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EP 8
ボス『汚染の巨人』? いえ、ただの『分別されてないゴミ』ですね
「……もう、ダメかも」
2年C組の教室。
九条未緒は、机の下で震えていた。
廊下からはスライムの這い回る音が消え、静かになった。
だが、窓の外――校庭には、もっと恐ろしい絶望が降臨していた。
ズゥゥゥゥン……。
校舎の3階に届くほどの巨体。
ヘドロと瓦礫、そして有毒なガスで構成された『汚染の巨人(ポイズン・タイタン)』。
今回のスタンピードの元凶であり、触れるもの全てを腐敗させる最悪のボスだ。
「あんなの……勝てるわけない……」
未緒が顔を覆った、その時だ。
ガララッ!
教室のドアが、勢いよく開いた。
「未緒ーっ! いるかーっ!」
「ひぃっ!?」
未緒が悲鳴を上げて振り返ると、そこにいたのはスライムでも巨人でもなく――
「……は?」
エプロン姿にデッキブラシを担ぎ、片手に風呂敷包みを持った兄、九条湊だった。
息を切らしているが、傷一つない。
「お、お兄ちゃん……? なんでここに? てか、その格好なに?」
「なにって、お前が『弁当忘れた』って泣くからだろ! ほら、唐揚げだぞ!」
湊はズカズカと教室に入ってくると、未緒の机の上にドンッ!と弁当箱を置いた。
教室に漂う、食欲をそそる醤油とニンニクの香り。
……状況と噛み合わなさすぎる。
「バッカじゃないの!? 外見てよ! あんな怪物がいるのに弁当どころじゃ……!」
未緒が窓を指差す。
その瞬間、巨人がこちらに気づいた。
巨大なヘドロの腕が振り上げられ、教室を粉砕しようと迫る。
「危ないっ!!」
未緒が湊を突き飛ばそうとした。
だが、湊は動かない。
むしろ、窓際まで歩み寄り、ガラス越しに巨人を睨みつけた。
「……あーあ。これは酷いな」
湊がため息をついた。
「未緒、お前……ゴミの分別もできないのか?」
「はぁ!?」
湊は窓を開けた。
有毒なガスが入り込む――はずが、湊の周囲だけ空気が浄化されている。
「見てみろあれ。生ゴミ(ヘドロ)と、燃えないゴミ(瓦礫)と、資源ゴミ(貴金属)が混ざってるじゃないか。これじゃ回収車が持ってってくれないぞ」
湊は本気で呆れていた。
彼にとって、目の前の災害級ボスは「マナー違反のゴミ出し」に見えているらしい。
「分別しなきゃな」
湊はデッキブラシを窓の外へ突き出した。
巨人の拳が、目の前まで迫っている。
「――『解体(ソーティング)』」
カッ!!
閃光が走った。
攻撃魔法ではない。
それは、世界で最も精密かつ強制的な「仕分け作業」だった。
ボロボロボロ……。
巨人の腕が、空中で崩れ落ちた。
いや、構成要素ごとに分離されたのだ。
ドサッ! と地面に落ちたのは、大量の「鉄骨」と「コンクリート片」。
バシャァッ! と降り注いだのは、無害化された「水」。
そして、サラサラと舞い降りたのは、毒素が抜かれて真っ白になった「肥料(土)」。
「グ……ガ……?」
巨人が困惑の声を上げる。
自分の体が、みるみるうちに「ただの資源」に変わっていく。
毒も、悪意も、魔力も、全て「不純物」として取り除かれていく。
「はい、こっちは燃えるゴミ。こっちは資源」
湊はデッキブラシを指揮棒のように振るった。
数秒後。
校庭に立っていたはずの『汚染の巨人』は消滅していた。
代わりにそこにあったのは――
綺麗に積み上げられた**「資材置き場」と、水撒きが終わったばかりのような「潤った花壇」**だった。
「……え?」
未緒は口をポカンと開けたまま、その光景を見下ろしていた。
校庭にいたカレンも、腰を抜かしている。
そして、配信を見ていた全世界の視聴者も。
『分別wwwwwww』
『ボスが資源ゴミになったぞ』
『SDGsすぎる』
『環境に優しい解体師』
『あの肥料、絶対いい野菜育つわ』
『未緒ちゃん(ATM)の反応が我々と完全に一致』
『お兄ちゃん、何者なんだよ……』
「ふぅ。これでスッキリしたな」
湊は満足げに窓を閉めると、未緒に向き直った。
そして、何事もなかったかのように弁当の蓋を開けた。
「ほら、冷める前に食え。未緒の好きな唐揚げだぞ」
「……」
未緒は、黄金色に輝く唐揚げ(※ドラゴン肉)を見た。
そして、窓の外の「元・巨人」を見た。
最後に、エプロン姿の兄を見た。
「……いただきます」
未緒は震える手で唐揚げを口に運んだ。
肉汁が溢れる。
今まで食べたどんな肉よりも美味しくて、そして――
「……お兄ちゃん、バカ」
涙と一緒に飲み込んだ。
「……もう、ダメかも」
2年C組の教室。
九条未緒は、机の下で震えていた。
廊下からはスライムの這い回る音が消え、静かになった。
だが、窓の外――校庭には、もっと恐ろしい絶望が降臨していた。
ズゥゥゥゥン……。
校舎の3階に届くほどの巨体。
ヘドロと瓦礫、そして有毒なガスで構成された『汚染の巨人(ポイズン・タイタン)』。
今回のスタンピードの元凶であり、触れるもの全てを腐敗させる最悪のボスだ。
「あんなの……勝てるわけない……」
未緒が顔を覆った、その時だ。
ガララッ!
