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第二章 マルシア帝国へ
EP 7
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森の掃除と岩肌の巨獣
帝都アウストラ近郊の森。勇太たち「ホープ・クローバーズ」は、冒険者ギルドで受注したEランク依頼「ゴブリンの群れ討伐」のため、指定された区域に足を踏み入れていた。これまでの強敵たちとの戦いを思えば、ゴブリンは格下の相手だ。しかし、油断は禁物。彼らは慎重に索敵を行い、すぐに木々の間に潜むゴブリンの小集落を発見した。
「よし、作戦通り行くぞ!」
勇太の合図で、四人は一斉に動き出す。
イグニスが戦斧と大盾を構えて先陣を切り、ゴブリンたちの注意を引きつける。その屈強な体躯と威圧感は、小柄なゴブリンたちを怯ませるには十分だった。
「雑魚どもが、まとめてかかってこい!」
キャルルは、イグニスの脇をすり抜けるように、俊敏な動きでゴブリンの群れに飛び込み、トンファーと蹴り技で次々と敵を打ち据えていく。その動きは、ルナキャロット村での訓練を経て、さらに洗練されている。
リーシャは後方から的確な魔法援護を行う。無理に大技を使うまでもなく、鋭いウィンドカッターや、敵の足元を狙ったアーススパイクで、ゴブリンたちの動きを封じ、あるいは確実に仕留めていく。
勇太は、戦況全体を見渡し、薙刀で遊撃的に立ち回る。イグニスの死角をカバーし、キャルルが囲まれそうになれば割って入り、的確な突きや薙ぎ払いでゴブリンを無力化していく。時には、リーシャの魔法とタイミングを合わせ、連携技のような動きも見せた。
数でこそ勝るゴブリンたちだったが、ヒドラやクリスタルタートルといった強敵との死闘を乗り越えてきた勇太たちの前では、もはや敵ではなかった。ものの十分も経たないうちに、十数匹いたゴブリンは全て討伐され、森には静けさが戻った。
「よし、片付いたな」
勇太は薙刀についた血糊を軽く振るい、息をつく。
「へっ、楽勝だな! 俺様にかかれば、こんなモンよ!」
イグニスは、戦斧を肩に担ぎ、満足そうに胸を張った。
だが、その安堵も束の間だった。
ドシン……ドシン……
遠くから、しかし確実に、地面を揺るがすような重い足音が聞こえてきた。それは徐々に近づき、その音の主が相当な巨体であることを示唆していた。
「な、なんだ……この地響きは……?」
キャルルが不安そうに耳を澄ませる。
木々がざわめき、小動物たちが一斉に逃げ出す。そして、森の奥から、ゆっくりと巨大な影が姿を現した。
それは、三本の巨大な角と、首周りを覆う骨質のフリルを持つ、四足歩行の巨大な獣だった。その皮膚はゴツゴツとした岩肌のようで、全身が土埃と苔に覆われている。
「な!? トリケラトプス……? いや、何か違うような……」
勇太は、地球で知る恐竜の姿を思い浮かべたが、目の前の生物は明らかにそれよりも凶暴で、禍々しい気を放っていた。
「トリケラ……? それは何かしら? あれは、魔獣ロックサウルスよ! 硬い皮膚と強力な突進力を持つ、非常に危険な魔獣だわ!」
リーシャが、緊張した面持ちでその正体を告げる。
「チッ、あのゴブリンどもの血の匂いに釣られて目当てに来たってか! 面倒なことになりやがったぜ!」
イグニスは、忌々しそうに舌打ちする。
「……でも、ここで逃げるわけにはいきません! 負けません!」
キャルルは、勇太の隣に立ち、トンファーを構え直した。その瞳には、確かな闘志が宿っている。
勇太も、新たな強敵の出現にゴクリと喉を鳴らした。ゴブリン討伐という簡単なはずだったEランク依頼が、思わぬ形でS級クラスの(?)危険な戦いへと発展しようとしていた。彼は薙刀を強く握りしめ、目の前の岩肌の巨獣――魔獣ロックサウルスと対峙した。
