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第十一章 健康帝国とレジスタンス
EP 3
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【脱走】男たちの地下集会。最後のタバコを回し吸い
深夜2時。
健康帝国ルナの監視の目が光るカイト農場の地下深く。かつて魔王軍がワインセラーとして使っていた隠し部屋に、男たちが集結していた。
部屋の中央には、頼りない魔法ランタンの灯りが一つ。
その周りを囲むのは、この世の終わりのような顔をした「レジスタンス(反乱軍)」の戦士たちだ。
「……追手は?」
「ない。リベラの見回りは、今の時間は女子寮の方だ」
魔族宰相ルーベンスが、分厚い鉄扉に鍵をかけながら答えた。
部屋にいるのは、ルーベンス、鬼神・龍魔呂、竜王デューク、狼王フェンリル。そして、元勇者リュウだ。
「……で、あるのか? 『ブツ』は」
デュークが渇望した瞳でリュウに詰め寄る。
ここ数日、彼らは禁煙の禁断症状で指先が震え、情緒不安定になっていた。
「ああ……あるぜ」
リュウは真剣な表情で頷き、自分のズボンのゴムに手をかけた。
「おい、何を脱ごうとしている」
「ここしか隠す場所がなかったんだよ! リベラのボディチェックを抜けるには、パンツの中しかなかったんだ!」
リュウはボクサーパンツの裏側から、クシャクシャになった赤い箱を取り出した。
『Lark』。
箱の中には、ひん曲がったタバコが一本だけ残っていた。
「おぉ……!」
「神よ……!」
男たちが拝むようにその一本を見つめる。
それは彼らにとって、聖剣エクスカリバーよりも尊い、自由の象徴だった。
「誰からいく?」
龍魔呂が震える手でジッポーを取り出す。
「……年長者からだろう」
フェンリルが唾を飲み込む。
龍魔呂が火をつけた。シュボッ。
小さな炎が先端を焦がし、紫煙が立ち昇る。
「……スゥゥゥゥ…………」
龍魔呂が深く、肺の底まで煙を吸い込んだ。
その瞬間、彼の強面が、仏のように穏やかに緩んだ。
「……ふぅ。……生き返る」
「早く回せ! フィルターが燃え尽きるぞ!」
次にデュークが奪い取るように吸う。
「……くぅぅぅッ! 五臓六腑に染みるわ……! これだ、この有害な煙こそが文明の味よ……!」
「次は俺だ! よこせ!」
フェンリルが吸い、ルーベンスが吸い、最後にリュウが吸う。
一本のタバコを、世界を統べる王たちが必死の形相で回し吸いする。
その光景はあまりにも惨めで、そして美しかった。
「……終わっちまったな」
リュウがフィルターギリギリまで吸い、名残惜しそうに火を消した。
部屋に沈黙が落ちる。
「……もう限界だ」
ルーベンスが頭を抱えた。
「青汁と温野菜だけの生活……私の脳細胞が糖分を求めて悲鳴を上げている。これ以上続けば、私は発狂して魔界の全予算で砂糖を買占めてしまうかもしれん」
「俺もだ。肉が食いてぇ。脂が滴るような、ギトギトの肉が……」
フェンリルが腹をさする。
健康になればなるほど、精神が死んでいく。
このまま、ルナとリベラの管理下で飼い殺しにされるのか。
「……みんな、暗い顔してるね」
その時、天井の通気口がガコッと外れ、そこからカイトが逆さまに顔を出した。
「うわっ!? カ、カイト!?」
「なんでここが分かった!?」
「匂いだよ。タバコの匂いがしたから」
カイトはストンと床に降り立つと、男たちの絶望的な顔を見渡した。
「みんな、辛そうだね。……やっぱり、お腹いっぱい好きなものを食べたいよね?」
「当たり前だ! だが、ルナ様の勅令は絶対だ。逆らえば天魔窟の収益(農場の運営費)を止められる!」
ルーベンスが嘆く。
金と権力を握られた今、正面からの反乱は不可能だ。
だが、カイトはニカっと笑った。
「じゃあ、バレないようにやればいいじゃない」
「え?」
「ルナちゃんやリベラちゃんは、『本当の美味しさ』を知らないだけだよ。僕たちが教えてあげようよ。……**とびっきりの『毒(ジャンクフード)』**をさ」
カイトの瞳には、かつて魔王を倒した時のような、あるいは新しい遊びを思いついた子供のような、純粋な光が宿っていた。
「みんなで反撃の狼煙(のろし)を上げよう。……作ろうよ、夜食を」
「夜食……だと……?」
その甘美な響きに、龍魔呂の目が鋭く光った。
「……面白い。ルナ様の清浄な舌を、脂と糖で汚染しろと言うんだな?」
「そう! 堕落させちゃえば、こっちの勝ちだよ!」
カイトが提案した「下克上」。
それは血を流さない、カロリーと背徳感による革命だった。
「乗った!」
リュウが立ち上がった。
「俺たちの『チートデー』を取り戻すんだ! ジャンクフードこそが正義だと証明してやる!」
