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EP 16
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鐘鳴り響き、戦塵舞う
デュラスの冷ややかな言葉と、エルミナの怯えた囁きが、アルニア村ののどかな雑貨屋の前で不協和音を奏でていた、まさにその時だった。
カーン!カーン!カーン!!
村の中心に据えられた古びた鐘が、けたたましく、そして不規則に打ち鳴らされた。それは、平穏な村の日常を切り裂く、紛れもない警鐘の音だった。
先程まで和やかに談笑していた村人たちの顔から血の気が引き、雑貨屋の店主も慌てて店の中に駆け込む。
「敵襲だ!西の森からリザードマンの一団だ!数は多いぞ!」
自警団の若い獣人族(狼耳だ)が、顔面蒼白で叫びながら村の中心部へと駆けていく。その声は恐怖に震えていた。
「何ぃ!? リザードマンだと!この時期に、これほどの規模でか!?」
村長宅でデュラスたちをもてなしていたラミアスが、血相を変えて外へ飛び出してきた。その顔は、瞬時にして穏やかな村長から、歴戦の元冒険者のそれへと変わっている。
騒ぎを聞きつけ、マイホームから真守も駆けつけてきた。彼の傍らには、三節棍(ガンツ親父特製)が握られている。
「どうしたんだ!?この騒ぎは!襲撃!?」
「マモル!」
フィリアが真守の姿を認め、安堵と緊張が入り混じった声を上げる。
村は一瞬にして混乱の坩堝と化した。自警団員たちが慌ただしく武器を手に持ち場へと散っていく。ボルグ団長の野太い指示の声が響き渡り、リナサブリーダーが俊敏に駆け回りながら状況を伝達している。女子供は家の奥へ避難を始め、村全体が戦いの前の張り詰めた空気に包まれた。
「チッ……!私が客人としてこの村に滞在しているこのタイミングで襲撃とはな。アルニア村の防衛体制も、大陸の田舎村相応ということか。あるいは……私への当てつけか?どちらにせよ、ふざけた連中だ」
デュラスは、深紅の瞳に冷たい怒りの色を浮かべ、舌打ちした。彼の供として来ていた数名の魔族の護衛兵たちが、素早くデュラスの周囲を固める。彼は懐から「夜詠みの魔杖」を取り出し、いつでも魔法を放てるように構えた。
「デュラス殿、申し訳ない!客人である貴殿らを危険な目に……!」
ラミアスがデュラスに頭を下げようとする。
「今は謝罪よりも現状把握と迎撃が先決でしょう、村長殿。それで、あの震えているだけの天使族は戦力になるのかね?」
デュラスは、フィリアの背後で未だに小さく震えているエルミナを一瞥し、冷ややかに言った。
「ひぇぇ……!わ、私に振らないでくださいまし……!」
エルミナは、魔族からの鋭い視線と、村を襲う危機的状況のダブルパンチで、完全にパニックに陥りかけていた。
「エルミナさん、しっかり!」フィリアがエルミナの肩を掴んで励ますが、そのフィリアの声もわずかに震えている。
(リザードマン……!ゲームとかでよく見るモンスターだが、この世界ではどれほどの脅威なんだ?自警団はいるが、明らかに手が足りていない……!俺も、何かしないと!)
真守は戦場の緊迫感を肌で感じ、決意を固めた。
「フィリア、エルミナさん!俺たちも行こう!ラミアス村長、何か手伝えることはありますか!?」
「マモル……!」
フィリアの目に、強い意志の光が宿る。
「ええ!私たちの村は、私たち自身で守るんだから!」
彼女は背負っていた弓を手に取り、矢筒から矢を番えた。その「鷹の目」は、既に村の外縁、森との境界線に蠢く緑色の鱗を持つ影を捉え始めている。
デュラスは、そんな真守とフィリアのやり取りを横目で見ていたが、再びエルミナに向き直った。
「おい、天使族!いつまでそうして震えているつもりだ?まさかとは思うが、その背中の飾り羽はただのファッションではあるまい?戦えぬのなら、足手まといになる前にどこか安全な場所にでも隠れていることだ!」
その言葉は挑発的でありながら、どこか彼女の力を試すような響きも持っていた。
デュラスの挑発的な言葉に、エルミナの翠玉の瞳がかっと見開かれた。
「ひぃっ……!わ、私は……聖騎士ですもの!逃げたりなんて……しませんわっ!」
恐怖に震えていた少女の姿はそこにはない。背筋を伸ばし、細い剣の柄を握りしめるその手には、確かな意志が込められていた。彼女の奥底に眠っていた、聖なる騎士としての誇りが、魔族の青年の言葉によって呼び覚まされたのだ。
エルミナはそっと目を閉じ、胸の前で両手を合わせた。その唇から、清らかで、しかし力強い祈りの言葉が紡がれ始める。
「――我が主、聖域の守護者よ。不浄を払い、正義を顕現する力を、今ここに……!」
すると、彼女の全身から淡い金色の神気が立ち昇り始めた。周囲の空気が清められ、どこからともなく厳かな旋律が聞こえてくるかのようだ。
次の瞬間、エルミナの頭上に眩い光が集束し、そこから空間が裂けるようにして、白銀に輝くパーツが次々と飛来してきた!
