35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一

文字の大きさ
81 / 134
第二章 勇者魔王公爵

EP 22

『決戦の朝、あるいはゲテモノグルメツアー』
​魔界の最深部、常闇に包まれた魔王城。
その玉座の間で、魔王サルバロスの高笑いが轟いていた。
​「フハハハハ! イガロスよ、聞け! 俺に『タイマン』で挑む奴なんて、この数百年居たか? いや、居ない!」
​サルバロスは二日酔いの頭痛も忘れ、子供のように目を輝かせている。
その足元に跪くのは、魔王軍参謀イガロスだ。彼は主君の興奮を「怒り」と勘違いし、震えながら進言した。
​「ま、全く……何と身の程知らずの人間でしょう。魔王様の手を煩わせるまでもございません。この全魔王軍を投入し、塵にしましょう」
​イガロスの目には、残虐な光が宿っていた。人間如きに魔王が直接手を下すなど、魔族の恥。数の暴力ですり潰すのが定石だ。
​しかし。
​「戯けがぁッ!!」
​ドォォォォン!!
サルバロスの怒声と共に、衝撃波がイガロスを吹き飛ばした。
​「も、申しわけ有りませぬッ!?」
​「貴様は何も分かっていない! 俺はな、この時を待っていたんだ」
​サルバロスは玉座から立ち上がり、拳を握りしめた。
​「魔族だの、天使だの、竜人だの……そんな種族の柵(しがらみ)や政治に気を取られず、ただ純粋に『個』としての闘いを楽しみたかったんだ! あのマモルという男は、それを俺にくれると言ったのだ!」
​「は、ははぁ……!」
​「邪魔をする奴は、例え部下でも消し炭にする。……マモルか。奴なら俺を心の底から楽しませてくれるはずだ」
​魔王は武者震いし、マントを翻して決闘場へと向かった。
​***
​一方、アルニア公爵領・マモル邸の玄関。
そこには、これから「近所のコンビニに行く」くらいの軽装で靴を履くマモルの姿があった。
​「じゃあ……魔王退治に行ってくるか」
​「行ってらっしゃーい! お土産よろしくね!」
​見送るフィリアの第一声は、当然「食」だった。
​「ねぇねぇ、魔界の美味しい物って何かな~? スイーツ?」
​フィリアの問いに、元魔将軍デュラスが得意げに腕を組んだ。
​「ふっ、魔界と言えば、やはり『獄炎トカゲの熟成揚げ』だろう」
​「と、トカゲ……?」
​「ああ。魔界の沼地で捕れたトカゲを、一ヶ月ほど樽の中で腐……いや、熟成させてな。それに地獄の激辛香辛料をたっぷりとまぶして、高温の油でカリッと揚げるんだ」
​デュラスは恍惚とした表情で語る。
​「噛めば『ジュワッ』と独特の酸味と発酵臭が広がり、その後に舌が焼けるような辛味が来る。……あれこそ至高の珍味だ」
​一瞬、玄関の空気が凍りついた。
エルミナの美しい顔が引きつり、額に冷や汗が流れる。
​「わ、わ~い……お、美味しそうな響き……ですわね……(オェッ)」
​「ん? エルミナ、顔色が悪いぞ? 楽しみすぎて貧血か?」
​「失礼な奴等だ。見た目は少々グロテスクだが、味わい深いのに」
​デュラスは心外だとばかりに肩をすくめた。
マモルは苦笑いしながら、三節根(木製・闘気コーティング済み)を腰に差した。
​「ま、何事も経験だよ。……よし、行こうか! みんな!」
​「おー!」
「はいですわ(絶対に食べませんけど)!」
「フン、案内しよう」
​マモル、フィリア、エルミナ、そしてデュラス。
一行は転移門をくぐり、サルバロスが待つ魔界の『大決闘場』へと足を踏み入れた。
​そこには、数万の魔族の観衆と、腕組みをして仁王立ちする魔王の姿があった。
​「待っていたぞ、マモルゥゥ!!」
​「お待たせ。……さぁ、始めようか」
​ゴングの代わりに、地獄の業火が燃え上がった。
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。