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第二章 勇者魔王公爵
EP 5
『東京計画と、執事の血圧上昇』
「マモル公爵閣下ーッ!!」
青空教室に、悲痛な叫びが響き渡った。
エドガーはチョークまみれのマモルに詰め寄ると、その肩を掴んで揺さぶった。
「貴方は? ……あ、さっきの」
「エドガーと申します! 国から派遣された筆頭家令です! 公爵とあろう御方が、何故このような……子供の世話などなさっているのですか!?」
エドガーの剣幕に、子供たちがキョトンとしている。マモルは困ったように笑い、黒板消しをパンパンと叩いた。
「いや~、俺、もともと教師だからさ。これが一番落ち着くんだよ」
「きょ、教師……!? 公爵が、い、一介の……?」
「うん。だから執務とかよく分からないし」
「あが……あががが……ッ!」
エドガーは胸を押さえ、白目を剥いてプルプルと震え出した。どうやら血管という血管が沸騰しかけているようだ。
「お、おい大丈夫か!? ……よし、皆! 今日はここまでだ! きちんと宿題済ませるんだぞ~」
「は~い、さようならマモル先生!」
子供たちが元気に解散していく中、マモルは青ざめた執事を支え、自宅へと向かうことになった。
***
「……な、何ですとおおお!?」
マモルの自宅、そのリビングに入った瞬間、復活したはずのエドガーが再び絶叫した。
彼の目の前には、異世界の技術体系を無視した空間が広がっていた。
ふかふかのソファ、見たこともない透明なガラス(窓)、空気を快適に保つ謎の箱(エアコン)、そして部屋全体を包む柔らかな照明。
「こ、このキラキラした部屋は一体……!? 王宮の貴賓室より洗練されているではありませんか!」
その反応を見て、フィリアがお茶を淹れながらクスクスと笑う。
「ふふ、誰もが通る道ね」
「えぇ。わたくしも最初は驚きましたわ」
エルミナも同意して頷く。この家の居心地の良さは、一種の精神攻撃に近い。
「さて……」
新聞を畳んだデュラスが、呆然とするエドガーを現実に引き戻すように声をかけた。
「興奮するのも構わないが、話を進めないとな」
「は、話……?」
「公爵領の整備だ。マモル、お前はこの家に住まい続けるのか? 公爵としての機能を持たせるには、この家はあまりに……プライベート過ぎる」
デュラスの指摘に、マモルはソファに深く沈み込みながら考えた。
「んー、そうだね。俺はこの家を『私邸』にしたいな。仕事とプライベートは分けたいし。仕事する時は、城みたいな所ですれば良いんじゃないかな?」
「城、ですか……」
エドガーがメモ帳を取り出す。「公爵城の建設」と書き込もうとしたその時、マモルがテーブルの上に置いてあった薄い板――ノートパソコンを開いた。
「どうせ建てるなら、機能的なのがいいよね。えっと、ライブラリから……」
パァアッ……
画面が発光し、そこに精緻な城塞や都市の画像が次々と映し出された。
「な、ななな、何というユニークスキルか!? こ、これは『神の書物』!?」
エドガーの手が震える。光る板の中に、無限の知識が詰まっているのだ。
「あ、ガンツさん。ちょっとこれ見てよ」
いつの間にか部屋に入ってきていたガンツが、画面を覗き込む。
「……! おいおい、なんだこりゃあ……!」
マモルが表示していたのは、日本の城郭建築の図面や、現代都市の区画整理に関する専門書だった。さらに、高層ビルが立ち並ぶ東京の夜景まで。
「ん~、詳しい事は分からないけどさ。こんな領内を目指すべきなんだろうな。日本みたいな都市にして……そう、ここに『東京』を作ってみたいなって」
マモルは何気なく言った。
だが、その画像を見た技術者たちの目は、燃え上がる溶鉱炉のように熱くなっていた。
「……へっ、へへへ。面白い」
ガンツがニヤリと笑い、その太い腕を鳴らした。
「見たこともねぇ構造だ。だが、理に適ってやがる。このガラスの塔も、五層の天守閣も……全部俺に作らせろ。いや、作らなきゃドワーフの名折れだ!」
「え、全部?」
「任せとけ! お前の頭の中にある『トウキョウ』とやら、この地に再現してやるぜ!」
「さ、早速予算と資材の計算を! あぁ、胃が痛いですが、胸が高鳴りますぞ!」
エドガーもまた、未知の文化(とマモルの無茶振り)に魅入られたように叫んだ。
