田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第七章 魔人サルバロス現る

EP 6

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愉悦の告白
​ 翌日の正午。
 カイト農場の南エリア、サルバロスの天幕前に、農場の住人全員が集められていた。
 サルバロスが「重大な発表がある」と宣言したからだ。
​ 最前列には、目を虚ろにした難民たち(信者)が並び、その後ろにカイト、ラスティア、龍魔呂、ルーベンスたちが警戒しながら立っている。
​「やあ、諸君。集まってくれてありがとう」
​ サルバロスは、魔法で作り出した黄金のステージの上に立ち、大げさに両手を広げた。
​「今日は、この楽園の『最終章(グランドフィナーレ)』について話そうと思ってね」
​「最終章……?」
 カイトが眉をひそめる。
​「そうさ。……ああ、もういいか。この堅苦しい喋り方も疲れた」
​ パチンッ。
 サルバロスが指を鳴らした瞬間、彼を覆っていた神々しい光のオーラが消え失せた。
 代わりに溢れ出したのは、ドス黒く、粘りつくような不快な魔力。
​「あーあ、肩が凝る。……おい農夫。昨日はよくも俺に説教してくれたなぁ?」
​ サルバロスは玉座にだらしなく座り込み、カイトを見下ろしてニヤリと笑った。
 その顔には、慈愛の欠片もない。あるのは純粋な悪意と、他人を玩具としか思っていない傲慢さだけだ。
​「正体現したわね、変質者」
 ラスティアが吐き捨てる。
​「へぇ、正体? 違うな。これが『本性』だ」
​ サルバロスは空中に手をかざした。
 そこに巨大な幻影(ホログラム)が投影される。
​ 映し出されたのは、数日前に滅んだ『サンドリア国』の映像だった。
 最初は、豊かな緑と黄金の城で笑い合う人々。
 しかし次の瞬間、城が崩れ、緑が砂に戻り、人々が絶叫しながら魔物に食われ、あるいは生き埋めになっていく地獄絵図が流れた。
​「ひっ、ひぃぃぃッ!?」
 正気を保っていた一部の難民たちが悲鳴を上げ、嘔吐した。自分たちの故郷が滅ぶ瞬間を、特等席で見せつけられたのだ。
​「見ろよ、この顔! 最高だろ!?」
​ サルバロスは腹を抱えて笑った。
​「『ありがとう救世主様!』って泣いて感謝していた連中がさぁ、『どうして!?』『助けて!』って顔を歪ませて死んでいくんだぜ?
 積み上げた希望が高ければ高いほど、落ちた時の音はデカい! その絶望の味ときたら……どんな高級ワインより甘美で、脳がとろけちまうよぉぉぉwww」
​ 狂気。
 彼は本気で言っている。
 国を救うのも、人を癒やすのも、すべてはこの「絶望の瞬間」を美味しく味わうための下準備(スパイス)に過ぎないのだ。
​「貴様……ッ!」
 ルーベンスが激昂し、魔術を発動しようとする。
 だが、
​「おっと、動くなよ?」
​ サルバロスが指を振ると、最前列の信者(難民)たちが、自分自身の首にナイフを突きつけた。
​「俺を攻撃してみろ。コイツらは全員、自分の喉を掻っ切るように命令してある」
​「くっ……卑劣な!」
​「卑劣? 違うね、エンターテイナーと呼んでくれw」
​ サルバロスはステージからカイトを見下ろした。
​「カイト君。君の言う『種』だの『未来』だの、そんな地味なものはツマラナイんだよ。
 俺が欲しいのは刹那の快楽! 他人の不幸!
 さあ、次はこの農場の番だ。サンドリア以上の絶望を見せてくれよ?」
​ サルバロスが両手を掲げる。
 空が暗転し、赤黒い雷雲が渦巻き始めた。
 農場全体を飲み込む、国崩しの超極大魔法の準備だ。
​「逃げ惑え! 泣き叫べ! 俺を楽しませろォォォ!!」
​ 彼の高笑いが響き渡る。
 誰もが凍りつくような悪意の前で、しかし、一人の青年だけは違った。
​ カイトは、怒りも恐怖も見せず、ただ静かに、サルバロスを真っ直ぐに見つめていた。
​「……?」
​ サルバロスの笑いが止まる。
 なんだその目は。
 なぜ怒らない。なぜ怯えない。
 その瞳に宿っているのは――「憐れみ」?
​ 次回、カイトの「かわいそう」。
 最強の愉悦犯のプライドを、純粋な同情が逆撫でする。
 「カイトの『かわいそう』」へ続く
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