万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜

月神世一

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EP 7

SランクとSSSランクが同居してて、部屋が狭すぎます
​ ズズズズズ……。
​ 朝の7時。
 俺、九条湊は、地鳴りのような振動で目を覚ました。
 地震か? いや、違う。
​「……狭い」
​ 俺は呻いた。
 目を開けると、視界の半分が「筋肉」で埋め尽くされていたからだ。
​「Zzz……Boss……Munyanya……」
​ 俺の布団の右半分を占領しているのは、金髪の巨体。
 全米No.1ヒーロー改め、俺の自称一番弟子(兼・雑用係)、ジャック・クリーナーボルトだ。
 身長2メートル、体重120キロの筋肉ダルマが、煎餅布団(シングル)に無理やり収まろうとしている。
 彼が寝返りを打つたびに、築40年の木造アパート『ひまわり荘』が悲鳴を上げ、震度3くらいの揺れが発生するのだ。
​「……おい、起きろジャック。重い」
「Oh……Morning, Boss……」
​ ジャックが半身を起こした瞬間、バチチチッ!と静電気が走った。
 俺のスマホの充電ケーブルがショートして爆発した。
​「ああっ!? 俺の充電器!」
「Sorry……。寝起きは魔力が漏れちまって……」
​ ジャックが申し訳なさそうに縮こまる。
 だが、縮こまってもデカイ。
 六畳一間のこの部屋は、今や「人口密度」ならぬ「魔力密度」が限界突破していた。
​「おはようございます、師匠。お目覚めの紅茶を淹れましたわ」
​ 優雅な声がした。
 部屋の隅、わずか一畳ほどのスペースに、アンティーク調のテーブルセットを展開しているのは、Sランク『氷の女帝』カレン・オルステッドだ。
 彼女は窓際で朝日を浴びながら、優雅にティーカップを傾けている。
​「……カレン。そこ、俺のタンスの前だ。着替えが出せない」
「あら、失礼。……でも師匠、この部屋、少々手狭ではありませんこと?」
​ カレンが小首を傾げる。
 その足元には、先日東京湾から回収した「海賊の財宝(金塊や宝石)」が、ゴミ袋に入ったまま無造作に積み上げられている。
 さらに、昨夜の残りの「クラーケンの干物」がカーテンレールに吊るされている。
​ カオスだ。
 SSSランクの筋肉と、Sランクの美女と、国家予算並みの財宝と、イカの干物。
 これらが六畳一間にひしめき合っているのだ。
​「お兄ちゃん……息苦しい……」
​ 未緒がロフト(屋根裏収納)から顔を出した。
 彼女は唯一の避難所であるロフトに逃げ込んでいるが、そこも限界らしい。
​「この二人、いつ出ていくの? もう酸素薄いよ?」
「出ていくわけないだろう! 俺はBossの技を盗むまで、ここを動かないぜ!」
「私もです! 家事(修行)を極めるまでは!」
​ 二人が声を揃えて宣言する。
 その声圧だけで、窓ガラスがビリビリと震えた。
​ ドンドンドンドン!!
​ その時、玄関のドアが激しく叩かれた。
 大家さんの怒号が飛んでくる。
​「九条さーん! いい加減にしてください! 朝からドスンドスンって、相撲部屋じゃないんですよ!?」
「ひぃっ、すいません大家さん!」
​ 俺は玄関に走って平謝りした。
 このアパートは「ペット不可、楽器不可、Sランク不可(これは書いてないが)」なのだ。
​「……はぁ。限界か」
​ 大家さんをなんとか宥めて戻ってきた俺は、部屋の惨状を見渡してため息をついた。
 ジャックがストレッチをするだけで天井に頭をぶつけ、カレンが紅茶を飲むだけで部屋の気温が3度下がる。
 未緒は酸欠で青い顔をしている。
​ これじゃ、普通の生活なんて送れない。
​「引っ越すか……?」
​ 俺は呟いた。
 金はある。数千億ある。都内の高級タワマンどころか、城だって買える。
 でもなぁ。
​「ここ、住み慣れてるしなぁ。駅近だし、コンビニ近いし」
​ 根が貧乏性な俺は、このボロアパートを離れるのが惜しかった。
 それに、いきなり豪邸に住んだら、マスコミや政府がうるさそうだ。
 あくまで「普通の一般市民」として暮らしたい。
​「……ん?」
​ ふと、視線が止まった。
 部屋の奥。万年床となっている押し入れのふすま。
 そこから、妙な「風」が吹き込んでいる気がする。
​「……カビ臭いな」
​ 俺は鼻をひくつかせた。
 ただのカビじゃない。これはダンジョンの魔素を含んだ、独特の澱んだ空気だ。
​「そういえば、このアパート。戦前の防空壕跡地に建ってるって、大家さんが言ってたっけ?」
​ 俺は立ち上がり、押し入れの前に立った。
 中には古びた段ボールや、俺の黒歴史(中二病時代のノート)が詰まっている。
 だが、その床板の隙間から、確かに微弱な魔力が漏れ出している。
​「Boss? どうした?」
「師匠、そこは……?」
​ ジャックとカレンが怪訝な顔をする。
 俺はニヤリと笑った。
​「なぁ、二人とも。部屋が狭いなら、**『増築』**すればいいと思わないか?」
​「増築? でもここは賃貸ですし、庭もありませんよ?」
​「下だよ、下」
​ 俺は押し入れの床板を指差した。
​「この下に、手頃な『地下室(ダンジョン)』が埋まってるみたいなんだ。……ちょっと広げて、俺たちの新居にしようか」
​ 俺の目には見えていた。
 床下のさらに奥深く。地下数百メートルに広がる、手つかずの広大な「空洞」が。
 そこはかつて封印された古代のダンジョンかもしれない。
 でも、俺にとってはただの「リフォーム可能な物件」だ。
​「よし、今日は大掃除だ! 未緒、軍手用意しろ!」
「えぇ……お兄ちゃん、また変なこと考えてる……」
​ こうして、世界最強の清掃員による、前代未聞の「自宅地下ダンジョン化計画(リノベーション)」が幕を開けた。
 大家さんにバレないように、こっそりと。
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