マモルの「仕事場」作りは、いつの間にか異世界に現代都市を再現する一大プロジェクトへと変貌しようとしていた。
「マモル公爵閣下ーッ!!」
青空教室に、悲痛な叫びが響き渡った。
エドガーはチョークまみれのマモルに詰め寄ると、その肩を掴んで揺さぶった。
「貴方は? ……あ、さっきの」
「エドガーと申します! 国から派遣された筆頭家令です! 公爵とあろう御方が、何故このような……子供の世話などなさっているのですか!?」
エドガーの剣幕に、子供たちがキョトンとしている。マモルは困ったように笑い、黒板消しをパンパンと叩いた。
「いや~、俺、もともと教師だからさ。これが一番落ち着くんだよ」
「きょ、教師……!? 公爵が、い、一介の……?」
「うん。だから執務とかよく分からないし」
「あが……あががが……ッ!」
エドガーは胸を押さえ、白目を剥いてプルプルと震え出した。どうやら血管という血管が沸騰しかけているようだ。
「お、おい大丈夫か!? ……よし、皆! 今日はここまでだ! きちんと宿題済ませるんだぞ~」
「は~い、さようならマモル先生!」
子供たちが元気に解散していく中、マモルは青ざめた執事を支え、自宅へと向かうことになった。
***
「……な、何ですとおおお!?」
マモルの自宅、そのリビングに入った瞬間、復活したはずのエドガーが再び絶叫した。
彼の目の前には、異世界の技術体系を無視した空間が広がっていた。
ふかふかのソファ、見たこともない透明なガラス(窓)、空気を快適に保つ謎の箱(エアコン)、そして部屋全体を包む柔らかな照明。
「こ、このキラキラした部屋は一体……!? 王宮の貴賓室より洗練されているではありませんか!」
その反応を見て、フィリアがお茶を淹れながらクスクスと笑う。
「ふふ、誰もが通る道ね」
「えぇ。わたくしも最初は驚きましたわ」
エルミナも同意して頷く。この家の居心地の良さは、一種の精神攻撃に近い。
「さて……」
新聞を畳んだデュラスが、呆然とするエドガーを現実に引き戻すように声をかけた。
「興奮するのも構わないが、話を進めないとな」
「は、話……?」
「公爵領の整備だ。マモル、お前はこの家に住まい続けるのか? 公爵としての機能を持たせるには、この家はあまりに……プライベート過ぎる」
デュラスの指摘に、マモルはソファに深く沈み込みながら考えた。
「んー、そうだね。俺はこの家を『私邸』にしたいな。仕事とプライベートは分けたいし。仕事する時は、城みたいな所ですれば良いんじゃないかな?」
「城、ですか……」
エドガーがメモ帳を取り出す。「公爵城の建設」と書き込もうとしたその時、マモルがテーブルの上に置いてあった薄い板――ノートパソコンを開いた。
「どうせ建てるなら、機能的なのがいいよね。えっと、ライブラリから……」
パァアッ……
画面が発光し、そこに精緻な城塞や都市の画像が次々と映し出された。
「な、ななな、何というユニークスキルか!? こ、これは『神の書物』!?」
エドガーの手が震える。光る板の中に、無限の知識が詰まっているのだ。
「あ、ガンツさん。ちょっとこれ見てよ」
いつの間にか部屋に入ってきていたガンツが、画面を覗き込む。
「……! おいおい、なんだこりゃあ……!」
マモルが表示していたのは、日本の城郭建築の図面や、現代都市の区画整理に関する専門書だった。さらに、高層ビルが立ち並ぶ東京の夜景まで。
「ん~、詳しい事は分からないけどさ。こんな領内を目指すべきなんだろうな。日本みたいな都市にして……そう、ここに『東京』を作ってみたいなって」
マモルは何気なく言った。
だが、その画像を見た技術者たちの目は、燃え上がる溶鉱炉のように熱くなっていた。
「……へっ、へへへ。面白い」
ガンツがニヤリと笑い、その太い腕を鳴らした。
「見たこともねぇ構造だ。だが、理に適ってやがる。このガラスの塔も、五層の天守閣も……全部俺に作らせろ。いや、作らなきゃドワーフの名折れだ!」
「え、全部?」
「任せとけ! お前の頭の中にある『トウキョウ』とやら、この地に再現してやるぜ!」
「さ、早速予算と資材の計算を! あぁ、胃が痛いですが、胸が高鳴りますぞ!」
エドガーもまた、未知の文化(とマモルの無茶振り)に魅入られたように叫んだ。
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