田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十章 ザワザワするカイト達

EP 7

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【罠】キュルリンの提案。「この農場、賭けちゃわない?」
焼肉戦争が終わり、一同が食後の満腹感に浸っていた時だった。
テラスの照明がフッと落ち、代わりに毒々しいほどのピンク色のスポットライトが、テーブルの中央を照らし出した。
「――キュルリン! 皆、楽しんでるかな~?♡」
甘ったるい声と共に、空間から小さな影が飛び出した。
黒いゴシックドレスに、悪魔の翼。手にはペロペロキャンディ。
天魔窟の支配者、賭博王キュルリンだ。
「わっ、キュルリンちゃんだ」
カイトは焼肉のタレがついた口を拭きながら、ニコニコと手を振った。
「うん、楽しいよ。お肉も美味しかったし、ありがとう」
「あはは、それは良かったわ☆」
キュルリンは空中にふわりと浮き、無邪気な笑顔を振りまいた。だが、その瞳の奥には、獲物を狙う猛獣の冷たい光が宿っている。
「ねぇ、カイトお兄さん。せっかくここに来たんだもの。ただ遊んで帰るだけじゃもったいないと思わない?」
彼女は指パッチンをした。
すると、オークの黒服たちが現れ、テラスの中央に一台の**「全自動麻雀卓」**を設置した。
緑色のマットが、夜の闇の中で怪しく輝く。
「君たちの、その『豪運』を試さないか? 麻雀という、とっても楽しいゲームでさ♪」
「麻雀……?」
その単語に反応したのは、事務長ルーベンスだ。
彼は眼鏡の位置を直し、冷ややかに鼻を鳴らした。
「ほう。確率と心理戦の遊戯か。……『豪運』だと? 失礼なことを言う」
ルーベンスは自信たっぷりに前に出た。
「私は魔族の宰相だ。国家予算の管理から戦略立案まで、全て完璧な**『計算(ロジック)』**の元にやっている。運任せのギャンブルなどせんよ」
「へぇ~、頼もしいわねぇメガネさん♡」
「麻雀かぁ。懐かしいな」
カイトも懐かしそうに卓を撫でた。
「転生前(日本にいた頃)によくやったよ。ルールはだいたい覚えてるかな」
「あら、それなら私も負けてはいませんわ」
リベラが純白のスーツを翻し、一歩前に出た。
「法曹界では『卓上の魔女』と呼ばれていましたの。慶應卒の頭脳を舐めないで欲しいですわ。確率計算ならルーベンス殿にも引けを取りませんことよ?」
カイト、ルーベンス、リベラ。
この三人が揃えば、どんな勝負でも負ける気はしない。
だが、キュルリンはニヤリと口角を吊り上げた。
「OK、受けてくれるのね。……じゃあ、**『賭けるもの(ベット)』**を決めましょうか」
キュルリンは懐から、一枚の羊皮紙を取り出した。
「私が負けたら、この**『天魔窟の全権利』**をあげる。この街のオーナーになれるわよ」
「街一つ!?」
一同がざわめく。だが、キュルリンは続けた。
「その代わり……君たちが負けたら、『カイト農場の全権利』を頂戴するわ。もちろん、住人(神々)ごとね♡」
「なっ……!?」
場の空気が凍りついた。
これは遊びではない。侵略戦争だ。
「ふざけるな! そんな条件飲めるか!」
フェンリルが吠えるが、カイトは意外にもあっさりと頷いた。
「いいよ」
「カイト様!?」
「だって、勝てばいいんでしょ? それに、この街をもらったら、みんなでまた遊びに来れるし」
カイトの辞書に「敗北」の文字はない。
その揺るぎない自信に、リベラはハッとした。ここで止めるのは野暮というものか。
「……分かりましたわ。では、私が契約書の確認と立会人を務めます。イカサマなどさせませんわよ?」
リベラはプレイヤーではなく、最強の「監査役」として盤外に立つことを選んだ。彼女が睨みを利かせていれば、キュルリンも露骨な不正はできないはずだ。
「よし、プレイヤーは私(キュルリン)と、カイトお兄さん、メガネさん(ルーベンス)で決まりね」
卓に着く三人。あと一人足りない。
「えぇっと、後は……」
カイトが後ろを振り返る。
そこには、やる気満々の神々(ルチアナ、ラスティア、デューク)が控えていた。
だが、キュルリンが人差し指を振った。
「あ、神々はダメだよ。創造神とか竜王とか、あからさまに『透視』とか『牌操作』とかしそうだし。チートを使われちゃ敵わないからね~」
「えぇーっ! ケチぃー!」
ルチアナがブーイングする。
神権の使用禁止。純粋な定命の者(に近い存在)でなければならない。
となると、残っているのは……。
カイトの視線が、焼肉のタレを頬につけたまま、ポケーっとしているエルフの少女に止まった。
「じゃあ……ルナ、入るか」
「……へ?」
ルナ(大賢者・20歳)が、きょとんとして自分を指差した。
「私ですかぁ? 麻雀って、あの四角いオモチャを並べるやつですかぁ?」
「そうそう。絵合わせゲームだよ」
「おいおいカイト、正気か!?」
ルーベンスが小声で叫ぶ。
「ルナ殿は賢者だが、中身は子供だぞ!? ルールも知らん素人を混ぜてどうする!」
「大丈夫だよ。ルナ、運は良さそうだし」
「うふふ、よく分かりませんけどぉ、楽しそうですねぇ」
ルナはニコニコしながら、四人目の席に座った。
南家:キュルリン(賭博王)
西家:カイト(天然)
北家:ルーベンス(理論派)
東家:ルナ(ド素人)
「ククク……素人を入れるとは、舐められたものね」
キュルリンは内心で狂喜乱舞した。
カイトはともかく、堅物のルーベンスと、カモになりそうな素人の小娘。
(勝った。この勝負、私の圧勝よ……!)
「よぉし、さぁやろう! 今夜は徹夜だよ☆」
ジャラジャラジャラ……。
全自動卓が牌を混ぜる音が、運命の歯車の音のように響き渡る。
カイト農場の存亡を懸けた、伝説の麻雀対決が幕を開けた。
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