​異世界転移した俺のスキルは『丼マスター』!? 善行ポイントで牛丼を召喚して、最強の胃袋を支配する――勘違い聖人のグルメ無双、開店!

月神世一

文字の大きさ
20 / 21

EP 5

しおりを挟む
ルミナス帝国へと続く、石畳で舗装された広い街道。
大国の中心地が近づくにつれ、行き交う商人や旅人の姿も増えてきていたが、同時に街道沿いの森に潜む魔獣や盗賊の危険も跳ね上がっていた。
​「チッ! 囲まれてやがるね。……仕方ない、行くよ! ロード!」
屋台の横を歩いていたモウラが、不意に足を止め、前方を見据えて舌打ちをした。
​良樹がモウラの視線の先を凝視すると、数百メートル先の街道上で、豪奢な装飾が施された大型の馬車が立ち往生していた。その周囲を、二足歩行の犬のような魔獣――数十匹の『コボルト』の群れが、下卑た鳴き声を上げながら取り囲んでいる。御者台の男はすでに負傷しているらしく、絶体絶命のピンチだった。
​「はいな! 姉さん! 腕が鳴りますわ!」
屋台の牽引棒からスポンと抜け出した賢竜ロードが、獰猛な牙を剥き出しにしてウォーミングアップを始める。
​「さぁ! 行きましょう! ヨシキさん!」
ルナが腰の短剣をスラリと引き抜き、振り返って良樹の手をガシッと掴んだ。
​「……え? 行くって? どこへでござるか?」
良樹は完全に屋台の影に隠れ、防御の姿勢(しゃがみ込み)に入っていた。
「いやいやいや! 拙者は後方からの『応援』という、部隊の士気を爆発的に高める最も大事な役目があるでござるよ! フレッ、フレッ、モ・ウ・ラ! ほら、行った行った!」
​「良いから!!」
​「ひぎぃっ!?」
ルナの細くしなやかな腕から放たれた信じられないほどの力に、良樹は首根っこを掴まれ、そのままズルズルと最前線へと引きずり出されてしまった。
(可憐な美少女なのに、引っ張る力がゴリラでござるぅぅ!!)
​良樹の情けない悲鳴を置き去りにし、三人の猛者たちはコボルトの群れへと突撃した。
​「オラァッ!! 邪魔だ、雑魚共ォッ!」
モウラの褐色の豊満な肉体が躍動する。鎖付きの片手斧が凄まじい遠心力を伴って唸りを上げ、密集していたコボルトたちをボーリングのピンのように薙ぎ払っていく。血と泥が飛び散る中、彼女の圧倒的な暴力は止まらない。
​「メガ・フレア!!」
ロードが宙に飛び上がり、上空から灼熱の火炎を吐き出す。炎の壁がコボルトの退路を断ち、阿鼻叫喚の地獄絵図を作り出した。
​「お覚悟ッ!」
そしてルナが、風のように敵陣に飛び込んだ。
普段の優しい村娘の顔は消え、冷酷な狩人の瞳。彼女は両手に持った短剣を滑らかに振るい、踊るようなステップでコボルトたちの急所を次々と斬り裂いていく。ひるがえるスカートの裾から覗く、健康的で引き締まった太ももが、死の舞踏の中で妙に扇情的な輝きを放っていた。
​「ヒィィィッ……! や、やっぱり、異世界の人達(モブ)は戦闘力が異常に高いでござるぅぅ……!」
良樹は戦場のど真ん中に放置されたまま、頭を抱えてガタガタと震えていた。もはや彼が剣を抜く隙すらない、圧倒的な蹂躙劇である。
​ものの数分で、数十匹のコボルトたちは全滅、あるいは恐れをなして森の奥深くへと逃げ去っていった。
​「ふん、手応えのない連中だね」
モウラが斧についた血を払い、ロードが鼻息を荒くして戻ってくる。
​戦いが終わり、静寂が戻った街道。
コボルトの死骸の山を前にして良樹が腰を抜かしていると、襲われていた豪奢な馬車の扉が、ゆっくりと内側から開かれた。
​「――助かりました。皆様の勇猛なるお働き、感謝の言葉もございません」
​馬車の中から姿を現したのは、透き通るような白い肌と、艶やかな金色の縦ロール髪を持つ、息を呑むほどに麗しい女性だった。
年齢は二十代半ばだろうか。深紅のベルベットのドレスに身を包み、その胸元は豊満な果実のようにたわわに実り、コルセットで締められた腰のラインから続く優美な曲線は、大人の女性特有の甘く熟れた色気を漂わせている。
​(……ご、極上の美女でござる……!)
恐怖で縮み上がっていた良樹の中二病(と男子大学生の煩悩)が、一瞬でレッドゾーンに突入した。ほのかに漂う、高級な薔薇の香水のような甘い匂いが、良樹の鼻腔をくすぐる。
​「私、リリアーナと申します。ルミナス帝都へ向かう道中、護衛の者がはぐれてしまい、途方に暮れておりました」
リリアーナは、形の良い唇に優雅な微笑みを浮かべ、両手でドレスの裾を摘まんで美しいカーテシー(淑女の礼)をしてみせた。
​「おぅ。助けたんだ、当然、礼は弾んで貰えるんだろうな?」
モウラが、美女相手でも容赦なく、柄悪く肩で風を切りながら凄んだ。Aランク冒険者のシビアな金銭感覚である。
​「モウラさん! 失礼ですよ!」
ルナが慌ててモウラをたしなめるが、リリアーナは不快に思うどころか、ふふっ、と余裕のある艶やかな笑い声を漏らした。
​「ええ、もちろんですわ。命の恩人に対して、出し惜しみなど致しません。……皆様、もしよろしければ、このまま帝都にある私の屋敷に参りましょう。お礼の品はもちろん、今宵の温かいベッドと、極上の食事を用意させていただきますわ」
​リリアーナの切れ長の瞳が、なぜかモウラやルナではなく、泥だらけで腰を抜かしている良樹へと向けられ、妖艶に細められた。
​「や、屋敷……? リリアーナさんって、もしかして、どこかの凄腕のご令嬢でござるか……?」
良樹が、震える声で尋ねる。
豪奢な馬車、洗練された身のこなし、そして帝都に屋敷を構えているという事実。どう考えても、ただの商人や町娘ではない。
​「ふふっ……それは、お屋敷に着いてからのお楽しみ、ということで」
リリアーナは意味深に微笑み、良樹に向かってそっとウインクを投げてみせた。
​突如として現れた、謎多き妖艶な美女。
帝都を目前にして、良樹たち『丼亭』一行は、思わぬ形でルミナス帝国のハイソサエティ(上流階級)への扉を叩くことになったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

