35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一

文字の大きさ
90 / 134
第二章 勇者魔王公爵

EP 31

『音速の流星脚と、戦闘後のスーパー銭湯』
​鬱蒼とした森の中。
鳥のさえずりをかき消すように、軽快なアップテンポのポップスが、キャルルのイヤホンから漏れ出していた。
​「さぁて……お仕事開始♪」
​彼女は魔導通信石に繋がれたワイヤレスイヤホンをトントンと叩き、ノイズキャンセリングをオンにした。
外界の雑音は消える。聞こえるのはビートと、自身の鋭敏な聴覚が捉える「敵の音」だけ。
​ヒュン、ヒュン。
愛用のダブルトンファーを指先でクルクルと回しながら、長い兎耳をピクリと動かす。
​(……北北東、距離300。重い足音、鼻息の荒さ……ビンゴ)
​「あっちね」
​キャルルは地面を蹴った。
次の瞬間、彼女の姿はブレて消えた。爆発的な加速で木々の間を縫うように疾走する。
​「みっけ」
​開けた岩場に出ると、そこには通常の個体の二倍はある、赤黒い皮膚のオーガ変異種がいた。
​「ガアアアアッ!!」
​侵入者に気づいたオーガが咆哮し、丸太のような巨大な棍棒を振り回す。風圧だけで木が折れるほどの剛力だ。
だが、キャルルはフフンと鼻で笑った。
​「吠えたって駄目なんだから♪」
​ブンッ!
振り下ろされた棍棒に対し、キャルルは逃げずにトンファーを斜めに構えて受け流した。
衝撃を殺し、さらに回転の勢いを利用して懐へ潜り込む。
​「月影流……破衝撃(はしょうげき)ッ!!」
​トンファーの先端に闘気を一点集中させ、オーガの脇腹へ突き込む。
​ボキボキィッ!!
​「ガ、ガア……ガアアア!?」
​肋骨が砕ける生々しい音が響き、オーガが苦悶の声を上げてたたらを踏む。
しかし、キャルルの攻撃はあくまでセットアップだ。
​「決めるわ!」
​彼女はトンファーを収納し、バク転で距離を取った。
そして、マモルマートで購入したお気に入りの安全靴のソールに仕込んだ、『雷竜石(らいりゅうせき)』のスイッチを入れる。
​バチバチバチッ……!
靴底から紫色の稲妻が迸り、キャルルの両足を包み込む。
​「行くよ……!」
​クラウチングスタートの構え。
筋肉が収縮し、限界までバネを溜める。
​「私は――音速を超える!!」
​ドォォンッ!!
​大気が悲鳴を上げた。
ソニックブーム(衝撃波)を置き去りにし、キャルルはマッハ1の壁を突破した。
紫電の矢となった彼女は、オーガの遥か頭上へと跳躍する。
​空中で身体を捻り、前方一回転。
遠心力、重力、闘気、そして雷撃。全てのエネルギーを右足の裏一点に収束させる。
背景には満月(の幻影)が浮かぶ。
​「でえええい!! 超電光流星脚(スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク)ッ!!」
​空から降る雷の流星。
オーガが顔を上げた時には、もう遅かった。
​ドガガガガアアアアアン!!!
​「ギィヤァァァァ……!?」
​閃光が弾け、オーガの顔面が陥没どころか崩壊する。
巨体は黒焦げになりながら、砲弾のように吹き飛び、岩盤にめり込んで絶命した。
​土煙が晴れると、そこには着地ポーズを決めたキャルルが涼しい顔で立っていた。
​「ふぅ。お~わり♪」
​彼女は靴の電気をオフにし、パンパンと服の埃を払った。
タイムはカップラーメンが出来上がるよりも早い。
​「ん~、ちょっと汗かいちゃった。帰ったら『マモルの湯(スーパー銭湯)』でサウナ入って帰ろっと」
​キャルルは鼻歌交じりに魔法ポーチを開き、巨大なオーガの死体をポンと収納した。
そして再びイヤホンの再生ボタンを押すと、軽快なステップで森を後にするのだった。
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。