万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜

月神世一

文字の大きさ
9 / 70

EP 9

地上への帰還と、土下座するギルドマスター
​ ダンジョンの出口ゲートをくぐると、そこは光の渦だった。
​ バシャシャシャシャシャッ!!
 無数のフラッシュが焚かれ、視界が真っ白になる。
​「うわっ、まぶし!?」
​ 俺は思わず目を覆った。
 ゲート前広場には、見たこともない数の報道陣、警察車両、そして武装したギルド職員たちがひしめき合っていた。
 規制線が張られ、野次馬たちがスマホを掲げて押し寄せている。
​「え、なにこれ。テロ?」
​ 俺が呆然としていると、人垣をかき分けて一人の太った男が飛び出してきた。
 探索者ギルド・東京支部の支部長、権田原(ごんだわら)だ。
 いつも俺が換金に行くと「Fランクのゴミ魔石でカウンターを汚すな」と怒鳴り散らしていた男だ。
​「おお! 九条くん! いや、九条先生!!」
​ 権田原は、見たこともない満面の笑みで俺の手を握りしめてきた。
 手汗がすごい。
​「無事だったか! 心配したぞ! いやぁ、君ならやってくれると信じていたよ! 我がギルドが誇る期待の星!」
「……えっと、誰でしたっけ?」
​ 俺は本気で首を傾げた。
 いや、顔は知ってるけど、こんな丁寧な口調の権田原なんて知らない。別人か?
​「ははは、ご冗談を! 支部長の権田原ですよ! 君のライセンス発行の時、私が判子を押したじゃないか!」
「あー、あの時の。……で、なんで俺の手を握ってるんですか? 汚れますよ、Fランクのゴミで」
​ 俺はスルリと手を引いた。
 悪意はない。彼がいつも言っていたことを繰り返しただけだ。
 だが、その言葉に権田原の顔が引きつった。
​「そ、そんな! ゴミだなんて滅相もない! 君は国の宝だ!」
​ 権田原だけじゃない。
 後ろには、いつも俺を無視していた受付嬢たちが、媚びるような視線を送っている。
 なんだこれ。気持ち悪いな。
​「あの、帰っていいですか? 荷物が重くて」
「荷物!? おお、そうだ! 例の『龍王の心臓』だね!?」
​ 権田原が目を血走らせて食いついてきた。
 報道陣も一斉にマイクを突きつけてくる。
​「九条さん! SSS級素材を見せてください!」
「国家予算に匹敵すると言われていますが!」
「一言お願いします!」
​「うるさいなぁ……」
​ 俺はため息をつきながら、ポケットから無造作に『それ』を取り出した。
 ドクンッ……。
 周囲の空気が重くなる。
 赤黒く脈打つ結晶体。『龍王の心臓』だ。
​「これのことですか? ただの石ですよ」
​ 俺はそれを、コンビニで買ったおにぎりみたいに軽く放り投げ、またキャッチした。
​「ひぃっ!?」
「や、やめてくれ! 落としたら東京が吹っ飛ぶぞ!」
「魔力放射線量が測定不能だ! 下がれ下がれ!」
​ 専門家らしき老人が悲鳴を上げ、SAT(特殊部隊)が盾を構える。
 大げさだなぁ。
​「あと、お肉もたくさんあるんで。早く帰って冷凍庫に入れないと」
「お、お肉……?」
​ 俺はリュック代わりのポケットから、霜降りの龍肉ブロック(10kg)を取り出した。
 
「これ、今日の晩ご飯なんです。妹が待ってるんで」
​ 会場が静まり返った。
 国家レベルの戦略物資であるドラゴンを、「晩ご飯」呼ばわり。
 権田原が膝から崩れ落ちる。
​「く、九条先生……。その肉、ひとかけらで高級車が買えるんですが……」
「へぇ。でも、妹の笑顔の方が高いんで」
​ 俺はキッパリと言い放ち、人混みをかき分けて歩き出した。
 誰も俺を止められない。
 SATの隊員たちが、道を開けるように敬礼している。
​「あ、そうだ権田原さん」
​ 俺は立ち止まり、振り返った。
​「剛田さんたち『銀の牙』、まだ中にいますよ。全裸で」
「は、はい?」
「装備が『壊れちゃった』みたいで。早く助けてあげてくださいね。……まあ、探索者としてはもう終わりでしょうけど」
​ 俺はニッコリと笑い、今度こそ背を向けた。
 背後で、権田原が「し、至急救助班を! いや、警察を呼べ! 彼らは重要参考人だ!」と怒鳴り散らす声が聞こえた。
​ 俺はスマホを取り出す。
 まだ配信がつながっている画面に向かって、小さく手を振った。
​「それじゃ、配信終わります。……あ、スパチャくれた人たち、ありがとな。全部妹の推し活に使わせてもらうわ」
​ プチッ。
 今度こそ、俺は配信を切った。
感想 8

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで迷惑配信者をやっていた俺。うっかりアイドル配信者を襲ってたドラゴンをぶっ飛ばした結果、良い人バレして鬼バズる

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
 矢上一樹は、ダンジョンでマナー違反行為を繰り返す迷惑系配信者だ。  他人の獲物を奪う、弱いモンスターをいたぶる、下品な言葉遣い。やりたい放題やって人気を得ていた彼だったが――ある日、うっかり配信を切り忘れて律儀な一面がバレてしまう。  焦った一樹はキャラを取り繕うも、時すでに遅し。一樹の素は大々的に拡散され話題沸騰していて――さらには、助けた美少女が人気アイドル配信者だったことで、全国レベルでバズってしまい!? これは、炎上系配信者が最強でただのいいヤツだった的な、わりとよくある物語。 ※本作はカクヨムでも連載しています。そちらでのタイトルは「ダンジョンで迷惑配信者をやっていた俺。うっかりアイドル配信者を助けた結果、良い人バレして鬼バズってしまう~もう元のキャラには戻れないかもしれない〜」となります。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【番外編】追加しました。連休のスキマ時間でぜひお楽しみください! 【5話ごとのサクッと読める構成です!】 本編 全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!お気に入り登録、ハート、コメント、とても励みになります♪ ─あらすじ─ 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】