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03.一夜の思い出にすると割り切ることにした

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エロ回です。しかも長い。

***
 湯気が立ち込める広い浴室は、二人で入ってお風呂場エッチが出来るようにという配慮か、棚には各種ローションが並べてあった。
 用途不明な不思議な形の浴室用椅子に座った麻衣子は、シャワーのお湯を浴びながら頭を抱えていた。

(ああああ~!! どうしよう!!)

 泣き落としに近い反則技を使われたといえ、セックスすることを了承してしまったのは麻衣子なのだ。ラブホテルに入ってしまったのに、今更「やっぱ止めましょう」だなんて言えない。

 入口のタッチパネルを見て選んだ部屋は、意外にも薄ピンク色のフリル付き天蓋ベッドが置かれたロマンチックな部屋だった。
 お姫様の寝室みたいな部屋へ入った途端、背後から抱き着いてきた斎藤課長を何とか押し退けて、押し問答の末シャワーを浴びる権利を勝ち取ったのは数分前のこと。
 先にシャワーを浴びてきた斎藤課長は、髪を撫でつけていた整髪料が完全に落ちており、きっちりした印象が完全に変わっているうえに水色のバスローブから覗くのが湯上りの上気した肌という、色気が増した姿が眩しすぎて直視は出来なかった。

「髪を下ろしたら幼くなるなんて、反則でしょ」

 昨日の夜、入浴時に剃った脹脛を撫でる。
 ベッドインするのなら、この脹脛の伸びてきたムダ毛を剃ってしまいたいのだが、先に入った斎藤課長によって剃刀は撤去されてしまった。
 浴室で毛の処置をしないという、ちょっと引く約束をさせられた時に茹だった頭の中が少し落ち着き、シャワーを浴びているうちに冷静に物事を考えられるようになってきた。
 社内の独身女性憧れの斎藤課長とセックスしてしまったら、今後の会社で彼とどう接していけばいいかを考える。

(足が理想的とか、伸びてきた毛と肌のアンバランスさが堪らない、とか意味不明な事を言っていたけどそれは私の事が好きってわけじゃないよね? 今まで付き合った人達より貧相だって、私の裸を見たらガッカリしてこれっきりの関係になるはず。これから先、こんなにカッコいい人とのセックスは絶対に経験出来ないだろうし、一夜の思い出としてヤッちゃうのもいいかもしれない)

 体の泡を洗い落とした麻衣子は、浴室の湯気でも曇らない加工をしてある鏡を見て腹を括った。
 ここまで来てしまったら、お互い雰囲気に流されたとして割り切るしかない。

 脱衣所に用意されてあったバスタオルで体を拭き、ラブホテルのアメニティとして用意されてあったサイドを紐で止める面積の狭いショーツに若干引きつつもそれを履き、深呼吸をして部屋へ戻った。


 ピンク色のバスローブを羽織った麻衣子が浴室を出ると、白色のソファーへ腰かけた斎藤課長はビールを飲んでいた。

「お帰り」

 振り向いた斎藤課長に嬉しそうに微笑まれて、麻衣子の胸がドキリと跳ねる。

(キスが上手すぎるとか、わんこな顔をして嬉しそうに笑うとか、もう反則でしょ)

 自分の身持ちは固く、雰囲気には流されないと信じていたのに。

「お待たせしました」
「麻衣子さんも飲む?」
「っ、頂きます」

 手渡されたビール缶に口をつけて、恥ずかしさを振り切るようにごくごくと一気に飲み干す。

「いい飲みっぷりだ。俺にも頂戴?」

 空になったビール缶を麻衣子の手から奪い、テーブルへ置く。
 ビール缶を持っていた手首を掴んだ斎藤課長は、掴んだ麻衣子の手を引き寄せてビールで濡れた唇へキスをしながら膝の上に座らせた。

「斎藤、課長」
「今は課長じゃない。隼人と呼んで」
「隼人、さん」

 初めて名前を口にして恥ずかしさで頬が熱くなる。隼人の顔が近付いて来るのに合わせて麻衣子は目蓋を閉じた。

「あっ」

 唇の感触とビールの香りが離れていき、閉じた目蓋を開けば至近距離に整った彼の顔があった。

「触るよ」

 麻衣子の答えを聞く前に、ガウンの合わせから中へ入った手が汗ばみ湿り気を帯びた肌に触れる。
 大きな手の平が胸元を這う感触に、麻衣子は体を揺らしてしまった。
 小振りの乳房を大きな手でやわやわと揉まれ、息を乱す麻衣子の肩からバスローブがずり落ちた。
 乳房を揉む手はそのままで、もう片方の手が段々と下へと下がっていき、はだけたバスローブから剥き出しになった太股へ触れる。

