35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一

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EP 24

真守の家のリビング。
外はダンジョン特需の喧騒と夏の暑さが入り混じっているが、室内はエアコンのおかげで天国のように涼しい。
​「……ふむ。涼しい。やはりこの『エアコン』という魔道具は至宝だな」
​デュラスがソファでくつろぎながら、満足げに呟く。
真守はそのエアコンの送風口を見つめながら、ふと口を開いた。
​「ねぇ、デュラス。……この世界の技術で、クーラーって作れないのかな?」
​「何?」
​デュラスが怪訝な顔をする。
真守は身を乗り出し、説明を始めた。
​「いや、このエアコンみたいな完全な機械は無理でも、理屈は応用できるんじゃないかと思ってさ。クーラーの原理は『気化熱』だ。液体が気体になる時に熱を奪う現象を利用している」
​「キカネツ……? 難しい言葉だな」
​フィリアとエルミナが首を傾げる。
​「簡単に言えば、濡れた肌に風が当たると涼しいだろ? あれと同じだ。電気の代わりに『魔力』を、コンプレッサーの代わりに『風魔法』と『氷魔法』の魔石を使えば、似たような物は作れるんじゃないか?」
​真守は続けた。
​「俺の世界の昔は、暑い時にはデカい氷を家庭に売って、それを箱に入れて冷やしてたんだ。『冷蔵庫』の前身だな。だから、完全なエアコンじゃなくても、氷魔法を使った『保冷庫』や、風を送る『冷風機』なら、ドワーフの技術と魔法で作れるはずだ」
​真守の目は、エンジニアのような輝きを帯びていた。
​「でも、急に何で?」
​フィリアが尋ねる。
今の生活には、真守のスキルで出した家電がある。わざわざ作る必要はないはずだ。
​「うんうん、マモル様の家は快適ですもの」
​エルミナもポテチを食べながら同意する。
真守はニヤリと笑い、デュラスを見た。
​「さっきの話の続きだよ。俺が国に目をつけられても『打たれない』為には……『出過ぎた杭』になる為にはどうするか」
​真守は拳を握った。
​「俺を中心とした、代わりの利かない『経済網』を作ればいいと思うんだ」
​「……ほう?」
​デュラスの目が鋭く光る。
​「この暑い世界で、『スイッチ一つで涼しくなる道具』を売り出す。貴族や王族、金持ち商人にバラ撒くんだ。メンテナンスや魔石の供給を含めて、俺(と仲間たち)がいないと維持できないシステムにする」
​もし、真守を拘束すれば、国中のクーラーが止まる。
一度知ってしまった「涼しさ」を奪われることを、権力者たちは何より恐れるだろう。
​「それなら……国も簡単には拘束したりはしないな。手出しもしにくくなる。むしろ、マモルを保護して機嫌を取ろうとするはずだ。国も潤うしな」
​デュラスが感心したように頷く。
​「この快適さを知れば……誰も抗えなくなるわね。特に、贅沢に慣れた貴族様たちは」
​フィリアがエアコンの風を浴びながら、恐ろしい事実に気づいたように言った。
夏の暑い盛りに、キンキンに冷えた部屋を知ってしまったら、もう団扇(うちわ)の生活には戻れない。それはある意味、麻薬以上の依存性を持つ。
​「なるほど~! 私ももう、この涼しいお部屋なしでは生きていけません~!」
​エルミナがダメになった例として挙手する。
​「ククク……。実に面白い。人間を堕落させて支配するとはな。魔族が好む『悪魔的発想』だ」
​デュラスは楽しそうに笑い、指を鳴らした。
​「いいだろう、乗ったぞ兄弟。その計画、ワイズ皇国の技術者も協力させよう。……ただし、最初の試作品は私の部屋に設置するのが条件だがな」
​「交渉成立だ。ガンツ親父にも話を通さないとな」
​真守は立ち上がった。
ただの便利屋で終わるつもりはない。
技術と経済で世界をハッキングする。そのための「道」が見えてきた。
​「よし、行こう! 『アルニア冷熱工業(仮)』の設立だ!」
​真守たちは新たな野望――世界征服ならぬ『世界冷却計画』に向けて動き出した。
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