『地球ショッピング』で異世界を快適に!~医学生、善行ポイントで現代物資を取り寄せ、兎の村を最強要塞に変える~

月神世一

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EP 39

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美の秘訣と手作りコスメ工房
​囁きの森の異変が解決し、穏やかな夏の日差しが降り注ぐ午後。
自警団の訓練を終えた勇太が汗を拭っていると、キャルルが不思議そうに鼻をひくつかせ、近づいてきた。
​「……くんくん。ユウタさんって、汗をかいてもいい匂いがしますね」
​「えっ、そう?」
​「はい。それに、髪もサラサラでキラキラしてます。私なんて、訓練の後はゴワゴワのベタベタなのに……」
​キャルルが自分の髪を触り、しょんぼりと耳を垂れる。
この世界の洗髪事情は、植物の灰(アルカリ)や獣脂を使った粗末な石鹸が主流だ。汚れは落ちるが、髪は痛み、ギシギシになるのが当たり前だった。
​「勇太の肌、私たちエルフよりもキメが整っているわね。……何か『美肌の魔術』でも使っているの?」
​リーシャも興味深そうに勇太の頬を覗き込む。
美意識の高いエルフでさえ、現代のスキンケア技術(保湿・UVケア)には及ばないらしい。
​「魔術じゃないよ。シャンプーで洗って、化粧水で保湿してるだけさ」
「しゃんぷー? けしょうすい?」
​二人のきょとんとした顔を見て、勇太の脳裏に電撃が走った。
(……これだ。黒胡椒や酒以上の、とんでもない『需要』がここにある!)
​「二人とも、ちょっと待ってて。……この村に『美の革命』を起こすから」
​勇太は即座にボードを展開し、『手作りコスメ・スターターキット』を購入した。
『水蒸気蒸留器(アランビック)』、『乳鉢とビーカー』、『pH試験紙』、『精製ミツロウ』など、合計300P。
​「まずは『香り』と『成分』の抽出だ」
​勇太は、村に自生するラベンダーに似た花「ルナハーブ」を蒸留器に詰め、加熱した。
ガラス管の中を蒸気が通り、冷却され、ポタポタと液体が落ちる。
​「すごい……! 花の魂が、水になって落ちてくるわ!」
リーシャがガラス管に釘付けになる。
​「これが『精油(エッセンシャルオイル)』と『フローラルウォーター』。化粧水のベースだ。……次はクリームを作るよ」
​勇太はオイルと水をビーカーに入れ、ミツロウを加えて湯煎しながら、高速で撹拌(かくはん)した。
本来混ざり合わない水と油が、白く滑らかなクリームへと変化していく。**「乳化」**だ。
​「水と油が……混ざった!? まるで錬金術ね!」
​「科学の力さ。さあ、完成だ」
​出来上がったのは、『ルナハーブの弱酸性シャンプー&トリートメント』と、『高保湿ボタニカルクリーム』。
勇太は、キャルルとリーシャ、そして興味津々で集まってきたミルル母さんたちに試作品を配った。
​「騙されたと思って、これで髪と顔を洗ってみてください」
​数十分後。
村の浴場から、悲鳴のような歓声が上がった。
​「きゃあぁぁぁぁっ!!」
​「ど、どうしたっ!?」
敵襲かと身構えたイグニスと勇太の前に、湯上がりの女性陣が飛び出してきた。
​「見てユウタさん! 見てくださいっ!」
​キャルルが自分の髪を振り乱す。
夕日を反射して、彼女の銀髪に**「天使の輪(エンジェルリング)」**が輝いていた。
指通りは絹のように滑らかで、動くたびに花の香りが広がる。
​「髪が……とぅるんとぅるんです! 自分の髪じゃないみたい!」
​「私の肌も見ておくれよ! 十歳は若返ったみたいじゃないかい!」
​ミルル母さんが、もちもちになった頬を指で押して見せる。
乾燥して荒れていた肌が、水分を吸ってプルプルに潤っていた。
​「信じられない……。エルフの秘薬でも、ここまでの即効性は……」
リーシャも、鏡の前で自分の肌と髪をうっとりと撫で回している。
​その夜、ルナキャロット村の女性陣(と一部の美意識高い男性)による、「コスメ争奪戦」が勃発した。
​「ユウタちゃん! その『くりーむ』、私の分もあるかい!?」
「ユウタ様! 髪がサラサラになるお水、私にも分けてください!」
​普段は穏やかな村の女性たちが、血走った目で勇太に詰め寄る。
美容への執念は、モンスターよりも恐ろしい。
​「お、落ち着いて! レシピは残しますから! ウルジさんに容器を頼んで、みんなで作れるようにしますから!」
​勇太は嬉しい悲鳴を上げながら、対応に追われた。
​【ピンポンパンポーン♪】
​【ルナキャロット村に『美容文化』を定着させました】
【女性たちの幸福度(と美貌)が劇的に向上しました】
【貢献ボーナス: 300 P 加算】
【現在所持ポイント: 15905 P】
​騒ぎの外で、イグニスが呆然と呟いた。
「……女ってのは、食い物以上に『美』に貪欲なんだな。ドラゴンより怖ぇぜ」
​「全くだな……」
​勇太は苦笑しながら、確信していた。
この「ルナキャロット・ブランド」のコスメは、間違いなくニャングルを狂喜させ、大陸中で爆発的に売れるだろう。
村の未来は、文字通り「輝いて」いた。
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