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EP 16
ルナキャロット防衛戦!
月明かりすら届かぬ新月の夜。
ルナキャロット村を支配していた静寂は、見張り台から響く、引き裂くような角笛の音で破られた。
「来たぞ! 西側だ! リザードマンの襲撃だぁぁッ!!」
「総員、配置につけ! 訓練通りに動け!」
ラトルの怒号が闇を震わせる。
松明が一斉に灯され、村は瞬く間に戦場と化した。
闇の奥から、ジュルジュルという湿った音と共に、無数の影が殺到する。リザードマンの群れだ。彼らは獲物を前にした興奮から、醜悪な鬨(とき)の声を上げて突っ込んできた。
「放てェッ!!」
号令と共に、自警団の矢が雨となって降り注ぐ。
数体が倒れるが、後続は死体を踏み越えて突進してくる。
だが――彼らの進撃は、村の入り口で唐突に停止した。
ギャリリリリッ!!
「ギャッ!? ギ、グアアアッ!?」
金属の棘が、鱗と肉に食い込む不快な音が響く。
勇太が設置した『有刺鉄線』だ。
暗闇で見えない「鉄の茨」は、脚力自慢のリザードマンにとって最悪の罠だった。足を取られ、転倒し、後続がそれに躓く。
「今だ! 隙間から突けッ!」
土嚢の壁の銃眼から、自警団の長槍が一斉に突き出される。
混乱し、密集した敵はただの的だ。
勇太の考案した「キルゾーン(殺傷地帯)」は、完璧に機能していた。
「ユウタ、キャルル、リーシャ! 遊撃隊、出るぞ! 側面から回り込む奴らを叩く!」
「了解!」
ラトルの指示を受け、三人はバリケードの外へと躍り出た。
「はぁぁぁっ!」
勇太の蒼き薙刀が閃く。
有刺鉄線を強引に断ち切ろうとしたリザードマンの首を、遠心力を乗せた一撃で跳ね飛ばす。
ウルジの打った刃は、硬い鱗を紙のように斬り裂き、アイアンウッドの柄は手の一部のように馴染む。
「援護するわ! 『フレイムアロー』!」
高台に陣取ったリーシャの杖から、炎の矢が連射される。
夜闇に赤い軌跡を描き、敵の目と喉元を正確に貫く。
「そこっ! 通さないよ!」
キャルルは、淡い闘気の光を全身に纏い、戦場を疾駆する。
「闘気爆砕(とうきばくさい)!」
踏み込みの衝撃音と共に放たれたトンファーの一撃が、リザードマンの胸部を粉砕し、吹き飛ばす。
戦況は優勢。このまま押し切れる――誰もがそう思った、その時だった。
「グルルルァァァァ……! 出でよ、我が切り札! 『ガルム』!」
生き残っていたリーダー格のリザードマンが、血を吐きながら絶叫した。
その声に応えるように、森の奥の闇が膨れ上がり――空間を裂いて、巨獣が現れた。
全長5メートル超。
狼の頭部に、熊のような筋肉質の体躯。そして全身をリザードマン以上に硬質な、黒曜石のような鱗が覆っている。
魔獣ガルム。
その口からは、溶岩のような灼熱の息吹が漏れていた。
「な、なんだあの化け物は!?」
「で、でかい……! 矢が効かねえ!」
ガルムが前足を一振りすると、勇太たちが築いた土嚢の壁が、枯れ木のように消し飛んだ。
圧倒的な質量と暴力。
ラトルでさえ、その威圧感に足がすくむ。
「くそっ、魔法障壁も保たないわ……!」
リーシャが唇を噛む。ガルムの突進速度は速すぎる。魔法の詠唱が間に合わない。
薙刀の斬撃も、あの分厚い筋肉と鱗を断ち切るには浅い。
(このままじゃ、全滅する……!)
勇太の脳裏に、最悪の未来がよぎる。
止めるには、圧倒的な「ストッピングパワー」が必要だ。
剣でも、魔法でもない。物理的な「衝撃」で、あの巨体を止める何かが。
(……ポイントは、ある!)
