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EP 6
ヤンデレ世界樹の圧と、結納金ハイパーインフレ
『……ウチノ可愛イ娘ニ、何ノ用ダ、小僧』
大地の主、ヤンデレ世界樹。
その巨大な幹に浮かび上がった恐ろしい顔が、簀巻きにされた銀河をギョロリと睨み下ろしていた。
脳内に直接響く、鼓膜ではなく魂を直接揺さぶるような重低音。周囲の空気が、あまりの重圧にピキピキと凍りつくような錯覚に陥る。
『娘ニ近ヅク害虫ハ、例外ナク私ノ根ノ養分(コンポスト)ニシテキタ。……貴様モ、上等ナ肥料ニナリソウダナ……』
ズズズッ……と、銀河を縛り付けていたツルがギリギリと締め付けを強くする。
「ヒッ……!! 違う! 僕はただ逃げてきただけで、ルナさんを騙そうとなんて……ッ!」
(言い訳が通じる相手じゃない! アマテラスに助けを呼ぶか!? いや、間に合わない!! 殺されるッ!!)
銀河が、愛の破壊者としてのプライドを完全に捨て去り、死の恐怖に顔を歪めたその時だった。
「もうっ! お母様ったら、いけませんわ!」
ルナが、プクッと頬を膨らませて、世界樹の巨大な幹をペチペチと叩いた。
「銀河様は害虫なんかじゃありません! 私、銀河様とお付き合いすることになりましたの!」
「…………え?」
銀河が間抜けな声を漏らした、次の瞬間。
『――――アッ、マヂデ!?』
森を覆い尽くしていた圧倒的な殺意と重圧が、嘘のように『スッ……』と消え去った。
世界樹の恐ろしい顔が、途端にふにゃりと崩れ、まるで昼下がりに井戸端会議をしているおばちゃんのような、ひどく親しみやすい表情へと変化したのだ。
『ヤダァ、ルナちゃんったら! そういう大事なコトは早く言いなさいヨォ! もう、お母さん早とちりして、未来の娘婿をコンポストにしちゃうトコだったジャナ~イ!』
「ルナちゃん!? 娘婿!? トーンが変わりすぎじゃない!?」
『ごめんネェ、銀河クン! ウチの子、ちょっと天然で手がかかるトコあるケド、根はすっごく良い子ダカラ! あらやだ、イケメンじゃないのォ!』
シュルルルッ、と銀河を縛っていたツルが優しく解かれ、代わりに世界樹から伸びた柔らかい葉っぱが、銀河の乱れた服のホコリをポンポンと丁寧に払ってくれる。
「お、お母様……? あの、僕たち、まだ付き合ってるとかそういう段階じゃ……」
「まぁまぁ、銀河様ったら照れ屋さんですわね!」
ルナが、銀河の腕にギュッと抱き着き、世界樹に向かって満面の笑みを向けた。
「お母様! 銀河様はとっても働き者なんですのよ! 臓器を売ってまで、私との新居の資金を稼ごうとしてくれたんですから!」
『ヤダァ! 臓器を!? なんて健気な男の子ナノ! でもダメよォ、そんな苦労させられないワ! そうネ、二人の愛の巣と、結婚の資金が必要ヨネ!』
世界樹が、ウンウンと巨大な幹を揺らして頷く。
嫌な予感がする。極大の嫌な予感が、銀河の全身の毛穴を全開にさせた。
『お母さんからの、ささやかな結納金(おこづかい)ヨォ! 受け取ってネ!』
ズゴゴゴゴゴゴォォォォンッ!!!
世界樹の根元の地面が大きく割れ、地中から『それ』が押し上げられてきた。
まばゆいばかりの黄金の輝き。
宝箱などというチャチなものではない。一辺が数メートルはある、純度100%の『純金の超巨大ブロック』が、地響きと共に銀河の目の前にドスゥン!! と鎮座したのだ。
「うふふっ! よかったですわね、銀河様! これで臓器を売らなくても済みますわ!」
『目方でだいたい100キログラムくらいカシラ? 足りなかったら毎月仕送りするから、遠慮なく言ってネェ!』
純金100kg。
現在のルナミス帝国の相場に換算すれば、国家予算の数パーセントに匹敵する天文学的な数字である。
「…………」
銀河は、その巨大な金塊を前に、白目を剥いて天を仰いだ。
「ふ、ふざけるなああぁぁッ!!」
森中に響き渡る、銀河の魂の絶叫。
「こんなもの市場に流したら、ルナミス帝国の貨幣価値が暴落するだろ!! パン一個買うのに金貨が百枚必要な『ハイパーインフレ』が起きるんだよ!! 帝国の経済が死ぬ! 罪のない庶民が飢え死にする!! 結納金で国を一つ滅ぼす気かァァァッ!!」
『まぁまぁ、銀河クンったら遠慮深いンだからァ!』
「遠慮じゃない!! マクロ経済学の話をしてるんだよ!! コンプライアンスの次は市場経済の崩壊か!! あんたたち母娘は、歩く厄災か何かかァァァッ!!」
かつて他人の心を冷徹に計算で操っていたサイコパスは、今や純金ブロックに抱きつきながら、異世界の経済を守るために必死でツッコミを入れ続ける【常識の防波堤】と化していた。
だが、この純金100kgの出現が放った凄まじい『魔力と富の波動』は、ポポロ村でお留守番をしていた『他の特異点(ヤンデレ&強欲)たち』のセンサーを、バッチリと刺激してしまっていたのだ。
「――ちょっと待ったぁぁぁぁぁッ!!!」
森の入り口から。
地獄の釜の蓋が開くような、恐ろしくも聞き慣れた少女たちの声が響き渡った。
愛の破壊者の胃痛は、ここからさらにマッハの速度で加速していく。
『……ウチノ可愛イ娘ニ、何ノ用ダ、小僧』
大地の主、ヤンデレ世界樹。
その巨大な幹に浮かび上がった恐ろしい顔が、簀巻きにされた銀河をギョロリと睨み下ろしていた。
脳内に直接響く、鼓膜ではなく魂を直接揺さぶるような重低音。周囲の空気が、あまりの重圧にピキピキと凍りつくような錯覚に陥る。
『娘ニ近ヅク害虫ハ、例外ナク私ノ根ノ養分(コンポスト)ニシテキタ。……貴様モ、上等ナ肥料ニナリソウダナ……』
ズズズッ……と、銀河を縛り付けていたツルがギリギリと締め付けを強くする。
「ヒッ……!! 違う! 僕はただ逃げてきただけで、ルナさんを騙そうとなんて……ッ!」
(言い訳が通じる相手じゃない! アマテラスに助けを呼ぶか!? いや、間に合わない!! 殺されるッ!!)
