35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一

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第二章 勇者魔王公爵

EP 37

『始祖竜の成長痛と、消滅した島』
​とある昼下がり。
マモルたちは、昨晩のゲーム大会の疲れを癒やすように、リビングでまどろんでいた。
​「……んぅ」
​マモルの膝の上で昼寝をしていた幼女、アルカが小さく唸った。
最初は寝言かと思ったが、次第に彼女の身体が小刻みに震えだす。
​「おい、アルカ? どうした? 怖い夢でも見たか?」
​マモルが頭を撫でようとした瞬間。
​カッ!!
​「うわっ!?」
​アルカの小さな身体から、直視できないほどの神々しい光が溢れ出した。
ただの魔力ではない。空間そのものが軋むような、圧倒的な「始祖」の力だ。
​「わ、わかん……ない……。あつい……からだが、あついよぉ……!」
​アルカが苦しげに胸を押さえる。体温計など一瞬で溶けそうな熱量だ。
​「た、大変! お熱!? お医者様を呼ばないと!」
​フィリアが慌てて救急箱を探す。
​「いや、これは病気じゃないだろ! 魔力暴走か!? ていうか竜だぞ、獣医師か!? いや、そんなんじゃなくて……!」
​マモルが混乱している間に、アルカの光は限界を超えた。
​「うぅ……だめ、でちゃう……! おうち、こわれちゃう……!」
​アルカはマモルの膝から飛び降りると、ふらつく足取りでテラスへと走った。
​「アルカ!?」
​彼女が庭に飛び出し、空を見上げた瞬間。
​ドオオオオオオオンッ!!
​光の柱が天を貫いた。
幼子のシルエットが、光の中で急激に膨張していく。
翼が広がり、鱗が形成され、その威容が世界を覆う。
​「グオオオオオオオオオッ!!」
​光が収まると、そこにはアルニア城よりも巨大な、白銀に輝く『神竜(完全体)』が顕現していた。
かつてドラグニールが「理を超越している」と評した、真の姿だ。
​『アツイ……! チカラガ……!!』
​神竜アルカは、体内に渦巻くエネルギーを逃がすため、海の方角へと首を向けた。
その口元に、恒星のような輝きが収束する。
​『ハァァァァァッ!!』
​放たれたのは、火炎でも雷撃でもない。
純粋な「破壊の光」による、究極のブレスだった。
​ヒュン……。
​音が消えた。
光線は水平線の彼方へ一直線に伸び、そこにあった岩礁の無人島に接触した。
​カッ!!!!
​視界が白で塗りつぶされる。
数秒後、遅れてやってきた衝撃波が、マモルの家の窓ガラスをビリビリと震わせた。
​「……」
「……」
​マモルたちが恐る恐る顔を上げると、海の上にはキノコ雲だけが残り、そこにあったはずの島は、影も形もなくなっていた。
地図から島が一つ消滅した瞬間だった。
​「な、なんて威力だ……」
​デュラスが戦慄してグラスを落とした。
​「次元が違う。あれに比べれば、我々魔族の魔法など子供の火遊びだ」
​「神……魔王……全てを凌駕する一撃ですわ」
​エルミナも顔面蒼白だ。あの光を受ければ、最高位天使といえど魂ごと蒸発していただろう。
​世界を終わらせかねない力の奔流。
しかし、ブレスを吐ききった神竜は、急速に縮んでいった。
​『はぁ、はぁ……もとに……もど……れ……』
​シュウゥゥゥ……。
光が収束し、庭には再び、ちょこんとした幼女の姿が戻っていた。
​「ア、アルカ……」
​マモルが庭へ駆け寄る。
アルカは肩で息をしていたが、振り返った顔はケロリとしていた。
​「うん! スッキリした! もう力を制御出来るよ! マモル~♡」
​「うわっと!」
​アルカは満面の笑みで飛びつき、マモルの首に抱きついた。
その体温は、もう熱くない。ただの温かい子供の体温だ。
​「びっくりしたぁ……。急におっきくなるんだもん」
「えへへ、ごめんね。なんかムズムズして、ドカーンってしたくなっちゃったの」
​「ムズムズで島を消し飛ばさないでくれ……」
​マモルはアルカを抱きしめ返しながら、背筋が凍る思いだった。
この腕の中にいるのは、世界最強の核弾頭だ。
育児の難易度が、また一つ(物理的に)上がったことを痛感するマモルだった。
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