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第二章 マルシア帝国へ
EP 14
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黄金の小鬼と新たな挑戦
帝都アウストラでの生活にも少しずつ慣れ、パーティー「ホープ・クローバーズ」としての活動資金と、将来のマイホーム購入という大きな目標のために、勇太たちは足繁く冒険者ギルド「ラックギオン」に通っていた。Dランクに昇格したことで、受けられる依頼の種類も報酬も、以前とは比較にならないほど増えている。
その日も、四人は巨大な依頼掲示板の前で、次の仕事を探していた。
「うーん、オークの斥候部隊の討伐か……。ちょっと今の僕たちには荷が重いかな」
勇太が腕を組みながら言う。
「こっちには、迷宮ダンジョンの浅層マッピングってのもあるぜ。お宝が見つかるかもしれねえ!」
イグニスが目を輝かせる。
「でも、迷宮は未知の罠も多いって聞きますよ? もっと安全なのが……」
キャルルが慎重に依頼書を選んでいると、勇太がある一枚の羊皮紙に目を留めた。
「……『ゴールドゴブリン討伐。場所:帝都南東、囁きの森近隣の廃坑。報酬:金貨10枚』……ゴールドゴブリン? ゴールドって何だ?」
その破格の報酬額に、勇太だけでなく、リーシャとイグニスも顔を寄せた。
「ゴブリンの突然変異種かしら? それとも、何か特別な能力を持つとか……」
リーシャが推測する。通常のゴブリン討伐の報酬は、数体まとめて銀貨数枚程度だ。金貨10枚というのは、明らかに異常な額だった。
「ちょっと受付で聞いてみよう」
勇太達は、いつものように狐耳族の受付嬢、フォミナのカウンターへと向かった。
「フォミナさん、この『ゴールドゴブリン討伐』の依頼について、詳しく教えていただけますか?」
フォミナは依頼書番号を確認すると、少し表情を引き締めて説明を始めた。
「はい。 その依頼ですが……対象のゴブリンの亜種は、通称『ゴールドゴブリン』と呼ばれています。体毛が金色に輝いているという報告もありますが、それ以上に厄介なのは、その性質です」
彼女は続けた。
「とにかくすばしっこくて、ずる賢く、罠を巧みに使い、人間を嘲笑うかのような行動を取るとのことです。さらに、通常のゴブリン達を統率しては村や街に被害を及ぼしており、最近その被害が拡大しているため、私共は事態を重くみて、討伐優先度を上げ、特別報酬として金貨10枚を提示します。受けますか?」
その説明を聞いた途端、イグニスの目がカッと見開かれた。
「ゴブリンが金貨10枚!? やる! やるぞ、ユウタ! あんな雑魚、俺様にかかれば一捻りだ!」
彼は興奮して戦斧を握りしめる。
「もう、イグニスさんってば! 話をちゃんと聞いてましたか? ずる賢くて、すばしっこいって……」
キャルルが呆れたようにイグニスを窘める。そして、不安そうな目で勇太を見た。
「勇太さんはどう見ますか?」
「う~ん……『ゴールド』ってのは気になる所だけど、村や街に被害が出てるのはなぁ。 放っておくわけにもいかないだろうし……」
勇太は腕を組んで考え込む。確かに危険な相手かもしれないが、Dランクになった今、少しは手応えのある依頼にも挑戦したい。そして何より、人々の困っている姿を見過ごせない彼の性格が、決断を促していた。
「……受けるのね?」
リーシャが、勇太の考えを読み取ったように、静かに問いかける。
「ああ、受けます。 ホープ・クローバーズに、その依頼をお願いします」
勇太は、フォミナに向かってはっきりと告げた。
「分かりました。受理します。」
フォミナは頷き、依頼受理の手続きを進めた。「ゴールドゴブリンの主な出現場所は、帝都南東の森、その奥にある廃坑周辺です。罠や伏兵には十分注意してください。ご武運を」
彼女は、勇太たちに依頼完了の証となる羊皮紙と、簡単な地図を手渡した。
「よし、行こうか!」
勇太の言葉に、キャルル、リーシャ、イグニスも力強く頷く。
金貨10枚という高額報酬。そして、ずる賢いという未知の敵。
