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教育とは ~その5~
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「だから、何度も説明するように、君の才能を買って僕らは二階への移動をだね。」
「そうやって、ある程度能力のある人間を追いやるから、若い子が育たないんですよ!」
「それは、中堅クラスの彼らが担ってくれているでしょう?大丈夫だから・・・」
「何が大丈夫なんですか!この間の夜勤なんて報告にも上げましたが沼田が・・・。」
「分かっている。それも彼には十分注意した。」
「ほかにも言いたい事は山の様にあります!だからこそ、一階へ留まる事を許して欲しいと
お願いしているんです!事務長!」
「・・・こまったなぁ・・・。」
「現に、中堅クラスが教育するって言っても、回ってないじゃないですか!」
「現場に入れる人数は法律で決まっているから・・・。」
「そういう問題じゃないって言ってるんですよ!下手したら取り返しが付きませんよ!」
「君が怒るのも分かる。でもね、二階だって常に人は足りてないわけで・・・。」
「なら、なんで小峰君を最初から二階に配属させなかったんですか。」
「いや、だって彼のやる気とかを見極める必要が」
「そんなの二階にいても図れますよ。」
「・・・。」
「今日にも事故を起こしそうな子たちが、妙な自信だけつけて介護してるんですよ?ほっとけませんよ。」
「・・・分かった。こちらも腹を割って話そう。」
「何です?」
「その若い子たちから、君への苦情が出ているんだよ。」
「な!・・・何で。」
「最近、君に注意される子も多い。だが、それは彼らが悪かった。配慮が足りていなかった。
それは認めるにしても、言葉がきついとか脅迫じみた説教をされた。と若い子たちが言ってる。」
「下手をすれば人命に関わりかねないですから。確かに言葉は選んでいなかったのは認めますが・・・。」
「ソレが、圧力になっている子たちもいるんだよ。中には、君を移動させてくれないと
仕事に集中できないって子も出てきてるんだ。」
「そんな・・・。」
「でもね、中堅の子たちは、君の事を高く評価してくれてるのも事実なんだよ。
次期、フロアー長にいいかもしれないってね。」
「・・・。」
「教育っていうのは、難しいねぇ。僕もこんな歳だけど、未だに怒られてる方が楽だと感じるよ。
逆の立場になると途端に気を遣わなきゃ出来ない事だしね。」
「中堅の皆さんや事務所での評価は嬉しく思います。ですが・・・やはり、一階に留まり
彼らの手助けがしたい。というのが一番大きいです。」
「でも、もう決定事項だから・・・。」
「なら、今月いっぱいで辞めさせてください。」
「え、ちょっと。それは急だなぁ。僕も困っちゃうよ!あと一週間しかないじゃない。」
「彼らに『尊厳』というものを教えられないのなら、彼らの成長は此処までです。
いずれ事故なり死人が出ます。根は真面目な子たちだから。知ってほしいんです!
それが叶わないのであれば、辞職させていただきます!」
「困ったなぁ・・・。」
実際、俺に教育係なんて出来る訳がない。
自分だってまだ半人前だと痛感することがある。
それでも、ここだけは・・・。ここだけは譲ってはならないと心の何処かで焦っていた。
中堅たちが見せきれなかった「先輩の背中」を彼らに見て欲しかった。
そして、学んでほしかった。「自分が介護を受ける立場に立つ」という基本的な考え方を。
自分がそうなった時、どう接してもらう事が一番安心か。
どんな態度が逆に怒りを買うのか。
「先輩の背中」と「現在の自分」を見比べて欲しかった。
だが、それは叶わないらしい。
後から考えれば、どこでだってそれは示せたはずだ。
一階に拘って、わがままを言っているのは俺の方。
分かってる。こんな歳になってもまだガキの部分があった。
でも、当時の俺にはそれが一番の近道だと思っていた。
あれから3年が経った。
職場を辞め、今更思う。
あの時、二階に上がり仕事を続けていれば
きっと、彼らにもう一度、背中を見せる事が出来ていたのであろう。
結局、俺の選択は失敗ばかり。
でも、これで良かったと思う。
26歳になってすぐ、不安障害の症状が悪化。
繋ぎで行っていたバイトも行けなくなりクビになった。
27歳
薬で安定したものの、強い薬に変わった為に抑うつ感に襲われ
車に乗り、職場まで行ってもやる気が起きずそのまま帰ったり、高跳びしてしまう事が多々あった。
そうして、職を転々とし1年が過ぎた。
28歳になって半年
俺は、新たな介護施設で再スタートを切ろうとしている。
