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EP 4
新築の床を汚す邪神を、デッキブラシでタコ殴りにしてみた
地下1階、オリハルコン製の高級リビングルーム。
そこに顕現した巨大な『邪神』は、部屋の空気を絶望のどん底へと突き落としていた。
『我ハ、深淵ヨリ這イ出ル者……万物ノ穢レヲ喰ライ、世界ヲ無ニ還ス神ナリ……!』
邪神の体からとめどなく溢れ出す、ドロドロの黒い瘴気。
それは、周囲のソファを腐らせ、天井のシャンデリアを曇らせていく。
「ひ、ヒィィィッ! SP! SPはどこだ!」
「もうダメだ……アメリカ合衆国は、今日ここで滅亡する……」
総理と大統領が、机の下でガタガタと震えながら抱き合っている。
ジャックとカレンも、決死の覚悟で武器を構えていた。
「Boss! アレはヤバいぜ! ただの魔力じゃねえ、概念としての『死』そのものだ!」
「師匠、ここは私たちが時間を稼ぎます! 未緒さんと一緒に地上へ逃げて――」
「ちょっと待ってろ」
俺は二人を押しのけ、ズカズカと邪神の正面へ歩み出た。
右手には、愛用のデッキブラシ。
『……愚カナ人間ヨ。我ニ立チ向カウカ。その魂、極上ノ泥ト化シテ――』
「おい」
俺は、邪神の威圧的なセリフを遮った。
そして、邪神の足元――ドロドロの瘴気がこびりついた、ピカピカのフローリングを指差した。
「お前さ、自分がどれだけ迷惑なことしてるか分かってる?」
『……ハ?』
「俺がさっき、どれだけ苦労してこのオリハルコンの床を磨き上げたと思ってんだ。ワックスまでかけたんだぞ。それを、泥靴のまま上がり込んでベチャベチャにしやがって……!」
俺の頭の中で、何かがブチッと切れる音がした。
「他人の家に土足で上がるバカがどこにいる!! 玄関で靴脱げ!!」
スパーーーンッ!!
『グペァッ!?』
俺のフルスイングしたデッキブラシが、邪神の顔面(泥の塊)にクリーンヒットした。
神話の存在が、情けないカエルのような声を上げて数メートル吹っ飛ぶ。
「なっ!?」
「ええっ!?」
ジャックとカレン、そして首脳二人が、信じられないものを見たように目を剥いた。
『キ、貴様ァァァッ! 我ヲ、神デアル我ヲ殴ッタナ!?』
邪神が激怒し、無数の泥の触手を鞭のように振るってくる。
触れるだけで命を削り取る、必殺の一撃。
「うるさい。そこ、動くな。汚れが広がるだろ」
俺は触手をヒラリとかわし、逆に邪神の懐へと潜り込んだ。
そして、邪神の胴体に向けて、デッキブラシを高速で突き立てる。
イメージするのは、カーペットにこぼれたワインのシミ抜きだ。
汚れの成分を分解し、根こそぎ叩き出す。
「――『解体(ステイン・リムーブ)』!!」
ダダダダダダダダダダダッ!!!
