100円ショップスキルで追放された俺、ラーメンと風呂で世界最強軍事国家を建国~S級美少女や神様が集まるけど、俺は平和に寝たいだけ~

月神世一

文字の大きさ
1 / 10

EP 1

しおりを挟む
国王はジャージがお好き
​「ズズズッ……ズゾゾゾッ、プハァ」
​ 静寂に包まれた広大な謁見の間。
 天井まで届く巨大な柱、最高級の石材で作られた床、そして深紅の絨毯。
 その最奥に鎮座する、黄金の玉座。
​ 本来ならば、威厳ある王が世界の行く末を案じて沈思黙考する場所だ。
​ だが、現在そこに座っている俺――佐藤太郎(さとう・たろう)の姿は、威厳とは程遠いものだった。
​ 着古したグレーのジャージ(上下セット)。
 足元はゴム製のサンダル(健康イボ付き)。
 そして手には、湯気を立てるカップラーメン(シーフード味)。
​「……うめぇ」
​ 俺は玉座の上であぐらをかきながら、最後の一滴までスープを飲み干した。
 ジャンクな塩分が、疲れた三十路の体に染み渡る。
​「陛下。スープが飛び跳ねております。王家の威信に関わりますので、もう少し上品にお召し上がりください」
​ 玉座の脇に控えていた侍従長が、呆れたような、それでいて諦めきったような声で言った。
​「堅いこと言うなよ。飯は豪快に食った方が美味いんだって」
「はぁ……。それで、また『アレ』をお使いになるのですか?」
「おう。食ったら口を拭かないとな」
​ 俺は空になったカップをサイドテーブル(という名のみかん箱)に置き、右手を軽くかざした。
​ 意識するのは、脳内にある巨大な店舗棚。
 全品税抜100円。日本の庶民の味方。
​ ――ユニークスキル【100円ショップ】、発動。
​『ポケットティッシュ(水に流せるタイプ)×1 購入完了』
『魔力(MP)消費:極小』
​ ポンッ、という間の抜けた音と共に、虚空からビニールに包まれたティッシュが出現し、俺の手のひらに落ちる。
​「うん、これこれ。やっぱ日本の紙は柔らかくていいわ」
​ 俺は鼻をチーンとかむと、それを魔法で焼却した。
​ 俺、佐藤太郎。30歳。日本人。
 かつてこの国とは別の王国に召喚され、「ハズレスキルだ」と罵られて荒野に追放された元・一般人だ。
​ だが、こっちの連中は分かっていなかった。
 日本の「100均」がどれだけオーパーツかということを。
​ 俺は荒野で、100円の種(F1種)を蒔いて野菜を育てた。
 100円の工具(ドライバー、ノコギリ)と、ブロック塀用のコンクリートブロックを出して家を建てた。
 100円の調味料(醤油、味噌、マヨネーズ)で、魔獣の肉を極上グルメに変えた。
​ そんなことを繰り返していたら、いつの間にか人が集まり、街ができ、軍隊ができ――
​「陛下、ご報告がございます」
​ 突然、重厚な扉が開き、伝令の兵士が駆け込んできた。
​「隣国、ガリア帝国より早馬です! 『我が国の騎士団長が、タロウ国のラーメン・二郎系のスープの虜になり、全軍の士気が崩壊しました。これ以上の抗戦は不可能、無条件降伏を申し入れる』とのこと!」
​「……は?」
​ 俺はティッシュを持ったまま固まった。
​「またかよ」
「またでございますな」
​ 侍従長が涼しい顔で頷く。
​ 俺が作ったこの国――『太郎国』は、今や世界最強の軍事国家と呼ばれているらしい。
​ 俺自身が開発した『必殺の矢(エクスプロージョン・アロー)』を搭載したバリスタ部隊。
 妻のライザが鍛え上げた、現代特殊部隊(SEALs)式の筋肉騎士団。
 妻のサリーが率いる、医学知識を持った魔法衛生兵団。
​ それに加えて、この『文化侵略』だ。
 近隣諸国の兵士や貴族たちは、我が国から輸出される豚骨スープ、ふかふかのタオル、そして温水洗浄便座の虜になり、剣を捨てて箸を持つようになった。
​「めんどくせぇなぁ……。領土とかいらないんだけど」
​ 俺はボサボサの頭をかきむしりながら、懐からタバコ(キャスター・ロング)を取り出した。
 これも【100円ショップ】……ではなく、俺が特別に再現させた嗜好品だ。
 紫煙をくゆらせ、窓の外を見る。
​ そこには、ファンタジー世界にはあるまじき光景が広がっていた。
​ 整然と区画整理された道路。
 立ち並ぶ鉄筋コンクリート造の団地とマンション。
 空を飛ぶ魔導飛行船の影。
 そして、街の至るところで輝く『タローソン(コンビニ)』と『スーパー銭湯・極楽の湯』のネオンサイン。
​ 異世界転生したはずが、気付けばそこは『ネオ・トーキョー』もどきになっていた。
​「俺はただ、美味い飯食って、広い風呂に入って、ふかふかの布団で寝たいだけなんだけどなぁ……」
​ 俺の呟きは、遠くから聞こえる『絶対無敵スパチャアイドル伝説!!』とかいう謎の路上ライブの歌声にかき消された。
 ……あそこ、また人魚のリーザが歌ってるのか? ちゃんと飯食ってるかあいつ。
​「とりあえず、降伏文書のサインは後でいい?」
「いけません。先方が『調印式の後は、ぜひ極楽の湯でサウナ外交を』と仰っております」
「……チッ。しゃーない、行くか」
​ 俺はサンダルをペタペタと鳴らしながら、玉座から立ち上がった。
​ 最強軍事国家の王の仕事は、今日も平和(とサウナ)を守るために続くのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...