万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜

月神世一

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EP 3

行き止まりの壁? いいえ、それは『最高純度ミスリル』の鉱脈です
​「あー……テステス。聞こえてますか? こちらはアビス第十階層。Fランク探索者の九条です」
​ 俺は震える手でスマホを構え、カメラに向かって語りかけた。
 画面の向こうには、今や1000人を超える視聴者がいるらしい。
 どういうバグかわからないが、トップページのおすすめに表示されているようだ。
​「俺は今、パーティに見捨てられて遭難中です。装備も奪われました。もしこの配信を見ている人がいたら、ギルドに通報をお願いします……」
​ 必死に訴えるが、コメント欄の流れが速すぎて読めない。
 それに、なんだか様子がおかしい。
​『なにこれ? 公式放送のジャック?』
『画質ヤバすぎだろ。8Kかよ』
『え、後ろにあるのキラーマンティスの死体? 10体くらいない?』
『CG乙。Fランクが深層で生きてるわけない』
『ネタ動画かよ解散』
​ 信じてもらえてない。
 そりゃそうだ。Fランクが深層で自撮りなんて、普通に考えれば合成かセットだろう。
​「くそっ、これじゃ助けが来ない!」
​ その時、遠くから新たな魔物の咆哮が聞こえた。
 ヤバい。血の匂いを嗅ぎつけて、他の魔物が寄ってきている。
 ここに留まるのは自殺行為だ。
​「と、とにかく移動します! 隠れられる場所を探さないと」
​ 俺はスマホを握りしめ、反対側の通路へ走り出した。
 だが、運命は残酷だ。
 曲がり角を抜けた先は――行き止まりだった。
​「嘘だろ……袋小路!?」
​ 背後からは、重い足音が近づいてくる。
 戻れば鉢合わせだ。
 前方には、黒曜石のように硬く、冷たいダンジョンの壁が立ちはだかっている。
 絶体絶命。
​(終わった……いや、待てよ)
​ 俺は壁を見つめた。
 ダンジョンの壁は「破壊不可オブジェクト」だと言われている。
 ダイナマイトを使っても傷一つ付かない、世界で最も硬い物質の一つ。
 だからこそ、迷宮は迷宮として成立している。
​ ――でも、俺の『解体』なら?
​「……構造があるなら、壊せるはずだ」
​ 俺は壁に手を当てた。
 硬度、密度、魔力結合。すべてが「素材」の情報として脳内に流れ込んでくる。
 さっきの空間(結界)よりも、ずっと単純で物理的だ。
​「邪魔なんだよ、どいてくれ!」
​ 魔力を込める。
 イメージするのは、壁という概念の「解体」。
 構成要素への還元。
​「――『解体』ッ!」
​ ズズズッ……ボガンッ!!
​ 轟音と共に、目の前の壁が崩れ去った。
 いや、崩れたのではない。
 壁を構成していた「成分」が分離し、その場に降り注いだのだ。
​ カランカランッ、と高い音を立てて積み上がったのは、銀色に輝く金属のインゴットと、美しい宝石のような結晶体。
​「えっ……穴が開いた?」
​ 壁の向こう側に、別の通路が見える。
 ショートカット成功だ。
 俺は安堵しつつ、足元に散らばった「元・壁」の残骸を拾い上げた。
​「なんだこれ。銀? いや、プラチナか?」
​ ずしりと重い。
 キラキラしていて綺麗だ。
 これなら、屑鉄屋に持っていけば数千円にはなるかもしれない。
​「ラッキー。帰りの電車賃くらいにはなるかな」
​ 俺は奪われたリュックがないので、ズボンのポケットにそれを詰め込んだ。
 ポケットがパンパンに膨らむ。重くてズボンがずり落ちそうだ。
​「よし、この穴から逃げよう」
​ 俺は穴をくぐり、安全そうな場所へと移動した。
 その背後で、スマホのコメント欄が発狂状態になっていることにも気づかずに。
​『は?』
『え?』
『ちょ、ま、待って待って』
『今、壁壊した? 素手で?』
『いやいやいや、あの輝き見ろよ!』
『あれ、ミスリルだろ!? しかも純度100%の「天銀」クラスじゃん!』
『壁の中からミスリルが出たぞおおお!』
『深層の壁ってミスリル含有してたのかよ! 初耳だぞ!』
『電車賃って言った? あれ1個で家建つぞwww』
『国家予算持ち歩いてて草』
​ 視聴者数:50,000人突破。
​ 画面の隅で、拡散されたURLから野次馬が雪崩れ込んでくる。
 タイトルは『【悲報】Fランク探索者、ダンジョンの壁を物理的に解体してミスリル鉱山を発見する』へと、勝手に書き換えられて拡散され始めていた。
感想 8

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