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第四章 世界サミット
地下帝国で『世界サミット』開催(お茶請けはイカ焼き)
「……ミスター・タナカ。私が座っているこのソファは、もしかして『神獣ベヒーモスの革』と『オリハルコンの極細スプリング』で出来ているのでしょうか?」
「……おそらく。私の座っている座布団も、国宝級の『天蚕糸(てんさんし)』で織られている気がします」
地下1階、広大なリビングルーム。
アメリカ合衆国大統領と日本の内閣総理大臣は、冷や汗をダラダラと流しながら、俺がニトリ(のチラシを参考にして錬成した)風の高級ソファに背筋を伸ばして座っていた。
「お待たせしましたー。麦茶でいいですか?」
俺は100円均一で買ったプラスチックのコップに、キンキンに冷えた麦茶を注いでテーブル(ヒヒイロカネ製)に置いた。
そして、その横にタッパーをドンッと置く。
「あとこれ、お茶請けです。ちょっと硬いかもしれないですけど」
タッパーの中身は、先日東京湾でさばいた『クラーケンの姿焼き(余り物)』だ。
醤油とマヨネーズを添えてある。庶民の味方だ。
「これは……イカ、ですか?」
「ええ、まあ。近海モノです。どうぞ遠慮なく」
俺が勧めると、ジョージ大統領は外交上の礼儀として、恐る恐るイカの切れ端を口に運んだ。
そして、数秒咀嚼した瞬間。
「……ッ!?」
大統領の青い瞳が見開かれた。
ビクンッ!と屈強な体が跳ねる。
「Oh、My God……! なんだこの溢れ出す生命力(エナジー)は!?」
大統領の顔から、長年の激務による疲労とシワが一瞬で消え去った。
それを見た総理も慌ててイカを口に放り込む。
「うおおおっ!? こ、腰の痛みが……! それに、薄くなっていた頭髪に力強い息吹を感じるっ!」
「フハハハッ! 力が、力が漲ってくるぞタナカ! これなら素手で熊と戦える!」
二人して立ち上がり、謎のガッツポーズを決め始めた。
ただのイカ焼きで大げさな人たちだ。まあ、クラーケンの魔力(タウリン)が豊富に含まれてるから、栄養ドリンクよりは効くかもしれないけど。
「おや、お客さんですか?」
そこへ、奥の通路(地下2階へ続く階段)から、エプロン姿の長身の男が現れた。
ゴム手袋をはめ、手にはカビキラーを握っている。
「Boss! 地下50階までのトイレと風呂の清掃、終わったぜ! 俺の雷(サンダー)で水垢一つ残さず除菌してやった!」
「おう、ご苦労ジャック。麦茶飲むか?」
「Yeah! もらうぜ!」
ジャックは俺の隣に座り、麦茶を一気に飲み干した。
その光景を見たジョージ大統領が、石像のように固まった。
「ジャ、ジャック……? 我が国の最高戦力たる『雷帝』ジャック・サンダーボルト……なのか?」
「ん? おお、プレジデント(大統領)じゃないか! どうしたんだこんな極東の地下室まで」
ジャックが気さくに手を挙げる。
「どうしたんだ、じゃない!!」
大統領が頭を抱えて叫んだ。
「なぜ君がエプロンをしてトイレ掃除をしている!? 君はアメリカの誇り、全米No.1のヒーローだろうが!」
「No、No。大統領、俺はヒーローを引退したんだ」
ジャックは真剣な顔で首を振った。
「今の俺は、この『九条独立国』の清掃員見習い……『ジャック・クリーナーボルト』だ! Boss(湊)の掃除術の前では、俺の雷撃などチャッカマンに等しい!」
「チャッカマン!?」
さらに奥から、洗濯物のカゴを抱えたカレンも現れた。
「師匠、お布団干しておきましたわ。……あら、日本の総理大臣? それにアメリカのトップまで。師匠へのご挨拶(謁見)ですか?」
「『氷の女帝』カレン・オルステッドまで……なぜここに……!」
総理大臣が白目を剥きかけている。
世界最高のSランクとSSSランクが、エプロン姿で家事をしている異常空間。
首脳二人は完全にパニックに陥っていた。
「あ、あの! 九条先生!」
総理がテーブルに身を乗り出してきた。
「この地下空間の技術……そしてこの生命力を活性化させる未知の海産物……。我々日本国は、あなたと『不可侵条約』および『包括的同盟』を結びたい!」
「Wait! アメリカ合衆国もだ! 我が国は、この『地下帝国』を正式な国家として承認しよう!」
二人のトップが、必死の形相で俺に迫ってくる。
国家? 同盟?
