『異世界に学校を召喚して要塞化、給食を戦略物資に売り捌き最強の美少女たちと理事長生活を謳歌します』

月神世一

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EP 29

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整いすぎた代償! 鼻血と脂肪と貧乳
「あ、あそこで……休むでござる……」
「ベンチ……ベンチはどこだ……」
水風呂から這い上がった男たちは、生まれたての小鹿のように足を震わせながら、露天スペースを彷徨っていた。
血管の収縮と拡張。
脳内を駆け巡るエンドルフィン。
視界がグルグルと回り、世界が極彩色に輝いて見える。いわゆる「サウナトランス」状態だ。
彼らがフラフラと辿り着き、崩れ落ちるように座り込んだ場所。
そこは休憩用のベンチではなく――女湯との境界に設置された『竹垣』のすぐ真横だった。
「……ふぅぅぅぅ……」
高上護は、背中の竹垣に寄りかかり、夜空を見上げて息を吐いた。
頭が真っ白だ。
仕事のことも、魔王軍のことも、どうでもいい。ただ、風が気持ちいい。
「極楽……でござるなぁ……」
隣で真田隆史も、半開きの口で虚空を見つめている。
思考能力ゼロ。完全な無防備状態。
研ぎ澄まされた聴覚だけが、周囲の音を拾っていた。
その時だ。
薄い竹垣の向こう側から、水音と共に、甘い声が聞こえてきた。
『わぁ~っ! ラビークさん、すごいです~!』
ルナの声だ。
反響する浴室の音響効果も相まって、その声は普段より艶っぽく聞こえる。
『よせ、ルナ。……凝視するな。恥ずかしい』
『だって、洗うたびにプルンって揺れるんですもん! まるで水風船みたいです~。ツンツンしていいですか?』
「……ッ!?」
護と隆史の体がビクリと跳ねた。
揺れる? 水風船? ツンツン?
サウナで酸欠気味の脳みそが、その単語を高速処理し、とんでもない映像(妄想)を出力し始める。
『んっ……。くすぐったいぞ、ルナ』
ラビークの、少し困ったような、しかし満更でもないような吐息。
『いいなぁ~。私もお肉食べたら、そんな風に大きくなりますか?』
『……私はむしろ邪魔だと思っている。剣を振るう時、遠心力で胸が持っていかれるのだ。こんな脂肪の塊、切り落としてしまいたいくらいだ』
「切り落とす……だと……?」
護が呻いた。
なんという暴言。なんという贅沢な悩み。
あの完璧なプロポーションを持つ女騎士が、無防備な姿で、自分の武器(胸部装甲)を持て余している光景が、4K画質で脳内に再生される。
さらに、もう一人の声が響いた。
『……喧嘩売ってんのかしら?』
ドスの効いた低い声。キャリンだ。
『脂肪? 邪魔? ハッ! 持てる者の余裕ってやつね! こっちは空気抵抗を極限まで減らした「流線型ボディ」だってのに!』
『い、いや、キャリン。私はそういうつもりでは……』
『触らせなさいよ! その無駄な脂肪の重みを、私が検品してあげるわ! えいっ!』
『きゃっ!? や、やめろキャリン! そこは感度が……んあっ!』
バシャーン! キャッキャウフフ!
水しぶきの音。肌と肌が触れ合う音。そして、甘い悲鳴。
竹垣一枚隔てた向こう側で、酒池肉林(パラダイス)が展開されている。
「……」
「……」
護と隆史は、無言で顔を見合わせた。
サウナで極限まで血流が良くなっていた彼らの体は、この視覚的(妄想的)刺激に耐えきれなかった。
ドクンッ!!
心臓が早鐘を打つ。
全身を巡っていた血液が、行き場を求めて一点に集中する。
すなわち、鼻の粘膜へ。
「ぶふぉっ!!!」
「ぐはぁっ!!!」
二人の鼻から、盛大に赤い噴水が上がった。
それはポタポタと垂れるレベルではない。ダムの決壊だ。
「り、理事長……! 見える……見えるでござるよ……! 白い湯気の中に……桃源郷が……!」
隆史が虚空を掴むように手を伸ばし、そして白目を剥いて後ろに倒れた。
「……ああ。……株価が……ストップ高だ……」
護もまた、眼鏡を血で赤く染めながら、幸せそうな顔で崩れ落ちた。
サウナの「整い」と、煩悩の「爆発」。
二つの快楽が同時に襲いかかり、彼らの意識を強制シャットダウンさせたのだ。
「……アホだすなぁ」
一人だけ無事だった(猫なので人間の裸に興味がない)ニャングルが、血まみれで気絶している二人を見下ろして溜息をついた。
「せっかくサウナで整ったのに……これじゃ『昇天』でんがな」
ニャングルは桶にお湯を汲み、二人の顔にぶっかけた。
「ほら、起きなはれ! 風邪引きまっせ! ……あっちからは『次は背中の流しっこしましょう』なんて声が聞こえてまっけど、もう命が持ちまへんで!」
その夜。
アナステシア温泉の男湯からは、救急車を呼ぶような悲痛な叫び声と、どこか幸せそうな呻き声が、深夜まで響いていたという。
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