勇太は決断した。
刹那、思考速度でボードを展開。
『防犯・護身』? いや違う。『狩猟・駆除』カテゴリだ。
狙うは、猛獣すら一撃で沈める、現代の「鉄の牙」。
【購入完了:グロック20(10mm Auto弾仕様) + 予備マガジン】
勇太の右手に、ズシリとした冷たい鋼鉄の塊が出現した。
ポリマーフレームの無骨なボディ。装填されているのは、対熊用としても使われる強力な10mm弾。
「下がってろッ!!」
勇太は叫びと共に前に出ると、ガルムの眉間に狙いを定め、引き金を絞った。
ドォォォォォンッ!!!
異世界ではあり得ない、雷鳴のような轟音が夜気を引き裂いた。
マズルフラッシュが、暗闇を真昼のように白く染め上げる。
「ギャウンッ!?」
ガルムの巨体が、見えないハンマーで殴られたように仰け反った。
硬質な鱗が砕け散り、肉が抉れ、鮮血が噴き出す。
剣も矢も通さなかった魔獣が、たった一撃で悲鳴を上げたのだ。
村人たちも、リザードマンさえも、その「雷の音」に呆然と立ち尽くす。
「まだだッ!」
勇太は反動を殺し、追撃する。
ダァン! ダァン!
二発、三発。
10mm弾の連続着弾が、ガルムの足を止め、体勢を崩させる。
「今だッ! キャルル! リーシャ!」
勇太の作った決定的な隙。
二人のヒロインは、それを見逃すような未熟者ではない。
「任せてッ!」
キャルルが地を蹴った。
その華奢な体のどこにそんな力があるのか、地面が陥没するほどの踏み込み。
全身の闘気を、右足一点に集中させる。
「私の速さについてこれる!? 必殺! 『脚舞竜翔(きゃくぶりゅうしょう)』!!」
下から上へ。
竜が天に昇るような軌道の膝蹴りが、ガルムの無防備な顎(あご)をカチ上げた。
ゴォンッ! という衝撃音と共に、数トンの巨体が空中に浮き上がる。
「ナイスよ、キャルル! ……消し飛びなさい!」
リーシャは杖を天に突き上げ、自身の全魔力を解放した。
「出でよ、煉獄の顎(あぎと)! 『インフェルノ・ドレイク』!!」
杖の先から、灼熱の炎が渦を巻き、巨大な火龍へと変貌する。
それは宙に浮いたガルムという「薪」に食らいつき、夜空を焦がすほどの火柱となって炸裂した。
ゴオオオオオオオオッ!!
断末魔の叫びすら、爆音にかき消された。
圧倒的な火力。魔獣の巨体は瞬く間に炭化し、そして灰となって夜風に散った。
切り札を失い、リーダーを失ったリザードマンたちは、完全に戦意を喪失した。
我先にと武器を捨て、蜘蛛の子を散らすように森の闇へと消えていく。
静寂が戻る。
残ったのは、焦げた臭いと、硝煙(しょうえん)の匂いだけ。
「「「「う、うおおおおおおおおおおっ!!」」」」
一拍の遅れの後、村人たちの勝利の歓声が爆発した。
抱き合い、涙を流し、互いの無事を讃え合う。
勇太は、熱を持ったグロック20のセーフティをかけ、ゆっくりと息を吐いた。
まだ、手の震えが止まらない。
だが、隣でハイタッチをしてはしゃぐキャルルと、汗を拭いながら微笑むリーシャの顔を見て、震えは喜びに変わった。
その時、視界いっぱいに文字が溢れた。
【魔獣ガルムを撃破しました! 1000 P 加算!】
【リザードマン盗賊団を壊滅させました! 500 P 加算!】
【ルナキャロット村の運命を変えました! 特大ボーナス 1500 P 加算!】
【合計 3000 P 加算されました。現在 3255 P です】
【ランクアップ! 『自動車・重機』『建築・インフラ』カテゴリが解放されました】
(3255ポイント……それに、車まで!?)
