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第二章 神竜の守護者
EP 55
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聖騎士の求婚、乙女たちの逆襲、そして朴念仁
二階から駆け下りてきたフィリアとエルミナの、鬼気迫る「ちょっと待った!」コール。
しかし、聖騎士団長ヴァルキュリアは、その程度のことで動じる女性ではなかった。彼女は、二人の少女を一瞥すると、ふわりと、そしてどこか勝ち誇ったように微笑んだ。
「あら?エルミナに、フィリアさん。どうしたのかしら、そんなに慌てて。もしかして、このわたくしとマモル様の、輝かしい門出を、祝福しに来てくださったのかしら?」
その言葉は、あまりにも自然に、そして当然のように、マモルとの婚約が成立したかのように語られた。
「ち、違いますよぉぉぉっ!!」
エルミナの、悲鳴に近い絶叫がリビングに響く。
「なんで!どうしてマモルとヴァルキュリア様が、くっつく事になってるのぉぉっ!?」
フィリアも、涙目でマモルに詰め寄った。
ヴァルキュリアは、そんな二人を、まるで道理の分からない子供でも見るかのように、優雅に諭す。
「あらあら。マモル様は、わたくしがこれまでの永い人生で出会った、どの殿方よりも、強く、優しく、そして素晴らしい御方ですわ。そんな素敵な御方に、一人の女性として惹かれるのは、当然のこと。大人と大人が、お付き合いをするのに、あなた方に許可を頂く必要はなくてよ?」
「い、いや、だから俺は、まだ何にも答えてなくて、その……!」
マモルは必死に弁解しようとするが、その言葉は、ヴァルキュリアの次の行動によって、完全に封じられた。
ヴァルキュリアの、美しい翠色の瞳が、みるみるうちに潤んでいく。そして、一粒の涙が、その白い頬を伝った。
「……マモル様!?」彼女は、震える声で言った。「わたくしの、どこかに、何かご不満でもありますの!?このヴァルキュリア、天使族最強と謳われる力も、神王様にも認められたこの美貌も、全てを貴方様に捧げる覚悟がありますのよ!」
「ぐっ……!」
(うわあああ、俺、昔から女の人の涙には弱いんだよなぁ……!)
マモルは、内心で頭を抱えた。
「ま、ま、まずはお友達から、っていうのは、どう、だろうか……?」
マモルが、必死の思いで絞り出した、あまりにも平凡で、そして最悪の妥協案。
その言葉に、ヴァルキュリアの表情が、ぱあっと輝いた。
「――分かりましたわ!」
彼女は、マモルの言葉を「交際期間ゼロ日での結婚は時期尚早、まずはお互いを知ることから始めましょう」という、非常に前向きな意思表示だと、完璧に誤解した。
「さすがはマモル様!思慮深い!では、わたくし、今日からこのお家で、花嫁修業をさせていただきます!お料理、お洗濯、お掃除、全て完璧にこなしてご覧にいれますわ!」
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
マモルの絶叫。
そして、次の瞬間。
「「いってえええええええええっ!!」」
彼の両足の甲を、フィリアとエルミナの小さな、しかし心の底からの怒りが込められた踵が、寸分の狂いもなく、同時に踏みつけていた。
その地獄絵図を、ソファに座るデュラスが、静かに、そして優雅に、ワイングラスを傾けながら眺めていた。
(……だから貴様は、朴念仁(ぼくねんじん)なのだ、マモル)
こうして、マモルの「マイホーム」に、三人目の、そして最も手強い(色々な意味で)居候が、誕生してしまった。
彼の、平穏なスローライフへの道は、もはや完全に、跡形もなく消え去ったと言っていいだろう。
そして、その原因のほとんどが、彼自身の人の好さと、致命的なまでの恋愛経験の無さにあることを、本人はまだ、全く理解していなかった。
二階から駆け下りてきたフィリアとエルミナの、鬼気迫る「ちょっと待った!」コール。
しかし、聖騎士団長ヴァルキュリアは、その程度のことで動じる女性ではなかった。彼女は、二人の少女を一瞥すると、ふわりと、そしてどこか勝ち誇ったように微笑んだ。
「あら?エルミナに、フィリアさん。どうしたのかしら、そんなに慌てて。もしかして、このわたくしとマモル様の、輝かしい門出を、祝福しに来てくださったのかしら?」
その言葉は、あまりにも自然に、そして当然のように、マモルとの婚約が成立したかのように語られた。
「ち、違いますよぉぉぉっ!!」
エルミナの、悲鳴に近い絶叫がリビングに響く。
「なんで!どうしてマモルとヴァルキュリア様が、くっつく事になってるのぉぉっ!?」
フィリアも、涙目でマモルに詰め寄った。
ヴァルキュリアは、そんな二人を、まるで道理の分からない子供でも見るかのように、優雅に諭す。
「あらあら。マモル様は、わたくしがこれまでの永い人生で出会った、どの殿方よりも、強く、優しく、そして素晴らしい御方ですわ。そんな素敵な御方に、一人の女性として惹かれるのは、当然のこと。大人と大人が、お付き合いをするのに、あなた方に許可を頂く必要はなくてよ?」
「い、いや、だから俺は、まだ何にも答えてなくて、その……!」
マモルは必死に弁解しようとするが、その言葉は、ヴァルキュリアの次の行動によって、完全に封じられた。
ヴァルキュリアの、美しい翠色の瞳が、みるみるうちに潤んでいく。そして、一粒の涙が、その白い頬を伝った。
「……マモル様!?」彼女は、震える声で言った。「わたくしの、どこかに、何かご不満でもありますの!?このヴァルキュリア、天使族最強と謳われる力も、神王様にも認められたこの美貌も、全てを貴方様に捧げる覚悟がありますのよ!」
「ぐっ……!」
(うわあああ、俺、昔から女の人の涙には弱いんだよなぁ……!)
マモルは、内心で頭を抱えた。
「ま、ま、まずはお友達から、っていうのは、どう、だろうか……?」
マモルが、必死の思いで絞り出した、あまりにも平凡で、そして最悪の妥協案。
その言葉に、ヴァルキュリアの表情が、ぱあっと輝いた。
「――分かりましたわ!」
彼女は、マモルの言葉を「交際期間ゼロ日での結婚は時期尚早、まずはお互いを知ることから始めましょう」という、非常に前向きな意思表示だと、完璧に誤解した。
「さすがはマモル様!思慮深い!では、わたくし、今日からこのお家で、花嫁修業をさせていただきます!お料理、お洗濯、お掃除、全て完璧にこなしてご覧にいれますわ!」
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
マモルの絶叫。
そして、次の瞬間。
「「いってえええええええええっ!!」」
彼の両足の甲を、フィリアとエルミナの小さな、しかし心の底からの怒りが込められた踵が、寸分の狂いもなく、同時に踏みつけていた。
その地獄絵図を、ソファに座るデュラスが、静かに、そして優雅に、ワイングラスを傾けながら眺めていた。
(……だから貴様は、朴念仁(ぼくねんじん)なのだ、マモル)
こうして、マモルの「マイホーム」に、三人目の、そして最も手強い(色々な意味で)居候が、誕生してしまった。
彼の、平穏なスローライフへの道は、もはや完全に、跡形もなく消え去ったと言っていいだろう。
そして、その原因のほとんどが、彼自身の人の好さと、致命的なまでの恋愛経験の無さにあることを、本人はまだ、全く理解していなかった。
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