何の話だ。さっきからスケールがデカすぎて意味がわからない。
(あ、なるほど)
俺はポンと手を打った。
これはつまり、「町内会(日本)」と「市役所(アメリカ)」みたいなものか。
勝手に地下を増築したから、税金とかルール(条約)の話をしに来たんだな。
「あー、わかりました。ルールには従いますよ。近所迷惑はかけたくないんで」
「本当ですか!? では、我が国に技術提供を……!」
「とりあえず、町内会費(税金)払えばいいんですよね? 月500円で足りますか? あと、ゴミ出しの日はちゃんと守りますから」
「「……町内会費?」」
総理と大統領の動きが止まった。
俺は財布から500円玉を二枚取り出し、テーブルの上に置いた。
「はい、これ今年度分です。領収書は『九条』でお願いしますね」
世界最高の武力と技術を持つ「地下帝国の王」からの、あまりにも庶民的すぎる提案(500円)。
この瞬間、世界のトップ二人は悟った。
この男は、狂っている。
国家という概念すら「町内会」レベルに引きずり下ろす、規格外の怪物なのだと。
「……タナカ。我々は、触れてはいけない深淵を覗いてしまったようだ」
「……ええ。彼を敵に回すくらいなら、町内会長としてこき使われた方がマシです」
こうして、世界を揺るがす『九条サミット』は、ワンコイン(500円)の町内会費をもって、超平和的に幕を閉じたのであった。
「……ミスター・タナカ。私が座っているこのソファは、もしかして『神獣ベヒーモスの革』と『オリハルコンの極細スプリング』で出来ているのでしょうか?」
「……おそらく。私の座っている座布団も、国宝級の『天蚕糸(てんさんし)』で織られている気がします」
地下1階、広大なリビングルーム。
アメリカ合衆国大統領と日本の内閣総理大臣は、冷や汗をダラダラと流しながら、俺がニトリ(のチラシを参考にして錬成した)風の高級ソファに背筋を伸ばして座っていた。
「お待たせしましたー。麦茶でいいですか?」
俺は100円均一で買ったプラスチックのコップに、キンキンに冷えた麦茶を注いでテーブル(ヒヒイロカネ製)に置いた。
そして、その横にタッパーをドンッと置く。
「あとこれ、お茶請けです。ちょっと硬いかもしれないですけど」
タッパーの中身は、先日東京湾でさばいた『クラーケンの姿焼き(余り物)』だ。
醤油とマヨネーズを添えてある。庶民の味方だ。
「これは……イカ、ですか?」
「ええ、まあ。近海モノです。どうぞ遠慮なく」
俺が勧めると、ジョージ大統領は外交上の礼儀として、恐る恐るイカの切れ端を口に運んだ。
そして、数秒咀嚼した瞬間。
「……ッ!?」
大統領の青い瞳が見開かれた。
ビクンッ!と屈強な体が跳ねる。
「Oh、My God……! なんだこの溢れ出す生命力(エナジー)は!?」
大統領の顔から、長年の激務による疲労とシワが一瞬で消え去った。
それを見た総理も慌ててイカを口に放り込む。
「うおおおっ!? こ、腰の痛みが……! それに、薄くなっていた頭髪に力強い息吹を感じるっ!」
「フハハハッ! 力が、力が漲ってくるぞタナカ! これなら素手で熊と戦える!」
二人して立ち上がり、謎のガッツポーズを決め始めた。
ただのイカ焼きで大げさな人たちだ。まあ、クラーケンの魔力(タウリン)が豊富に含まれてるから、栄養ドリンクよりは効くかもしれないけど。
「おや、お客さんですか?」
そこへ、奥の通路(地下2階へ続く階段)から、エプロン姿の長身の男が現れた。
ゴム手袋をはめ、手にはカビキラーを握っている。
「Boss! 地下50階までのトイレと風呂の清掃、終わったぜ! 俺の雷(サンダー)で水垢一つ残さず除菌してやった!」
「おう、ご苦労ジャック。麦茶飲むか?」
「Yeah! もらうぜ!」
ジャックは俺の隣に座り、麦茶を一気に飲み干した。
その光景を見たジョージ大統領が、石像のように固まった。
「ジャ、ジャック……? 我が国の最高戦力たる『雷帝』ジャック・サンダーボルト……なのか?」
「ん? おお、プレジデント(大統領)じゃないか! どうしたんだこんな極東の地下室まで」
ジャックが気さくに手を挙げる。
「どうしたんだ、じゃない!!」
大統領が頭を抱えて叫んだ。
「なぜ君がエプロンをしてトイレ掃除をしている!? 君はアメリカの誇り、全米No.1のヒーローだろうが!」
「No、No。大統領、俺はヒーローを引退したんだ」
ジャックは真剣な顔で首を振った。
「今の俺は、この『九条独立国』の清掃員見習い……『ジャック・クリーナーボルト』だ! Boss(湊)の掃除術の前では、俺の雷撃などチャッカマンに等しい!」
「チャッカマン!?」
さらに奥から、洗濯物のカゴを抱えたカレンも現れた。
「師匠、お布団干しておきましたわ。……あら、日本の総理大臣? それにアメリカのトップまで。師匠へのご挨拶(謁見)ですか?」
「『氷の女帝』カレン・オルステッドまで……なぜここに……!」
総理大臣が白目を剥きかけている。
世界最高のSランクとSSSランクが、エプロン姿で家事をしている異常空間。
首脳二人は完全にパニックに陥っていた。
「あ、あの! 九条先生!」
総理がテーブルに身を乗り出してきた。
「この地下空間の技術……そしてこの生命力を活性化させる未知の海産物……。我々日本国は、あなたと『不可侵条約』および『包括的同盟』を結びたい!」
「Wait! アメリカ合衆国もだ! 我が国は、この『地下帝国』を正式な国家として承認しよう!」
二人のトップが、必死の形相で俺に迫ってくる。
国家? 同盟?
何の話だ。さっきからスケールがデカすぎて意味がわからない。
(あ、なるほど)
俺はポンと手を打った。
これはつまり、「町内会(日本)」と「市役所(アメリカ)」みたいなものか。
勝手に地下を増築したから、税金とかルール(条約)の話をしに来たんだな。
「あー、わかりました。ルールには従いますよ。近所迷惑はかけたくないんで」
「本当ですか!? では、我が国に技術提供を……!」
「とりあえず、町内会費(税金)払えばいいんですよね? 月500円で足りますか? あと、ゴミ出しの日はちゃんと守りますから」
「「……町内会費?」」
総理と大統領の動きが止まった。
俺は財布から500円玉を二枚取り出し、テーブルの上に置いた。
「はい、これ今年度分です。領収書は『九条』でお願いしますね」
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この瞬間、世界のトップ二人は悟った。
この男は、狂っている。
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「……タナカ。我々は、触れてはいけない深淵を覗いてしまったようだ」
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