勇太は目眩がしそうなほどの数字を見つめた。
これだけのポイントがあれば、もう「サバイバル」ではない。
この村を、この世界を、もっと豊かに発展させることができる。
異世界に来て、初めて手にした「力」と「仲間」。
中村勇太の冒険は、この夜、本当の意味で始まったのだった。
月明かりすら届かぬ新月の夜。
ルナキャロット村を支配していた静寂は、見張り台から響く、引き裂くような角笛の音で破られた。
「来たぞ! 西側だ! リザードマンの襲撃だぁぁッ!!」
「総員、配置につけ! 訓練通りに動け!」
ラトルの怒号が闇を震わせる。
松明が一斉に灯され、村は瞬く間に戦場と化した。
闇の奥から、ジュルジュルという湿った音と共に、無数の影が殺到する。リザードマンの群れだ。彼らは獲物を前にした興奮から、醜悪な鬨(とき)の声を上げて突っ込んできた。
「放てェッ!!」
号令と共に、自警団の矢が雨となって降り注ぐ。
数体が倒れるが、後続は死体を踏み越えて突進してくる。
だが――彼らの進撃は、村の入り口で唐突に停止した。
ギャリリリリッ!!
「ギャッ!? ギ、グアアアッ!?」
金属の棘が、鱗と肉に食い込む不快な音が響く。
勇太が設置した『有刺鉄線』だ。
暗闇で見えない「鉄の茨」は、脚力自慢のリザードマンにとって最悪の罠だった。足を取られ、転倒し、後続がそれに躓く。
「今だ! 隙間から突けッ!」
土嚢の壁の銃眼から、自警団の長槍が一斉に突き出される。
混乱し、密集した敵はただの的だ。
勇太の考案した「キルゾーン(殺傷地帯)」は、完璧に機能していた。
「ユウタ、キャルル、リーシャ! 遊撃隊、出るぞ! 側面から回り込む奴らを叩く!」
「了解!」
ラトルの指示を受け、三人はバリケードの外へと躍り出た。
「はぁぁぁっ!」
勇太の蒼き薙刀が閃く。
有刺鉄線を強引に断ち切ろうとしたリザードマンの首を、遠心力を乗せた一撃で跳ね飛ばす。
ウルジの打った刃は、硬い鱗を紙のように斬り裂き、アイアンウッドの柄は手の一部のように馴染む。
「援護するわ! 『フレイムアロー』!」
高台に陣取ったリーシャの杖から、炎の矢が連射される。
夜闇に赤い軌跡を描き、敵の目と喉元を正確に貫く。
「そこっ! 通さないよ!」
キャルルは、淡い闘気の光を全身に纏い、戦場を疾駆する。
「闘気爆砕(とうきばくさい)!」
踏み込みの衝撃音と共に放たれたトンファーの一撃が、リザードマンの胸部を粉砕し、吹き飛ばす。
戦況は優勢。このまま押し切れる――誰もがそう思った、その時だった。
「グルルルァァァァ……! 出でよ、我が切り札! 『ガルム』!」
生き残っていたリーダー格のリザードマンが、血を吐きながら絶叫した。
その声に応えるように、森の奥の闇が膨れ上がり――空間を裂いて、巨獣が現れた。
全長5メートル超。
狼の頭部に、熊のような筋肉質の体躯。そして全身をリザードマン以上に硬質な、黒曜石のような鱗が覆っている。
魔獣ガルム。
その口からは、溶岩のような灼熱の息吹が漏れていた。
「な、なんだあの化け物は!?」
「で、でかい……! 矢が効かねえ!」
ガルムが前足を一振りすると、勇太たちが築いた土嚢の壁が、枯れ木のように消し飛んだ。
圧倒的な質量と暴力。
ラトルでさえ、その威圧感に足がすくむ。
「くそっ、魔法障壁も保たないわ……!」
リーシャが唇を噛む。ガルムの突進速度は速すぎる。魔法の詠唱が間に合わない。
薙刀の斬撃も、あの分厚い筋肉と鱗を断ち切るには浅い。
(このままじゃ、全滅する……!)
勇太の脳裏に、最悪の未来がよぎる。
止めるには、圧倒的な「ストッピングパワー」が必要だ。
剣でも、魔法でもない。物理的な「衝撃」で、あの巨体を止める何かが。
(……ポイントは、ある!)
