『異世界の通貨が日本円!? スキル【100円ショップ】をもらった平凡大学生、100均グッズと弓の戦術で最強美少女たちと無双&経済支配!』

月神世一

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EP 5

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いざアルクス領へ! 期待と不安の馬車旅
​ガタゴト、ガタゴト。
帝都ルナミスを出発した豪奢な馬車が、街道を揺れながら進んでいく。
​「すごい……タロウさんの領地! タロウさんの国ですよ!」
馬車の窓から身を乗り出し、流れる景色を見つめながらサリーが目をキラキラと輝かせている。
​「国ではなく、男爵領よ、サリー。でも……ええ、そうね。一国一城の主ということには変わりないわ。タロウ……いえ、タロウ男爵。これからは私があなたの専属騎士として、その背中と領地を完璧に守り抜いてみせるわ」
向かいの席に座るライザは、いつも以上に背筋をピンと伸ばし、誇らしげに胸を張っていた。
​「二人とも、あんまりハードル上げないでよ。僕はただ、静かで安全な暮らしがしたいだけなんだから」
僕は苦笑しながら、手元の帝国地図に目を落とした。
​帝都から馬車で数日の距離にある辺境の地、アルクス領。
地図上ではかなりの面積を誇っているが、その実態はどうなのか。
​「……セバスさん。実際のところ、アルクス領ってどんな場所なんですか?」
​僕が尋ねると、馬車の隅で体育座りをして完全に魂が抜けていた初老の執事――セバスが、どんよりとした目を向けてきた。
​「……アルクス領、ですか。一言で言えば、『手付かずの荒野』でございます……」
「荒野?」
​「はい。土地は広く、土壌のポテンシャルも悪くはありません。山には鉱脈の噂すらあります。ですが……如何せん、開発資金と技術が絶望的に足りていないのです」
セバスは大きなため息を吐き、片眼鏡(モノクル)を押し上げた。
​「道は舗装されておらず、雨が降れば泥沼。農業は天候に左右され万年不作気味。まともな井戸も少なく、領民の士気もどん底……。歴代の領主が何人も逃げ出した、いわくつきの貧乏領地。それが、あなたの治めるアルクス領の真実でございます……ああ、帝都のネオンが遠ざかっていく……私のキャバクラ……」
​再びシクシクと泣き始めるセバスを放置し、僕は地図を見つめ直した。
サリーとライザは「不作」「貧乏領地」という言葉に少し不安そうな顔をしている。
​だが、僕の心の中では、全く逆の感情が渦巻いていた。
​(……インフラがゼロ? 既存のシステムがない? 最高じゃないか!)
​もし、すでにガチガチにルールや特権階級が固まっている豊かな領地だったら、僕の「異物(100均グッズ)」を介入させる隙間がなく、摩擦が起きていただろう。
何もない辺境だからこそ、帝都の目も届かない。しがらみもない。
完全に真っ白なキャンバスだ。
​僕の脳内で、地球の記憶と『100円ショップ』の検索リストが猛烈な勢いでリンクし、青写真を描き始めていく。
​(天候に左右される農業? なら、100均の『農業用ビニールシート』と『園芸用支柱』を大量に出して、巨大なビニールハウス群(全天候型農園)を作ればいい。化学肥料だって100円で出し放題だ)
(水が汚い? 100均の『高性能浄水フィルター』を通せば、泥水だって一瞬で安全な飲料水になる)
(夜が暗くて治安が悪いなら、『ソーラー充電式LEDセンサーライト』を等間隔で設置してやれば、夜でも本が読める明るさになるぞ!)
​しかも、力仕事や専門的な施工は、横で泣いている「有能な執事(セバス)」が領民を動かして全部やってくれるのだ。僕はただ、無限に湧き出る100均の資材を提供するだけでいい。
​「ふふっ……あははははっ!」
「タ、タロウさん? どうしたんですか、急に悪い顔で笑い出して……」
「男爵という重圧で、ついに頭が……?」
​ドン引きする二人に向けて、僕は自信満々に宣言した。
​「心配ないよ。道がないなら作ればいい。水がないなら引っ張ればいい。僕のスキルと、二人の力、それにセバスさんの行政手腕があれば、あの貧乏領地を『帝国で一番豊かで快適な楽園』に作り変えることだって絶対にできる!」
​僕の力強い言葉に、サリーとライザの顔にパッと明るい笑みが戻った。
「はいっ! 私も回復魔法で、領民の皆さんをいっぱい助けます!」
「ええ。治安維持と魔獣退治は、私に任せて頂戴」
​「……タロウ様。その無根拠な自信、どうか領館に到着するまで持ちこたえてくださいよ……」
セバスだけが、恨めしそうに窓の外の荒野を見つめていた。
​そして数日後。
馬車はついに、アルクス領の中心部に建つ、古びた領主の館へと到着した。
​「ここが、今日から僕たちの……」
ギィィィッ、と重い音を立てて館の扉を開け放つ。
​だが、そこには、帝都からやってきた僕たちを待ち受ける『先客』の姿があった。
​「おおっ! 遅かったじゃねぇか、男爵様!」
「待ちくたびれて、酒が全部空になっちまったぞ、坊主!」
​広間で勝手に宴会を開いていたその見慣れた二人の顔を見て、僕は思わず頭を抱えることになるのだった。
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