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第二章 何でもお助け探偵団
EP 5
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初任務 野良犬と国家機密 ~そのデータ、黒歴史につき~
夕闇が迫るタロー・シティの裏路地。
そこは、華やかな表通りとは異なり、ゴミ箱と室外機の熱気が支配する大人の世界だ。
だが今、そこに似つかわしくない小さな影が三つあった。
「……目標(ターゲット)、確認した」
物陰から顔を出したのは、暗視ゴーグル(ネット通販で買ったサバゲー用)を装着したリアンだ。
彼は手元のコントローラーを操作し、上空の『竜丸』からの映像を確認している。
「路地の奥、ゴミ集積所の前だ。……チッ、デカいな。あれ本当に犬か?」
モニターに映っているのは、通常の犬の三倍はある巨体。全身が薄暗い炎に包まれ、三つの首を持っているようにも見える(映像の乱れでなければ)。
「ケルベロスの幼体だな。魔界の番犬がなんでこんな所に?」
俺(ミルマ)は冷静に分析した。
植物ネットワークの情報通りだ。あれはただの野良犬じゃない。軍の実験施設か、あるいは魔族の密輸業者が逃がした危険生物だ。
「ケルベロス!? それって倒したら、すごーくポイント貰えるんじゃない!?」
リリスが目を輝かせて飛び出そうとする。
「待てバカ! 真正面から行くな!」
リアンが慌ててリリスの襟首を掴んで引き戻す。
「いいか、今回の目的は『首輪のデータ』の回収だ。犬を殺してデータごと燃やしたら意味がない。……俺の『自販機化阻止』がかかってるんだぞ!」
(まだ言ってるよ……)
俺はポーンに合図を送った。
ポーンは無言で右腕のパイルバンカーを「捕獲用ネットランチャー」に換装する。
「作戦通り行くぞ。俺(ポーン)が退路を断つ。リアンは麻酔で動きを止めろ。リリスは……まあ、なんか適当に騒いで気を逸らせ」
「了解! 騒ぐのは得意よ!」
***
作戦開始。
まず、ポーンが路地の出口に仁王立ちし、威圧感を放つ。
『――警告。対象生物の捕獲を開始する』
ケルベロス(仮)が唸り声を上げ、ポーンに向かって炎のブレスを吐いた。
ボワッ!!
『耐熱防御。問題なし』
ポーンは植物製のバリアを展開し、炎を涼しい顔で防ぐ。
その隙に、屋根の上からリアンが動いた。
「寝てろ、駄犬!」
彼が操る『ミニ丸』が急降下し、ケルベロスの首筋に麻酔針を突き刺そうとする。
だが。
ガブッ!!
「あ」
リアンの間の抜けた声が響いた。
ケルベロスの真ん中の首が、見事な動体視力で『ミニ丸』を空中で噛み砕いたのだ。
「俺のミニ丸がぁぁぁ!! 3万円もしたのにぃぃぃ!!」
リアンが絶叫する。
怒ったケルベロスが、今度はリアンのいる屋根に向かって火球を放つ。
「うおっ!? やべぇ!」
リアンは『弓丸』を盾にして回避するが、黒焦げになって落下した。
「くそっ、素早いな! これじゃ麻酔が撃てねえ!」
「ミルマ様、実力行使(パイルバンカー)で黙らせますか?」
「待てポーン。データが壊れる。……リリス! 出番だ!」
俺は最終兵器(ガチャ中毒者)に指示を出した。
「任せて! ここでSRを出して逆転よ!」
リリスはブレスレットに魔力を込めた。
今回の軍資金は、リアンが提供した「500円玉(500KP相当)」。
5連ガチャだ。
「お願い神様! 『対猛獣用兵器』来て!!」
ゴゴゴゴゴ……コロン。
虚空から落ちてきたのは、巨大な段ボール箱だった。
箱には、見慣れた日本の通販ロゴ。
そして中から出てきたのは――
『全自動卓球マシン ~ピンポン君~』
「……は?」
全員の動きが止まった。
リリスが箱の説明書きを読む。
「えっと……『一人でも楽しくピンポン練習! 高速スピンもお任せ!』だって」
「ふざけんな! 犬相手に卓球してどうすんだ!」
リアンがキレる。
だが、リリスは諦めなかった。
「ええい! スイッチオン!」
ブィィィィィン!!
マシンが起動し、ものすごい勢いでピンポン玉を連射し始めた。
シュパパパパパパッ!!
