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EP 9
地上への帰還と、土下座するギルドマスター
ダンジョンの出口ゲートをくぐると、そこは光の渦だった。
バシャシャシャシャシャッ!!
無数のフラッシュが焚かれ、視界が真っ白になる。
「うわっ、まぶし!?」
俺は思わず目を覆った。
ゲート前広場には、見たこともない数の報道陣、警察車両、そして武装したギルド職員たちがひしめき合っていた。
規制線が張られ、野次馬たちがスマホを掲げて押し寄せている。
「え、なにこれ。テロ?」
俺が呆然としていると、人垣をかき分けて一人の太った男が飛び出してきた。
探索者ギルド・東京支部の支部長、権田原(ごんだわら)だ。
いつも俺が換金に行くと「Fランクのゴミ魔石でカウンターを汚すな」と怒鳴り散らしていた男だ。
「おお! 九条くん! いや、九条先生!!」
権田原は、見たこともない満面の笑みで俺の手を握りしめてきた。
手汗がすごい。
「無事だったか! 心配したぞ! いやぁ、君ならやってくれると信じていたよ! 我がギルドが誇る期待の星!」
「……えっと、誰でしたっけ?」
俺は本気で首を傾げた。
いや、顔は知ってるけど、こんな丁寧な口調の権田原なんて知らない。別人か?
「ははは、ご冗談を! 支部長の権田原ですよ! 君のライセンス発行の時、私が判子を押したじゃないか!」
「あー、あの時の。……で、なんで俺の手を握ってるんですか? 汚れますよ、Fランクのゴミで」
俺はスルリと手を引いた。
悪意はない。彼がいつも言っていたことを繰り返しただけだ。
だが、その言葉に権田原の顔が引きつった。
「そ、そんな! ゴミだなんて滅相もない! 君は国の宝だ!」
権田原だけじゃない。
後ろには、いつも俺を無視していた受付嬢たちが、媚びるような視線を送っている。
なんだこれ。気持ち悪いな。
「あの、帰っていいですか? 荷物が重くて」
「荷物!? おお、そうだ! 例の『龍王の心臓』だね!?」
権田原が目を血走らせて食いついてきた。
報道陣も一斉にマイクを突きつけてくる。
「九条さん! SSS級素材を見せてください!」
「国家予算に匹敵すると言われていますが!」
「一言お願いします!」
「うるさいなぁ……」
俺はため息をつきながら、ポケットから無造作に『それ』を取り出した。
ドクンッ……。
周囲の空気が重くなる。
赤黒く脈打つ結晶体。『龍王の心臓』だ。
「これのことですか? ただの石ですよ」
俺はそれを、コンビニで買ったおにぎりみたいに軽く放り投げ、またキャッチした。
「ひぃっ!?」
「や、やめてくれ! 落としたら東京が吹っ飛ぶぞ!」
「魔力放射線量が測定不能だ! 下がれ下がれ!」
専門家らしき老人が悲鳴を上げ、SAT(特殊部隊)が盾を構える。
大げさだなぁ。
「あと、お肉もたくさんあるんで。早く帰って冷凍庫に入れないと」
「お、お肉……?」
俺はリュック代わりのポケットから、霜降りの龍肉ブロック(10kg)を取り出した。
「これ、今日の晩ご飯なんです。妹が待ってるんで」
会場が静まり返った。
国家レベルの戦略物資であるドラゴンを、「晩ご飯」呼ばわり。
権田原が膝から崩れ落ちる。
「く、九条先生……。その肉、ひとかけらで高級車が買えるんですが……」
「へぇ。でも、妹の笑顔の方が高いんで」
俺はキッパリと言い放ち、人混みをかき分けて歩き出した。
誰も俺を止められない。
SATの隊員たちが、道を開けるように敬礼している。
「あ、そうだ権田原さん」
俺は立ち止まり、振り返った。
「剛田さんたち『銀の牙』、まだ中にいますよ。全裸で」
「は、はい?」
「装備が『壊れちゃった』みたいで。早く助けてあげてくださいね。……まあ、探索者としてはもう終わりでしょうけど」
俺はニッコリと笑い、今度こそ背を向けた。
背後で、権田原が「し、至急救助班を! いや、警察を呼べ! 彼らは重要参考人だ!」と怒鳴り散らす声が聞こえた。
俺はスマホを取り出す。
まだ配信がつながっている画面に向かって、小さく手を振った。
「それじゃ、配信終わります。……あ、スパチャくれた人たち、ありがとな。全部妹の推し活に使わせてもらうわ」
プチッ。
今度こそ、俺は配信を切った。
ダンジョンの出口ゲートをくぐると、そこは光の渦だった。
バシャシャシャシャシャッ!!
