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第二章 帝都マルシアへ
EP 6
二つのギルドと出世頭の猫
「ホープ・クローバーズ」として冒険者登録を済ませた勇太たちは、その足で中央商業区へと向かった。
冒険者として名を上げるのも大事だが、勇太には**「地球の商品を売る」**というもう一つの目的がある。
目指すは大陸最大の商業ギルド**『ダイヤクルージ』**のアウストラ本部。
大理石の柱が並ぶ神殿のような建物だ。冒険者ギルドの熱気とは違い、ここでは冷徹な計算と金貨の音が支配している。
「うわぁ……ピカピカです。床で顔が映ります」
キャルルが恐縮してつま先立ちで歩く。
「ケッ、金持ちの匂いがプンプンしやがるな」
イグニスが鼻を鳴らす。
受付カウンターには、スーツを着こなした巨大なゴリラ獣人が座っていた。
名札には**『支部長代理:コング』**とある。
「いらっしゃいませ。新規の商業登録ですね?」
見た目に反して、声は知的で穏やかだ。
「はい。ナカムラ・ユウタです。これ、紹介状です」
勇太が、ルナキャロット村で書いてもらった紹介状を渡す。
「ふむ……ゴルド商会のニャングル氏からの紹介ですか。……ほう? あの『天使の輪シャンプー』の開発者?」
コングの眼鏡の奥が光った。
彼は立ち上がり、勇太の手をガッチリと握った。
「お待ちしておりました! アナタがあの! 帝都の女性を熱狂させている商品の生みの親ですか! ぜひ我がギルドへ!」
対応が一変した。
手続きは瞬殺で完了し、勇太は**『ツリーランク(木)』**の商業証を手に入れた。
さらにコングは、窓の外に停めてある(実際には馬車預かり所だが)ノマド号の噂も耳にしていたらしい。
「あの『鉄の馬車』……あれもアナタの商品ですか? もしあれを量産できるなら、大陸の物流が変わりますよ」
「あれは……試作品でして。まだ売り物にはなりません」
勇太は苦笑してかわした。さすがに自動車の量産は無理だ。
商業ギルドを出て、大通りを歩いていると、向こうから黄色い歓声が聞こえてきた。
「キャーッ! ニャングル様よ!」
「ゴルド商会の若き天才!」
見れば、仕立ての良いシルクの服を着て、宝石をジャラジャラさせた猫人が、取り巻きを引き連れて歩いていた。
ニャングルだ。以前の行商人の姿とは別人のような、成金のオーラを放っている。
「いや~、帝都の空気は美味いですなぁ! 儲けの匂いがプンプンしまっせ~!」
「……ニャングルさん?」
勇太が声をかけると、ニャングルは振り返り、猫目を丸くした。
「ユ……ユウタはん!? まさか、帝都に来てはったんですか!?」
彼は取り巻きを押しのけ、駆け寄ってきた。
「見ましたで! 港に停まった黒い鉄の塊! あれ、ユウタはんの『ノマド号』でっしゃろ!? いやー、相変わらず派手なことしはりますなぁ!」
「久しぶりだね。……ずいぶん羽振りが良さそうだ」
「おかげさんで! ユウタはんのコスメと歯磨き粉、貴族の奥様方に飛ぶように売れてましてな! ワテ、この度**『帝都本店・統括マネージャー』**に昇進しましたんや!」
ニャングルは胸を張り、ピンと立った耳を揺らした。
勇太の商品力と、ニャングルの商才。この二つが組み合わさって、彼は帝都のドリームを掴んだのだ。
「へぇ、そいつはすげえな。……で、なんか美味いモン奢ってくれるんだろうな?」
イグニスがニヤリと笑う。
「もちろん! 今度、最高級のレストラン『海猫亭』にご招待しますわ! 商談も兼ねてね!」
ニャングルはウィンクし、名刺代わりの金貨を一枚、キャルルに握らせた。
「ほな、また後ほど! 商売敵に見つかると厄介なんで、今日はこれで!」
彼は嵐のように去っていった。
その背中は、以前よりもずっと大きく、頼もしく見えた。
「ふぅ……相変わらず騒がしい人ね」
リーシャが呆れつつも微笑む。
「でも、味方がいるのは心強いです! これなら帝都でもやっていけそうですね!」
キャルルが金貨を嬉しそうに眺める。
「よし、挨拶回りはこれで終了だ」
勇太は冒険者ギルドで受けた依頼書を取り出した。
【緊急依頼:帝都地下水道の異変調査】
【報酬:金貨10枚】
【推奨ランク:D以上(Eランク可だが危険)】
「ゴブリン退治もいいけど、こっちの方が面白そうだ。……帝都の地下で、何かが起きているらしい」
「地下水道か……。臭そうだが、化け物はいそうだな」
イグニスが戦斧を担ぐ。
「行きましょう。私たちの初仕事よ」
勇太たちは賑やかな大通りを抜け、帝都の暗部――地下水道の入り口へと向かった。
光あるところに影あり。