無数の白い玉が、ケルベロスに向かって放たれる。
所詮はプラスチックの玉。ダメージなどあるはずもない。
作戦失敗か――と思われた。
「わんっ!?」
「わふっ! くぅ~ん!」
ケルベロスの三つの首が、一斉にピンポン玉を目で追い始めた。
右へ左へ、飛び交う玉に首が釣られる。
猛獣の本能よりも、「動くものを追いかけたい」という犬の本能が勝ってしまったのだ。
「はっはっは! 玉だ! 玉がいっぱいだぞ!」(幻聴)
ケルベロスは尻尾をブンブン振り回し、炎を吐くのも忘れてピンポン玉を追いかけ始めた。
完全に無防備だ。
「……今だリアン!」
「チッ、こんなマヌケな勝ち方があるかよ!」
リアンは屋根から飛び降りると、隙だらけのケルベロスの背後に回り込んだ。
手にしたのは、ネット通販で買った『高出力スタンガン』。
バチバチバチッ!!
「ギャンッ!?」
電撃を受け、ケルベロスは白目を剥いて気絶した。
口にはピンポン玉をくわえたままで。
***
「確保完了。……ふぅ、酷い現場だ」
気絶した犬の首から、リアンが目的の「魔石付き首輪」を外した。
路地にはピンポン玉が散乱し、リリスがそれを拾い集めている(「ゴミ拾いだから1ポイント!」と言いながら)。
「さて、いよいよだな。このデータの中身……」
リアンは緊張した面持ちで、魔石解析機(自作)を取り出した。
もしここに、太郎王による「転生者・自販機化計画」の全貌が記されていたら、俺たちは今夜にでも国を捨てて逃亡しなければならない。
「解析開始……プロテクト解除……出たぞ」
ホログラムが空中に投影される。
タイトルは『Top Secret』。
リアンがゴクリと喉を鳴らす。
そして、表示された画像データは――
『太郎のポエム日記 ~異世界でラーメン屋になりたかった~』
○月×日:今日も宰相に怒られた。予算会議とかマジだるい。俺はただ、豚骨スープを煮込んでいたいだけなのに……。
(イラスト):寸胴鍋をかき混ぜる、やたら美化された太郎の絵。
○月△日:新しい必殺技名を考えた。「タロー・インフィニット・バースト」。……ダサいかな? いや、カッコイイはずだ。
(写真):鏡の前でキメ顔をして自撮りする太郎(半目)。
「…………」
沈黙が流れた。
リアンの手が震えている。恐怖ではない。あまりの脱力感にだ。
「……これが、軍の機密?」
「ある意味でな。これが国民に流出したら、太郎王の威厳は崩壊する。国家存亡の危機だ」
俺は冷静に分析した。
なるほど、野良犬の正体は、太郎王のペット(魔獣)だったのか。
飼い主の恥ずかしい日記を持って脱走したとなれば、そりゃあ軍も血眼になって探すはずだ。
「ふ、ふざけるなあああ!! 俺の緊張を返せ! 俺のミニ丸を返せ!!」
リアンが魔石を地面に叩きつけようとする。
「待て! 壊すな!」
俺は慌てて止めた。
「これは使える。最強の『切り札(ゆすりのネタ)』になる」
俺はニヤリと笑った。
「いつか太郎王に怪しまれた時、これをチラつかせればいい。『陛下、このポエムを文春(壁新聞)に載せますよ?』ってな」
リアンの動きが止まる。
「……なるほど。自販機にされそうになった時の、交渉材料か」
「そういうことだ。……よかったな、リリス。任務完了だ」
「うん! ポイントもいっぱい貯まったし、ワンちゃんも可愛いし!」
リリスは気絶したケルベロスを撫で回している。
どうやらこの犬、リリスに懐いてしまったようだ。
「……で、この犬どうするんだ?」
「うちで飼う! 番犬にするの!」
「勇者の家にケルベロスか。……まあ、お似合いだな」
こうして、お悩み解決団の初任務は完了した。
報酬は、太郎王の黒歴史データと、リリスの新しいペット。
そして、リアンの中に「ピンポン玉は最強の武器かもしれない」という誤った知識が刻まれたことだった。
「帰ろうぜ。……ポーン、散らばったピンポン玉を回収しろ。リリスのポイントになる」
『了解。……虚しい作業です』
三人の幼児と一体の人形は、夕闇の中を帰路についた。
その背後で、目覚めたケルベロスが「クゥ~ン」とリリスの後をついていく。
太郎国のカオスな日常は、まだ始まったばかりだ。
次回、ネット通販とガチャの化学反応!