「フン、悪くない余興だ」
デュークも不敵に笑う。
地下室の熱気が変わった。
男たちは固く握手を交わし、打倒・健康帝国のための極秘プロジェクト、『オペレーション・ミッドナイト・カロリー』を発動させた。
深夜2時。
健康帝国ルナの監視の目が光るカイト農場の地下深く。かつて魔王軍がワインセラーとして使っていた隠し部屋に、男たちが集結していた。
部屋の中央には、頼りない魔法ランタンの灯りが一つ。
その周りを囲むのは、この世の終わりのような顔をした「レジスタンス(反乱軍)」の戦士たちだ。
「……追手は?」
「ない。リベラの見回りは、今の時間は女子寮の方だ」
魔族宰相ルーベンスが、分厚い鉄扉に鍵をかけながら答えた。
部屋にいるのは、ルーベンス、鬼神・龍魔呂、竜王デューク、狼王フェンリル。そして、元勇者リュウだ。
「……で、あるのか? 『ブツ』は」
デュークが渇望した瞳でリュウに詰め寄る。
ここ数日、彼らは禁煙の禁断症状で指先が震え、情緒不安定になっていた。
「ああ……あるぜ」
リュウは真剣な表情で頷き、自分のズボンのゴムに手をかけた。
「おい、何を脱ごうとしている」
「ここしか隠す場所がなかったんだよ! リベラのボディチェックを抜けるには、パンツの中しかなかったんだ!」
リュウはボクサーパンツの裏側から、クシャクシャになった赤い箱を取り出した。
『Lark』。
箱の中には、ひん曲がったタバコが一本だけ残っていた。
「おぉ……!」
「神よ……!」
男たちが拝むようにその一本を見つめる。
それは彼らにとって、聖剣エクスカリバーよりも尊い、自由の象徴だった。
「誰からいく?」
龍魔呂が震える手でジッポーを取り出す。
「……年長者からだろう」
フェンリルが唾を飲み込む。
龍魔呂が火をつけた。シュボッ。
小さな炎が先端を焦がし、紫煙が立ち昇る。
「……スゥゥゥゥ…………」
龍魔呂が深く、肺の底まで煙を吸い込んだ。
その瞬間、彼の強面が、仏のように穏やかに緩んだ。
「……ふぅ。……生き返る」
「早く回せ! フィルターが燃え尽きるぞ!」
次にデュークが奪い取るように吸う。
「……くぅぅぅッ! 五臓六腑に染みるわ……! これだ、この有害な煙こそが文明の味よ……!」
「次は俺だ! よこせ!」
フェンリルが吸い、ルーベンスが吸い、最後にリュウが吸う。
一本のタバコを、世界を統べる王たちが必死の形相で回し吸いする。
その光景はあまりにも惨めで、そして美しかった。
「……終わっちまったな」
リュウがフィルターギリギリまで吸い、名残惜しそうに火を消した。
部屋に沈黙が落ちる。
「……もう限界だ」
ルーベンスが頭を抱えた。
「青汁と温野菜だけの生活……私の脳細胞が糖分を求めて悲鳴を上げている。これ以上続けば、私は発狂して魔界の全予算で砂糖を買占めてしまうかもしれん」
「俺もだ。肉が食いてぇ。脂が滴るような、ギトギトの肉が……」
フェンリルが腹をさする。
健康になればなるほど、精神が死んでいく。
このまま、ルナとリベラの管理下で飼い殺しにされるのか。
「……みんな、暗い顔してるね」
その時、天井の通気口がガコッと外れ、そこからカイトが逆さまに顔を出した。
「うわっ!? カ、カイト!?」
「なんでここが分かった!?」
「匂いだよ。タバコの匂いがしたから」
カイトはストンと床に降り立つと、男たちの絶望的な顔を見渡した。
「みんな、辛そうだね。……やっぱり、お腹いっぱい好きなものを食べたいよね?」
「当たり前だ! だが、ルナ様の勅令は絶対だ。逆らえば天魔窟の収益(農場の運営費)を止められる!」
ルーベンスが嘆く。
金と権力を握られた今、正面からの反乱は不可能だ。
だが、カイトはニカっと笑った。
「じゃあ、バレないようにやればいいじゃない」
「え?」
「ルナちゃんやリベラちゃんは、『本当の美味しさ』を知らないだけだよ。僕たちが教えてあげようよ。……**とびっきりの『毒(ジャンクフード)』**をさ」
カイトの瞳には、かつて魔王を倒した時のような、あるいは新しい遊びを思いついた子供のような、純粋な光が宿っていた。
「みんなで反撃の狼煙(のろし)を上げよう。……作ろうよ、夜食を」
「夜食……だと……?」
その甘美な響きに、龍魔呂の目が鋭く光った。
「……面白い。ルナ様の清浄な舌を、脂と糖で汚染しろと言うんだな?」
「そう! 堕落させちゃえば、こっちの勝ちだよ!」
カイトが提案した「下克上」。
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「乗った!」
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