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第二章 マルシア帝国へ
EP 41
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友の背中と決勝への扉
Sランク冒険者サブリナを破るという大金星を挙げた勇太が控え室に帰ると、仲間たちが一斉に駆け寄ってきた。
「ユウタさん! すごかったです! 本当に、本当にカッコ良かった!」
「流石、私の勇者様ね! あの魔法剣士を、まさかあんな風にあしらうなんて」
キャルルとリーシャが、興奮冷めやらぬ様子で、両側から勇太に抱きついてきた。
「いや、オーバーだな。 ギリギリだったよ。それに、二人とも近いって……」
勇太は、二人の美少女に抱きつかれ、嬉しいやら恥ずかしいやらで、顔を真っ赤にして照れるしかなかった。
そんな中、部屋の隅で黙って壁に寄りかかっていたイグニスは、その黄金色の瞳に、これまでにないほどの強い闘志を燃やしていた。彼は勇太の戦いを、一瞬も見逃すまいと食い入るように見ていたのだ。力だけではない、知恵と技で強敵を打ち破る戦い方。それは、彼にとって衝撃的であり、同時に血を滾らせるものだった。
「次! 第一闘技場、準決勝第二試合! イグニス・ドラグーン殿!」
係員の呼び出しの声が響く。
イグニスは、誰に言うでもなく、静かに頷いた。そして、無言で戦斧と大盾を手に取り、ゆっくりと試合会場に向かって歩き始めた。その背中からは、いつものような自信過剰な雰囲気は消え、研ぎ澄まされた刃のような集中力が感じられた。
「……イグニス」
勇太は、その背中に静かに声をかけた。
「……勝てよ」
イグニスは振り返らず、ただ片手を軽く上げただけで、闘技場へと続く光の中へと消えていった。
イグニスは試合会場に立つ。
対戦相手は、ユリウスと名乗る、帝国騎士団の槍術師範代だという精悍な男だった。
「始め!」
審判の合図と共に、ユリウスは槍を構え、イグニスへと迫る。だが、イグニスは動かない。大盾を体の前に置き、ただ静かに相手を見据えているだけだ。
「どうした、竜人! 臆したか!?」
ユリウスが、イグニスを挑発する。そして、その隙はもらったとばかりに、槍を構えて一直線に突撃する。
その瞬間。
イグニスは、これまで見せたことのない、静かにして最小限の動きで、ユリウスの槍の突きを半身になって避けた。そして、突進の勢いで体勢を崩したユリウスの頭(側頭部)を、構えていた大盾の角で、振り向きざまに弾いた。
ゴッ、と鈍い音が響き、ユリウスは白目を剥いてその場に崩れ落ちる。一撃。たった、一撃だった。
「しょ、勝負有り! 勝者、イグニス・ドラグーン!」
あまりに一瞬の決着に、審判も観客も呆気にとられていたが、やがて状況を理解すると、闘技場から爆発的な歓声が響き渡る。
イグニスが勝って控え室に戻ってきた。その顔は、汗ひとつかいていないかのように涼やかだ。
彼は、勇太の目の前に立つと、ニヤリと笑った。
「約束通り、勝ち残ったぜ。次は、決勝だ」
「ああ、そうだな」
「勝負だ、勇太」
イグニスの言葉には、ライオット戦の時とは違う、友として、そして好敵手としての純粋な闘志が込められていた。
「ああ。思いっきりやろう」
勇太も、笑ってその挑戦を受け止めた。
帝都武術大会「獅子王祭」、決勝戦。
その舞台で対峙するのは、同じパーティー「ホープ・クローバーズ」に所属する、二人の若き英雄。
帝都中の注目が、この運命の戦いに集まろうとしていた。
Sランク冒険者サブリナを破るという大金星を挙げた勇太が控え室に帰ると、仲間たちが一斉に駆け寄ってきた。
「ユウタさん! すごかったです! 本当に、本当にカッコ良かった!」
「流石、私の勇者様ね! あの魔法剣士を、まさかあんな風にあしらうなんて」
キャルルとリーシャが、興奮冷めやらぬ様子で、両側から勇太に抱きついてきた。
「いや、オーバーだな。 ギリギリだったよ。それに、二人とも近いって……」
勇太は、二人の美少女に抱きつかれ、嬉しいやら恥ずかしいやらで、顔を真っ赤にして照れるしかなかった。
そんな中、部屋の隅で黙って壁に寄りかかっていたイグニスは、その黄金色の瞳に、これまでにないほどの強い闘志を燃やしていた。彼は勇太の戦いを、一瞬も見逃すまいと食い入るように見ていたのだ。力だけではない、知恵と技で強敵を打ち破る戦い方。それは、彼にとって衝撃的であり、同時に血を滾らせるものだった。
「次! 第一闘技場、準決勝第二試合! イグニス・ドラグーン殿!」
係員の呼び出しの声が響く。
イグニスは、誰に言うでもなく、静かに頷いた。そして、無言で戦斧と大盾を手に取り、ゆっくりと試合会場に向かって歩き始めた。その背中からは、いつものような自信過剰な雰囲気は消え、研ぎ澄まされた刃のような集中力が感じられた。
「……イグニス」
勇太は、その背中に静かに声をかけた。
「……勝てよ」
イグニスは振り返らず、ただ片手を軽く上げただけで、闘技場へと続く光の中へと消えていった。
イグニスは試合会場に立つ。
対戦相手は、ユリウスと名乗る、帝国騎士団の槍術師範代だという精悍な男だった。
「始め!」
審判の合図と共に、ユリウスは槍を構え、イグニスへと迫る。だが、イグニスは動かない。大盾を体の前に置き、ただ静かに相手を見据えているだけだ。
「どうした、竜人! 臆したか!?」
ユリウスが、イグニスを挑発する。そして、その隙はもらったとばかりに、槍を構えて一直線に突撃する。
その瞬間。
イグニスは、これまで見せたことのない、静かにして最小限の動きで、ユリウスの槍の突きを半身になって避けた。そして、突進の勢いで体勢を崩したユリウスの頭(側頭部)を、構えていた大盾の角で、振り向きざまに弾いた。
ゴッ、と鈍い音が響き、ユリウスは白目を剥いてその場に崩れ落ちる。一撃。たった、一撃だった。
「しょ、勝負有り! 勝者、イグニス・ドラグーン!」
あまりに一瞬の決着に、審判も観客も呆気にとられていたが、やがて状況を理解すると、闘技場から爆発的な歓声が響き渡る。
イグニスが勝って控え室に戻ってきた。その顔は、汗ひとつかいていないかのように涼やかだ。
彼は、勇太の目の前に立つと、ニヤリと笑った。
「約束通り、勝ち残ったぜ。次は、決勝だ」
「ああ、そうだな」
「勝負だ、勇太」
イグニスの言葉には、ライオット戦の時とは違う、友として、そして好敵手としての純粋な闘志が込められていた。
「ああ。思いっきりやろう」
勇太も、笑ってその挑戦を受け止めた。
帝都武術大会「獅子王祭」、決勝戦。
その舞台で対峙するのは、同じパーティー「ホープ・クローバーズ」に所属する、二人の若き英雄。
帝都中の注目が、この運命の戦いに集まろうとしていた。
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