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EP 2
いざ天魔窟へ! 100均キャンプとAIマッピング
アルクス領を出発して三日。
僕たちを乗せた馬車は、切り立った岩山のふもと、ぽっかりと開いた巨大な闇の顎(あぎと)の前に到着した。
「ここが、生きて帰った者がいないと言われるS級ダンジョン……『天魔窟』」
馬車を降りたライザが、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
洞窟の奥からは、生ぬるくてカビ臭い風と共に、低く唸るような魔獣の気配が絶え間なく漏れ出している。太陽の光すら飲み込むような漆黒の闇だ。
「タ、タロウさん……本当に私たちだけで入るんですか?」
サリーが僕の袖をギュッと掴み、不安そうに見上げてくる。
普通なら、数十人の精鋭パーティーを組み、膨大な物資と決死の覚悟を持って挑むべき場所なのだろう。
だが、僕はポケットからルチアナのスマホを取り出し、画面をタップして笑った。
「大丈夫だよ。僕たちには『最強の目』がある」
『ピピッ。ダンジョン内への進入を確認。これより、当AI【賢者君】による空間スキャンを開始します。……地形データ、トラップの配置、および生体熱源反応を抽出。3Dマップの構築を完了しました』
スマホの画面上に、ダンジョン内部の構造が青いホログラムのように浮かび上がった。
落とし穴や毒矢のトラップは赤く点滅し、魔物が潜んでいる場所にはドクロのマークが表示されている。
「うそ……壁の向こうの魔物の数まで、完全に把握できるの……?」
ライザが信じられないものを見る目でスマホを覗き込む。
「右の通路の曲がり角に、ゴブリンの上位種が三匹待ち伏せしてるよ。ライザ、先制攻撃できる?」
「……ええ、容易いわ。居場所さえ分かっていれば、ただの的よ!」
ダンジョンへ足を踏み入れた僕たちは、賢者君のナビゲートに従ってサクサクと進んだ。
トラップは全て事前に迂回し、待ち伏せしている敵にはライザが壁越しに奇襲をかけ、万が一傷を負ってもサリーが即座に『ヒール』で回復する。
S級ダンジョンの凶悪な迷宮構造は、最新AIのマッピング機能の前では「ただの少し暗い散歩道」と化していた。
そして数時間後。
僕たちはあっという間に中層エリアの安全地帯(セーフエリア)と思われる、開けた空間に到達した。
「よし、今日はここで野営(キャンプ)にしよう」
僕が宣言すると、ライザとサリーは少し顔をしかめた。
「野営って……この冷たくて硬い岩の床で寝るのよね。焚き火をすれば煙で魔物が寄ってくるし、毛布一枚で寒さに耐えるしかないわ」
「お水も冷たいですし、ご飯も干し肉と硬いパンだけですね……冒険者ですから、我慢しますけど……」
二人が覚悟を決めたように岩場に座ろうとした、その時。
「誰がそんな過酷な野営をするって言った? 僕のチートを忘れてもらっちゃ困るな」
僕はニヤリと笑い、スキル『100円ショップ』を連続で起動した。
ポンッ! ポンッ! ポンッ!
「まずはこれ、100均の【厚手アルミレジャーマット】と【寝袋】! 床の冷気を完全にシャットアウトするぞ。明かりは火を使わない【LEDランタン】だ!」
カチッ、とスイッチを入れると、太陽のように明るく、かつ煙の出ない白い光が空間を照らし出した。
「なっ……なんて明るくて暖かそうな寝床なの……!」
「タロウさん、これ……! 【ボディシート(極冷メントール配合)】って書いてあります! すごくいい匂いがして、体を拭くとお風呂上がりのようにサッパリしますぅ!」
汗を拭き終え、フカフカの寝袋の上に座り込んだ二人に、僕はさらに追い打ちをかける。
「食事の準備もできてるぞ」
100均のアウトドアコーナーの覇者【メスティン(飯盒)】と【固形燃料】、そして【折りたたみ式ミニストーブ】を使って、僕は手早くお湯を沸かしていた。
「100均の【フリーズドライ・コーンスープ】と、【レトルトのデミグラスハンバーグ】だ。湯煎するだけで、熱々のご馳走の完成さ」
「あったか~い……甘くて、トウモロコシの味が濃厚ですぅ……!」
「このお肉(ハンバーグ)、信じられないくらい柔らかくてジューシーだわ。野営でこんな温かくて美味しいものが食べられるなんて……」
LEDランタンの明るい光の下、湯気を立てるスープとハンバーグを頬張る二人。
S級ダンジョンの真っ只中だというのに、悲壮感や緊張感はゼロ。完全に休日の「グランピング(豪華なキャンプ)」状態だった。
「ふふっ。マッスルな自警団の暑苦しさも、ニンニクの強烈な匂いもない。本当に三人だけの、静かな夜ね」
ライザが食後のコーヒー(もちろん100均のドリップバッグ)を飲みながら、優しく微笑んだ。
「はい。タロウさんがいれば、どんなに怖い場所でも、こんなに安心できるんですね」
サリーも寝袋にくるまりながら、トロンとした目で僕を見つめてくる。
(……うん、最高だ)
可愛い女の子二人と、快適な100均キャンプ。
これこそが異世界ファンタジーの醍醐味ってもんだ。
僕たちは他愛のない会話で笑い合い、温かい寝袋に潜り込んで、朝まで一度も魔物に襲われることなく熟睡した。
ピクニック気分のまま、S級ダンジョンの攻略はあまりにも順調に進んでいた。
――だが。
この時の僕たちは、完全に油断していたのだ。
ここが、生きて帰った者がいない『天魔窟』の真の領域であるということを。
翌朝、下層への階段を降りた瞬間から。
