68 / 134
第二章 勇者魔王公爵
EP 9
『紅蓮の若竜、都会へ行く』
活火山の中腹に位置する、険しい岩山とマグマに囲まれた「竜人の里」。
その熱気をも凌駕する怒号が、族長の家から響き渡った。
「親父ぃ! もう我慢ならねぇ!」
ドカァン! と扉を蹴破って出てきたのは、燃えるような赤髪の巨漢、イグニスだ。
彼は背中の巨斧『アグニ』を担ぎ直し、見送りに(というか、寝転びながら顔だけ出した)父・ドラグニールを睨みつけた。
「俺様はこんな田舎で燻ってるような漢じゃねぇんだよ! 毎日毎日、岩と睨めっこなんて飽き飽きだ! 俺は人間の国へ行って、一旗上げてくるわ!」
「ま、またんか、お前……。外の世界は……むにゃむにゃ……」
ドラグニールは煎餅をかじりながら、やる気のない手つきで制止しようとする。
(……あやつ、まさかあのマモルの所へ行く気ではないだろうな? 儂のコタツライフがバレたら面倒なことに……)
だが、息子の決意は固かった。
「あばよ! 最強の伝説はここから始まるんだ!」
イグニスは翼を広げ、里の出口にある巨大な「竜人の門」へと向かった。
そこには、筋骨隆々の門番たちが立ち塞がっていた。
「待て、若。ここを通りたくば、我らを倒してから行け。それが掟だ」
「族長の息子といえど、容赦はせんぞ!」
歴戦の戦士たちが武器を構える。通常ならば、ここで数時間の激闘が繰り広げられるはずだった。
しかし、今のイグニスは「都会への憧れ」と「野心」で沸点に達していた。
「うるせぇ! ちんたらやってられるかぁッ!!」
イグニスは空高く跳躍した。
全身から紅蓮の炎が噴き出し、巨斧が太陽のように輝く。
「必殺! イグニス・ブレイクッ!!!」
ズドオオオオオオオオンッ!!
「「ぎゃあああああああ~……!」」
門番たちは遥か彼方の空へ、キラーンと輝く星となって消えていった。
地面には巨大なクレーターだけが残り、門は消滅していた。
「へっ、口ほどにもねぇ!」
イグニスは鼻を鳴らすと、そのまま音速で空へと飛び立った。
***
数日後。
大陸を横断し、噂の「新興国」の上空へ差し掛かったイグニスは、眼下の光景に言葉を失った。
「……な、なんだぁ、ここはあぁ!?」
そこにあるはずの「人間の粗末な村」はどこにもなかった。
代わりに広がっていたのは、夜だというのに昼間のように輝く魔導灯の光、天を突くガラス張りの摩天楼、そして整備されたアスファルトの道路を走る謎の鉄箱(※軽トラや魔導車)。
「ピ、ピカピカじゃねぇか……! 竜の宝物庫より輝いてやがる!」
イグニスはおずおずと街外れに着陸した。
足元の地面(舗装路)は平らで硬く、泥一つついていない。通りすがる人々は見たこともない上質な服を着て、幸せそうな顔をしている。
「す、すげぇ……これが人間の国か? 俺の知ってる知識と違うぞ……」
キョロキョロと挙動不審になりながら大通りを歩くイグニス。
だが、腹の虫がグゥと鳴った。勢いで飛び出したため、路銀も食料もない。
「と、とりあえず宿賃と飯代を稼がないとな。……そうだ、冒険者ギルドだ! 俺様の実力なら、Sランク依頼も瞬殺だろ!」
イグニスは「ギルド」と書かれた看板(ネオンサイン)を見つけ、意気揚々とその建物に向かった。
ウィーン。
「うおっ!? と、扉が勝手に開きやがった!?」
自動ドアにビビりながらも、彼は肩を怒らせて中へと入っていく。
そこが、ただのギルドではなく、タッチパネル式受付システムを導入した「総合人材派遣センター・アルニア支部」だとは知らずに。
「たのもう! 俺様はイグニス! 一番強い魔物を狩らせろ! ……あと、美味い飯屋を教えろ!」
田舎の若竜の叫びが、洗練されたロビーに虚しく響き渡るのだった。
活火山の中腹に位置する、険しい岩山とマグマに囲まれた「竜人の里」。
その熱気をも凌駕する怒号が、族長の家から響き渡った。
「親父ぃ! もう我慢ならねぇ!」
ドカァン! と扉を蹴破って出てきたのは、燃えるような赤髪の巨漢、イグニスだ。
彼は背中の巨斧『アグニ』を担ぎ直し、見送りに(というか、寝転びながら顔だけ出した)父・ドラグニールを睨みつけた。
