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EP 1
2階でラーメン食ってたらトラックが突っ込んできた件
「ズズッ……うん、やっぱ深夜のカップ麺は最高だな」
僕、佐藤太郎(さとう たろう)・20歳は、経済学部に通う平凡な大学生だ。
深夜のコンビニバイトを終え、築40年のボロアパートの自室で、特売の醤油ラーメンをすすっていた。
喧嘩もしたことがない。恋人もできたことがない。ただ、平穏無事に大学を卒業して就職する。そんなモブみたいな人生を歩むと信じて疑わなかった。
その、瞬間までは。
――ドドォォォォォンッ!!!
「……え?」
壁が、爆発した。
いや、違う。粉々になった壁の向こうから現れたのは、見慣れたエンブレムを光らせた大型トラックの巨大なフロントガラスだった。
「は? いやいやいや、ここ2階――」
ドンッ!!!!
僕のモブ人生は、アパートの2階にトラックが突っ込んでくるという、物理法則を無視した理不尽すぎる暴力によって、あっけなく幕を閉じた。
* * *
「……ん、うーん……」
目を覚ますと、そこは四畳半ほどの和室だった。
部屋の中央には万年コタツ。そして、鼻を突くのはスルメの匂いと、微かなメンソールの煙草の香り。
「よくぞ参られました、勇気ある魂よ」
コタツに入っていたのは、くたびれたえんじ色のジャージに健康サンダルを突っかけた、金髪の美女だった。
彼女は右手に安酒(ラベルには『太陽・芋酒』と書かれている)、左手に半分かじったスルメを持ち、口元からピアニッシモ・メンソールの煙をふぅーっと吐き出した。
「あなたの善行、しかと見ておりましたわ。トラックに轢かれそうになった哀れな猫を助け、自らの命を散らすとは……わたくし、女神ルチアナは激しく感動いたしましたわ」
大仰な身振りでスルメを掲げる自称・女神。
僕は、数秒だけフリーズした後、限界まで息を吸い込んだ。
「はぁ!? 何を言ってるんだ!? 猫なんて助けてねぇよ!!」
「えっ」
「そもそも僕の部屋、アパートの2階だぞ!? なんで2階の部屋でラーメン食ってたのに、トラックが空飛んで突っ込んでくるんだよ! ありえねーだろ!!」
僕の渾身のツッコミに対し、女神ルチアナは「チッ」と舌打ちをしてスルメをかじった。
「あー、はいはい。細かいことは気にしないの。ほら、地球の物理法則とかたまにバグるから。ドンマイ」
「ドンマイで済むか僕の人生!!」
「まぁまぁ。死んじゃったもんは仕方ないじゃない? というわけで、あなたには剣と魔法の世界『アナステシア』へ転生してもらいます」
ルチアナはコタツの横から、商店街の福引きで見るようなガラポン抽選器をゴトリと取り出した。
「じゃ、さっそくこのガラポン回してスキル選んでね」
「いや、話の急展開すぎるだろ……って、ガラポン!? 異世界転生のチートスキルって、神様が厳かに授けてくれるもんじゃないの!?」
「めんどくさいからこれで一括管理してんの。ほら、早く回して。私、これからソシャゲのイベント周回あるんだから」
スマホの画面をチラチラ見ながら急かしてくるダメ女神。
僕は頭を抱えながらも、どうしようもない現実に急かされ、ガラポンの取っ手を回した。
ガラガラガラ……ポンッ。
出てきたのは、くすんだプラスチックの玉だった。ルチアナがそれを拾い上げ、欠伸混じりに読み上げる。
「おっ。ユニークスキル『100円ショップ』ね。はい決定」
「は? 100円……ショップ?」
「地球の100均アイテムが出せるやつ。それじゃ、新しい世界でも適当に頑張ってねぇ~!」
ルチアナが健康サンダルを履いた足で、僕のお尻をドンッと蹴り飛ばした。
「ちょっ、待て! 剣とか魔法とか、聖剣とかじゃないの!? なんで100均――うわああああああああっ!!」
足元にポッカリと開いた光の穴に、僕は真っ逆さまに落ちていく。
遠ざかる視界の先で、ダメ女神がコタツに潜り込みながら「あー、ガチャ渋すぎマジクソゲー」とぼやいているのが見えた。
こうして僕は、いつものパーカーとチノパン姿のまま。
尻ポケットに「1万円札が1枚だけ入った財布」を突っ込んだ状態で、剣と魔法と、魔獣が蠢く異世界へと蹴り落とされたのだった。
「ズズッ……うん、やっぱ深夜のカップ麺は最高だな」
僕、佐藤太郎(さとう たろう)・20歳は、経済学部に通う平凡な大学生だ。
深夜のコンビニバイトを終え、築40年のボロアパートの自室で、特売の醤油ラーメンをすすっていた。
喧嘩もしたことがない。恋人もできたことがない。ただ、平穏無事に大学を卒業して就職する。そんなモブみたいな人生を歩むと信じて疑わなかった。
その、瞬間までは。
――ドドォォォォォンッ!!!