『ねるねるねるね』と爆薬を混ぜたら、とんでもないものが完成した件。
夕闇が迫るタロー・シティの裏路地。
そこは、華やかな表通りとは異なり、ゴミ箱と室外機の熱気が支配する大人の世界だ。
だが今、そこに似つかわしくない小さな影が三つあった。
「……目標(ターゲット)、確認した」
物陰から顔を出したのは、暗視ゴーグル(ネット通販で買ったサバゲー用)を装着したリアンだ。
彼は手元のコントローラーを操作し、上空の『竜丸』からの映像を確認している。
「路地の奥、ゴミ集積所の前だ。……チッ、デカいな。あれ本当に犬か?」
モニターに映っているのは、通常の犬の三倍はある巨体。全身が薄暗い炎に包まれ、三つの首を持っているようにも見える(映像の乱れでなければ)。
「ケルベロスの幼体だな。魔界の番犬がなんでこんな所に?」
俺(ミルマ)は冷静に分析した。
植物ネットワークの情報通りだ。あれはただの野良犬じゃない。軍の実験施設か、あるいは魔族の密輸業者が逃がした危険生物だ。
「ケルベロス!? それって倒したら、すごーくポイント貰えるんじゃない!?」
リリスが目を輝かせて飛び出そうとする。
「待てバカ! 真正面から行くな!」
リアンが慌ててリリスの襟首を掴んで引き戻す。
「いいか、今回の目的は『首輪のデータ』の回収だ。犬を殺してデータごと燃やしたら意味がない。……俺の『自販機化阻止』がかかってるんだぞ!」
(まだ言ってるよ……)
俺はポーンに合図を送った。
ポーンは無言で右腕のパイルバンカーを「捕獲用ネットランチャー」に換装する。
「作戦通り行くぞ。俺(ポーン)が退路を断つ。リアンは麻酔で動きを止めろ。リリスは……まあ、なんか適当に騒いで気を逸らせ」
「了解! 騒ぐのは得意よ!」
***
作戦開始。
まず、ポーンが路地の出口に仁王立ちし、威圧感を放つ。
『――警告。対象生物の捕獲を開始する』
ケルベロス(仮)が唸り声を上げ、ポーンに向かって炎のブレスを吐いた。
ボワッ!!
『耐熱防御。問題なし』
ポーンは植物製のバリアを展開し、炎を涼しい顔で防ぐ。
その隙に、屋根の上からリアンが動いた。
「寝てろ、駄犬!」
彼が操る『ミニ丸』が急降下し、ケルベロスの首筋に麻酔針を突き刺そうとする。
だが。
ガブッ!!
「あ」
リアンの間の抜けた声が響いた。
ケルベロスの真ん中の首が、見事な動体視力で『ミニ丸』を空中で噛み砕いたのだ。
「俺のミニ丸がぁぁぁ!! 3万円もしたのにぃぃぃ!!」
リアンが絶叫する。
怒ったケルベロスが、今度はリアンのいる屋根に向かって火球を放つ。
「うおっ!? やべぇ!」
リアンは『弓丸』を盾にして回避するが、黒焦げになって落下した。
「くそっ、素早いな! これじゃ麻酔が撃てねえ!」
「ミルマ様、実力行使(パイルバンカー)で黙らせますか?」
「待てポーン。データが壊れる。……リリス! 出番だ!」
俺は最終兵器(ガチャ中毒者)に指示を出した。
「任せて! ここでSRを出して逆転よ!」
リリスはブレスレットに魔力を込めた。
今回の軍資金は、リアンが提供した「500円玉(500KP相当)」。
5連ガチャだ。
「お願い神様! 『対猛獣用兵器』来て!!」
ゴゴゴゴゴ……コロン。
虚空から落ちてきたのは、巨大な段ボール箱だった。
箱には、見慣れた日本の通販ロゴ。
そして中から出てきたのは――
『全自動卓球マシン ~ピンポン君~』
「……は?」
全員の動きが止まった。
リリスが箱の説明書きを読む。
「えっと……『一人でも楽しくピンポン練習! 高速スピンもお任せ!』だって」
「ふざけんな! 犬相手に卓球してどうすんだ!」
リアンがキレる。
だが、リリスは諦めなかった。
「ええい! スイッチオン!」
ブィィィィィン!!
マシンが起動し、ものすごい勢いでピンポン玉を連射し始めた。
シュパパパパパパッ!!