教室のドアが、勢いよく開いた。
「未緒ーっ! いるかーっ!」
「ひぃっ!?」
未緒が悲鳴を上げて振り返ると、そこにいたのはスライムでも巨人でもなく――
「……は?」
エプロン姿にデッキブラシを担ぎ、片手に風呂敷包みを持った兄、九条湊だった。
息を切らしているが、傷一つない。
「お、お兄ちゃん……? なんでここに? てか、その格好なに?」
「なにって、お前が『弁当忘れた』って泣くからだろ! ほら、唐揚げだぞ!」
湊はズカズカと教室に入ってくると、未緒の机の上にドンッ!と弁当箱を置いた。
教室に漂う、食欲をそそる醤油とニンニクの香り。
……状況と噛み合わなさすぎる。
「バッカじゃないの!? 外見てよ! あんな怪物がいるのに弁当どころじゃ……!」
未緒が窓を指差す。
その瞬間、巨人がこちらに気づいた。
巨大なヘドロの腕が振り上げられ、教室を粉砕しようと迫る。
「危ないっ!!」
未緒が湊を突き飛ばそうとした。
だが、湊は動かない。
むしろ、窓際まで歩み寄り、ガラス越しに巨人を睨みつけた。
「……あーあ。これは酷いな」
湊がため息をついた。
「未緒、お前……ゴミの分別もできないのか?」
「はぁ!?」
湊は窓を開けた。
有毒なガスが入り込む――はずが、湊の周囲だけ空気が浄化されている。
「見てみろあれ。生ゴミ(ヘドロ)と、燃えないゴミ(瓦礫)と、資源ゴミ(貴金属)が混ざってるじゃないか。これじゃ回収車が持ってってくれないぞ」
湊は本気で呆れていた。
彼にとって、目の前の災害級ボスは「マナー違反のゴミ出し」に見えているらしい。
「分別しなきゃな」
湊はデッキブラシを窓の外へ突き出した。
巨人の拳が、目の前まで迫っている。
「――『解体(ソーティング)』」
カッ!!
閃光が走った。
攻撃魔法ではない。
それは、世界で最も精密かつ強制的な「仕分け作業」だった。
ボロボロボロ……。
巨人の腕が、空中で崩れ落ちた。
いや、構成要素ごとに分離されたのだ。
ドサッ! と地面に落ちたのは、大量の「鉄骨」と「コンクリート片」。
バシャァッ! と降り注いだのは、無害化された「水」。
そして、サラサラと舞い降りたのは、毒素が抜かれて真っ白になった「肥料(土)」。
「グ……ガ……?」
巨人が困惑の声を上げる。
自分の体が、みるみるうちに「ただの資源」に変わっていく。
毒も、悪意も、魔力も、全て「不純物」として取り除かれていく。
「はい、こっちは燃えるゴミ。こっちは資源」
湊はデッキブラシを指揮棒のように振るった。
数秒後。
校庭に立っていたはずの『汚染の巨人』は消滅していた。
代わりにそこにあったのは――
綺麗に積み上げられた**「資材置き場」と、水撒きが終わったばかりのような「潤った花壇」**だった。
「……え?」
未緒は口をポカンと開けたまま、その光景を見下ろしていた。
校庭にいたカレンも、腰を抜かしている。
そして、配信を見ていた全世界の視聴者も。
『分別wwwwwww』
『ボスが資源ゴミになったぞ』
『SDGsすぎる』
『環境に優しい解体師』
『あの肥料、絶対いい野菜育つわ』
『未緒ちゃん(ATM)の反応が我々と完全に一致』
『お兄ちゃん、何者なんだよ……』
「ふぅ。これでスッキリしたな」
湊は満足げに窓を閉めると、未緒に向き直った。
そして、何事もなかったかのように弁当の蓋を開けた。
「ほら、冷める前に食え。未緒の好きな唐揚げだぞ」
「……」
未緒は、黄金色に輝く唐揚げ(※ドラゴン肉)を見た。
そして、窓の外の「元・巨人」を見た。
最後に、エプロン姿の兄を見た。
「……いただきます」
未緒は震える手で唐揚げを口に運んだ。
肉汁が溢れる。
今まで食べたどんな肉よりも美味しくて、そして――
「……お兄ちゃん、バカ」
涙と一緒に飲み込んだ。
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