銀河が、愛の破壊者としてのプライドを完全に捨て去り、死の恐怖に顔を歪めたその時だった。
「もうっ! お母様ったら、いけませんわ!」
ルナが、プクッと頬を膨らませて、世界樹の巨大な幹をペチペチと叩いた。
「銀河様は害虫なんかじゃありません! 私、銀河様とお付き合いすることになりましたの!」
「…………え?」
銀河が間抜けな声を漏らした、次の瞬間。
『――――アッ、マヂデ!?』
森を覆い尽くしていた圧倒的な殺意と重圧が、嘘のように『スッ……』と消え去った。
世界樹の恐ろしい顔が、途端にふにゃりと崩れ、まるで昼下がりに井戸端会議をしているおばちゃんのような、ひどく親しみやすい表情へと変化したのだ。
『ヤダァ、ルナちゃんったら! そういう大事なコトは早く言いなさいヨォ! もう、お母さん早とちりして、未来の娘婿をコンポストにしちゃうトコだったジャナ~イ!』
「ルナちゃん!? 娘婿!? トーンが変わりすぎじゃない!?」
『ごめんネェ、銀河クン! ウチの子、ちょっと天然で手がかかるトコあるケド、根はすっごく良い子ダカラ! あらやだ、イケメンじゃないのォ!』
シュルルルッ、と銀河を縛っていたツルが優しく解かれ、代わりに世界樹から伸びた柔らかい葉っぱが、銀河の乱れた服のホコリをポンポンと丁寧に払ってくれる。
「お、お母様……? あの、僕たち、まだ付き合ってるとかそういう段階じゃ……」
「まぁまぁ、銀河様ったら照れ屋さんですわね!」
ルナが、銀河の腕にギュッと抱き着き、世界樹に向かって満面の笑みを向けた。
「お母様! 銀河様はとっても働き者なんですのよ! 臓器を売ってまで、私との新居の資金を稼ごうとしてくれたんですから!」
『ヤダァ! 臓器を!? なんて健気な男の子ナノ! でもダメよォ、そんな苦労させられないワ! そうネ、二人の愛の巣と、結婚の資金が必要ヨネ!』
世界樹が、ウンウンと巨大な幹を揺らして頷く。
嫌な予感がする。極大の嫌な予感が、銀河の全身の毛穴を全開にさせた。
『お母さんからの、ささやかな結納金(おこづかい)ヨォ! 受け取ってネ!』
ズゴゴゴゴゴゴォォォォンッ!!!
世界樹の根元の地面が大きく割れ、地中から『それ』が押し上げられてきた。
まばゆいばかりの黄金の輝き。
宝箱などというチャチなものではない。一辺が数メートルはある、純度100%の『純金の超巨大ブロック』が、地響きと共に銀河の目の前にドスゥン!! と鎮座したのだ。
「うふふっ! よかったですわね、銀河様! これで臓器を売らなくても済みますわ!」
『目方でだいたい100キログラムくらいカシラ? 足りなかったら毎月仕送りするから、遠慮なく言ってネェ!』
純金100kg。
現在のルナミス帝国の相場に換算すれば、国家予算の数パーセントに匹敵する天文学的な数字である。
「…………」
銀河は、その巨大な金塊を前に、白目を剥いて天を仰いだ。
「ふ、ふざけるなああぁぁッ!!」
森中に響き渡る、銀河の魂の絶叫。
「こんなもの市場に流したら、ルナミス帝国の貨幣価値が暴落するだろ!! パン一個買うのに金貨が百枚必要な『ハイパーインフレ』が起きるんだよ!! 帝国の経済が死ぬ! 罪のない庶民が飢え死にする!! 結納金で国を一つ滅ぼす気かァァァッ!!」
『まぁまぁ、銀河クンったら遠慮深いンだからァ!』
「遠慮じゃない!! マクロ経済学の話をしてるんだよ!! コンプライアンスの次は市場経済の崩壊か!! あんたたち母娘は、歩く厄災か何かかァァァッ!!」
かつて他人の心を冷徹に計算で操っていたサイコパスは、今や純金ブロックに抱きつきながら、異世界の経済を守るために必死でツッコミを入れ続ける【常識の防波堤】と化していた。
だが、この純金100kgの出現が放った凄まじい『魔力と富の波動』は、ポポロ村でお留守番をしていた『他の特異点(ヤンデレ&強欲)たち』のセンサーを、バッチリと刺激してしまっていたのだ。
「――ちょっと待ったぁぁぁぁぁッ!!!」
森の入り口から。
地獄の釜の蓋が開くような、恐ろしくも聞き慣れた少女たちの声が響き渡った。
愛の破壊者の胃痛は、ここからさらにマッハの速度で加速していく。
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