死んだ土を最強の畑に変える「土壌神の恵み」〜元農家、異世界の食糧難を救い、やがて伝説の開拓領主になる〜

黒崎隼人
ファンタジー
土を愛し、土に愛された男、アロン。 日本の農家として過労死した彼は、不作と飢饉に喘ぐ異世界の貧しい村の少年として転生する。 そこは、栄養を失い、死に絶えた土が広がる絶望の土地だった。 だが、アロンには前世の知識と、土の状態を見抜き活性化させる異能『土壌神の恵み』があった! 「この死んだ土地を、世界で一番豊かな畑に変えてみせる」 一本のスコップと規格外の農業スキルで、アロンは大地を蘇らせていく。 生み出されるのは、異世界人がかつて味わったことのない絶品野菜と料理の数々。 飢えた村人を救い、病弱な公爵令嬢を元気にし、やがてその評判は国をも動かすことに――。 食で人々を繋ぎ、戦わずして国を救う。 最強の農家による、痛快異世界農業ファンタジー、ここに開幕!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

​『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』

月神世一
ファンタジー
マンションの5階でカレーを作っていたら、なぜかトラックが突っ込んできた件。 ​外科医を目指す医学生・中村優太(24)は、特製の絶品バターチキンカレーを食べる寸前、マンションの「5階」に突撃してきた理不尽なトラックによって命を落としてしまう。 ​目を覚ますと、そこはコタツでカップ麺を啜るジャージ姿の駄女神・ルチアナの部屋だった。 「飲み会があるから定時で帰りたい」と適当な理由で異世界転移をさせられそうになる優太だったが、怒りのガラポン抽選でユニークスキル【地球ショッピング】と【女神ルチアナこき使い権】を引き当てる! ​かくして、ポンコツ女神を強制連行して剣と魔法の世界『アナステシア』に降り立った優太。 しかし、彼にはただのチートスキルだけではない、元SEALs直伝の「CQB(近接戦闘術)」、有段者の「薙刀術」、そして何より「現代医療の知識」があった――! ​降り立った辺境のポポロ村で彼を待っていたのは、クセが強すぎる住人たち。 ​キャルル: マッハの飛び蹴りを放つ、ファミレス大好きなウサ耳村長。 ​リーザ: タダ飯とポイ活に命を懸ける、図太すぎる地下アイドル人魚。 ​ルナ: 善意で市場や生態系を破壊する、歩く大災害の天然エルフ。 ​ルチアナ: 優太のポイントでソシャゲ課金と酒を目論む、労働拒否の駄女神。 ​優太は【地球ショッピング】で召喚した現代物資と、自身のサバイバル能力&薙刀術で野盗や魔物を無双! さらには特製のスパイスカレーで異世界人の胃袋を完全に掌握していく。 ​そして、村人に危機が迫った時。 優太の「絶対に命を救う」という善意の心が、奇跡の黄金ガチャを引き起こす……! ​「俺は医者だ。この村の命も、平和な日常も、俺の戦術(スキル)で全部守り抜く!」 ​現代の【医療・戦術・料理】×【理不尽ギャグ】×【異世界サバイバル】! 凶悪な「ワスプ薙刀」を振るい、ヤバすぎる仲間たちと送る、最強医学生のドタバタ辺境防衛ライフが今始まる!

『異世界味噌料理人』〜腹を満たす一杯から、世界は動き出す〜

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
事故をきっかけに異世界へ転移した料理人タクミ。流れ着いた小さな村で彼が目にしたのは、味も栄養も足りない貧しい食事だった。 「腹が満ちれば、人は少しだけ前を向ける。」 その思いから、タクミは炊事場を手伝い、わずかな工夫で村の食卓を変えていく。やがて彼は、失われた発酵技術――味噌づくりをこの世界で再現することに成功する。 だが、保存が利き人々を救うその技術は、国家・商人・教会までも動かす“戦略食料”でもあった。 これは、一杯の料理から始まる、食と継承の長編異世界物語。 【更新予定】 現在ストックがありますので、しばらくの間は毎日21時更新予定です。 応援いただけると更新ペースが上がるかも?笑

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

処理中です...