「俺様はこんな田舎で燻ってるような漢じゃねぇんだよ! 毎日毎日、岩と睨めっこなんて飽き飽きだ! 俺は人間の国へ行って、一旗上げてくるわ!」
「ま、またんか、お前……。外の世界は……むにゃむにゃ……」
ドラグニールは煎餅をかじりながら、やる気のない手つきで制止しようとする。
(……あやつ、まさかあのマモルの所へ行く気ではないだろうな? 儂のコタツライフがバレたら面倒なことに……)
だが、息子の決意は固かった。
「あばよ! 最強の伝説はここから始まるんだ!」
イグニスは翼を広げ、里の出口にある巨大な「竜人の門」へと向かった。
そこには、筋骨隆々の門番たちが立ち塞がっていた。
「待て、若。ここを通りたくば、我らを倒してから行け。それが掟だ」
「族長の息子といえど、容赦はせんぞ!」
歴戦の戦士たちが武器を構える。通常ならば、ここで数時間の激闘が繰り広げられるはずだった。
しかし、今のイグニスは「都会への憧れ」と「野心」で沸点に達していた。
「うるせぇ! ちんたらやってられるかぁッ!!」
イグニスは空高く跳躍した。
全身から紅蓮の炎が噴き出し、巨斧が太陽のように輝く。
「必殺! イグニス・ブレイクッ!!!」
ズドオオオオオオオオンッ!!
「「ぎゃあああああああ~……!」」
門番たちは遥か彼方の空へ、キラーンと輝く星となって消えていった。
地面には巨大なクレーターだけが残り、門は消滅していた。
「へっ、口ほどにもねぇ!」
イグニスは鼻を鳴らすと、そのまま音速で空へと飛び立った。
***
数日後。
大陸を横断し、噂の「新興国」の上空へ差し掛かったイグニスは、眼下の光景に言葉を失った。
「……な、なんだぁ、ここはあぁ!?」
そこにあるはずの「人間の粗末な村」はどこにもなかった。
代わりに広がっていたのは、夜だというのに昼間のように輝く魔導灯の光、天を突くガラス張りの摩天楼、そして整備されたアスファルトの道路を走る謎の鉄箱(※軽トラや魔導車)。
「ピ、ピカピカじゃねぇか……! 竜の宝物庫より輝いてやがる!」
イグニスはおずおずと街外れに着陸した。
足元の地面(舗装路)は平らで硬く、泥一つついていない。通りすがる人々は見たこともない上質な服を着て、幸せそうな顔をしている。
「す、すげぇ……これが人間の国か? 俺の知ってる知識と違うぞ……」
キョロキョロと挙動不審になりながら大通りを歩くイグニス。
だが、腹の虫がグゥと鳴った。勢いで飛び出したため、路銀も食料もない。
「と、とりあえず宿賃と飯代を稼がないとな。……そうだ、冒険者ギルドだ! 俺様の実力なら、Sランク依頼も瞬殺だろ!」
イグニスは「ギルド」と書かれた看板(ネオンサイン)を見つけ、意気揚々とその建物に向かった。
ウィーン。
「うおっ!? と、扉が勝手に開きやがった!?」
自動ドアにビビりながらも、彼は肩を怒らせて中へと入っていく。
そこが、ただのギルドではなく、タッチパネル式受付システムを導入した「総合人材派遣センター・アルニア支部」だとは知らずに。
「たのもう! 俺様はイグニス! 一番強い魔物を狩らせろ! ……あと、美味い飯屋を教えろ!」
田舎の若竜の叫びが、洗練されたロビーに虚しく響き渡るのだった。
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生幼子は生きのびたい
えぞぎんぎつね
ファンタジー
大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。
だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。
神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。
たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。
一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。
※ネオページ、カクヨムにも掲載しています
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。