無数のフラッシュが焚かれ、視界が真っ白になる。
「うわっ、まぶし!?」
俺は思わず目を覆った。
ゲート前広場には、見たこともない数の報道陣、警察車両、そして武装したギルド職員たちがひしめき合っていた。
規制線が張られ、野次馬たちがスマホを掲げて押し寄せている。
「え、なにこれ。テロ?」
俺が呆然としていると、人垣をかき分けて一人の太った男が飛び出してきた。
探索者ギルド・東京支部の支部長、権田原(ごんだわら)だ。
いつも俺が換金に行くと「Fランクのゴミ魔石でカウンターを汚すな」と怒鳴り散らしていた男だ。
「おお! 九条くん! いや、九条先生!!」
権田原は、見たこともない満面の笑みで俺の手を握りしめてきた。
手汗がすごい。
「無事だったか! 心配したぞ! いやぁ、君ならやってくれると信じていたよ! 我がギルドが誇る期待の星!」
「……えっと、誰でしたっけ?」
俺は本気で首を傾げた。
いや、顔は知ってるけど、こんな丁寧な口調の権田原なんて知らない。別人か?
「ははは、ご冗談を! 支部長の権田原ですよ! 君のライセンス発行の時、私が判子を押したじゃないか!」
「あー、あの時の。……で、なんで俺の手を握ってるんですか? 汚れますよ、Fランクのゴミで」
俺はスルリと手を引いた。
悪意はない。彼がいつも言っていたことを繰り返しただけだ。
だが、その言葉に権田原の顔が引きつった。
「そ、そんな! ゴミだなんて滅相もない! 君は国の宝だ!」
権田原だけじゃない。
後ろには、いつも俺を無視していた受付嬢たちが、媚びるような視線を送っている。
なんだこれ。気持ち悪いな。
「あの、帰っていいですか? 荷物が重くて」
「荷物!? おお、そうだ! 例の『龍王の心臓』だね!?」
権田原が目を血走らせて食いついてきた。
報道陣も一斉にマイクを突きつけてくる。
「九条さん! SSS級素材を見せてください!」
「国家予算に匹敵すると言われていますが!」
「一言お願いします!」
「うるさいなぁ……」
俺はため息をつきながら、ポケットから無造作に『それ』を取り出した。
ドクンッ……。
周囲の空気が重くなる。
赤黒く脈打つ結晶体。『龍王の心臓』だ。
「これのことですか? ただの石ですよ」
俺はそれを、コンビニで買ったおにぎりみたいに軽く放り投げ、またキャッチした。
「ひぃっ!?」
「や、やめてくれ! 落としたら東京が吹っ飛ぶぞ!」
「魔力放射線量が測定不能だ! 下がれ下がれ!」
専門家らしき老人が悲鳴を上げ、SAT(特殊部隊)が盾を構える。
大げさだなぁ。
「あと、お肉もたくさんあるんで。早く帰って冷凍庫に入れないと」
「お、お肉……?」
俺はリュック代わりのポケットから、霜降りの龍肉ブロック(10kg)を取り出した。
「これ、今日の晩ご飯なんです。妹が待ってるんで」
会場が静まり返った。
国家レベルの戦略物資であるドラゴンを、「晩ご飯」呼ばわり。
権田原が膝から崩れ落ちる。
「く、九条先生……。その肉、ひとかけらで高級車が買えるんですが……」
「へぇ。でも、妹の笑顔の方が高いんで」
俺はキッパリと言い放ち、人混みをかき分けて歩き出した。
誰も俺を止められない。
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「あ、そうだ権田原さん」
俺は立ち止まり、振り返った。
「剛田さんたち『銀の牙』、まだ中にいますよ。全裸で」
「は、はい?」
「装備が『壊れちゃった』みたいで。早く助けてあげてくださいね。……まあ、探索者としてはもう終わりでしょうけど」
俺はニッコリと笑い、今度こそ背を向けた。
背後で、権田原が「し、至急救助班を! いや、警察を呼べ! 彼らは重要参考人だ!」と怒鳴り散らす声が聞こえた。
俺はスマホを取り出す。
まだ配信がつながっている画面に向かって、小さく手を振った。
「それじゃ、配信終わります。……あ、スパチャくれた人たち、ありがとな。全部妹の推し活に使わせてもらうわ」
プチッ。
今度こそ、俺は配信を切った。
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