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EP 1
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佐須賀 良樹(さすが よしき)、20歳。経済学部に通う、どこにでもいる……いや、重度の「中二病」を患った、ただの大学生である。
深夜のバイト明け。彼の右手には、神聖なるアーティファクト――もとい、深夜の牛丼チェーン店でテイクアウトした「ネギ玉牛丼(特盛)」の入ったビニール袋が握られていた。
「はふぅ……早く帰って牛丼を食べたいでござるな。ククク、我が魔眼(ただの乱視)も飢えを訴えている……」
誰もいない夜道で、一人ご満悦に浸る良樹。
赤信号に引っかかり、横断歩道で立ち止まっていると、足元に一匹の野良猫がすり寄ってきた。
にゃあ、と鳴いて牛丼の袋を見上げる猫。
「ん? 駄目でござるよ? これは拙者の牛丼でござる。それに、牛丼には玉ねぎが入っているでござるよ。貴様のような小さき命には毒となるゆえ……」
無駄に芝居がかった口調で猫を諭す良樹。しかし次の瞬間、猫は道路の真ん中へとフラフラ飛び出してしまった。
そこへ、赤信号を完全に無視した大型トラックが、猛スピードで突進してくる。
ピキィィーン!
良樹の脳内に、ニュータイプ的な閃き(ただの錯覚)が走った。
「見える……見えるぞ!」
良樹は己が『連邦の白い悪魔』になったつもりで、深夜の道路へと躍り出た。迫り来る数十トンの鉄の塊。しかし彼の脳内では、それはただの落下する小惑星(アクシズ)に過ぎなかった。
「たかが石ころの一つ! 拙者が押し出して見せる!!」
ドンッ!!!
物理法則は絶対である。中二病の文系大学生がトラックを押し返せるはずもなく、良樹は虚空へと舞い上がった。
薄れゆく意識の中、彼の口から漏れたのは、あまりにも有名なあのセリフだった。
「お、親父にもぶたれた事ないのに……」
【審判の間……という名のコタツ部屋】
「……し……し~? もしもし~? 起きて下さいまし」
だるそうな女性の声で、良樹はハッと目を覚ました。
周囲を見渡す。そこは荘厳な神殿……ではなく、どう見ても四畳半の和室。そして目の前には、色あせた芋ジャージを着て、コタツに入りながらピアニッシモ・メンソールを吹かしているオバサンがいた。
良樹は涙ぐみながら天井を見上げた。
「ああ……拙者にも帰れる場所があったんだね……」
「何を言ってんの、あんた。さっきから」
ジャージの女性――女神ルチアナは、灰皿にタバコをもみ消しながらため息をついた。
「え~っと、私は女神ルチアナ。あんたはさっきトラックにはねられて死にました。乙」
その言葉に、良樹はバッと立ち上がった。
「神だと!? たかがメインカメラがやられただけだ!」
「……しつこいっての。ていうか首から下も全部ペシャンコだったわよ」
ルチアナは面倒くさそうに手元のバインダー(ソシャゲのオート周回中)に目を落とした。
「まぁいいわ。貴方にはこれから、剣と魔法の世界『アナステシア』に行ってもらいます」
「ナニィ!? 異世界転移だと!? そんな……親父にもぶたれた事ないのに!?」
「2回言ったよね、それ!?」
ルチアナは完全にイライラし始めた。ただでさえ定時後でスマホゲームのイベントを走りたいのに、変なオタクの相手などしていられない。
「えぇっと、あんたのチートスキルはコレ! 『丼マスター』ね! ポイントを使えば全ての丼が出せるわ! 善行を積まないとポイント貯まらないから、せいぜい真面目に生きなさいよ! 良かったわね! さようなら!」
「待て! 丼ってなんだ!? 魔眼とか、暗黒剣とかじゃないのか!? そもそも善行って――」
良樹の足元に、光り輝く魔法陣が出現した。
有無を言わさぬ強制転移。重力が反転し、良樹の身体が異世界へと吸い込まれていく。
「マチルダさあああああああああん!!!」
コタツ部屋に虚しい絶叫を残し、中二病の青年は、剣と魔法と闘気が入り乱れるマンルシア大陸へと落ちていった。
「……あーあ、うるさかった。さて、ガチャ回そ」
