善行しないと死ぬ!?医学生が【地球ショッピング】で異世界へ。現代物資と外科手術で人助けしていたら、災害級エルフと同居することになった件

月神世一

文字の大きさ
25 / 26

EP 25

しおりを挟む
極寒のドラム缶と、狸の鎮魂歌
「はぁっ……はぁっ……! もう、動けないよぉ……!」
タロウ中央公園の芝生の上で、キャルルが大の字になって荒い息を吐いていた。
インターバル走、プライオメトリクス(ジャンプ)トレーニング、そしてフォーム矯正。
数時間に及ぶ優太の特訓メニューは、冒険者の常識を超えた過酷なものだった。
「よくやった、キャルル! 今日のタイムは過去最高だ! 乳酸が溜まっている今こそが勝負だぞ!」
優太はストップウォッチを見ながら満足げに頷くと、空間魔法(スキル)を発動させた。
ズドォォン!!
重々しい音を立てて出現したのは、錆び一つない「ドラム缶」だった。
「優太さん……? それは何?」
「リカバリー用の浴槽だ。ルナ! この中に氷と水を入れてくれ! 満タンだ!」
「承知しましたわ」
待機していたルナが杖を一振りする。
『氷結生成(アイス・クリエイト)』
ドラム缶の中に大量の氷塊と冷水が満たされ、周囲の空気が一気に冷え込んだ。
「よし! **アイシング(寒冷療法)**だ! キャルル、すぐさまこのドラム缶の中に入れ!」
「えぇ~!? こ、この中に!?」
キャルルが耳を伏せて後ずさる。
運動直後の火照った体に、氷水。想像するだけで心臓が止まりそうだ。
「筋肉の炎症を抑え、疲労回復を早めるんだ! 明日も走るためには必要なことだぞ! さあ!」
「うぅ……優太さんの鬼ぃ! 分かったわよぉ!」
キャルルは覚悟を決め、服のまま(速乾性のスポーツウェア)ドラム缶へと飛び込んだ。
ザパァァァン!!
「ひゃうっ!? つ、冷たいいいいい!! 足が! 足がもげるぅぅ!!」
「我慢だ! 血管を収縮させて、老廃物を流すポンプ作用を促すんだ!」
悲鳴を上げるキャルルを、優太は心を鬼にして見守った。
【数分後】
「あがっていいぞ!」
「ぷはぁっ……! し、死ぬかと思った……」
震えるキャルルがドラム缶から這い出す。
そこへすかさずルナが駆け寄った。
「お疲れ様、キャルル。風邪を引いてしまいますわ」
ルナは大きなバスタオルでキャルルを包み込むと、反対の手から温風の魔法を放った。
『微風乾燥(ドライ・ブリーズ)』
それはまさに、最高級のマイナスイオンドライヤー。濡れた髪も服も、瞬く間にふわふわに乾いていく。
「あぁ~……あったかい……。ルナ、ありがとう……極楽……」
「よし、次は栄養補給だ! プロテイン(ホエイ100・ココア味)を一気飲みしろ!」
優太がシェイカーを差し出す。
キャルルはそれをゴクゴクと飲み干した。
「甘くて美味しい……。生き返る……」
「まだ終わりじゃないぞ。仕上げは『スポーツマッサージ』だ」
優太はレジャーシートを広げ、キャルルをうつ伏せに寝かせた。
「えっ? 優太さんが……マッサージ?」
「ああ。医大では東洋医学研究会にも入っていてね。指圧とマッサージの講習は受けてるから任せろ!」
優太はキャルルの太腿――鍛え上げられたハムストリングスに手を置いた。
「ひゃんっ♡」
「力を抜け。ここが張ってるな……」
優太の指が、正確にコリを捉えて押し込む。
医学的知識に基づいたその指圧は、痛気持ちいい絶妙なラインを攻めてくる。
「あぅ……そこっ……んっ♡ 優太さん……すご……上手ぅ……♡」
キャルルから艶めかしい声が漏れ始め、ルナが少し頬を膨らませる中、優太は指示を出した。
「よし、身体はほぐれてきた。あとは精神のリラックスだ。……リーザ! お前の出番だ!」
「はいっ! お任せください優太プロデューサー!」
リーザが一歩前に出た。
彼女の歌声には精神安定(バフ)の効果がある。
優太は「ゆったりとしたバラードか子守歌を」とオーダーしていた。
「キャルルの安眠のために……歌います。『タヌキの鎮魂歌』」
リーザが厳かに歌い始めた。
> ♪ポンポンポン~
> たぬきのお腹は ポンポコポン~