『ギャアアアアアアアッ!?』
俺の連撃が決まるたび、邪神の体を構成していた「黒い泥」が、シャボン玉のように弾けて消滅していく。
物理攻撃が効かないはずの神の肉体が、まるで高圧洗浄機を当てられた苔のように、ゴリゴリと削り取られていくのだ。
「オラッ! ここのシミがしつこいな! ゴシゴシゴシゴシッ!」
『痛イッ! 痛イ痛イ痛イッ!! ヤメロ、我ガ体ガ洗ワレテシマウゥゥッ!!』
邪神が涙目で命乞いを始める。
だが、オカン(清掃員)の怒りはそんなことでは収まらない。
「お前、よく見たらただの『ホコリと泥の塊』じゃないか。何百年も掃除してなかったから、そんなに真っ黒に固まっちゃったんだな」
俺は邪神を床に組み伏せ、背中からゴシゴシとブラシをかけた。
『アアアアアッ……! 我ノ……我ノ威厳ガ……アイデンティティガ……!』
見る見るうちに、数メートルあった邪神の巨体は削られ、みるみる縮んでいく。
やがて、全ての「泥」が洗い流された後。
床に転がっていたのは、黒い瘴気など微塵も感じさせない、バスケットボールほどの大きさの『透明な水晶体(コア)』だった。
「ふぅ……。よし、シミ抜き完了」
俺は額の汗を拭い、綺麗になった床を見て満足げに頷いた。
振り返ると、ジャックもカレンも総理も大統領も、全員が口から魂を半分出した状態で石化していた。
「……あの、Boss」
ジャックが震える声で尋ねる。
「その……足元に転がってる、ピカピカの玉は……?」
「ん? ああ、こいつか」
俺は足元の水晶体(元・邪神)を拾い上げた。
よく見ると、この水晶体、周囲の空気中にある微細なホコリや魔力のカスを、掃除機のようにスゥーッと吸い込んでいる。
「こいつ、元々は『穢れを食らう』性質があったみたいなんだよ。それが長年放置されて、ゴミ屋敷みたいに自分自身が汚泥の怪物になっちゃってただけで」
俺はポンッと手を打った。
「これ、ちょうどいいな。綺麗に洗ってフィルターを取り付ければ、超高性能な『全自動空気清浄機』になるぞ」
「「「……空気清浄機?」」」
「おう。花粉もPM2.5も、悪霊の呪いも全部吸い取ってくれる。これでこの地下帝国の空気も常にマイナスイオンたっぷりだ。一家に一台、邪神コアだな」
俺が水晶体をポンポンと叩くと、コアは『キュゥゥ……』と情けない音を立てて明滅した。
もはや神の威厳など欠片もなく、ただの便利な白物家電に成り下がった瞬間だった。
「……ミスター・タナカ。我々は今日、神が殺され……いや、家電に魔改造される瞬間を目撃したのですね」
「……ええ。九条先生を怒らせたら、我々もルンバに改造されかねません。絶対に忠誠を誓いましょう」
机の下で、日米のトップがガクガクと震えながら固く手を握り合っていた。
こうして、世界を滅ぼすはずだった最悪の邪神は、九条家のリビングの空気を守る、優秀な家電(シャープ製風)として第二の人生を歩むことになったのである。
地下1階、オリハルコン製の高級リビングルーム。
そこに顕現した巨大な『邪神』は、部屋の空気を絶望のどん底へと突き落としていた。
『我ハ、深淵ヨリ這イ出ル者……万物ノ穢レヲ喰ライ、世界ヲ無ニ還ス神ナリ……!』
邪神の体からとめどなく溢れ出す、ドロドロの黒い瘴気。
それは、周囲のソファを腐らせ、天井のシャンデリアを曇らせていく。
「ひ、ヒィィィッ! SP! SPはどこだ!」
「もうダメだ……アメリカ合衆国は、今日ここで滅亡する……」
総理と大統領が、机の下でガタガタと震えながら抱き合っている。
ジャックとカレンも、決死の覚悟で武器を構えていた。
「Boss! アレはヤバいぜ! ただの魔力じゃねえ、概念としての『死』そのものだ!」
「師匠、ここは私たちが時間を稼ぎます! 未緒さんと一緒に地上へ逃げて――」
「ちょっと待ってろ」
俺は二人を押しのけ、ズカズカと邪神の正面へ歩み出た。
右手には、愛用のデッキブラシ。
『……愚カナ人間ヨ。我ニ立チ向カウカ。その魂、極上ノ泥ト化シテ――』
「おい」
俺は、邪神の威圧的なセリフを遮った。
そして、邪神の足元――ドロドロの瘴気がこびりついた、ピカピカのフローリングを指差した。
「お前さ、自分がどれだけ迷惑なことしてるか分かってる?」
『……ハ?』
「俺がさっき、どれだけ苦労してこのオリハルコンの床を磨き上げたと思ってんだ。ワックスまでかけたんだぞ。それを、泥靴のまま上がり込んでベチャベチャにしやがって……!」
俺の頭の中で、何かがブチッと切れる音がした。
「他人の家に土足で上がるバカがどこにいる!! 玄関で靴脱げ!!」
スパーーーンッ!!
