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第六章 ヤサイマシマシニンニクアブラカラメと紅蓮の地獄龍
EP 10
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精神崩壊と「ごちそうさま」
犯罪者集団『ナンバーズ』のアジト、司令室。
かつて世界の支配を夢見た場所は、今や灼熱の地獄の入り口となっていた。
「アハ……アハハハハ!」
ナンバー0(ギアン・アルバード)は、瓦礫の散らばる床に座り込み、虚空を見上げて笑っていた。
彼の手には、先ほど床に落とした高級チョコレートが握られている。
溶け出し、土埃にまみれたその茶色い塊を、彼は嬉しそうに口に運んだ。
「美味しい……チョコ、甘いねぇ……アハハ!」
彼の瞳孔は開ききり、そこには知性の光も、野心も、恐怖さえも残っていなかった。
無限に繰り返される『死の予知』によって脳の処理領域が焼き切れ、彼は幼児退行――あるいは完全な廃人へと堕ちてしまったのだ。
『……チッ』
天井の大穴から覗き込んでいた『紅蓮の地獄龍』が、つまらなそうに鼻を鳴らした。
『壊レタ人形カ。……喰ラウ価値モ無イ』
龍にとって、抵抗する意志のない弱者をいたぶる趣味はない。
だが、主(あるじ)の食事を邪魔した「害虫の巣」を残しておく理由もなかった。
『掃除ダケハ、シテオクカ』
ゴォッ!!
龍が軽く息を吐いた。
それは攻撃ですらない、ただの溜息のような炎。
だが、それだけでアジトのメインコンピューター、通信機器、そして悪の野望が記されたデータバンクは、瞬く間に溶断され、灰へと変わった。
「アハハ! あーかい! きれー!」
炎の中で手を叩く0を残し、龍は興味を失ったように首を引っこ抜いた。
任務完了。
巨大な翼が羽ばたき、龍の姿は陽炎のように空へと溶けて消えていった。
***
一方、街外れのラーメン店『豚神屋』。
「……ふぅ」
俺はドンブリを持ち上げ、最後の一滴までスープを飲み干した。
ガツンとくる塩分と脂が、食道を通って胃袋に落ちる。
その重みこそが、生きている証だ。
ドンッ。
俺は空になったドンブリをカウンターに置いた。
「ごちそうさま。……いい勝負だった」
「へい! まいど!」
店主がニカッと笑う。
続いて、隣の席からもドンブリを置く音が響いた。
「ぷはぁーッ!!」
豪快な息を吐いたのは、ルルシアだ。
あの山のような『大豚ダブル・全マシマシ』が、綺麗に消滅していた。
彼女のゴスロリ服は汗で張り付き、仮面はテーブルの隅に置かれている。
その素顔は、脂でテカテカと輝き、満腹の幸福感で紅潮していた。
「く、食ったわ……! 私、勝ったのね……この山に!」
「見事だ、新人。今日からお前も『ジロリアン』の仲間入りだ」
「ふふふ、やるじゃないですか。貴女の胃袋、才能ありますよぉ」
リーザが先輩風を吹かせながら爪楊枝を使う。
イグニスも、ルナも、リベラも、全員完食だ。
ルナが「ごちそうさまでした~」と手を合わせると同時に、外の空気がふっと軽くなった気がした。
「よし、帰るか。腹いっぱいで眠くなってきた」
俺たちは席を立ち、代わる代わる店主に礼を言って店を出た。
ガララッ……。
外に出ると、そこには異様な光景が広がっていた。
「……ん?」
店の前の路上に、数十人の男たちが転がっていた。
全員が白目を剥き、口から泡を吹き、股間を濡らして気絶している。
その中心には、ニット帽が脱げ落ち、ツルツルの頭を晒したナンバー1(ヴォルフ)の姿もあった。
「なんだこいつら? 集団食中毒か?」
俺は1の体を跨ぎながら首をかしげた。
「兄貴、きっとアレだぜ。ニンニクの匂いに当てられて、貧血起こしたんじゃねぇか? 軟弱な野郎どもだ!」
イグニスが鼻で笑い、1の頭をペチペチと叩く。
「ま、どうでもいいですね~。あ、見てください、あっちの山の方」
ルナが指差す先、遠く離れた山間部から、黒い煙がモクモクと上がっていた。
ナンバーズのアジトがあった場所だ。
「山火事か? ……まあ、消防が来るだろ」
俺は興味なさげに視線を切った。
今の俺は、満腹で思考能力が低下している。
世界征服を企む組織が壊滅しようが、最強の刺客が失禁してようが、今夜のデザート以上に重要な問題ではない。
「ねぇパイセン! 竜さん!」
ルルシアが俺の服の袖を引っ張った。
その顔には、もう「ナンバーズ幹部」としての陰鬱な影は微塵もなかった。
「お口直しに、アイス食べに行きませんか? しょっぱいものの後は、甘いものが食べたくなります!」
彼女はニヘラと笑った。
その笑顔は、ただの「食いしん坊な少女」そのものだった。
「……たく、底なしの胃袋だな」
「いいですねぇ! コンビニで『タロー・アイス』買い占めましょう!」
「わぁい! アイスですぅ!」
俺たちは夕焼けの商店街を歩き出した。
背後には、泡を吹いて倒れる悪の組織の残骸と、燃え上がるアジト。
だが、誰も振り返らない。
最強の社畜とその仲間たちにとって、悪の組織との戦いなど、ラーメンのトッピングほどの価値もないのだから。
「あーあ、明日の朝飯、何にするかなぁ」
「気が早いぞ、兄貴!」
平和な笑い声が、街に溶けていく。
こうして、世界のリセットを目論んだナンバーズの野望は、豚骨スープの海に沈み、完全に潰えたのだった。
(第4章 ラーメン編・完/次回、第5章へ続く!)
