ホームセンター店員、過労死して異世界へ。聖剣もフォークリフトも俺にはただの「道具」ですが?【ウェポンズマスター】のDIY無双

月神世一

文字の大きさ
60 / 77
第六章 ヤサイマシマシニンニクアブラカラメと紅蓮の地獄龍

EP 10

しおりを挟む
精神崩壊と「ごちそうさま」
​ 犯罪者集団『ナンバーズ』のアジト、司令室。
 かつて世界の支配を夢見た場所は、今や灼熱の地獄の入り口となっていた。
​「アハ……アハハハハ!」
​ ナンバー0(ギアン・アルバード)は、瓦礫の散らばる床に座り込み、虚空を見上げて笑っていた。
 彼の手には、先ほど床に落とした高級チョコレートが握られている。
 溶け出し、土埃にまみれたその茶色い塊を、彼は嬉しそうに口に運んだ。
​「美味しい……チョコ、甘いねぇ……アハハ!」
​ 彼の瞳孔は開ききり、そこには知性の光も、野心も、恐怖さえも残っていなかった。
 無限に繰り返される『死の予知』によって脳の処理領域が焼き切れ、彼は幼児退行――あるいは完全な廃人へと堕ちてしまったのだ。
​『……チッ』
​ 天井の大穴から覗き込んでいた『紅蓮の地獄龍』が、つまらなそうに鼻を鳴らした。
​『壊レタ人形カ。……喰ラウ価値モ無イ』
​ 龍にとって、抵抗する意志のない弱者をいたぶる趣味はない。
 だが、主(あるじ)の食事を邪魔した「害虫の巣」を残しておく理由もなかった。
​『掃除ダケハ、シテオクカ』
​ ゴォッ!!
​ 龍が軽く息を吐いた。
 それは攻撃ですらない、ただの溜息のような炎。
 だが、それだけでアジトのメインコンピューター、通信機器、そして悪の野望が記されたデータバンクは、瞬く間に溶断され、灰へと変わった。
​「アハハ! あーかい! きれー!」
​ 炎の中で手を叩く0を残し、龍は興味を失ったように首を引っこ抜いた。
 任務完了。
 巨大な翼が羽ばたき、龍の姿は陽炎のように空へと溶けて消えていった。
​ ***
​ 一方、街外れのラーメン店『豚神屋』。
​「……ふぅ」
​ 俺はドンブリを持ち上げ、最後の一滴までスープを飲み干した。
 ガツンとくる塩分と脂が、食道を通って胃袋に落ちる。
 その重みこそが、生きている証だ。
​ ドンッ。
 俺は空になったドンブリをカウンターに置いた。
​「ごちそうさま。……いい勝負だった」
「へい! まいど!」
​ 店主がニカッと笑う。
 続いて、隣の席からもドンブリを置く音が響いた。
​「ぷはぁーッ!!」
​ 豪快な息を吐いたのは、ルルシアだ。
 あの山のような『大豚ダブル・全マシマシ』が、綺麗に消滅していた。
 彼女のゴスロリ服は汗で張り付き、仮面はテーブルの隅に置かれている。
 その素顔は、脂でテカテカと輝き、満腹の幸福感で紅潮していた。
​「く、食ったわ……! 私、勝ったのね……この山に!」
「見事だ、新人。今日からお前も『ジロリアン』の仲間入りだ」
「ふふふ、やるじゃないですか。貴女の胃袋、才能ありますよぉ」
​ リーザが先輩風を吹かせながら爪楊枝を使う。
 イグニスも、ルナも、リベラも、全員完食だ。
 ルナが「ごちそうさまでした~」と手を合わせると同時に、外の空気がふっと軽くなった気がした。
​「よし、帰るか。腹いっぱいで眠くなってきた」
​ 俺たちは席を立ち、代わる代わる店主に礼を言って店を出た。
​ ガララッ……。
​ 外に出ると、そこには異様な光景が広がっていた。
​「……ん?」
​ 店の前の路上に、数十人の男たちが転がっていた。
 全員が白目を剥き、口から泡を吹き、股間を濡らして気絶している。
 その中心には、ニット帽が脱げ落ち、ツルツルの頭を晒したナンバー1(ヴォルフ)の姿もあった。
​「なんだこいつら? 集団食中毒か?」
 俺は1の体を跨ぎながら首をかしげた。
​「兄貴、きっとアレだぜ。ニンニクの匂いに当てられて、貧血起こしたんじゃねぇか? 軟弱な野郎どもだ!」
 イグニスが鼻で笑い、1の頭をペチペチと叩く。
​「ま、どうでもいいですね~。あ、見てください、あっちの山の方」
 ルナが指差す先、遠く離れた山間部から、黒い煙がモクモクと上がっていた。
 ナンバーズのアジトがあった場所だ。
​「山火事か? ……まあ、消防が来るだろ」
​ 俺は興味なさげに視線を切った。
 今の俺は、満腹で思考能力が低下している。
 世界征服を企む組織が壊滅しようが、最強の刺客が失禁してようが、今夜のデザート以上に重要な問題ではない。
​「ねぇパイセン! 竜さん!」
​ ルルシアが俺の服の袖を引っ張った。
 その顔には、もう「ナンバーズ幹部」としての陰鬱な影は微塵もなかった。
​「お口直しに、アイス食べに行きませんか? しょっぱいものの後は、甘いものが食べたくなります!」
​ 彼女はニヘラと笑った。
 その笑顔は、ただの「食いしん坊な少女」そのものだった。
​「……たく、底なしの胃袋だな」
「いいですねぇ! コンビニで『タロー・アイス』買い占めましょう!」
「わぁい! アイスですぅ!」
​ 俺たちは夕焼けの商店街を歩き出した。
 背後には、泡を吹いて倒れる悪の組織の残骸と、燃え上がるアジト。
 だが、誰も振り返らない。
​ 最強の社畜とその仲間たちにとって、悪の組織との戦いなど、ラーメンのトッピングほどの価値もないのだから。
​ 「あーあ、明日の朝飯、何にするかなぁ」
 「気が早いぞ、兄貴!」
​ 平和な笑い声が、街に溶けていく。
 こうして、世界のリセットを目論んだナンバーズの野望は、豚骨スープの海に沈み、完全に潰えたのだった。
​ (第4章 ラーメン編・完/次回、第5章へ続く!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 2025/09/12(金)5巻発売!同日コミカライズ開始! 2026/03/16(月)コミカライズ1巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます! ※AI学習禁止・無断転載禁止・無断翻訳禁止・無断朗読禁止

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...