ルチアナは鼻ホジしながら、再びスマホの画面へと視線を戻したのだった。
こうして、魔法も闘気も使えない、ただの「牛丼を出せるだけの小心者な中二病」佐須賀 良樹の、アナステシアでの受難の日々が幕を開けました。
深夜のバイト明け。彼の右手には、神聖なるアーティファクト――もとい、深夜の牛丼チェーン店でテイクアウトした「ネギ玉牛丼(特盛)」の入ったビニール袋が握られていた。
「はふぅ……早く帰って牛丼を食べたいでござるな。ククク、我が魔眼(ただの乱視)も飢えを訴えている……」
誰もいない夜道で、一人ご満悦に浸る良樹。
赤信号に引っかかり、横断歩道で立ち止まっていると、足元に一匹の野良猫がすり寄ってきた。
にゃあ、と鳴いて牛丼の袋を見上げる猫。
「ん? 駄目でござるよ? これは拙者の牛丼でござる。それに、牛丼には玉ねぎが入っているでござるよ。貴様のような小さき命には毒となるゆえ……」
無駄に芝居がかった口調で猫を諭す良樹。しかし次の瞬間、猫は道路の真ん中へとフラフラ飛び出してしまった。
そこへ、赤信号を完全に無視した大型トラックが、猛スピードで突進してくる。
ピキィィーン!
良樹の脳内に、ニュータイプ的な閃き(ただの錯覚)が走った。
「見える……見えるぞ!」
良樹は己が『連邦の白い悪魔』になったつもりで、深夜の道路へと躍り出た。迫り来る数十トンの鉄の塊。しかし彼の脳内では、それはただの落下する小惑星(アクシズ)に過ぎなかった。
「たかが石ころの一つ! 拙者が押し出して見せる!!」
ドンッ!!!
物理法則は絶対である。中二病の文系大学生がトラックを押し返せるはずもなく、良樹は虚空へと舞い上がった。
薄れゆく意識の中、彼の口から漏れたのは、あまりにも有名なあのセリフだった。
「お、親父にもぶたれた事ないのに……」
【審判の間……という名のコタツ部屋】
「……し……し~? もしもし~? 起きて下さいまし」
だるそうな女性の声で、良樹はハッと目を覚ました。
周囲を見渡す。そこは荘厳な神殿……ではなく、どう見ても四畳半の和室。そして目の前には、色あせた芋ジャージを着て、コタツに入りながらピアニッシモ・メンソールを吹かしているオバサンがいた。
良樹は涙ぐみながら天井を見上げた。
「ああ……拙者にも帰れる場所があったんだね……」
「何を言ってんの、あんた。さっきから」
ジャージの女性――女神ルチアナは、灰皿にタバコをもみ消しながらため息をついた。
「え~っと、私は女神ルチアナ。あんたはさっきトラックにはねられて死にました。乙」
その言葉に、良樹はバッと立ち上がった。
「神だと!? たかがメインカメラがやられただけだ!」
「……しつこいっての。ていうか首から下も全部ペシャンコだったわよ」
ルチアナは面倒くさそうに手元のバインダー(ソシャゲのオート周回中)に目を落とした。
「まぁいいわ。貴方にはこれから、剣と魔法の世界『アナステシア』に行ってもらいます」
「ナニィ!? 異世界転移だと!? そんな……親父にもぶたれた事ないのに!?」
「2回言ったよね、それ!?」
ルチアナは完全にイライラし始めた。ただでさえ定時後でスマホゲームのイベントを走りたいのに、変なオタクの相手などしていられない。
「えぇっと、あんたのチートスキルはコレ! 『丼マスター』ね! ポイントを使えば全ての丼が出せるわ! 善行を積まないとポイント貯まらないから、せいぜい真面目に生きなさいよ! 良かったわね! さようなら!」
「待て! 丼ってなんだ!? 魔眼とか、暗黒剣とかじゃないのか!? そもそも善行って――」
良樹の足元に、光り輝く魔法陣が出現した。
有無を言わさぬ強制転移。重力が反転し、良樹の身体が異世界へと吸い込まれていく。
「マチルダさあああああああああん!!!」
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「……あーあ、うるさかった。さて、ガチャ回そ」
ルチアナは鼻ホジしながら、再びスマホの画面へと視線を戻したのだった。
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