「(ん?)」
優太の手が止まりかけたが、マッサージを続けた。
> ♪頭はハーゲハゲ~
> お尻はツールツル~
> それでも生きてる けもの道~

あまりにも脱力感のある歌詞。
しかし、リーザの無駄に高い歌唱力とビブラートが、その歌詞を荘厳なアリアのように響かせていた。
「……ねぇ、リーザ。それ、リラックスさせる気ある?」
マッサージを受けながら、キャルルが突っ込んだ。
「あら、太郎様直伝の『日本のわらべ歌』ですわよ? 禿げ上がった頭とツルツルのお尻は、生命の無常さと滑らかさを表現しているとか」
「絶対違うと思う……」
しかし、氷風呂の疲労感、プロテインの満腹感、優太のマッサージの快感、そしてリーザの謎の子守歌。
これらが混ざり合い、キャルルの意識は急速にトロトロに溶けていった。
「あぁ……なんかもう……どうでもよくなってきた……。優太さんの手……気持ちいい……ムニャ……」
数分後。
キャルルはすやすやと寝息を立て始めた。
「よし、落ちたな」
優太は汗を拭った。
「ルナ、リーザ、協力ありがとう。これでキャルルの超回復は完璧だ」
「ふふ、優太さんこそお疲れ様ですわ」
「あの歌、本当に効いたんですのね……」
夕暮れの公園。
狸の歌が風に溶け、地上最速を目指すウサギは、愛するトレーナーの手によって深い眠りについた。
【ピロン!】
> システム通知
> サポート:効果的なリカバリーの実践
> 結果:キャルルの脚力・スタミナが大幅に向上(明日は5秒台が出るかもしれません)
> 獲得ポイント:1,500 P

優太は眠るキャルルをおんぶして立ち上がった。
その背中の重みは、確かな信頼と成長の証だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

​【マグナギア無双】チー牛の俺、牛丼食ってボドゲしてただけで、国王と女神に崇拝される~神速の指先で戦場を支配し、気づけば英雄でした~

月神世一
ファンタジー
「え、これ戦争? 新作VRゲーじゃなくて?」神速の指先で無自覚に英雄化! ​【あらすじ紹介文】 「三色チーズ牛丼、温玉乗せで」 それが、最強の英雄のエネルギー源だった――。 ​日本での辛い過去(ヤンキー客への恐怖)から逃げ出し、異世界「タロウ国」へ転移した元理髪師の千津牛太(22)。 コミュ障で陰キャな彼が、唯一輝ける場所……それは、大流行中の戦術ボードゲーム『マグナギア』の世界だった! ​元世界ランク1位のFPS技術(動体視力)× 天才理髪師の指先(精密操作)。 この二つが融合した時、ただの量産型人形は「神速の殺戮兵器」へと変貌する! ​「動きが単調ですね。Botですか?」 ​路地裏でヤンキーをボコボコにしていたら、その実力を国王に見初められ、軍事用巨大兵器『メガ・ギア』のテストパイロットに!? 本人は「ただのリアルな新作ゲーム」だと思い込んでいるが、彼がコントローラーを握るたび、敵国の騎士団は壊滅し、魔王軍は震え上がり、貧乏アイドルは救われる! ​見た目はチー牛、中身は魔王級。 勘違いから始まる、痛快ロボット無双ファンタジー、開幕!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...