「ホープ・クローバーズ」の新たな挑戦が、今、始まろうとしていた。
勇太達は、ゴールドゴブリン退治に出掛けた。
帝都アウストラでの生活にも少しずつ慣れ、パーティー「ホープ・クローバーズ」としての活動資金と、将来のマイホーム購入という大きな目標のために、勇太たちは足繁く冒険者ギルド「ラックギオン」に通っていた。Dランクに昇格したことで、受けられる依頼の種類も報酬も、以前とは比較にならないほど増えている。
その日も、四人は巨大な依頼掲示板の前で、次の仕事を探していた。
「うーん、オークの斥候部隊の討伐か……。ちょっと今の僕たちには荷が重いかな」
勇太が腕を組みながら言う。
「こっちには、迷宮ダンジョンの浅層マッピングってのもあるぜ。お宝が見つかるかもしれねえ!」
イグニスが目を輝かせる。
「でも、迷宮は未知の罠も多いって聞きますよ? もっと安全なのが……」
キャルルが慎重に依頼書を選んでいると、勇太がある一枚の羊皮紙に目を留めた。
「……『ゴールドゴブリン討伐。場所:帝都南東、囁きの森近隣の廃坑。報酬:金貨10枚』……ゴールドゴブリン? ゴールドって何だ?」
その破格の報酬額に、勇太だけでなく、リーシャとイグニスも顔を寄せた。
「ゴブリンの突然変異種かしら? それとも、何か特別な能力を持つとか……」
リーシャが推測する。通常のゴブリン討伐の報酬は、数体まとめて銀貨数枚程度だ。金貨10枚というのは、明らかに異常な額だった。
「ちょっと受付で聞いてみよう」
勇太達は、いつものように狐耳族の受付嬢、フォミナのカウンターへと向かった。
「フォミナさん、この『ゴールドゴブリン討伐』の依頼について、詳しく教えていただけますか?」
フォミナは依頼書番号を確認すると、少し表情を引き締めて説明を始めた。
「はい。 その依頼ですが……対象のゴブリンの亜種は、通称『ゴールドゴブリン』と呼ばれています。体毛が金色に輝いているという報告もありますが、それ以上に厄介なのは、その性質です」
彼女は続けた。
「とにかくすばしっこくて、ずる賢く、罠を巧みに使い、人間を嘲笑うかのような行動を取るとのことです。さらに、通常のゴブリン達を統率しては村や街に被害を及ぼしており、最近その被害が拡大しているため、私共は事態を重くみて、討伐優先度を上げ、特別報酬として金貨10枚を提示します。受けますか?」
その説明を聞いた途端、イグニスの目がカッと見開かれた。
「ゴブリンが金貨10枚!? やる! やるぞ、ユウタ! あんな雑魚、俺様にかかれば一捻りだ!」
彼は興奮して戦斧を握りしめる。
「もう、イグニスさんってば! 話をちゃんと聞いてましたか? ずる賢くて、すばしっこいって……」
キャルルが呆れたようにイグニスを窘める。そして、不安そうな目で勇太を見た。
「勇太さんはどう見ますか?」
「う~ん……『ゴールド』ってのは気になる所だけど、村や街に被害が出てるのはなぁ。 放っておくわけにもいかないだろうし……」
勇太は腕を組んで考え込む。確かに危険な相手かもしれないが、Dランクになった今、少しは手応えのある依頼にも挑戦したい。そして何より、人々の困っている姿を見過ごせない彼の性格が、決断を促していた。
「……受けるのね?」
リーシャが、勇太の考えを読み取ったように、静かに問いかける。
「ああ、受けます。 ホープ・クローバーズに、その依頼をお願いします」
勇太は、フォミナに向かってはっきりと告げた。
「分かりました。受理します。」
フォミナは頷き、依頼受理の手続きを進めた。「ゴールドゴブリンの主な出現場所は、帝都南東の森、その奥にある廃坑周辺です。罠や伏兵には十分注意してください。ご武運を」
彼女は、勇太たちに依頼完了の証となる羊皮紙と、簡単な地図を手渡した。
「よし、行こうか!」
勇太の言葉に、キャルル、リーシャ、イグニスも力強く頷く。
金貨10枚という高額報酬。そして、ずる賢いという未知の敵。
「ホープ・クローバーズ」の新たな挑戦が、今、始まろうとしていた。
勇太達は、ゴールドゴブリン退治に出掛けた。
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