「なっ……!?」
デュラスが目を見張る。フィリアも、真守も、そしてラミアス村長や自警団員たちも、その神々しい光景に息を呑んだ。
光のパーツはエルミナの身体に吸い寄せられるように装着されていく。
まず、純白のアンダースーツが彼女のラフな私服を包み込み、続いて胸当て、肩当て、腰当て、手甲、脛当てといった白銀の鎧が、寸分の狂いもなく組み合わさっていく。その様は、まるで天界の職人が一体一体手作業で仕上げるかのような精密さだ。
最後に、美しい翼の紋章が刻まれたカイトシールドが左腕に、そして穂先に聖なる光を宿した白銀のランスが右手に、それぞれ光の中から実体化して握られた。
彼女の背中からは、隠していた純白の翼が大きく広がり、神々しいオーラを放っている。
数瞬の後、そこに立っていたのは、先程まで怯えていた少女ではない。
白銀の聖鎧に身を包み、ランスと盾を構え、背には光り輝く翼を広げた、美しくも勇壮な「戦う天使」――聖騎士エルミナの真の姿だった。
普段の柔らかな雰囲気は消え、その瞳には邪悪を許さぬ強い意志と、聖なる使命感が宿っている。
「これが……天使族の聖騎士……!」
デュラスは、目の前で起こった「変身」と、そこから放たれる圧倒的な神気に、魔族として本能的な警戒心を覚えながらも、その神々しいまでの美しさには言葉を失っていた。
「エルミナさん……カッコいい……!」
フィリアは、畏敬と憧れの入り混じった表情で、輝くエルミナの姿を見つめている。
真守もまた、呆然とその光景を見守っていた。
(なんだこれ……リアル変身ヒーロー、いやヒロインかよ……!)
「――アルニア村を脅かす不浄なる者たちよ!この聖騎士エルミナが、我が主の御名において、貴方たちの邪悪を浄化します!」
エルミナはランスを構え、リザードマンたちが迫りくる西の森の方向を鋭く睨みつけた。その声は、先程までの弱々しさが嘘のように、凛として訓練場に響き渡った。
アルニア村の西側、森との境界線から、ついにリザードマンたちの雄叫びと、武器のぶつかり合う音が激しくなってきた。
戦端は、もう開かれている。
真守、フィリア、そして聖騎士としての姿を現したエルミナ。
予期せぬ形で共闘することになった魔族のデュラス。
それぞれの思いと武器を胸に、彼らはアルニア村を守るための戦いへと身を投じようとしていた。
デュラスの冷ややかな言葉と、エルミナの怯えた囁きが、アルニア村ののどかな雑貨屋の前で不協和音を奏でていた、まさにその時だった。
カーン!カーン!カーン!!
村の中心に据えられた古びた鐘が、けたたましく、そして不規則に打ち鳴らされた。それは、平穏な村の日常を切り裂く、紛れもない警鐘の音だった。
先程まで和やかに談笑していた村人たちの顔から血の気が引き、雑貨屋の店主も慌てて店の中に駆け込む。
「敵襲だ!西の森からリザードマンの一団だ!数は多いぞ!」
自警団の若い獣人族(狼耳だ)が、顔面蒼白で叫びながら村の中心部へと駆けていく。その声は恐怖に震えていた。
「何ぃ!? リザードマンだと!この時期に、これほどの規模でか!?」
村長宅でデュラスたちをもてなしていたラミアスが、血相を変えて外へ飛び出してきた。その顔は、瞬時にして穏やかな村長から、歴戦の元冒険者のそれへと変わっている。
騒ぎを聞きつけ、マイホームから真守も駆けつけてきた。彼の傍らには、三節棍(ガンツ親父特製)が握られている。
「どうしたんだ!?この騒ぎは!襲撃!?」
「マモル!」
フィリアが真守の姿を認め、安堵と緊張が入り混じった声を上げる。
村は一瞬にして混乱の坩堝と化した。自警団員たちが慌ただしく武器を手に持ち場へと散っていく。ボルグ団長の野太い指示の声が響き渡り、リナサブリーダーが俊敏に駆け回りながら状況を伝達している。女子供は家の奥へ避難を始め、村全体が戦いの前の張り詰めた空気に包まれた。
「チッ……!私が客人としてこの村に滞在しているこのタイミングで襲撃とはな。アルニア村の防衛体制も、大陸の田舎村相応ということか。あるいは……私への当てつけか?どちらにせよ、ふざけた連中だ」
デュラスは、深紅の瞳に冷たい怒りの色を浮かべ、舌打ちした。彼の供として来ていた数名の魔族の護衛兵たちが、素早くデュラスの周囲を固める。彼は懐から「夜詠みの魔杖」を取り出し、いつでも魔法を放てるように構えた。
「デュラス殿、申し訳ない!客人である貴殿らを危険な目に……!」
ラミアスがデュラスに頭を下げようとする。
「今は謝罪よりも現状把握と迎撃が先決でしょう、村長殿。それで、あの震えているだけの天使族は戦力になるのかね?」
デュラスは、フィリアの背後で未だに小さく震えているエルミナを一瞥し、冷ややかに言った。
「ひぇぇ……!わ、私に振らないでくださいまし……!」
エルミナは、魔族からの鋭い視線と、村を襲う危機的状況のダブルパンチで、完全にパニックに陥りかけていた。
「エルミナさん、しっかり!」フィリアがエルミナの肩を掴んで励ますが、そのフィリアの声もわずかに震えている。
(リザードマン……!ゲームとかでよく見るモンスターだが、この世界ではどれほどの脅威なんだ?自警団はいるが、明らかに手が足りていない……!俺も、何かしないと!)
