異世界転生×ユニークスキル 地球ショッピングで無双する!?【感謝!第四章 大陸への戦火 開幕!】

月神世一

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第二章 マルシア帝国へ

EP 20

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訳アリ物件とドラゴンの噂

「ただし、魔物が出ますけどな」

ニャングルの言葉に、一瞬、ゴルド商会の豪華な応接室の空気が凍りついた。だが、その静寂を破ったのは、意外にも勇太の即答だった。

「よし、受ける」

「ユウタさん!?」

キャルルが、信じられないといった顔で叫ぶ。

「全く~……」

リーシャは、やれやれといった様子でこめかみを押さえた。勇太のこういう突拍子もない決断力には、少しずつ慣れてきてはいるが。

そんな中、目を輝かせたのはイグニスだった。

「面白いじゃね~か! 魔物を退治すれば良いんだろ? 家も手に入って、腕試しもできる! 一石二鳥ってやつだな!」

「おぉおぉ! 助かります~! ユウタはん、話が早くて助かりまんなぁ!」

ニャングルは、勇太たちが引き受けてくれたことに大喜びし、つい本音が漏れた。

「いやー、あの物件、元貴族の別荘でのう、広くて立派なんやけど、例の魔物のせいで引き取り手が無くて、ホンマに困ってたんですわ!」

「え?」

キャルルの兎耳が、ニャングルの本音を敏感に捉え、ぴくりと動いた。

「……ニャングルさん、もしかして、私たちに厄介払いをさせようとしてませんか?」

「そ、そんなことは……! い、いや、その……」

ニャングルがしどろもどろになっていると、勇太が冷静に尋ねた。

「因みに、そのモンスターって? ゴブリンやコボルトとは訳が違うんだろうけど」

「あぁ、な~に、たいしたことおまへん。ワテも噂でしか聞いとりまへんが、ただのドラゴンですわ」

ニャングルは、お茶を濁すように、さらりと言ってのけた。

「「「「…………」」」」

一瞬の静寂。

「そっか~♡ ドラゴンか~! 楽ちん楽ちん♪ ……って、なるかぁぁぁーーーっ!!」

一度は納得しかけたキャルルが、我に返って絶叫した。その声は応接室中に響き渡る。

「このドブ猫……、いい加減にしなさい。私のフレイムサイクロンで、あなたこそ燃やして上げましょうか」

リーシャの瞳が、本気の怒りで青白い炎を宿した。杖を握る手に、魔力がこもり始めている。

「ひぃぃっ! ま、待っておくんなまし~! ちゃんと訳がありまんねん!」

ニャングルは、二人の剣幕に完全に怯え、慌てて事情を説明し始めた。

「あ、あの物件はですな、元々、帝国でも指折りの飛龍騎士様のお宅だったんです!」

「飛龍騎士?」

勇太が興味を示すと、ニャングルは必死に頷いた。

「へえ、あのスカイドラゴンに乗って闘う、エッライ強い騎士様ですわ! そりゃもう、一人で戦況をひっくり返すほどの英雄やったとか……。それが、まあ、その……宴会の席で出された生キノコを食べて、あっけなく食当たりで亡くなってしまいましてな……」

あまりにも締まらない英雄の最期に、一同は言葉を失う。

「ほんで、そのスカイドラゴンが、主を失った悲しみから、元々住んでた屋敷を根城にしてしもたんです。人に危害を加えるわけやないらしいんですが、何せドラゴンですやろ? 誰も近づけんし、主を失ったせいか誰にも懐かずに、屋敷を根城にして、みーんな困り果ててるんすわ!」

「なるほどな……。主を亡くしたドラゴンが、思い出の場所に……」

イグニスも、事情を聞いて少し同情したような顔になる。

勇太は、全ての事情を飲み込んで、ポンと膝を打った。

「分かった分かった。 つまり、そのドラゴンをどうにかすれば、あの広い屋敷が金貨50枚で手に入るってことだな。よし、取り敢えず行ってみる。討伐するか、手懐けるか、あるいは説得するかは、そいつに会ってから決めるよ」

勇太の言葉に、キャルルもリーシャも、そしてイグニスも、覚悟を決めたように頷いた。

「しゃ、しゃいなら! おおきに、ユウタはん!」

ニャングルは、厄介払いができた安堵感と、本当にドラゴンをどうにかしてしまうかもしれないという期待感をない交ぜにしながら、勇太たちに物件の地図を手渡したのだった。

こうして、「ホープ・クローバーズ」のマイホーム購入計画は、いきなりドラゴンとの対峙というとんでもないミッションへと発展したのである。

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