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EP 4
最下層の絶望。暴君ベヒーモス顕現
ギギギギィィィィ……ッ!
黒曜石の巨大な扉が、重々しい音を立てて開け放たれた。
その先に広がっていたのは、洞窟という枠組みを完全に無視した、広大なドーム状の地下空間だった。
天井には妖しく発光する鉱石が群生し、薄暗い青色の光が空間全体を不気味に照らし出している。
そして、その空間の中央。
「……嘘でしょ」
ライザの口から、乾いた声が漏れた。
青白い光に照らされ、巨大な『山』がうずくまっていた。
いや、山ではない。それは規則正しく波打つ呼吸に合わせて、ゆっくりと上下に動いている。
ズズン……。ズズン……。
扉越しに聞こえていた心音は、その『山』から発せられているものだった。
僕たちが足を踏み入れた気配を察知したのか。
巨大な岩の塊が、ゆっくりと持ち上がる。
「グルルルルルル……」
地底の底から湧き上がるような、低く、重い唸り声。
立ち上がったその姿は、全長数十メートルに及ぶ、四つ足の巨大な魔獣だった。
全身を覆うのは、刃物を寄せ付けないであろう、漆黒の鋼鉄のような鱗と分厚い筋肉の鎧。太い四肢は神殿の柱のように強靭で、額からは天を突くような二本の巨大な角が生えている。
そして、マグマのように赤く燃え盛る双眸が、僕たち三人を見下ろした。
『ピピッ。警告。生体エネルギーの異常膨張を確認。対象【暴君ベヒーモス】が戦闘態勢に移行しました。マスター、直ちに撤退を――』
賢者君の無機質な音声が、途中で掻き消された。
「グガァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」
ベヒーモスが、天を仰いで咆哮を上げた。
それは単なる鳴き声ではなかった。音波が物理的な破壊力(衝撃波)を伴い、暴風となって空間を荒れ狂う。
「きゃぁぁっ!?」
「くっ……! 風圧だけで、体が……!」
ドーム内の岩柱が次々とへし折れ、猛烈な突風が僕たちを襲った。
体重の軽いサリーが吹き飛ばされそうになり、僕はとっさに彼女の腕を掴んで地面に伏せた。ライザも剣を地面に突き立て、必死に風圧に耐えている。
鼓膜が破れそうなほどの音の暴力。
肺の空気が強制的に絞り出され、呼吸すらままならない。
(これが、神話級の魔獣……! 今までのゴブリンや魔狼とは、次元が違いすぎる……!)
僕は地面に這いつくばったまま、背筋に強烈な悪寒が走るのを感じた。
AIの計算や、100均のアウトドアグッズでピクニック気分に浸っていた僕の『慢心』を、圧倒的な暴力が粉々に打ち砕いていく。
こんな化け物、どうやって倒すんだ? ガンドフさんの爆発矢すら、あの鋼鉄の皮膚の前では豆鉄砲にしかならないんじゃないか?
咆哮が止み、土煙が晴れる。
ベヒーモスは、虫ケラを見るような冷酷な赤い瞳で、ゆっくりと僕たちに向けて巨大な前脚を振り上げた。
その一撃が地面を叩けば、僕たちなど一瞬で肉塊に変わるだろう。
「タロウ! サリー! 散開して!!」
ライザが、恐怖を振り払うかのように鋭く叫んだ。
彼女は愛剣に闘気を纏わせ、ベヒーモスの側面へと弾かれたように駆け出す。
「相手が神話の化け物だろうと関係ないわ! 私がヘイト(注意)を引く! サリーはタロウの防御を最優先に!」
「は、はいっ! 光よ、我らを守る盾となれ!」
サリーが震える手で杖を構え、詠唱を始める。
ライザの姿を見たベヒーモスが、鬱陶しそうに鼻を鳴らし、その巨体をゆっくりと旋回させた。
「……やるしかない」
僕は歯を食いしばり、立ち上がった。
100均チートで出せる武器はない。僕の手にあるのは、異世界のドワーフ(ガンドフ)が作ってくれた長弓と爆発矢、そして地球のAIスマホだけだ。
『ピピッ。対象の弱点を解析中……。表皮の硬度はミスリル合金を凌駕。通常の物理攻撃による貫通率は0.001%未満です』
絶望的なデータを吐き出すスマホをポケットに押し込み、僕は弓を引き絞った。
絶対的な強者との、逃げ場のない死闘。
箱庭の平和にボケていた僕たちに、容赦のない現実が牙を剥いた瞬間だった。
ギギギギィィィィ……ッ!