勇太は決断した。
刹那、思考速度でボードを展開。
『防犯・護身』? いや違う。『狩猟・駆除』カテゴリだ。
狙うは、猛獣すら一撃で沈める、現代の「鉄の牙」。
【購入完了:グロック20(10mm Auto弾仕様) + 予備マガジン】
勇太の右手に、ズシリとした冷たい鋼鉄の塊が出現した。
ポリマーフレームの無骨なボディ。装填されているのは、対熊用としても使われる強力な10mm弾。
「下がってろッ!!」
勇太は叫びと共に前に出ると、ガルムの眉間に狙いを定め、引き金を絞った。
ドォォォォォンッ!!!
異世界ではあり得ない、雷鳴のような轟音が夜気を引き裂いた。
マズルフラッシュが、暗闇を真昼のように白く染め上げる。
「ギャウンッ!?」
ガルムの巨体が、見えないハンマーで殴られたように仰け反った。
硬質な鱗が砕け散り、肉が抉れ、鮮血が噴き出す。
剣も矢も通さなかった魔獣が、たった一撃で悲鳴を上げたのだ。
村人たちも、リザードマンさえも、その「雷の音」に呆然と立ち尽くす。
「まだだッ!」
勇太は反動を殺し、追撃する。
ダァン! ダァン!
二発、三発。
10mm弾の連続着弾が、ガルムの足を止め、体勢を崩させる。
「今だッ! キャルル! リーシャ!」
勇太の作った決定的な隙。
二人のヒロインは、それを見逃すような未熟者ではない。
「任せてッ!」
キャルルが地を蹴った。
その華奢な体のどこにそんな力があるのか、地面が陥没するほどの踏み込み。
全身の闘気を、右足一点に集中させる。
「私の速さについてこれる!? 必殺! 『脚舞竜翔(きゃくぶりゅうしょう)』!!」
下から上へ。
竜が天に昇るような軌道の膝蹴りが、ガルムの無防備な顎(あご)をカチ上げた。
ゴォンッ! という衝撃音と共に、数トンの巨体が空中に浮き上がる。
「ナイスよ、キャルル! ……消し飛びなさい!」
リーシャは杖を天に突き上げ、自身の全魔力を解放した。
「出でよ、煉獄の顎(あぎと)! 『インフェルノ・ドレイク』!!」
杖の先から、灼熱の炎が渦を巻き、巨大な火龍へと変貌する。
それは宙に浮いたガルムという「薪」に食らいつき、夜空を焦がすほどの火柱となって炸裂した。
ゴオオオオオオオオッ!!
断末魔の叫びすら、爆音にかき消された。
圧倒的な火力。魔獣の巨体は瞬く間に炭化し、そして灰となって夜風に散った。
切り札を失い、リーダーを失ったリザードマンたちは、完全に戦意を喪失した。
我先にと武器を捨て、蜘蛛の子を散らすように森の闇へと消えていく。
静寂が戻る。
残ったのは、焦げた臭いと、硝煙(しょうえん)の匂いだけ。
「「「「う、うおおおおおおおおおおっ!!」」」」
一拍の遅れの後、村人たちの勝利の歓声が爆発した。
抱き合い、涙を流し、互いの無事を讃え合う。
勇太は、熱を持ったグロック20のセーフティをかけ、ゆっくりと息を吐いた。
まだ、手の震えが止まらない。
だが、隣でハイタッチをしてはしゃぐキャルルと、汗を拭いながら微笑むリーシャの顔を見て、震えは喜びに変わった。
その時、視界いっぱいに文字が溢れた。
【魔獣ガルムを撃破しました! 1000 P 加算!】
【リザードマン盗賊団を壊滅させました! 500 P 加算!】
【ルナキャロット村の運命を変えました! 特大ボーナス 1500 P 加算!】
【合計 3000 P 加算されました。現在 3255 P です】
【ランクアップ! 『自動車・重機』『建築・インフラ』カテゴリが解放されました】
(3255ポイント……それに、車まで!?)
勇太は目眩がしそうなほどの数字を見つめた。
これだけのポイントがあれば、もう「サバイバル」ではない。
この村を、この世界を、もっと豊かに発展させることができる。
異世界に来て、初めて手にした「力」と「仲間」。
中村勇太の冒険は、この夜、本当の意味で始まったのだった。
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