「あっ待って、その、下はちゃんとお手入れしていなくて、」
「気になるなら、俺が手入れしてあげる」

 太股から膝下を手の平で撫で下ろし、耳元で囁くように言われて麻衣子の背中に鳥肌が立つ。
 頷きそうになるのを、それはおかしいと脳内で突っ込みを入れてギリギリのところで止めた。

「え、それは、ちょっと、あぁっ」

 ショーツの横から入り込んだ右手の中指が、下生えを掻き分けて秘所の割れ目を撫でた。

「ふっ、濡れてる。麻衣子さんも、興奮してる?」

 耳元で指摘されたのが恥ずかしくて、頭の中が沸騰する。
 涙を浮かべた麻衣子は、このままソファーの上で自分を抱こうとしている隼人を見上げた。

「するのは、ベッドの上でして。お願い」

 一夜の思い出にするならば、ソファーではしたくない。今だけは恋人のようにベッドで愛し合いたい。
 僅かに目を見開いた隼人は、へにゃりと表情を崩してショーツの中から指を引き抜いた。

「はぁ、そんな可愛いお願いをされたら、ちゃんと聞いてあげなきゃ」
「きゃあっ」

 膝の上に麻衣子を乗せたままソファーから立ち上がり、軽々と抱えなおす。驚いて固まる麻衣子を縦に抱きかかえて運び、ベッドの上に座らせた。
 片方の肩が出てしまい、かろうじて腰紐で止まっているバスローブを麻衣子から剥ぎ取る。

「やっ」

 唖然とする麻衣子を横目にバスローブをベッドの下へ放り、隼人は自分の羽織っていたバスローブも脱ぎ捨てた。
 服の上からは分からなかったが、薄付きながら筋肉質な体と割れた腹筋に見惚れてしまう。
 隼人の視線に気が付いた麻衣子は、慌てて手を交差して胸元を隠した。

「あの、胸が小さいので、その」
「なんだこんなことを気にしていたのか。こんなにもやわらかいし、可愛い乳首は真っ赤に熟れて旨そうだ」
「なんだって、んっ」

 ちゅっと麻衣子の唇を軽く啄むと、隼人は彼女の背中に手を添えてゆっくりとベッドへ押し倒す。
 唇の次は首筋、鎖骨の順に唇は下がっていき乳房を舐める。緊張で体を固くする麻衣子とは逆に、自己主張する乳首を唇で食んだ。

「あんっ」

 思わず出てしまった甘い声に麻衣子は両手で口を押えた。
 自分の上に覆いかぶさる女子社員憧れの斎藤課長が、乳児のように麻衣子の乳首を吸ってるのはとても卑猥な光景に思えて、自分が興奮していくのが分かる。甘い声を出しそうになるのを下唇を噛んで堪えた。

「気持ちいい? 声を我慢している顔も可愛い。こっちはどうなっているんだ?」

 左の乳房を揉みながら左乳首を指先で弄り、口に含んだ右乳首は舌先で転がしながら、隼人は時折口元を手で覆って声を我慢する麻衣子の様子を窺う。
 ニヤリと笑った隼人の手が下方へ伸びていき、秘所から溢れ出た愛液で濡れたショーツへ指先が触れる。

「は、ビショビショ。もう、脱ごうか」

 上半身を浮かした隼人が結んであるサイドの紐を引っ張れば、防御力の無いショーツは簡単に外れてしまった。
 濡れた下生えを掻き分けて指先が秘所の割れ目を往復する。

「はぁ、ああっ」

 入口を擦っただけなのに、久し振りに感じる甘い刺激に子宮の奥が震えて、麻衣子の荒い息に甘い声が混じっていく。

「ひっ」

 指先とは違う、やわらかくて温かいモノが秘所の上にあるクリトリスへ触れる。それが舌だと分かった時には、股の間に移動していた隼人が頭を埋めて唇でクリトリスを食んでいた。

「うそ、そんなこと、舐めないで! あっあぁ!」

 シャワーを浴びたとはいえ、まさか舐められるとは思ってもいなかった麻衣子は、快感に翻弄される頭を振って何度も制止の言葉を口にした。
 羞恥と快感で、真っ赤な顔をして足を動かして逃げようとする麻衣子の太股を抱え、髪を引っ張る抵抗を無視して隼人はわざと音を立てて赤く充血したクリトリスを舐め、吸い上げる。

「ちゅっ、駄目だ。ちゃんと此処をほぐさないと、俺のは入らないと思うから。指、入れるよ」

 シーツを濡らすほど溢れた愛液で濡れそぼつ秘所は、音を立てて隼人の指二本を簡単に飲み込んでいく。長い指が膣壁を擦っていく刺激が気持ち良くて、麻衣子の口元に当てた指の間から「あ、あっ」という短い声が漏れる。