帝都アウストラ近郊の森。勇太たち「ホープ・クローバーズ」は、冒険者ギルドで受注したEランク依頼「ゴブリンの群れ討伐」のため、指定された区域に足を踏み入れていた。これまでの強敵たちとの戦いを思えば、ゴブリンは格下の相手だ。しかし、油断は禁物。彼らは慎重に索敵を行い、すぐに木々の間に潜むゴブリンの小集落を発見した。
「よし、作戦通り行くぞ!」
勇太の合図で、四人は一斉に動き出す。
イグニスが戦斧と大盾を構えて先陣を切り、ゴブリンたちの注意を引きつける。その屈強な体躯と威圧感は、小柄なゴブリンたちを怯ませるには十分だった。
「雑魚どもが、まとめてかかってこい!」
キャルルは、イグニスの脇をすり抜けるように、俊敏な動きでゴブリンの群れに飛び込み、トンファーと蹴り技で次々と敵を打ち据えていく。その動きは、ルナキャロット村での訓練を経て、さらに洗練されている。
リーシャは後方から的確な魔法援護を行う。無理に大技を使うまでもなく、鋭いウィンドカッターや、敵の足元を狙ったアーススパイクで、ゴブリンたちの動きを封じ、あるいは確実に仕留めていく。
勇太は、戦況全体を見渡し、薙刀で遊撃的に立ち回る。イグニスの死角をカバーし、キャルルが囲まれそうになれば割って入り、的確な突きや薙ぎ払いでゴブリンを無力化していく。時には、リーシャの魔法とタイミングを合わせ、連携技のような動きも見せた。
数でこそ勝るゴブリンたちだったが、ヒドラやクリスタルタートルといった強敵との死闘を乗り越えてきた勇太たちの前では、もはや敵ではなかった。ものの十分も経たないうちに、十数匹いたゴブリンは全て討伐され、森には静けさが戻った。
「よし、片付いたな」
勇太は薙刀についた血糊を軽く振るい、息をつく。
「へっ、楽勝だな! 俺様にかかれば、こんなモンよ!」
イグニスは、戦斧を肩に担ぎ、満足そうに胸を張った。
だが、その安堵も束の間だった。
ドシン……ドシン……
遠くから、しかし確実に、地面を揺るがすような重い足音が聞こえてきた。それは徐々に近づき、その音の主が相当な巨体であることを示唆していた。
「な、なんだ……この地響きは……?」
キャルルが不安そうに耳を澄ませる。
木々がざわめき、小動物たちが一斉に逃げ出す。そして、森の奥から、ゆっくりと巨大な影が姿を現した。
それは、三本の巨大な角と、首周りを覆う骨質のフリルを持つ、四足歩行の巨大な獣だった。その皮膚はゴツゴツとした岩肌のようで、全身が土埃と苔に覆われている。
「な!? トリケラトプス……? いや、何か違うような……」
勇太は、地球で知る恐竜の姿を思い浮かべたが、目の前の生物は明らかにそれよりも凶暴で、禍々しい気を放っていた。
「トリケラ……? それは何かしら? あれは、魔獣ロックサウルスよ! 硬い皮膚と強力な突進力を持つ、非常に危険な魔獣だわ!」
リーシャが、緊張した面持ちでその正体を告げる。
「チッ、あのゴブリンどもの血の匂いに釣られて目当てに来たってか! 面倒なことになりやがったぜ!」
イグニスは、忌々しそうに舌打ちする。
「……でも、ここで逃げるわけにはいきません! 負けません!」
キャルルは、勇太の隣に立ち、トンファーを構え直した。その瞳には、確かな闘志が宿っている。
勇太も、新たな強敵の出現にゴクリと喉を鳴らした。ゴブリン討伐という簡単なはずだったEランク依頼が、思わぬ形でS級クラスの(?)危険な戦いへと発展しようとしていた。彼は薙刀を強く握りしめ、目の前の岩肌の巨獣――魔獣ロックサウルスと対峙した。
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