華やかな交易都市の地下には、深淵なる闇が口を開けて待っていた。
【クエスト開始:地下水道の清掃(という名の魔獣討伐)】
「ホープ・クローバーズ」として冒険者登録を済ませた勇太たちは、その足で中央商業区へと向かった。
冒険者として名を上げるのも大事だが、勇太には**「地球の商品を売る」**というもう一つの目的がある。
目指すは大陸最大の商業ギルド**『ダイヤクルージ』**のアウストラ本部。
大理石の柱が並ぶ神殿のような建物だ。冒険者ギルドの熱気とは違い、ここでは冷徹な計算と金貨の音が支配している。
「うわぁ……ピカピカです。床で顔が映ります」
キャルルが恐縮してつま先立ちで歩く。
「ケッ、金持ちの匂いがプンプンしやがるな」
イグニスが鼻を鳴らす。
受付カウンターには、スーツを着こなした巨大なゴリラ獣人が座っていた。
名札には**『支部長代理:コング』**とある。
「いらっしゃいませ。新規の商業登録ですね?」
見た目に反して、声は知的で穏やかだ。
「はい。ナカムラ・ユウタです。これ、紹介状です」
勇太が、ルナキャロット村で書いてもらった紹介状を渡す。
「ふむ……ゴルド商会のニャングル氏からの紹介ですか。……ほう? あの『天使の輪シャンプー』の開発者?」
コングの眼鏡の奥が光った。
彼は立ち上がり、勇太の手をガッチリと握った。
「お待ちしておりました! アナタがあの! 帝都の女性を熱狂させている商品の生みの親ですか! ぜひ我がギルドへ!」
対応が一変した。
手続きは瞬殺で完了し、勇太は**『ツリーランク(木)』**の商業証を手に入れた。
さらにコングは、窓の外に停めてある(実際には馬車預かり所だが)ノマド号の噂も耳にしていたらしい。
「あの『鉄の馬車』……あれもアナタの商品ですか? もしあれを量産できるなら、大陸の物流が変わりますよ」
「あれは……試作品でして。まだ売り物にはなりません」
勇太は苦笑してかわした。さすがに自動車の量産は無理だ。
商業ギルドを出て、大通りを歩いていると、向こうから黄色い歓声が聞こえてきた。
「キャーッ! ニャングル様よ!」
「ゴルド商会の若き天才!」
見れば、仕立ての良いシルクの服を着て、宝石をジャラジャラさせた猫人が、取り巻きを引き連れて歩いていた。
ニャングルだ。以前の行商人の姿とは別人のような、成金のオーラを放っている。
「いや~、帝都の空気は美味いですなぁ! 儲けの匂いがプンプンしまっせ~!」
「……ニャングルさん?」
勇太が声をかけると、ニャングルは振り返り、猫目を丸くした。
「ユ……ユウタはん!? まさか、帝都に来てはったんですか!?」
彼は取り巻きを押しのけ、駆け寄ってきた。
「見ましたで! 港に停まった黒い鉄の塊! あれ、ユウタはんの『ノマド号』でっしゃろ!? いやー、相変わらず派手なことしはりますなぁ!」
「久しぶりだね。……ずいぶん羽振りが良さそうだ」
「おかげさんで! ユウタはんのコスメと歯磨き粉、貴族の奥様方に飛ぶように売れてましてな! ワテ、この度**『帝都本店・統括マネージャー』**に昇進しましたんや!」
ニャングルは胸を張り、ピンと立った耳を揺らした。
勇太の商品力と、ニャングルの商才。この二つが組み合わさって、彼は帝都のドリームを掴んだのだ。
「へぇ、そいつはすげえな。……で、なんか美味いモン奢ってくれるんだろうな?」
イグニスがニヤリと笑う。
「もちろん! 今度、最高級のレストラン『海猫亭』にご招待しますわ! 商談も兼ねてね!」
ニャングルはウィンクし、名刺代わりの金貨を一枚、キャルルに握らせた。
「ほな、また後ほど! 商売敵に見つかると厄介なんで、今日はこれで!」
彼は嵐のように去っていった。
その背中は、以前よりもずっと大きく、頼もしく見えた。
「ふぅ……相変わらず騒がしい人ね」
リーシャが呆れつつも微笑む。
「でも、味方がいるのは心強いです! これなら帝都でもやっていけそうですね!」
キャルルが金貨を嬉しそうに眺める。
「よし、挨拶回りはこれで終了だ」
勇太は冒険者ギルドで受けた依頼書を取り出した。
【緊急依頼:帝都地下水道の異変調査】
【報酬:金貨10枚】
【推奨ランク:D以上(Eランク可だが危険)】
「ゴブリン退治もいいけど、こっちの方が面白そうだ。……帝都の地下で、何かが起きているらしい」
「地下水道か……。臭そうだが、化け物はいそうだな」
イグニスが戦斧を担ぐ。
「行きましょう。私たちの初仕事よ」
勇太たちは賑やかな大通りを抜け、帝都の暗部――地下水道の入り口へと向かった。
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