「あっ、ああっ、一緒に弄っちゃ、あっ、だめぇー」

 舌でクリトリスを弄られ、二本の指で膣壁を擦られる強すぎる刺激を止めようと、股の間にある隼人の頭に爪を立てる。
 つい先程まで恥ずかしいと堪えていたのに、快感で乱れる麻衣子には嬌声を気にする余裕などなかった。

「ああぁー!!」

 口に含んでいたクリトリスを強く吸われ、両足の爪先に力が入り限界まで膨らんだ快感が一気に弾け飛んだ。
 虚ろな瞳で天蓋を見詰め、肩で息をする麻衣子の脹脛を撫でると隼人は達してひくつく秘所へ舌を這わせた。

「あんっあっあっあぁ、やぁ、またイクッ、イッ、あぁー!!」

 ピンク色の天蓋の中に、厭らしい水音と麻衣子の喘ぎ声が響く。
 太股を抱えられているせいで逃げられず、涙と涎を流して快感に喘ぐ麻衣子の秘所は三本の指を咥え、溢れた愛液によってシーツには大きなシミが出来ていた。
 ボクサーパンツを押し上げている隼人の雄は未だ挿入はされていないのに、彼の下と指で何度達したのかもう麻衣子にも分からなくなっていた。

「も、やだっ、入れてぇ」

 与えられる快感は何度も達するほど気持ちいい。
 しかし、指では届かない膣の奥がこれでは物足りないと訴えてきて、苦しくて堪らない。
 目蓋を閉じた麻衣子の目尻を伝って涙が流れ落ちる。
 泣き出した麻衣子を労わるように、秘所から離れた隼人の手が彼女の頬を撫でた。

「もう、大丈夫かな」

 一人頷いた隼人は、ヘッドボードの小物入れへ手を伸ばしてコンドームを取り出しパッケージを確認して、小物入れへ戻した。

「ごめん、ちょっと待ってて」

 ベッドから降りた隼人が、ソファーの下に置いたビジネスバックから何かを取り出しているのが見えて、麻衣子は首を傾げた。
 ベッドへ戻って来た彼の手にあったのは、金色のコンドームの箱。箱に表記された“XL”の文字に麻衣子の目が点になった。

「ホテルのゴムじゃ入らないから、待たせてゴメンね」
「入らない?」

 それは一体どういうことなのか。蕩け切った思考は上手く回ってくれない。
 ボクサーパンツのウエスト部へ手をかけて下へずらした瞬間、勢いよく飛び出した隼人の股間の中心にそそり立つモノを見て、麻衣子は戦慄した。
 爽やかな青年の顔とかけ離れた、赤黒く血管が浮き出た凶悪な陰茎。上半身と下半身を切り離して見たら、同一人物のモノだとは信じられない。
 コンドームの袋を口に咥えて開ける仕草で、彼は数多くのセックスを経験している上級者なのだと思い知らされる。

 手早く凶悪な陰茎へ袋から出したコンドームを装着した隼人は、にっこりという効果音が聞こえてきそうな笑みを浮かべ、怯える麻衣子の太股から脹脛を撫でた。

「入れるよ」

 太い先端が秘所の割れ目を往復して、くちゅくちゅと音が鳴る。
 息を吐いた隼人が腰を押し進め、圧迫感とともに太い陰茎が膣内へと入ってきた。

「あぁっ!」

 指と舌で十分に解されたとはいえ、今まで付き合った彼氏とでは比較できない長大な陰茎によって広げられる膣の痛みと、内臓が上へ押しやられてしまうのではないかという圧迫感で、麻衣子の目には涙の膜が張っていく。

「きつっ」

 押し広げていく膣内の狭さと気持ち良さに、眉を寄せた隼人の眉間に皺が寄りうっすら汗が滲む。

「ううー、お腹、苦しい」
「ごめん、ゆっくり入れるから」
「あうっ!」

 コツンと膣の奥に硬い先端が当たり、ついに子宮口まで陰茎の先が辿り着いたのが分かった。
 浅い呼吸を繰りかえす麻衣子は、首を動かして互いの肌が密着しているのを確認する。動いていないのに、圧迫感と存在感は強くて陰茎が入っている膣のあたり、下腹が膨らんでいる気すらしてきた。

「はぁ、麻衣子さんのナカ、凄い締め付けてきて、気持ちいいよ」

 気持ちよさそうに眉を寄せた隼人は、はぁーと色っぽい吐息を吐き出す。

「もう動いても、いい?」

 麻衣子が微かに頷くと、上半身を倒した隼人は彼女の額と唇へ軽いキスをして腰を動かす。
 最初はゆっくり麻衣子の反応を確認しながら、痛がっていないと分かると腰の動きを速めていった。
 痛みは徐々に別のモノへと変化していき、膣から子宮の奥までが痺れるような快感へとすり替わっていく。

