最強与党幹事長、昭和の公爵【近衛文麿】に憑依する。〜合気道と現代の政治力で軍部を論破!暗殺者も返り討ちにし、破滅の歴史を書き換える〜

月神世一

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EP 7

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心酔する側近たち
​ジリリリリリリッ!!
​大雪に閉ざされた帝都の夜。
大蔵省(現在の財務省)の地下にある極秘の執務室では、黒電話のけたたましいベルの音が鳴り響いていた。
​「日銀からの報告はまだか! 満州鉄道関連の郷田派のダミー口座、すべて完全に凍結しろ! 一銭たりとも引き出させるな!」
​怒号を飛ばしているのは、大蔵省の若きエリート官僚、木崎(きざき)である。
数時間前、近衛公爵の秘書官である結城から『特命』を受けた時、木崎たち大蔵官僚は恐怖のあまり顔を蒼白にした。
​『陸軍中枢・郷田中将の資金源をすべて断て』。
​それは、現在進行形で帝都を占拠している反乱軍に、真正面から喧嘩を売る行為だったからだ。もしバレれば、自分たち文官など軍刀で一刀両断にされる。
「そんな無茶な真似ができるか!」と反発しかけた木崎に対し、結城は冷たく言い放ったのだ。
​『公爵閣下はこう仰せでした。「テロリストの鉄砲玉に怯えるなら好きにしろ。だが断るなら、私が内閣を組織した暁には、貴様らの省庁の予算を未来永劫、干し上げる。軍人に殺されるか、政治家(わたし)に殺されるか、好きな方を選べ」……と』
​その言葉を聞いた瞬間、木崎の背筋にゾクリと悪寒が走った。
あの、優柔不断で「争い事を避ける」ことしかできなかった近衛公爵が、軍部の暴力すら見下すような絶対的な『権力闘争の怪物』に変貌している。
​そして、結城から手渡された郷田中将の「資金洗浄(マネーロンダリング)のルート図」を見た時、木崎たち大蔵のエリートは二度目の衝撃を受けた。
​「……完璧すぎる」
​複雑に絡み合ったダミー会社、財閥の裏口座、大陸への送金ルート。
軍の特務機関すら把握しきれていないであろうその血脈が、見事に可視化されていた。どこをどう押さえれば郷田中将の息の根が止まるか、外科医のメスのように正確に急所が特定されているのだ。
​(これが、公爵閣下の……いや、次期総理の描いた盤面(シナリオ)だというのか……!)
​木崎は、恐怖を通り越して、一種の強烈な快感を覚え始めていた。
これまで自分たち文官は、常に軍部の暴力と恫喝に怯え、屈従を強いられてきた。法も理屈も通じない軍人たちに、ただ頭を下げるしかなかった。
​だが今、自分たちは『カネと法』というシステムを使って、あの軍部を合法的に首を絞め、すり潰そうとしている。
​「木崎局長! 郷田派のメインバンク、第一勧農銀行からの資金移動、完全に停止させました! これで奴らの財布は完全に空っぽです!」
「よくやった! 引き続き監視を続けろ。ネズミ一匹逃がすな!」
​徹夜の作業で充血した木崎の目に、狂気じみた忠誠の光が宿る。
​   ◆
​夜が明け始めた荻外荘。
結城の案内で極秘裏に屋敷を訪れた木崎たち数名の若手官僚は、書斎のドアを開けた瞬間、思わず息を呑んでその場に平伏しそうになった。
​「ご苦労だったな。首尾はどうだ」
​ストーブの前で、ふわりと立ち上るチェリーの紫煙越しにこちらを見下ろす男。
近衛文麿の姿をしているが、中身は完全に「修羅場をくぐり抜けてきた絶対的権力者(与党幹事長)」の顔つきになっていた。
​「はっ……! 閣下のご指示通り、郷田中将の資金ルートは完全に凍結いたしました。現在、奴らは手持ちの小銭以外、動かせるカネは一円もありません」
​「上出来だ。これで狂犬どもは、餌を求めて共食いを始める」
​幸隆は満足げにうなずき、ブラックコーヒーを口に運んだ。
その冷徹なまでの落ち着きぶり。未だ帝都が反乱軍に占拠されているというのに、この男の周りだけは、まるで最初から勝利が確定しているかのような揺るぎない安心感があった。
​「あの……公爵閣下」
木崎は、震える声で尋ねた。
​「我々文官は……これまで、軍部の暴力に怯えることしかできませんでした。しかし、閣下の下であれば……我々は、本当の意味でこの国を動かせるのでしょうか」
​幸隆はカップを置き、彼らを見据えた。
​「勘違いするな。国を動かすのは俺だ。お前たちは、俺の手足となって働く極上の『駒』にすぎん」
​突き放すような冷たい言葉。
しかし、幸隆はニィッと、凶悪で、それでいて不思議と人を惹きつける笑みを浮かべた。
​「だが、俺の駒として働く以上、理不尽な暴力で理不尽に殺されるような真似は絶対にさせん。軍部の青二才どもから、お前たちの命は俺が法と権力で守り抜いてやる」
​ドクン、と。
結城や木崎たち若きエリートの胸が、激しく高鳴った。
これだ。自分たちがずっと求めていた、強くて、狡猾で、圧倒的なカリスマを持つ『真の指導者』。
このお方のためなら、地獄の底までついていける。
​「一生、お仕えいたします……!」
​木崎たちが深々と頭を下げるのを見下ろしながら、幸隆は静かに灰皿へタバコを押し付けた。
最強の政治チーム(派閥)が、ついに産声を上げた瞬間だった。
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