黒曜石の巨大な扉が、重々しい音を立てて開け放たれた。
その先に広がっていたのは、洞窟という枠組みを完全に無視した、広大なドーム状の地下空間だった。
天井には妖しく発光する鉱石が群生し、薄暗い青色の光が空間全体を不気味に照らし出している。
そして、その空間の中央。
「……嘘でしょ」
ライザの口から、乾いた声が漏れた。
青白い光に照らされ、巨大な『山』がうずくまっていた。
いや、山ではない。それは規則正しく波打つ呼吸に合わせて、ゆっくりと上下に動いている。
ズズン……。ズズン……。
扉越しに聞こえていた心音は、その『山』から発せられているものだった。
僕たちが足を踏み入れた気配を察知したのか。
巨大な岩の塊が、ゆっくりと持ち上がる。
「グルルルルルル……」
地底の底から湧き上がるような、低く、重い唸り声。
立ち上がったその姿は、全長数十メートルに及ぶ、四つ足の巨大な魔獣だった。
全身を覆うのは、刃物を寄せ付けないであろう、漆黒の鋼鉄のような鱗と分厚い筋肉の鎧。太い四肢は神殿の柱のように強靭で、額からは天を突くような二本の巨大な角が生えている。
そして、マグマのように赤く燃え盛る双眸が、僕たち三人を見下ろした。
『ピピッ。警告。生体エネルギーの異常膨張を確認。対象【暴君ベヒーモス】が戦闘態勢に移行しました。マスター、直ちに撤退を――』
賢者君の無機質な音声が、途中で掻き消された。
「グガァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」
ベヒーモスが、天を仰いで咆哮を上げた。
それは単なる鳴き声ではなかった。音波が物理的な破壊力(衝撃波)を伴い、暴風となって空間を荒れ狂う。
「きゃぁぁっ!?」
「くっ……! 風圧だけで、体が……!」
ドーム内の岩柱が次々とへし折れ、猛烈な突風が僕たちを襲った。
体重の軽いサリーが吹き飛ばされそうになり、僕はとっさに彼女の腕を掴んで地面に伏せた。ライザも剣を地面に突き立て、必死に風圧に耐えている。
鼓膜が破れそうなほどの音の暴力。
肺の空気が強制的に絞り出され、呼吸すらままならない。
(これが、神話級の魔獣……! 今までのゴブリンや魔狼とは、次元が違いすぎる……!)
僕は地面に這いつくばったまま、背筋に強烈な悪寒が走るのを感じた。
AIの計算や、100均のアウトドアグッズでピクニック気分に浸っていた僕の『慢心』を、圧倒的な暴力が粉々に打ち砕いていく。
こんな化け物、どうやって倒すんだ? ガンドフさんの爆発矢すら、あの鋼鉄の皮膚の前では豆鉄砲にしかならないんじゃないか?
咆哮が止み、土煙が晴れる。
ベヒーモスは、虫ケラを見るような冷酷な赤い瞳で、ゆっくりと僕たちに向けて巨大な前脚を振り上げた。
その一撃が地面を叩けば、僕たちなど一瞬で肉塊に変わるだろう。
「タロウ! サリー! 散開して!!」
ライザが、恐怖を振り払うかのように鋭く叫んだ。
彼女は愛剣に闘気を纏わせ、ベヒーモスの側面へと弾かれたように駆け出す。
「相手が神話の化け物だろうと関係ないわ! 私がヘイト(注意)を引く! サリーはタロウの防御を最優先に!」
「は、はいっ! 光よ、我らを守る盾となれ!」
サリーが震える手で杖を構え、詠唱を始める。
ライザの姿を見たベヒーモスが、鬱陶しそうに鼻を鳴らし、その巨体をゆっくりと旋回させた。
「……やるしかない」
僕は歯を食いしばり、立ち上がった。
100均チートで出せる武器はない。僕の手にあるのは、異世界のドワーフ(ガンドフ)が作ってくれた長弓と爆発矢、そして地球のAIスマホだけだ。
『ピピッ。対象の弱点を解析中……。表皮の硬度はミスリル合金を凌駕。通常の物理攻撃による貫通率は0.001%未満です』
絶望的なデータを吐き出すスマホをポケットに押し込み、僕は弓を引き絞った。
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