピクと耳を動かし、恐る恐る布団をめくってスイッチボックスを確認した。
「……あ」
彼女の顔から血の気が引いていく。
「ど、どうしたキャルル?」
「……消えてる」
「何がだ?」
「パイロットランプの……赤い光が……消えてるぅぅぅッ!!」
その絶叫と共に、俺たちは戦慄した。
俺も慌てて布団の中を覗き込む。
熱源である魔石の輝きが失われ、ただの冷たい石に戻りつつあった。
そして、視線を辿った先――。
コタツから伸びるコードの先にあるプラグが、壁のコンセントから無残にも抜け落ち、床に転がっていたのだ。
「だ、断線(コンセント抜け)だああああッ!!」
俺の悲鳴が響く。
原因は明白。イグニスの足がコードを引っ掛け、引っこ抜いてしまったのだ。
「な、なんてことを……! イグニスさん! 起きてください! 貴方のせいで生命維持装置が停止しましたわよ!」
リベラがイグニスを揺さぶるが、当の竜人は「グゥ……寒いの嫌い……」と冬眠モードに入っており、起きる気配がない。ただの巨大な重りだ。
その間にも、コタツ内部の温度は急速に低下していく。
忍び寄る冷気。
天国が、急速に冷たい箱へと変わっていく恐怖。
「さ、寒いですぅ……! 足先が冷たくなってきましたぁ!」
リーザがガタガタと震え出す。
「まずいぞ。このままじゃ全員、凍死(風邪)だ」
俺は壁を見た。
抜けたプラグと、コンセントの差し込み口。
その距離、約2メートル。
普段なら一歩で届く距離だ。
だが、今の俺たちにとって、その2メートルは永遠にも等しい『極寒の荒野』だった。
布団から出るということは、防護服なしで宇宙空間に出るのと同じ意味を持つ。
「……誰か」
俺は乾いた唇を舐めた。
「誰か、行ってくれないか? プラグを差しに」
沈黙。
全員が視線を逸らす。
「俺はさっきコーラを取りに行った。ノルマは果たしたはずだ」
俺は正論(言い訳)を並べた。
「わ、私は笑わせ合いバトルの勝者ですぅ! 免除される権利がありますぅ!」
リーザが必死に主張する。
「わたくしはオーナーですわよ? 家賃をまけてあげた恩があるはずです」
リベラが権力を振りかざす。
「私は……私は……うぅ、寒いの嫌ですぅ……」
キャルルが涙目で丸まる。
誰も行きたくない。
だが、誰かが行かねば、この楽園は崩壊する。
残された熱(余熱)が消えるまで、あと数分。
俺は覚悟を決めた。
個人の犠牲ではなく、チームワークで乗り切るしかない。
「……仕方ない。これより『チキチキ・コンセント・レース』を開催する」
俺は真剣な眼差しで、仲間たちに告げた。
「布団からは出ない。このコタツに入ったまま、全員で移動してプラグを差すんだ。……いいな?」
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