6 / 58
EP 6
【特定班】隣で苦戦してるパーティ、俺の荷物持ってませんか?
「よし、次は『翼』いってみようか」
俺はドラゴンに向けて指を鳴らした。
『解体』。
バサッ、という音と共に、ドラゴンの背中から巨大な翼膜が綺麗に剥がれ落ちる。
飛ぶ手段を失ったドラゴンは、もはや「大きなトカゲ」だ。
地面にへたり込み、涙目で俺を見上げている。
「ごめんな。でも、その翼膜、最高級のテント素材になるんだよ。野宿するとき欲しくてさ」
俺は剥ぎ取った素材をくるくると丸め、インベントリ代わりのポケット(四次元化しつつある)にねじ込んだ。
視聴者はもう、驚くのをやめていた。
『ドラゴンがかわいそうに見えてきた』
『主、鬼畜すぎて草』
『素材剥ぎ取りRTAかな?』
『【悲報】深淵の魔龍、ただの資材置き場だった』
そんな時だ。
ボスの悲鳴に怯えたのか、あるいは騒ぎを聞きつけたのか、ボス部屋の入り口付近が騒がしくなった。
「……ん? 誰か来たのか?」
俺はスマホを向けた。
高性能なカメラ機能が、自動的にズームと補正を行う。
映し出されたのは、3人の人影だった。
「くそっ! なんだよこの『アーマード・アント』の数は!」
「剛田、ポーションがないわ! もっと出しなさいよ!」
「うるせえ! あのゴミから奪った分はもう使い切ったんだよ!」
そこには、硬い甲殻を持つ巨大アリの群れに囲まれ、必死に剣を振るう男たちの姿があった。
見覚えがある。
いや、見間違えるはずがない。
「……あれ、『銀の牙』だ」
数時間前、俺を囮にして見捨てた元パーティ。
リーダーの剛田、魔法使いのレナ、ヒーラーの健太。
彼らは本来、ボス部屋の横をすり抜けて宝箱だけ回収する予定だったはずだ。
しかし、俺がボス(ドラゴン)をいじめて悲鳴を上げさせたせいで、周囲の雑魚モンスターがパニックを起こし、彼らの退路を塞いでしまったらしい。
「あーあ。苦戦してるなぁ」
俺は他人事のように呟いた。
助ける義理はない。むしろ、俺の装備を奪った強盗だ。
その時、コメント欄の「特定班」が動いた。
『おい、今の会話聞いたか?』
『「あのゴミから奪った分」って言ったぞ』
『あいつの背負ってるリュック、安物の「Fランク用標準装備」じゃね?』
『主の言ってた「奪われた装備」ってあれか!』
『確定しました。Cランクパーティ「銀の牙」です。ギルドの登録情報と顔が一致』
『うわぁ……マジで強盗殺人未遂じゃん』
『主を囮にして、自分たちは雑魚アリに苦戦とかダサすぎwww』
一瞬にして、彼らの個人情報、過去の悪評、そして現在の無様な姿が世界中に拡散された。
同接数は20万人を超え、その全員が「証人」となった。
「……へぇ、みんな詳しいな」
俺はコメント欄を読み上げながら、冷ややかな視線を彼らに向けた。
剛田が背負っているのは、俺が3年使っていたボロボロのリュックだ。
中には、妹のために買った特売のポーションが入っていたはずだ。
それを、あいつらは雑魚戦で惜しげもなくガブ飲みしている。
「……俺のポーション、返してもらおうかな」
ふつふつと、怒りが再燃する。
ドラゴン相手には「素材」として接していた俺だが、人間相手には別の感情が湧いてきた。
俺はドラゴン(翼なし・牙なし)に背を向け、入り口の方へと歩き出した。
ドラゴンは「助かった……」という顔で安堵のため息をついているが、逃がすつもりはない。後で美味しくいただく。
「おい、そこの泥棒さんたち」
俺は声をかけた。
アリの群れに揉みくちゃにされている剛田たちが、驚いてこちらを振り返る。
「あぁ!? 誰だ……って、お前!?」
剛田が目を見開いた。
死んだはずの男が、五体満足で立っている。
しかも、背後には「手なずけられた(ように見える)」ボスドラゴンを従えて。
「九条……!? なんで生きてる!?」
「幽霊!? いや、足がある!」
彼らの動揺をよそに、俺はスマホのカメラを彼らに向けたまま、ニッコリと笑った。
「配信中ですよ、剛田さん。世界中の20万人が見てます」
『えっ?』
剛田たちの顔が青ざめる。
だが、今の彼らにとって最大の脅威は、俺でも配信でもない。
目の前の『アーマード・アント』だ。
硬い甲殻は、彼らの剣や魔法をことごとく弾き返している。
「助け……おい九条! 助けろ! 荷持ちだろ!?」
剛田が叫んだ。
この期に及んで、命令形かよ。
「助ける? ああ、もちろん」
俺は右手を掲げた。
ただし、対象は「お前たち」じゃない。
「その『硬い殻』、いい素材になりそうだから貰うよ」
俺は指を弾いた。
対象:アーマード・アントの『甲殻』のみ。
「――『解体』!」
パキンッ!!
