72時間労働で過労死したら、ジャージ女神に【武器使い】を渡され異世界へ!初期装備「石ころ」から自作武器と美味い飯で最強へと成り上がる。

月神世一

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EP 9

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​五匹のゴブリンを討伐し、レア素材でバッグをパンパンに膨らませた俺とセーラさんは、日が傾き始めた頃に帝都アルクスの冒険者ギルドへと帰還した。
​ギルドの扉を押し開けると、昼間と同じように酒臭い熱気と喧騒が広がっていた。
俺たちを見るなり、昼間俺を「魔力ゼロの欠陥品」と笑っていた冒険者たちが、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべて絡んでくる。
​「おっ、シスターのヒモ野郎がもう帰ってきたぞ」
「早ぇな! ゴブリン一匹見て、泣いて逃げ帰ってきたんだろ!」
「ギャハハハ! 怪我しねぇうちに冒険者ごっこは辞めとけって!」
​周囲の嘲笑をBGMにしながら、俺は一瞥もくれずに受付カウンターへと直行した。
エルフの受付嬢、ミリアさんは、信じられないものを見るように目を瞬かせた。
​「リュウ様、セーラ様……。ずいぶんと早いお戻りですね。出発からまだ二時間も経っていませんが……依頼の放棄、ということでよろしいですか? 魔力ゼロの初心者には、やはりゴブリンは荷が重すぎ――」
​「いえ、終わりましたよ。討伐証明の右耳、五匹分です」
​ドンッ、と。
俺は血抜きをして布に包んだゴブリンの右耳を、カウンターの上に無造作に置いた。
​「え……?」
​ミリアさんの涼しげなエルフ顔が、フリーズした。
嘲笑していた背後の冒険者たちも、その言葉を聞いてピタリと口を閉ざす。
​「ご、五匹……? 傷一つ負わずに、たった二時間で……?」
「あぁ、ギルドから森までの往復時間がほとんどでしたからね。戦闘自体は数秒でした。あ、あと、ついでに森で拾い物をしてきたんですけど、素材の買い取りもここでいいですか?」
​俺がショルダーバッグのジッパーを開けようとすると、ミリアさんは慌てて眼鏡を押し上げ、プロの顔を取り戻した。
​「は、はい。買い取りも行っておりますが……魔力を持たないリュウ様が、浅い森で採取できるものといえば、せいぜい一般的な薬草か――」
​ゴトッ、バサッ。
俺がカウンターの上に並べたものを見て、ミリアさんの言葉は途中で完全に途切れた。
そして、端正なエルフの顔が、今度こそ限界まで見開かれた。
​「なっ……!? そ、それは……!!」
​ミリアさんの悲鳴に近い声に、周囲の冒険者たちが何事かと身を乗り出してくる。
​「嘘でしょう……! 葉の先が黄金に輝く、変異種【極星・陽薬草】!? こちらは【人参マンドラ】の幼体……しかも、傷一つなく完璧に気絶処理されている!? さらにこのキノコは……特級品の【肉椎茸】!?」
​ミリアさんの震える指が、俺の並べた素材を指差していく。
​「バカなッ!?」と、後ろから声を上げたのは、昼間俺をバカにしていた冒険者の一人だった。
「極星の陽薬草なんて、熟練の魔法使いが魔力探知を全開にして、何日も森を彷徨ってようやく一本見つかるかどうかの超レア草だぞ!? 魔力ゼロの初心者が、なんでそんなもんポンポン見つけてこれるんだよ!!」
​「いやー、運が良かったみたいで」
​俺が適当にごまかすと、隣でセーラさんが「ふふんっ!」と、自分のことのように誇らしげに豊かな胸を張った。
​「言ったでしょう! リュウさんは魔法が使えなくても、凄い力と……その、素晴らしい『鑑定の目』を持っているんですから!」
​セーラさんのドヤ顔に、冒険者たちは完全に言葉を失い、顔を真っ赤にしたり青くしたりして後ずさっていった。
完全な沈黙が落ちたギルド内で、ミリアさんが震える手で電卓のような魔導具を弾く。
​「……ゴブリン五匹の討伐報酬が5,000円。そして、素材の買い取り価格ですが……極星・陽薬草が5万円、人参マンドラが1万円、肉椎茸が……リュウ様、この肉椎茸、ギルドで買い取れば2万円になりますが、いかがなさいますか?」
​「あ、肉椎茸は一個だけ今日の晩飯にするんで、残りを買い取ってください」
​「か、かしこまりました。……しめて、本日の報酬と買い取り額の合計は、金一封と八万五千円になります!」
​ミリアさんが、深々と頭を下げて、ゴルドの金貨(一万円札)と千円札の束、そしてギルドの硬貨をトレイに乗せて差し出してきた。
たった二時間の労働で、八万五千円。
コンビニ夜勤で命を削っていた頃とは比べ物にならない、超絶ホワイトかつ高時給な異世界ドリームがそこにあった。
​「あ、ありがとうございます」
​俺が札束を財布にしまい込むと、ギルド内の冒険者たちから「たった二時間で八万……」「俺たちの1ヶ月分の稼ぎが……」と、絶望混じりの呻き声が漏れ聞こえてきた。ざまぁみろ、である。
​「リュウさん! 初依頼、大成功ですねっ!」
「はい。セーラさんがいてくれたおかげですよ。……よし、約束通り、今日の晩飯は俺が作りますよ。この『肉椎茸』を使って、極上のステーキを焼きましょう」
​「お肉みたいなキノコのステーキ……っ!」
​俺が肉椎茸を掲げて見せると、セーラさんのエメラルドグリーンの瞳がキラキラと星のように輝き、口元からはツゥーッと一筋のよだれが垂れそうになっていた。
シスターらしからぬ食いしん坊な反応に、俺は思わず吹き出してしまう。
​ルナミス帝国、帝都アルクス。
日本円が飛び交い、俺のチートスキルと地球の知識が火を噴くこの街で、俺とセーラさんの快進撃はまだ始まったばかりだった。
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