「……え?」
壁が、爆発した。
いや、違う。粉々になった壁の向こうから現れたのは、見慣れたエンブレムを光らせた大型トラックの巨大なフロントガラスだった。
「は? いやいやいや、ここ2階――」
ドンッ!!!!
僕のモブ人生は、アパートの2階にトラックが突っ込んでくるという、物理法則を無視した理不尽すぎる暴力によって、あっけなく幕を閉じた。
* * *
「……ん、うーん……」
目を覚ますと、そこは四畳半ほどの和室だった。
部屋の中央には万年コタツ。そして、鼻を突くのはスルメの匂いと、微かなメンソールの煙草の香り。
「よくぞ参られました、勇気ある魂よ」
コタツに入っていたのは、くたびれたえんじ色のジャージに健康サンダルを突っかけた、金髪の美女だった。
彼女は右手に安酒(ラベルには『太陽・芋酒』と書かれている)、左手に半分かじったスルメを持ち、口元からピアニッシモ・メンソールの煙をふぅーっと吐き出した。
「あなたの善行、しかと見ておりましたわ。トラックに轢かれそうになった哀れな猫を助け、自らの命を散らすとは……わたくし、女神ルチアナは激しく感動いたしましたわ」
大仰な身振りでスルメを掲げる自称・女神。
僕は、数秒だけフリーズした後、限界まで息を吸い込んだ。
「はぁ!? 何を言ってるんだ!? 猫なんて助けてねぇよ!!」
「えっ」
「そもそも僕の部屋、アパートの2階だぞ!? なんで2階の部屋でラーメン食ってたのに、トラックが空飛んで突っ込んでくるんだよ! ありえねーだろ!!」
僕の渾身のツッコミに対し、女神ルチアナは「チッ」と舌打ちをしてスルメをかじった。
「あー、はいはい。細かいことは気にしないの。ほら、地球の物理法則とかたまにバグるから。ドンマイ」
「ドンマイで済むか僕の人生!!」
「まぁまぁ。死んじゃったもんは仕方ないじゃない? というわけで、あなたには剣と魔法の世界『アナステシア』へ転生してもらいます」
ルチアナはコタツの横から、商店街の福引きで見るようなガラポン抽選器をゴトリと取り出した。
「じゃ、さっそくこのガラポン回してスキル選んでね」
「いや、話の急展開すぎるだろ……って、ガラポン!? 異世界転生のチートスキルって、神様が厳かに授けてくれるもんじゃないの!?」
「めんどくさいからこれで一括管理してんの。ほら、早く回して。私、これからソシャゲのイベント周回あるんだから」
スマホの画面をチラチラ見ながら急かしてくるダメ女神。
僕は頭を抱えながらも、どうしようもない現実に急かされ、ガラポンの取っ手を回した。
ガラガラガラ……ポンッ。
出てきたのは、くすんだプラスチックの玉だった。ルチアナがそれを拾い上げ、欠伸混じりに読み上げる。
「おっ。ユニークスキル『100円ショップ』ね。はい決定」
「は? 100円……ショップ?」
「地球の100均アイテムが出せるやつ。それじゃ、新しい世界でも適当に頑張ってねぇ~!」
ルチアナが健康サンダルを履いた足で、僕のお尻をドンッと蹴り飛ばした。
「ちょっ、待て! 剣とか魔法とか、聖剣とかじゃないの!? なんで100均――うわああああああああっ!!」
足元にポッカリと開いた光の穴に、僕は真っ逆さまに落ちていく。
遠ざかる視界の先で、ダメ女神がコタツに潜り込みながら「あー、ガチャ渋すぎマジクソゲー」とぼやいているのが見えた。
こうして僕は、いつものパーカーとチノパン姿のまま。
尻ポケットに「1万円札が1枚だけ入った財布」を突っ込んだ状態で、剣と魔法と、魔獣が蠢く異世界へと蹴り落とされたのだった。
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