一斉に、十数匹のアリたちの装甲が弾け飛んだ。
中から現れたのは、プヨプヨとした柔らかい中身だけの姿。
「えっ……?」
剛田たちが呆然とする。
敵の防御力がゼロになった。これなら勝てる。
だが、俺の狙いはそこじゃない。
「はい、装甲は頂きました。……あとは頑張ってくださいね」
俺は剥ぎ取った「ミスリル含有の甲殻」を回収すると、くるりと背を向けた。
防御を失ったアリたちは、羞恥と怒りで真っ赤になり、攻撃力を3倍にして暴走(バーサク)モードに入った。
「ギャアアアアッ!!」
「ちょ、待て! 攻撃が痛い! 防御がない分、速い!」
「九条おおおおお! 戻れええええ!!」
背後で響く絶叫。
俺はそれをBGMに、視聴者に向かってウインクした。
「さて、次はドラゴンの『お肉』を解体しますか。あっちが片付くまでの暇つぶしに」
「よし、次は『翼』いってみようか」
俺はドラゴンに向けて指を鳴らした。
『解体』。
バサッ、という音と共に、ドラゴンの背中から巨大な翼膜が綺麗に剥がれ落ちる。
飛ぶ手段を失ったドラゴンは、もはや「大きなトカゲ」だ。
地面にへたり込み、涙目で俺を見上げている。
「ごめんな。でも、その翼膜、最高級のテント素材になるんだよ。野宿するとき欲しくてさ」
俺は剥ぎ取った素材をくるくると丸め、インベントリ代わりのポケット(四次元化しつつある)にねじ込んだ。
視聴者はもう、驚くのをやめていた。
『ドラゴンがかわいそうに見えてきた』
『主、鬼畜すぎて草』
『素材剥ぎ取りRTAかな?』
『【悲報】深淵の魔龍、ただの資材置き場だった』
そんな時だ。
ボスの悲鳴に怯えたのか、あるいは騒ぎを聞きつけたのか、ボス部屋の入り口付近が騒がしくなった。
「……ん? 誰か来たのか?」
俺はスマホを向けた。
高性能なカメラ機能が、自動的にズームと補正を行う。
映し出されたのは、3人の人影だった。
「くそっ! なんだよこの『アーマード・アント』の数は!」
「剛田、ポーションがないわ! もっと出しなさいよ!」
「うるせえ! あのゴミから奪った分はもう使い切ったんだよ!」
そこには、硬い甲殻を持つ巨大アリの群れに囲まれ、必死に剣を振るう男たちの姿があった。
見覚えがある。
いや、見間違えるはずがない。
「……あれ、『銀の牙』だ」
数時間前、俺を囮にして見捨てた元パーティ。
リーダーの剛田、魔法使いのレナ、ヒーラーの健太。
彼らは本来、ボス部屋の横をすり抜けて宝箱だけ回収する予定だったはずだ。
しかし、俺がボス(ドラゴン)をいじめて悲鳴を上げさせたせいで、周囲の雑魚モンスターがパニックを起こし、彼らの退路を塞いでしまったらしい。
「あーあ。苦戦してるなぁ」
俺は他人事のように呟いた。
助ける義理はない。むしろ、俺の装備を奪った強盗だ。
その時、コメント欄の「特定班」が動いた。
『おい、今の会話聞いたか?』
『「あのゴミから奪った分」って言ったぞ』
『あいつの背負ってるリュック、安物の「Fランク用標準装備」じゃね?』
『主の言ってた「奪われた装備」ってあれか!』
『確定しました。Cランクパーティ「銀の牙」です。ギルドの登録情報と顔が一致』
『うわぁ……マジで強盗殺人未遂じゃん』
『主を囮にして、自分たちは雑魚アリに苦戦とかダサすぎwww』
一瞬にして、彼らの個人情報、過去の悪評、そして現在の無様な姿が世界中に拡散された。
同接数は20万人を超え、その全員が「証人」となった。
「……へぇ、みんな詳しいな」
俺はコメント欄を読み上げながら、冷ややかな視線を彼らに向けた。
剛田が背負っているのは、俺が3年使っていたボロボロのリュックだ。
中には、妹のために買った特売のポーションが入っていたはずだ。
それを、あいつらは雑魚戦で惜しげもなくガブ飲みしている。
「……俺のポーション、返してもらおうかな」
ふつふつと、怒りが再燃する。
ドラゴン相手には「素材」として接していた俺だが、人間相手には別の感情が湧いてきた。
俺はドラゴン(翼なし・牙なし)に背を向け、入り口の方へと歩き出した。
ドラゴンは「助かった……」という顔で安堵のため息をついているが、逃がすつもりはない。後で美味しくいただく。
「おい、そこの泥棒さんたち」
俺は声をかけた。
アリの群れに揉みくちゃにされている剛田たちが、驚いてこちらを振り返る。
「あぁ!? 誰だ……って、お前!?」
剛田が目を見開いた。
死んだはずの男が、五体満足で立っている。
しかも、背後には「手なずけられた(ように見える)」ボスドラゴンを従えて。
「九条……!? なんで生きてる!?」
「幽霊!? いや、足がある!」
彼らの動揺をよそに、俺はスマホのカメラを彼らに向けたまま、ニッコリと笑った。
「配信中ですよ、剛田さん。世界中の20万人が見てます」
『えっ?』
剛田たちの顔が青ざめる。
だが、今の彼らにとって最大の脅威は、俺でも配信でもない。
目の前の『アーマード・アント』だ。
硬い甲殻は、彼らの剣や魔法をことごとく弾き返している。
「助け……おい九条! 助けろ! 荷持ちだろ!?」
剛田が叫んだ。
この期に及んで、命令形かよ。
「助ける? ああ、もちろん」
俺は右手を掲げた。
ただし、対象は「お前たち」じゃない。
「その『硬い殻』、いい素材になりそうだから貰うよ」
俺は指を弾いた。
対象:アーマード・アントの『甲殻』のみ。
「――『解体』!」
パキンッ!!