犯罪者集団『ナンバーズ』のアジト、司令室。
かつて世界の支配を夢見た場所は、今や灼熱の地獄の入り口となっていた。
「アハ……アハハハハ!」
ナンバー0(ギアン・アルバード)は、瓦礫の散らばる床に座り込み、虚空を見上げて笑っていた。
彼の手には、先ほど床に落とした高級チョコレートが握られている。
溶け出し、土埃にまみれたその茶色い塊を、彼は嬉しそうに口に運んだ。
「美味しい……チョコ、甘いねぇ……アハハ!」
彼の瞳孔は開ききり、そこには知性の光も、野心も、恐怖さえも残っていなかった。
無限に繰り返される『死の予知』によって脳の処理領域が焼き切れ、彼は幼児退行――あるいは完全な廃人へと堕ちてしまったのだ。
『……チッ』
天井の大穴から覗き込んでいた『紅蓮の地獄龍』が、つまらなそうに鼻を鳴らした。
『壊レタ人形カ。……喰ラウ価値モ無イ』
龍にとって、抵抗する意志のない弱者をいたぶる趣味はない。
だが、主(あるじ)の食事を邪魔した「害虫の巣」を残しておく理由もなかった。
『掃除ダケハ、シテオクカ』
ゴォッ!!
龍が軽く息を吐いた。
それは攻撃ですらない、ただの溜息のような炎。
だが、それだけでアジトのメインコンピューター、通信機器、そして悪の野望が記されたデータバンクは、瞬く間に溶断され、灰へと変わった。
「アハハ! あーかい! きれー!」
炎の中で手を叩く0を残し、龍は興味を失ったように首を引っこ抜いた。
任務完了。
巨大な翼が羽ばたき、龍の姿は陽炎のように空へと溶けて消えていった。
***
一方、街外れのラーメン店『豚神屋』。
「……ふぅ」
俺はドンブリを持ち上げ、最後の一滴までスープを飲み干した。
ガツンとくる塩分と脂が、食道を通って胃袋に落ちる。
その重みこそが、生きている証だ。
ドンッ。
俺は空になったドンブリをカウンターに置いた。
「ごちそうさま。……いい勝負だった」
「へい! まいど!」
店主がニカッと笑う。
続いて、隣の席からもドンブリを置く音が響いた。
「ぷはぁーッ!!」
豪快な息を吐いたのは、ルルシアだ。
あの山のような『大豚ダブル・全マシマシ』が、綺麗に消滅していた。
彼女のゴスロリ服は汗で張り付き、仮面はテーブルの隅に置かれている。
その素顔は、脂でテカテカと輝き、満腹の幸福感で紅潮していた。
「く、食ったわ……! 私、勝ったのね……この山に!」
「見事だ、新人。今日からお前も『ジロリアン』の仲間入りだ」
「ふふふ、やるじゃないですか。貴女の胃袋、才能ありますよぉ」
リーザが先輩風を吹かせながら爪楊枝を使う。
イグニスも、ルナも、リベラも、全員完食だ。
ルナが「ごちそうさまでした~」と手を合わせると同時に、外の空気がふっと軽くなった気がした。
「よし、帰るか。腹いっぱいで眠くなってきた」
俺たちは席を立ち、代わる代わる店主に礼を言って店を出た。
ガララッ……。
外に出ると、そこには異様な光景が広がっていた。
「……ん?」
店の前の路上に、数十人の男たちが転がっていた。
全員が白目を剥き、口から泡を吹き、股間を濡らして気絶している。
その中心には、ニット帽が脱げ落ち、ツルツルの頭を晒したナンバー1(ヴォルフ)の姿もあった。
「なんだこいつら? 集団食中毒か?」
俺は1の体を跨ぎながら首をかしげた。
「兄貴、きっとアレだぜ。ニンニクの匂いに当てられて、貧血起こしたんじゃねぇか? 軟弱な野郎どもだ!」
イグニスが鼻で笑い、1の頭をペチペチと叩く。
「ま、どうでもいいですね~。あ、見てください、あっちの山の方」
ルナが指差す先、遠く離れた山間部から、黒い煙がモクモクと上がっていた。
ナンバーズのアジトがあった場所だ。
「山火事か? ……まあ、消防が来るだろ」
俺は興味なさげに視線を切った。
今の俺は、満腹で思考能力が低下している。
世界征服を企む組織が壊滅しようが、最強の刺客が失禁してようが、今夜のデザート以上に重要な問題ではない。
「ねぇパイセン! 竜さん!」
ルルシアが俺の服の袖を引っ張った。
その顔には、もう「ナンバーズ幹部」としての陰鬱な影は微塵もなかった。
「お口直しに、アイス食べに行きませんか? しょっぱいものの後は、甘いものが食べたくなります!」
彼女はニヘラと笑った。
その笑顔は、ただの「食いしん坊な少女」そのものだった。
「……たく、底なしの胃袋だな」
「いいですねぇ! コンビニで『タロー・アイス』買い占めましょう!」
「わぁい! アイスですぅ!」
俺たちは夕焼けの商店街を歩き出した。
背後には、泡を吹いて倒れる悪の組織の残骸と、燃え上がるアジト。
だが、誰も振り返らない。
最強の社畜とその仲間たちにとって、悪の組織との戦いなど、ラーメンのトッピングほどの価値もないのだから。
「あーあ、明日の朝飯、何にするかなぁ」
「気が早いぞ、兄貴!」
平和な笑い声が、街に溶けていく。
こうして、世界のリセットを目論んだナンバーズの野望は、豚骨スープの海に沈み、完全に潰えたのだった。
(第4章 ラーメン編・完/次回、第5章へ続く!)
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