賢者君のマップから、全ての『生体反応(赤いドット)』が、不自然なほど完全に消え失せたことに、僕たちはまだ気づいていなかった。
アルクス領を出発して三日。
僕たちを乗せた馬車は、切り立った岩山のふもと、ぽっかりと開いた巨大な闇の顎(あぎと)の前に到着した。
「ここが、生きて帰った者がいないと言われるS級ダンジョン……『天魔窟』」
馬車を降りたライザが、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
洞窟の奥からは、生ぬるくてカビ臭い風と共に、低く唸るような魔獣の気配が絶え間なく漏れ出している。太陽の光すら飲み込むような漆黒の闇だ。
「タ、タロウさん……本当に私たちだけで入るんですか?」
サリーが僕の袖をギュッと掴み、不安そうに見上げてくる。
普通なら、数十人の精鋭パーティーを組み、膨大な物資と決死の覚悟を持って挑むべき場所なのだろう。
だが、僕はポケットからルチアナのスマホを取り出し、画面をタップして笑った。
「大丈夫だよ。僕たちには『最強の目』がある」
『ピピッ。ダンジョン内への進入を確認。これより、当AI【賢者君】による空間スキャンを開始します。……地形データ、トラップの配置、および生体熱源反応を抽出。3Dマップの構築を完了しました』
スマホの画面上に、ダンジョン内部の構造が青いホログラムのように浮かび上がった。
落とし穴や毒矢のトラップは赤く点滅し、魔物が潜んでいる場所にはドクロのマークが表示されている。
「うそ……壁の向こうの魔物の数まで、完全に把握できるの……?」
ライザが信じられないものを見る目でスマホを覗き込む。
「右の通路の曲がり角に、ゴブリンの上位種が三匹待ち伏せしてるよ。ライザ、先制攻撃できる?」
「……ええ、容易いわ。居場所さえ分かっていれば、ただの的よ!」
ダンジョンへ足を踏み入れた僕たちは、賢者君のナビゲートに従ってサクサクと進んだ。
トラップは全て事前に迂回し、待ち伏せしている敵にはライザが壁越しに奇襲をかけ、万が一傷を負ってもサリーが即座に『ヒール』で回復する。
S級ダンジョンの凶悪な迷宮構造は、最新AIのマッピング機能の前では「ただの少し暗い散歩道」と化していた。
そして数時間後。
僕たちはあっという間に中層エリアの安全地帯(セーフエリア)と思われる、開けた空間に到達した。
「よし、今日はここで野営(キャンプ)にしよう」
僕が宣言すると、ライザとサリーは少し顔をしかめた。
「野営って……この冷たくて硬い岩の床で寝るのよね。焚き火をすれば煙で魔物が寄ってくるし、毛布一枚で寒さに耐えるしかないわ」
「お水も冷たいですし、ご飯も干し肉と硬いパンだけですね……冒険者ですから、我慢しますけど……」
二人が覚悟を決めたように岩場に座ろうとした、その時。
「誰がそんな過酷な野営をするって言った? 僕のチートを忘れてもらっちゃ困るな」
僕はニヤリと笑い、スキル『100円ショップ』を連続で起動した。
ポンッ! ポンッ! ポンッ!
「まずはこれ、100均の【厚手アルミレジャーマット】と【寝袋】! 床の冷気を完全にシャットアウトするぞ。明かりは火を使わない【LEDランタン】だ!」
カチッ、とスイッチを入れると、太陽のように明るく、かつ煙の出ない白い光が空間を照らし出した。
「なっ……なんて明るくて暖かそうな寝床なの……!」
「タロウさん、これ……! 【ボディシート(極冷メントール配合)】って書いてあります! すごくいい匂いがして、体を拭くとお風呂上がりのようにサッパリしますぅ!」
汗を拭き終え、フカフカの寝袋の上に座り込んだ二人に、僕はさらに追い打ちをかける。
「食事の準備もできてるぞ」
100均のアウトドアコーナーの覇者【メスティン(飯盒)】と【固形燃料】、そして【折りたたみ式ミニストーブ】を使って、僕は手早くお湯を沸かしていた。
「100均の【フリーズドライ・コーンスープ】と、【レトルトのデミグラスハンバーグ】だ。湯煎するだけで、熱々のご馳走の完成さ」
「あったか~い……甘くて、トウモロコシの味が濃厚ですぅ……!」
「このお肉(ハンバーグ)、信じられないくらい柔らかくてジューシーだわ。野営でこんな温かくて美味しいものが食べられるなんて……」
LEDランタンの明るい光の下、湯気を立てるスープとハンバーグを頬張る二人。
S級ダンジョンの真っ只中だというのに、悲壮感や緊張感はゼロ。完全に休日の「グランピング(豪華なキャンプ)」状態だった。
「ふふっ。マッスルな自警団の暑苦しさも、ニンニクの強烈な匂いもない。本当に三人だけの、静かな夜ね」
ライザが食後のコーヒー(もちろん100均のドリップバッグ)を飲みながら、優しく微笑んだ。
「はい。タロウさんがいれば、どんなに怖い場所でも、こんなに安心できるんですね」
サリーも寝袋にくるまりながら、トロンとした目で僕を見つめてくる。
(……うん、最高だ)
可愛い女の子二人と、快適な100均キャンプ。
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僕たちは他愛のない会話で笑い合い、温かい寝袋に潜り込んで、朝まで一度も魔物に襲われることなく熟睡した。
ピクニック気分のまま、S級ダンジョンの攻略はあまりにも順調に進んでいた。
――だが。
この時の僕たちは、完全に油断していたのだ。
ここが、生きて帰った者がいない『天魔窟』の真の領域であるということを。
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