一斉に、十数匹のアリたちの装甲が弾け飛んだ。
中から現れたのは、プヨプヨとした柔らかい中身だけの姿。
「えっ……?」
剛田たちが呆然とする。
敵の防御力がゼロになった。これなら勝てる。
だが、俺の狙いはそこじゃない。
「はい、装甲は頂きました。……あとは頑張ってくださいね」
俺は剥ぎ取った「ミスリル含有の甲殻」を回収すると、くるりと背を向けた。
防御を失ったアリたちは、羞恥と怒りで真っ赤になり、攻撃力を3倍にして暴走(バーサク)モードに入った。
「ギャアアアアッ!!」
「ちょ、待て! 攻撃が痛い! 防御がない分、速い!」
「九条おおおおお! 戻れええええ!!」
背後で響く絶叫。
俺はそれをBGMに、視聴者に向かってウインクした。
「さて、次はドラゴンの『お肉』を解体しますか。あっちが片付くまでの暇つぶしに」
あなたにおすすめの小説
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略
神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。
そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。
これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。
ダンジョンで迷惑配信者をやっていた俺。うっかりアイドル配信者を襲ってたドラゴンをぶっ飛ばした結果、良い人バレして鬼バズる
果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
矢上一樹は、ダンジョンでマナー違反行為を繰り返す迷惑系配信者だ。
他人の獲物を奪う、弱いモンスターをいたぶる、下品な言葉遣い。やりたい放題やって人気を得ていた彼だったが――ある日、うっかり配信を切り忘れて律儀な一面がバレてしまう。
焦った一樹はキャラを取り繕うも、時すでに遅し。一樹の素は大々的に拡散され話題沸騰していて――さらには、助けた美少女が人気アイドル配信者だったことで、全国レベルでバズってしまい!?
これは、炎上系配信者が最強でただのいいヤツだった的な、わりとよくある物語。
※本作はカクヨムでも連載しています。そちらでのタイトルは「ダンジョンで迷惑配信者をやっていた俺。うっかりアイドル配信者を助けた結果、良い人バレして鬼バズってしまう~もう元のキャラには戻れないかもしれない〜」となります。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》
盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。
ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……
始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。
さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。
魔力ゼロの落ちこぼれ貴族、神々のエラーメッセージが読めるようになる~「神罰」のシステム権限で学園無双しつつ、本人だけはただのデバッグ作業だと
蒼月よる
ファンタジー
魔法(ナノマシン干渉)が使えず、名門アルマンド家の恥晒しとされた三男アッシュ。
実技試験に落ちて旧図書棟の掃除をさせられていた彼は、謎の遺物(管理デバイス)に触れたことで、世界の最高管理者権限(デバッガー権限)を手に入れてしまう。
「魔法」とは環境中の魔素を操作する事象。そして「神の奇跡」とは環境管理AIの気まぐれであるこの世界において。
アッシュの目には、相手の放つ魔法が単なる『不正なプロセスのエラーログ』として映り、頭の中で『YES(強制終了パッチ)』を選択するだけで完全に消去できるようになったのだ!
一切の詠唱も魔力発生も伴わずに、同級生の最大魔法をフッと消し去り、暴走する巨大魔物をワンボタンで光の粒子に還元するアッシュ。
本人はただ「うるさい警告文が出たからOKを押してデバッグ(人助け)しているだけ」のつもりなのだが……。
これは、エラーログを消しているだけの落ちこぼれ少年が、王都の至高魔法学園で「神の奇跡を下す聖者」として盛大に勘違いされながら成り上がっていく、痛快無双ファンタジー!
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。