無数の白い玉が、ケルベロスに向かって放たれる。
所詮はプラスチックの玉。ダメージなどあるはずもない。
作戦失敗か――と思われた。
「わんっ!?」
「わふっ! くぅ~ん!」
ケルベロスの三つの首が、一斉にピンポン玉を目で追い始めた。
右へ左へ、飛び交う玉に首が釣られる。
猛獣の本能よりも、「動くものを追いかけたい」という犬の本能が勝ってしまったのだ。
「はっはっは! 玉だ! 玉がいっぱいだぞ!」(幻聴)
ケルベロスは尻尾をブンブン振り回し、炎を吐くのも忘れてピンポン玉を追いかけ始めた。
完全に無防備だ。
「……今だリアン!」
「チッ、こんなマヌケな勝ち方があるかよ!」
リアンは屋根から飛び降りると、隙だらけのケルベロスの背後に回り込んだ。
手にしたのは、ネット通販で買った『高出力スタンガン』。
バチバチバチッ!!
「ギャンッ!?」
電撃を受け、ケルベロスは白目を剥いて気絶した。
口にはピンポン玉をくわえたままで。
***
「確保完了。……ふぅ、酷い現場だ」
気絶した犬の首から、リアンが目的の「魔石付き首輪」を外した。
路地にはピンポン玉が散乱し、リリスがそれを拾い集めている(「ゴミ拾いだから1ポイント!」と言いながら)。
「さて、いよいよだな。このデータの中身……」
リアンは緊張した面持ちで、魔石解析機(自作)を取り出した。
もしここに、太郎王による「転生者・自販機化計画」の全貌が記されていたら、俺たちは今夜にでも国を捨てて逃亡しなければならない。
「解析開始……プロテクト解除……出たぞ」
ホログラムが空中に投影される。
タイトルは『Top Secret』。
リアンがゴクリと喉を鳴らす。
そして、表示された画像データは――
『太郎のポエム日記 ~異世界でラーメン屋になりたかった~』
○月×日:今日も宰相に怒られた。予算会議とかマジだるい。俺はただ、豚骨スープを煮込んでいたいだけなのに……。
(イラスト):寸胴鍋をかき混ぜる、やたら美化された太郎の絵。
○月△日:新しい必殺技名を考えた。「タロー・インフィニット・バースト」。……ダサいかな? いや、カッコイイはずだ。
(写真):鏡の前でキメ顔をして自撮りする太郎(半目)。
「…………」
沈黙が流れた。
リアンの手が震えている。恐怖ではない。あまりの脱力感にだ。
「……これが、軍の機密?」
「ある意味でな。これが国民に流出したら、太郎王の威厳は崩壊する。国家存亡の危機だ」
俺は冷静に分析した。
なるほど、野良犬の正体は、太郎王のペット(魔獣)だったのか。
飼い主の恥ずかしい日記を持って脱走したとなれば、そりゃあ軍も血眼になって探すはずだ。
「ふ、ふざけるなあああ!! 俺の緊張を返せ! 俺のミニ丸を返せ!!」
リアンが魔石を地面に叩きつけようとする。
「待て! 壊すな!」
俺は慌てて止めた。
「これは使える。最強の『切り札(ゆすりのネタ)』になる」
俺はニヤリと笑った。
「いつか太郎王に怪しまれた時、これをチラつかせればいい。『陛下、このポエムを文春(壁新聞)に載せますよ?』ってな」
リアンの動きが止まる。
「……なるほど。自販機にされそうになった時の、交渉材料か」
「そういうことだ。……よかったな、リリス。任務完了だ」
「うん! ポイントもいっぱい貯まったし、ワンちゃんも可愛いし!」
リリスは気絶したケルベロスを撫で回している。
どうやらこの犬、リリスに懐いてしまったようだ。
「……で、この犬どうするんだ?」
「うちで飼う! 番犬にするの!」
「勇者の家にケルベロスか。……まあ、お似合いだな」
こうして、お悩み解決団の初任務は完了した。
報酬は、太郎王の黒歴史データと、リリスの新しいペット。
そして、リアンの中に「ピンポン玉は最強の武器かもしれない」という誤った知識が刻まれたことだった。
「帰ろうぜ。……ポーン、散らばったピンポン玉を回収しろ。リリスのポイントになる」
『了解。……虚しい作業です』
三人の幼児と一体の人形は、夕闇の中を帰路についた。
その背後で、目覚めたケルベロスが「クゥ~ン」とリリスの後をついていく。
太郎国のカオスな日常は、まだ始まったばかりだ。
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