真守は戦場の緊迫感を肌で感じ、決意を固めた。
「フィリア、エルミナさん!俺たちも行こう!ラミアス村長、何か手伝えることはありますか!?」
「マモル……!」
フィリアの目に、強い意志の光が宿る。
「ええ!私たちの村は、私たち自身で守るんだから!」
彼女は背負っていた弓を手に取り、矢筒から矢を番えた。その「鷹の目」は、既に村の外縁、森との境界線に蠢く緑色の鱗を持つ影を捉え始めている。
デュラスは、そんな真守とフィリアのやり取りを横目で見ていたが、再びエルミナに向き直った。
「おい、天使族!いつまでそうして震えているつもりだ?まさかとは思うが、その背中の飾り羽はただのファッションではあるまい?戦えぬのなら、足手まといになる前にどこか安全な場所にでも隠れていることだ!」
その言葉は挑発的でありながら、どこか彼女の力を試すような響きも持っていた。
デュラスの挑発的な言葉に、エルミナの翠玉の瞳がかっと見開かれた。
「ひぃっ……!わ、私は……聖騎士ですもの!逃げたりなんて……しませんわっ!」
恐怖に震えていた少女の姿はそこにはない。背筋を伸ばし、細い剣の柄を握りしめるその手には、確かな意志が込められていた。彼女の奥底に眠っていた、聖なる騎士としての誇りが、魔族の青年の言葉によって呼び覚まされたのだ。
エルミナはそっと目を閉じ、胸の前で両手を合わせた。その唇から、清らかで、しかし力強い祈りの言葉が紡がれ始める。
「――我が主、聖域の守護者よ。不浄を払い、正義を顕現する力を、今ここに……!」
すると、彼女の全身から淡い金色の神気が立ち昇り始めた。周囲の空気が清められ、どこからともなく厳かな旋律が聞こえてくるかのようだ。
次の瞬間、エルミナの頭上に眩い光が集束し、そこから空間が裂けるようにして、白銀に輝くパーツが次々と飛来してきた!
「なっ……!?」
デュラスが目を見張る。フィリアも、真守も、そしてラミアス村長や自警団員たちも、その神々しい光景に息を呑んだ。
光のパーツはエルミナの身体に吸い寄せられるように装着されていく。
まず、純白のアンダースーツが彼女のラフな私服を包み込み、続いて胸当て、肩当て、腰当て、手甲、脛当てといった白銀の鎧が、寸分の狂いもなく組み合わさっていく。その様は、まるで天界の職人が一体一体手作業で仕上げるかのような精密さだ。
最後に、美しい翼の紋章が刻まれたカイトシールドが左腕に、そして穂先に聖なる光を宿した白銀のランスが右手に、それぞれ光の中から実体化して握られた。
彼女の背中からは、隠していた純白の翼が大きく広がり、神々しいオーラを放っている。
数瞬の後、そこに立っていたのは、先程まで怯えていた少女ではない。
白銀の聖鎧に身を包み、ランスと盾を構え、背には光り輝く翼を広げた、美しくも勇壮な「戦う天使」――聖騎士エルミナの真の姿だった。
普段の柔らかな雰囲気は消え、その瞳には邪悪を許さぬ強い意志と、聖なる使命感が宿っている。
「これが……天使族の聖騎士……!」
デュラスは、目の前で起こった「変身」と、そこから放たれる圧倒的な神気に、魔族として本能的な警戒心を覚えながらも、その神々しいまでの美しさには言葉を失っていた。
「エルミナさん……カッコいい……!」
フィリアは、畏敬と憧れの入り混じった表情で、輝くエルミナの姿を見つめている。
真守もまた、呆然とその光景を見守っていた。
(なんだこれ……リアル変身ヒーロー、いやヒロインかよ……!)
「――アルニア村を脅かす不浄なる者たちよ!この聖騎士エルミナが、我が主の御名において、貴方たちの邪悪を浄化します!」
エルミナはランスを構え、リザードマンたちが迫りくる西の森の方向を鋭く睨みつけた。その声は、先程までの弱々しさが嘘のように、凛として訓練場に響き渡った。
アルニア村の西側、森との境界線から、ついにリザードマンたちの雄叫びと、武器のぶつかり合う音が激しくなってきた。
戦端は、もう開かれている。
真守、フィリア、そして聖騎士としての姿を現したエルミナ。
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