・・・今度こそ、必要だと言われる人材になる為に・・・。
俺の挑戦は、まだ終わらない。
「そうやって、ある程度能力のある人間を追いやるから、若い子が育たないんですよ!」
「それは、中堅クラスの彼らが担ってくれているでしょう?大丈夫だから・・・」
「何が大丈夫なんですか!この間の夜勤なんて報告にも上げましたが沼田が・・・。」
「分かっている。それも彼には十分注意した。」
「ほかにも言いたい事は山の様にあります!だからこそ、一階へ留まる事を許して欲しいと
お願いしているんです!事務長!」
「・・・こまったなぁ・・・。」
「現に、中堅クラスが教育するって言っても、回ってないじゃないですか!」
「現場に入れる人数は法律で決まっているから・・・。」
「そういう問題じゃないって言ってるんですよ!下手したら取り返しが付きませんよ!」
「君が怒るのも分かる。でもね、二階だって常に人は足りてないわけで・・・。」
「なら、なんで小峰君を最初から二階に配属させなかったんですか。」
「いや、だって彼のやる気とかを見極める必要が」
「そんなの二階にいても図れますよ。」
「・・・。」
「今日にも事故を起こしそうな子たちが、妙な自信だけつけて介護してるんですよ?ほっとけませんよ。」
「・・・分かった。こちらも腹を割って話そう。」
「何です?」
「その若い子たちから、君への苦情が出ているんだよ。」
「な!・・・何で。」
「最近、君に注意される子も多い。だが、それは彼らが悪かった。配慮が足りていなかった。
それは認めるにしても、言葉がきついとか脅迫じみた説教をされた。と若い子たちが言ってる。」
「下手をすれば人命に関わりかねないですから。確かに言葉は選んでいなかったのは認めますが・・・。」
「ソレが、圧力になっている子たちもいるんだよ。中には、君を移動させてくれないと
仕事に集中できないって子も出てきてるんだ。」
「そんな・・・。」
「でもね、中堅の子たちは、君の事を高く評価してくれてるのも事実なんだよ。
次期、フロアー長にいいかもしれないってね。」
「・・・。」
「教育っていうのは、難しいねぇ。僕もこんな歳だけど、未だに怒られてる方が楽だと感じるよ。
逆の立場になると途端に気を遣わなきゃ出来ない事だしね。」
「中堅の皆さんや事務所での評価は嬉しく思います。ですが・・・やはり、一階に留まり
彼らの手助けがしたい。というのが一番大きいです。」
「でも、もう決定事項だから・・・。」
「なら、今月いっぱいで辞めさせてください。」
「え、ちょっと。それは急だなぁ。僕も困っちゃうよ!あと一週間しかないじゃない。」
「彼らに『尊厳』というものを教えられないのなら、彼らの成長は此処までです。
いずれ事故なり死人が出ます。根は真面目な子たちだから。知ってほしいんです!
それが叶わないのであれば、辞職させていただきます!」
「困ったなぁ・・・。」
実際、俺に教育係なんて出来る訳がない。
自分だってまだ半人前だと痛感することがある。
それでも、ここだけは・・・。ここだけは譲ってはならないと心の何処かで焦っていた。
中堅たちが見せきれなかった「先輩の背中」を彼らに見て欲しかった。
そして、学んでほしかった。「自分が介護を受ける立場に立つ」という基本的な考え方を。
自分がそうなった時、どう接してもらう事が一番安心か。
どんな態度が逆に怒りを買うのか。
「先輩の背中」と「現在の自分」を見比べて欲しかった。
だが、それは叶わないらしい。
後から考えれば、どこでだってそれは示せたはずだ。
一階に拘って、わがままを言っているのは俺の方。
分かってる。こんな歳になってもまだガキの部分があった。
でも、当時の俺にはそれが一番の近道だと思っていた。
あれから3年が経った。
職場を辞め、今更思う。
あの時、二階に上がり仕事を続けていれば
きっと、彼らにもう一度、背中を見せる事が出来ていたのであろう。
結局、俺の選択は失敗ばかり。
でも、これで良かったと思う。
26歳になってすぐ、不安障害の症状が悪化。
繋ぎで行っていたバイトも行けなくなりクビになった。
27歳
薬で安定したものの、強い薬に変わった為に抑うつ感に襲われ
車に乗り、職場まで行ってもやる気が起きずそのまま帰ったり、高跳びしてしまう事が多々あった。
そうして、職を転々とし1年が過ぎた。
28歳になって半年
俺は、新たな介護施設で再スタートを切ろうとしている。
・・・今度こそ、必要だと言われる人材になる為に・・・。
俺の挑戦は、まだ終わらない。
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