35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一

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第二章 勇者魔王公爵

EP 38

『消えたドルノ島と、執事の気絶(ダウン)』
​翌朝。
爽やかな陽光が降り注ぐ中、マモルは出勤のためにアルニア公爵城の廊下を歩いていた。
​ただし、その歩みはいつもより重い。
右腕に、ぴったりと張り付く「重り」があるからだ。
​「マモル~♡ お城~♡」
​始祖竜アルカである。
昨日の「成長痛」を経て、彼女の見た目は幼児から、人間の5~6歳児くらいまで成長していた。しかし、甘えん坊な性格はそのままで、コアラのようにマモルの腕に絡みついている。
​執務室のドアを開けると、そこには既に死相を浮かべた筆頭家令エドガーが待っていた。
​「……おはようございます、マモル様」
​「おはよう、エドガー。顔色が悪いぞ?」
​「誰のせいですか……。……って、マ、マモル様? そ、そちらのアルカ様は? この前より……成長したような?」
​エドガーが眼鏡の位置を直す。明らかにサイズ感が変わっている。
​「あぁ、アルカだ。ちょっと大きくなったんだ。成長期みたいでさ」
​「せ、成長期? ……い、いや、今はそれよりも緊急事態です」
​エドガーはデスクに広げられた地図を指差した。その手は小刻みに震えている。
​「昨日……領地の沖合にあった無人島、『ドルノ島』が突如として消失したとの報告が入っております。津波観測計が異常数値を叩き出し、漁師たちは『海から太陽が昇った』と……」
​「あー……」
​マモルが気まずそうに視線を逸らす。
すると、腕の中のアルカが元気に手を挙げた。
​「あ! それ、私がやったの~! ごめんね、エドガー!」
​「…………は?」
​エドガーの思考が停止した。
島が消えた。私がやった。ごめんね。
三つの単語が繋がらない。
​「え、えっと……私がやったとは、ど、どういう意味で……?」
​エドガーはプルプルと震えながら聞き返した。
まさか、幼女のイタズラで島が消えるわけがない。比喩か何かだろう。そう信じたい。
​しかし、アルカは無邪気に窓際へと歩み寄った。
​「どういうって……こうやってやるの!」
​アルカは窓を開け、遥か彼方の水平線に向かって、小さく口を開けた。
まるで、シャボン玉を吹くような軽さで。
​『ぷっ』
​可愛らしい音と共に、極小の光弾が放たれた。
それは瞬時に水平線の彼方へ着弾し――。
​カッッッ!!!!
​ズドオオオオオオオオオオンッ!!!
​海面から巨大な水柱と爆炎が上がり、窓ガラスが衝撃波でガタガタと悲鳴を上げた。
新たな水蒸気爆発により、地図には載っていない岩礁がまた一つ、この世から消滅した。
​「……」
​静寂。
エドガーは、口をあんぐりと開けたまま、爆心地を見つめていた。
​アルカは振り返り、テヘッと舌を出して首を傾げた。
​「ごめんなちゃい♡」
​その破壊神の如き可愛さに、エドガーの精神(と胃袋)の許容量がついに限界を迎えた。
​「あ……ぅ……」
​ドサッ。
​エドガーは白目を剥き、糸が切れた操り人形のように床へ倒れ込んだ。完璧な気絶(ダウン)である。
​「あーあ、やっちゃった」
​マモルは倒れたエドガーを跨いで、自分のデスクへと向かった。
そして、積み上がった書類の山から、「地図の修正依頼書」と「被害状況確認書」を抜き取り、そっとエドガーの胸の上に置いた。
​「という事なんだ。……エドガー、目が覚めたら後処理頼むな」
​「むにゃ……魔王……サウナ……爪切り……」
​うわ言を呟く執事を残し、マモルとアルカは「おやつ休憩」へと向かうのだった。
アルニア公爵領の地図は、今日もまた書き換えられる運命にある。
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