『グペァッ!?』
俺のフルスイングしたデッキブラシが、邪神の顔面(泥の塊)にクリーンヒットした。
神話の存在が、情けないカエルのような声を上げて数メートル吹っ飛ぶ。
「なっ!?」
「ええっ!?」
ジャックとカレン、そして首脳二人が、信じられないものを見たように目を剥いた。
『キ、貴様ァァァッ! 我ヲ、神デアル我ヲ殴ッタナ!?』
邪神が激怒し、無数の泥の触手を鞭のように振るってくる。
触れるだけで命を削り取る、必殺の一撃。
「うるさい。そこ、動くな。汚れが広がるだろ」
俺は触手をヒラリとかわし、逆に邪神の懐へと潜り込んだ。
そして、邪神の胴体に向けて、デッキブラシを高速で突き立てる。
イメージするのは、カーペットにこぼれたワインのシミ抜きだ。
汚れの成分を分解し、根こそぎ叩き出す。
「――『解体(ステイン・リムーブ)』!!」
ダダダダダダダダダダダッ!!!
『ギャアアアアアアアッ!?』
俺の連撃が決まるたび、邪神の体を構成していた「黒い泥」が、シャボン玉のように弾けて消滅していく。
物理攻撃が効かないはずの神の肉体が、まるで高圧洗浄機を当てられた苔のように、ゴリゴリと削り取られていくのだ。
「オラッ! ここのシミがしつこいな! ゴシゴシゴシゴシッ!」
『痛イッ! 痛イ痛イ痛イッ!! ヤメロ、我ガ体ガ洗ワレテシマウゥゥッ!!』
邪神が涙目で命乞いを始める。
だが、オカン(清掃員)の怒りはそんなことでは収まらない。
「お前、よく見たらただの『ホコリと泥の塊』じゃないか。何百年も掃除してなかったから、そんなに真っ黒に固まっちゃったんだな」
俺は邪神を床に組み伏せ、背中からゴシゴシとブラシをかけた。
『アアアアアッ……! 我ノ……我ノ威厳ガ……アイデンティティガ……!』
見る見るうちに、数メートルあった邪神の巨体は削られ、みるみる縮んでいく。
やがて、全ての「泥」が洗い流された後。
床に転がっていたのは、黒い瘴気など微塵も感じさせない、バスケットボールほどの大きさの『透明な水晶体(コア)』だった。
「ふぅ……。よし、シミ抜き完了」
俺は額の汗を拭い、綺麗になった床を見て満足げに頷いた。
振り返ると、ジャックもカレンも総理も大統領も、全員が口から魂を半分出した状態で石化していた。
「……あの、Boss」
ジャックが震える声で尋ねる。
「その……足元に転がってる、ピカピカの玉は……?」
「ん? ああ、こいつか」
俺は足元の水晶体(元・邪神)を拾い上げた。
よく見ると、この水晶体、周囲の空気中にある微細なホコリや魔力のカスを、掃除機のようにスゥーッと吸い込んでいる。
「こいつ、元々は『穢れを食らう』性質があったみたいなんだよ。それが長年放置されて、ゴミ屋敷みたいに自分自身が汚泥の怪物になっちゃってただけで」
俺はポンッと手を打った。
「これ、ちょうどいいな。綺麗に洗ってフィルターを取り付ければ、超高性能な『全自動空気清浄機』になるぞ」
「「「……空気清浄機?」」」
「おう。花粉もPM2.5も、悪霊の呪いも全部吸い取ってくれる。これでこの地下帝国の空気も常にマイナスイオンたっぷりだ。一家に一台、邪神コアだな」
俺が水晶体をポンポンと叩くと、コアは『キュゥゥ……』と情けない音を立てて明滅した。
もはや神の威厳など欠片もなく、ただの便利な白物家電に成り下がった瞬間だった。
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「……ええ。九条先生を怒らせたら、我々もルンバに改造されかねません。絶対に忠誠を誓いましょう」
机の下で、日米のトップがガクガクと震えながら固く手を握り合っていた。
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