【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ

文字の大きさ
9 / 64

9.手紙

しおりを挟む
 クラウディアはアルフレートにしつこいくらい体調を確認された後、自分の身に起きたことについて話して聞かせた。体調が良い訳ではないけれど、心に一人で抱え込むより早くアルフレートに知ってほしかった。

 学園で襲われたこと。なぜか小さくなったこと。孤児院に逃げ込んだこと。クラウディアは思い出したくなくて詳細を省いたが、アルフレートは相槌を打つだけで指摘はしてこなかった。

「とにかく、公爵邸でしばらく休め。あとは俺が何とかする」

「本当に良いの? 正体不明の子供がウロウロしたら、聖女様と喧嘩になってしまうわよ?」

 アルフレートはクラウディアに優しくしてくれているのに、どうしても嫌味を言いたくなる。この半年間の事を考えれば許されるだろうと、罪悪感は無視した。

「は? なんだそれは? 俺の周囲に誰が居ようと、聖女様には関係ないだろう?」

「何よ。わたくしの事を無視してイチャイチャしてたじゃない!」

「イチャイチャしてた?」

 アルフレートが白々しく首を傾げるので、クラウディアが見てきた二人の様子を話して聞かせる。ちょっと長くなってしまったが、それだけ色々あったというだけで、クラウディアがずっと気にして見ていたわけではない。

「アルも聖女様の好意を受け入れてたんでしょ?」

「そんなわけ……不味いな。子供の頃から受け取っている愛情が独特すぎて、一般的な好意に気づけてないのかもしれない」

「そうなの?」

 子供の頃のアルフレートといえば、優しい前公爵夫婦の笑顔が思い浮かぶ。独特な愛情表現をするような変わった人たちだっただろうか。アルフレートばかり見ていたクラウディアには分からない。

「分からないなら気にするな。それより知っていると思うが、俺はただの世話係だから勘違いするなよ」

 アルフレートは第二王子ベンヤミンの命令で聖女の護衛兼世話係をしていたらしい。カタリーナは桁違いの光魔法を使い、伝説になっている異世界から現れた聖女そのものだ。公爵であるアルフレートでも王族に並ぶ地位の聖女には逆らえない。

 アルフレートが選ばれた理由は不明らしいが、数少ない光魔法の使い手だからかもしれない。

「何れにしろ、クラウディアにだけは信じてほしかったな。手紙で何度も説明しただろう?」

「手紙? この半年の間に送ってきたことなんてあったかしら? 世話係を引き受けていたなんて聞いていないわよ」

 アルフレートは若くして公爵位を継いだので、いつも忙しくしている。それでも、半年前まではまめに連絡をくれていたのだ。

 しかし、カタリーナが学園に通うようになってから、それがぱったり無くなった。

「それって、どういうことだ? いつも花束と一緒に贈ってただろう?」

「そんなの知らないわ……」

 クラウディアを撫でてくれていたアルフレートの手が止まる。クラウディアがアルフレートの膝の上から見上げると、困惑した表情のアルフレートと目が合った。

「俺はお前が拗ねて無視してるんだと……嘘だろう? 王女と公爵の間の私信を届けないなんて、使用人ならバレたら死刑だってありうる」

「……」

 アルフレートはかなり驚いているので、送ってくれていたのは本当なのだろう。クラウディアが臆病にならずにきちんと確認すべきだった。

「自分が思っている以上に余裕がないのかもしれないな。この情勢下で思い込みをするなど、あってはならないことだ」

 アルフレートが呟くように反省を口にする。

「これから気をつければ良いんじゃないかしら?」

 単純なクラウディアにとってはもう過去のことだ。こうして一緒にいられる今があれば良い。

「慰めてくれるのは嬉しいが、クラウディアは絶対に今の状況を理解してないだろう?」

「今の状況? 誤解がとけたのだから解决でしょ?」

 アルフレートが呆れた顔をしながら、クラウディアを見下ろす。別に聞きたくないのに難しい話を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

婚約破棄したくせに、聖女の能力だけは貸して欲しいとか……馬鹿ですか?

マルローネ
恋愛
ハーグリーブス伯爵家には代々、不思議な能力があった。 聖女の祈りで業務の作業効率を上げられるというものだ。 範囲は広いとは言えないが、確実に役に立つ能力であった。 しかし、長女のエメリ・ハーグリーブスは婚約者のルドルフ・コーブル公爵令息に婚約破棄をされてしまう。そして、進めていた事業の作業効率は計画通りには行かなくなり……。 「婚約破棄にはなったが、お前の聖女としての能力は引き続き、我が領地経営に活かしたいのだ。協力してくれ」 「ごめんなさい……意味が分かりません」 エメリは全力で断るのだった……。

自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)

みかん畑
恋愛
侯爵令嬢リリナ・カフテルには、道具のようにリリナを利用しながら身体ばかり求めてくる婚約者がいた。 貞操を守りつつ常々別れたいと思っていたリリナだが、両親の反対もあり、婚約破棄のチャンスもなく卒業記念パーティの日を迎える。 しかし、運命の日、パーティの場で突然リリナへの不満をぶちまけた婚約者の王子は、あろうことか一方的な婚約破棄を告げてきた。 王子の予想に反してあっさりと婚約破棄を了承したリリナは、自分を庇ってくれた辺境伯と共に、新天地で領地の運営に関わっていく。 そうして辺境の開発が進み、リリナの名声が高まって幸福な暮らしが続いていた矢先、今度は別れたはずの王子がリリナを求めて実力行使に訴えてきた。 けれど、それは彼にとって破滅の序曲に過ぎず―― ※8/11完結しました。 読んでくださった方に感謝。 ありがとうございます。

冷徹侯爵の契約妻ですが、ざまぁの準備はできています

鍛高譚
恋愛
政略結婚――それは逃れられぬ宿命。 伯爵令嬢ルシアーナは、冷徹と名高いクロウフォード侯爵ヴィクトルのもとへ“白い結婚”として嫁ぐことになる。 愛のない契約、形式だけの夫婦生活。 それで十分だと、彼女は思っていた。 しかし、侯爵家には裏社会〈黒狼〉との因縁という深い闇が潜んでいた。 襲撃、脅迫、謀略――次々と迫る危機の中で、 ルシアーナは自分がただの“飾り”で終わることを拒む。 「この結婚をわたしの“負け”で終わらせませんわ」 財務の才と冷静な洞察を武器に、彼女は黒狼との攻防に踏み込み、 やがて侯爵をも驚かせる一手を放つ。 契約から始まった関係は、いつしか互いの未来を揺るがすものへ――。 白い結婚の裏で繰り広げられる、 “ざまぁ”と逆転のラブストーリー、いま開幕。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

処理中です...