骸行進

メカ

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タクシードライバー 「藤原さん(仮名)」の話

消えない痣 終

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タクシー会社にかかって来た電話の相手は
藤原さんがツアーで乗せたカップルの男だった。

その男は、数時間に渡りクレームの電話をしていたという。

男の話によると
ツアーに参加した直後
彼女の腕に、得体の知れない痣ができたという。
勿論、当人たちにはぶつけたという記憶もない。
2,3日様子を見る事にしたそうだが、その痣は一向に治っていく様子が無かったそうだ。

そして・・・。
彼女は非業の死を遂げる。
彼女と連絡の取れなくなった男が、彼女の自宅マンションへ訪れるが
部屋には居なかった。
トイレや脱衣所なども探したそうだが、何処にもいない。

直後、彼は嫌な予感に襲われた。
残る未確認の場所・・・それはベランダだ。

だが・・・ベランダにも彼女の姿は見えなかった。

・・・否。正確には「男が見つける事ができなかった。」

彼女はベランダの柵の下に紐を括り付け
其処から身を投げ出す形で、首吊りをしていたそうだ。

しかも不可解なのは
その彼女が、ベッドシーツを頭から被り
まるでテルテル坊主の様な状態になっていたのだという。

なぜ発見が遅れたのか・・・。
それは、マンションの立地条件と下の階の住民が住んでいなかった事が重なった事が原因だ。
マンションのベランダは、表通りには面しておらず人通りも少なかったそうだ。

この事から、彼はツアーに参加した事で
良くないものを連れ帰ったのだ。と・・・呪いで彼女は殺された。と
タクシー会社にクレームを入れたのだ。

だが、受話器から聞こえた男の声は、彼女の死だけではない様な
焦り方を見せていたそうだ。

そして、藤原さんから私へと連絡が繋がった訳だ。

藤原さんと共に、彼と会った私は理由が直ぐに分かった。

姿こそ認識できなかったものの
彼の傍に「居る」のだ。

「お前だけ何で生きてるんだ。」「さっさと落ちろ。」「楽になれ。」などの声が
聞こえてくるのだ。

藤原さんから、状況を聞いていた私はある質問をぶつけた。

「岬で何があったんですか?」

男はしばらくの間押し黙っていた。
話にならないと帰りかけた時、男は口を開いた。

「・・・岬の岩場で、彼女が足を挫いて転びそうになったんだ。」

「それで?」

「とっさに抱きかかえて何とかなったけど・・・。」

「・・・。」

「言ってたんだ。何かに引っ張られたって。」

「それだけ?」

「いや・・・その後。数人の声で『落ちろ、落ちろ』って聞こえて・・・。」

「で、慌てて帰って来た?」

「何とかなりませんか?ルールを破ったのは俺達だけど・・・もう、怖くて何日も寝てないんすよ!」

そう語る男の腕には、薄っすらと痣が見えていた・・・。
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