幻・骸行進

メカ

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投稿主「メカ」の話

「ヒトコワ」 : 知らぬが仏 5

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三度目の探索。
件のスポット最奥で・・・
私は、一人佇む男を見た。

「・・・あの男だ・・・。」

一目でわかる。
二度目の探索の時、私に捕まるリスクを冒してでも「その場を離れる」選択を行った男。

今回は奇しくも、その構図が逆となっている。

堂々と姿を見せる男に対し、木陰から様子を窺う私。

しかし・・・なぜだろうか。
「あの時の不審者」を見つけたのに・・・
私の注意は「その男」ではなく「私の後ろ」にある。

私の後ろ。
更に奥の木陰から「気配」の様なものを感じるのだ。

仮にそれが「男の仲間」なら・・・私に逃げ場はない。

冷える肝。
ゾッとする背筋。
流れる脂汗。

視線は男に合わせつつ、自慢の耳は後ろの音に集中していた。

しばらくの無音が続き
私の集中力も限界を迎え、意識がちぐはぐになった頃
視界の男が大声で叫び出した。

「ちくしょぉぉ!なんでだよッ!」

男は膝から崩れ、振り上げた拳を地面に何度も叩きつけている。

「ふざけやがって!ふざけやがって!ふざけやがってぇぇぇぇ!」

一瞬の出来事に、私は後ろの気配など忘れ、目を丸くしていた。

一頻り叫び倒した男は、そのまま号泣し始めた。

居た堪れなくなった私は、男の傍に歩み寄る。

「・・・あの・・・大丈夫ですか?」

「あぁ!?・・・・・。」

男は酔っていたのか、顔は真っ赤だった。
腫れた目でこちらを見上げると、最初の威勢とは裏腹にぽかんと口を開けたまま無言だった。

「・・・数日前、向こうの雑木林でお会いしました。
あの時は、訳も分からず後を追ってしまいましたが・・・覚えてますか?」

「・・・アンタ・・・あの時の、ニーチャン?・・・か。」

酔っているせいなのか、男の呂律はうまく回っていないし
見た目に沿わないしゃべり方に言葉もつまり気味だった。

しかし、どうやらまともに会話はできるようだと安心した。
男の傍に腰掛け、事情を聴く事にしたのだ。

男の名前は「オオサワ」というらしい。

彼には妹が居た。

その妹は、結婚を間近に控える大事な時期。
だが、その結婚は相手側の男からの一方的な絶縁宣言で幕を閉じた。
悲しむ妹を見て、彼は男を訪ね理由を問い正したという。

すると婚約者だった男が言うには

「妹さんと知り合ってから不幸が絶えない。
色々と調べたら、妹さんの知り合いに原因があるようで
散々話し合ってきたがどうしようもなかったのでこんな形になってしまった。」

と、男は陳謝してきたという。

その後、彼は妹へその知人について話を聴こうとしたそうだが
妹は何も語らないまま、自殺を選んだという。

改めて、婚約者だった男に
再度「知人」について話を伺ったところ
その「知人」は、妹の古くからの友人であることが分かった。
その「友人」は彼も良く知る妹の「幼馴染」の様な「女性」であったそうだ。
良く家にも遊びに来ていたし、彼とも親しい間柄だったそうだ。

・・・最悪だったのは
その「幼馴染の友人」が「同性愛者」であった事。だそうだ。

恐らく、皆さんもこの話の流れから分かると思うが・・・。

「オオサワ」の妹は、それを知って尚「友人関係」を続け
そして、「友人」に対して「婚約の報告」をした。

当然、「友人」が激高したことだろう。

・・・その矛先が「婚約者」に向くことも・・・少し考えれば分かる事だ。

結果として、その被害を受けた婚約者は
彼の妹と幾度も話し合いを持ち「友人と縁を切るか」「俺と縁を切るか」どっちかにしてくれ。と
迫っていたらしい。

しかし・・・。
彼の妹はどちらの結論も出す事は無かった。

そうして、挙式を間近に控えた時
ついに婚約者の我慢も限界に達した訳だ。

「・・・僕は情けない!何も知らなかったこともそうだが・・・
彼(元婚約者)の事を一方的に責めるつもりで会いに行ったんだから!
よく話も聞かずに・・・。
その上、妹を追い詰めて自殺にまで追い込んでしまったんだから!」

彼は、そこまで話すと再び号泣し始めたのだ・・・。
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