「ひっ、ああん、そこっだめぇー」
「麻衣子さん」

 目を瞑りシーツを握り締める麻衣子の指に、隼人の指が絡まり強く握った。
 ベッドが軋む音に合わせて、互いの肌がぶつかる音と二人の息遣いが部屋に響き渡る。

「奥、奥をズンッてしてっ! あぁ~気持ちイイよぅ」

 子宮口を強く突かれて、叫び声に似た嬌声を上げた麻衣子がイイ反応をした場所に狙いを定めて腰を捻って突く。軽く達した膣壁はきゅうっと陰茎を締め付ける。

「うっ、奥が好きだなんて、見かけによらず、エロイな」
「やぁっ出ていっちゃ、いやっ」

 腰を浮かした隼人の太股へ足を絡め、麻衣子は陰茎が出ていくのを阻止しようとする。脹脛が密着する感触に隼人は目を細めた。

「もっと、足を絡めて、あぁっいい。麻衣子さん、堪らないよっ」

 言い終わらないうちに、半分抜いた陰茎を勢いよく膣内へ突き入れる。子宮口へ先端を押し付けるように腰を動かされる快感に、麻衣子の視界に入るもの全てが点滅していく。

「あっ!? ああっ! も、イクッ、イッちゃうのっ」
「イッていいよ、俺ももう、うっ」

 絶頂へのカウントダウンが始まった膣壁の動きは、陰茎を締め付け麻衣子とは別の生き物のようにうごめく。気を抜けばすぐに射精しそうになるのを、腹へ力を込めて堪えながら腰の動きを速めた。

「イッ、あっぁああああー!」

 一際大きい嬌声を上げて、麻衣子は全身を痙攣させて達する。

「くっ」

 陰茎全体を締め付ける膣壁の気持ち良さに逆らわず、顔を歪めて小さく呻いた隼人はコンドームの中へ大量の精液を放った。
 放たれた精液の熱を薄い膜越しに感じて、麻衣子は彼が達してくれた嬉しさで微笑む。

「麻衣子さん」

 汗で乱れた前髪を払いのけ、額へキスをしてきた隼人の背中へ手を回したのを最後に、麻衣子の意識は途切れた。



 ***



 バックの中に入ったまま放置していたスマートフォンからけたたましいアラーム音が聞こえ、麻衣子は勢いよく掛け布団を蹴飛ばした。

「寝坊っ!!」

 寝起きが悪い麻衣子が、穏やかなアラーム音から順に激しくなるよう設定した目覚まし時計アプリのこの音は、「もう起きないと間に合わない」という最後通知。
 上半身を起こした途端、襲ってくる腰の痛みに呻いた麻衣子は腰だけでなく全身、喉が痛いことに気が付いた。
 さらに、全裸で寝ていたことと自分の腰へ回す腕の主を見下ろして、全身から血の気が引いていく。

「今日は祝日だよ」

 眠たそうに目蓋を半分以上閉じて答えた斎藤課長が麻衣子の腰を撫でる。
 昨夜の激しすぎるセックスの記憶が麻衣子の脳裏に蘇ってきて、限界を迎えた。

「きゃあああー!!」
「ぶっ!?」

 勢いよく振り下ろした拳が斎藤課長の頭に直撃し、彼の顔面はベッドへ沈み込んだ。

「斎藤課長っ!? うそっ夢じゃない!?」

 斎藤課長に抱かれて乱れまくった記憶は夢ではなく、乱れたベッドシーツと全身の倦怠感が現実だったことを物語っている。
 羞恥のあまり麻衣子は真っ赤に染まった顔を手で覆った。

「あのね、麻衣子さん」

 赤くなった鼻を手で押さえながら斎藤課長が顔を上げる。

「俺を殴って、夢かどうか確認するのは痛いからやめてくれるかな。あとさ」

 顔を隠す麻衣子の手へ自分の手を重ね外させると、包み込むように握る。

「俺のことは、斎藤課長じゃなくて“隼人”って呼んでと、言っただろう?」
「隼人、さん」

 名を呼んだ瞬間、心底嬉しそうに微笑む彼は冷静沈着な斎藤課長とは同一人物とは思えない。
 一夜の思い出にしようとしていたのに、こんな顔をされたら勘違いしそうになるじゃないか。

 蕩ける笑みを向けてくる隼人を直視出来なくて、麻衣子は彼の横へ倒れ込むとシーツへ顔を埋めた。



***
次もエロが少し入ります(°∀°)
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