【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ

文字の大きさ
15 / 64

15.ブレスレット【アルフレート】

しおりを挟む
 アルフレートはブレスレットから摘みとった金属を制服のポケットに突っ込んだ。クラウディアを元の姿に戻した後に必要になるものだ。願掛けの意味も込めて大切に保管したい。

「アル、ありがとう」

「お守りなんだから、ずっとつけてるんだぞ?」

「うん!」

 クラウディアはアルフレートの作った腕輪を見て嬉しそうに笑った。高等魔法の使用で襲ってきた疲労も、この笑顔を見れば心地よく感じる。外しにくい大きさにまで縮めてしまったが、問題ないだろう。これで、もう一つの懸念であるクラウディアの安全も同時に解決できて満足だ。

「これをつけていれば、どこに居ても助けに行けるから安心しろ。困ったときは俺を呼べば良い」

「本当? すごい腕輪なのね」

 クラウディアはクスクスと笑う。たぶんクラウディアを安心させるための嘘だと思ったのだろう。

 ディータは完成時にこのブレスレットを『呪いの腕輪』と呼んでいた。アルフレートはちゃんと効果を隠さず説明したのだ。クラウディアが喜んでいるのだから問題ない。

 これは今年の誕生日に贈ろうとしていた最高傑作であり、失敗作でもある。クラウディアに対する魔法、物理、呪いからの攻撃を退け、居場所をアルフレートに教えてくれる。

 ちょっとだけ追跡効果が強かったせいでディータに変な名前をつけられてしまったが、クラウディアを守る魔法しか入っていない。

『アルフレート様が感知魔法を使えば瞬時に居場所が分かるなんて、恐ろしい以外の感想なんてありますか?』

『そうか? 便利だと思うがな』

『しかも『アルフレート』という言葉に反応して声を拾うとか、想像しただけでゾッとします』

 アルフレートはディータの真剣すぎる表情に泣く泣く誕生日に贈るのを諦めた。代わりに今まで贈ったものと効果が被らない追跡だけを入れたピアスを贈ったのだ。

 ディータが『小型化しただけだ』とうるさかったので効果も下げている。そのせいで、感知できてからも孤児院で発見するまでに時間がかかってしまった。ディータがクラウディアのブレスレットを見つけても、今なら文句も言えないだろう。これならどの部屋にいるかも正確に把握できる。ピアスの役目はもう終わりだ。

「そういえば、ピアスが盗まれなくて良かったよな。手紙を盗んだ犯人も誕生日の贈り物にまでは手が出せなかったらしい」

 もし盗まれていたら、孤児院までの追跡が出来なかっただろう。助けを呼ぶ声は聞こえず、慰問に行く余裕が出来るまで気づけなかった。

 ただ、アルフレートはこのピアスをクラウディアが身につけていたせいで、手紙も届いていると勘違いしてしまった。犯行に早く気づくためには、盗んでくれたほうが良かっただろうか? しかし……

「……」

 クラウディアにジロリと睨みつけられて、アルフレートは思考から抜け出した。理由が分からず困っていると、押し付けるようにピアスを渡してくる。

「クラウディア? 何を怒ってる? 手紙のことなら説明しただろう?」

「誰に準備させたのか知らないけど、プレゼントに添える手紙くらいは自分で書きなさいよ。わたくしの事を馬鹿にしているの?」

 クラウディアはぷっくりと頬を膨らませる。アルフレートは見当違いの言葉に困惑するしかない。

「俺が書いたに決まってるだろう?」

 アルフレートがクラウディアに関わることで、人任せにしたことなどない。クラウディアが別の者の選んだ品を身につけていると想像するだけで吐き気がしそうだ。

「アルフレートは内容も確認していないのね。読んだら『俺じゃない』って白状するはずよ。えっと……『毎日つけてほしいから小さな宝石にしたんだ。君はこのサファイアを見る度に俺の瞳を思い出してくれるだろうか。俺は真っ赤な薔薇を見ながらこの手紙を書いています。君の瞳の輝きには敵わないけれど……』」

「もう良い! 馬鹿か! なんで暗記してるんだよ!」

 アルフレートは得意げに暗唱するクラウディアの口を手で塞いだ。クラウディアは勉強を苦手としているが記憶力は良い。特にアルフレートに関わる事はきちんと覚えてくれている。今回は忘れてほしかった気がするが…… 

「半年も手紙が来なかったのよ。偽物だと疑っても暗記くらいはしちゃうわよ。まさか、アルが書いたの?」

「だから、そう言っただろう!?」

「『君』なんて言われたことあったかしら?」

「忘れてくれ……」

 言い訳になってしまうが、聖女のせいで疲れていたのだ。どうでも良い相手のせいで、愛しい婚約者を放置せざる負えなかった者の気持ちを想像してほしい。誰でも同じような文になると思う。

 アルフレートは怒鳴ってしまったのに、クラウディアは膝の上でコロコロと笑っている。幸せそうな笑顔にいろいろな感情が浄化されていく。

「一度王宮に戻って、あの手紙を回収して来ようかしら?」

「え?」

 クラウディアの願いは何でもすぐに叶えてあげたいが、アルフレートはどうしても頷くことが出来ない。王宮は危険だという事実を伝え、クラウディアの行動をさり気なく止めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

婚約破棄したくせに、聖女の能力だけは貸して欲しいとか……馬鹿ですか?

マルローネ
恋愛
ハーグリーブス伯爵家には代々、不思議な能力があった。 聖女の祈りで業務の作業効率を上げられるというものだ。 範囲は広いとは言えないが、確実に役に立つ能力であった。 しかし、長女のエメリ・ハーグリーブスは婚約者のルドルフ・コーブル公爵令息に婚約破棄をされてしまう。そして、進めていた事業の作業効率は計画通りには行かなくなり……。 「婚約破棄にはなったが、お前の聖女としての能力は引き続き、我が領地経営に活かしたいのだ。協力してくれ」 「ごめんなさい……意味が分かりません」 エメリは全力で断るのだった……。

自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)

みかん畑
恋愛
侯爵令嬢リリナ・カフテルには、道具のようにリリナを利用しながら身体ばかり求めてくる婚約者がいた。 貞操を守りつつ常々別れたいと思っていたリリナだが、両親の反対もあり、婚約破棄のチャンスもなく卒業記念パーティの日を迎える。 しかし、運命の日、パーティの場で突然リリナへの不満をぶちまけた婚約者の王子は、あろうことか一方的な婚約破棄を告げてきた。 王子の予想に反してあっさりと婚約破棄を了承したリリナは、自分を庇ってくれた辺境伯と共に、新天地で領地の運営に関わっていく。 そうして辺境の開発が進み、リリナの名声が高まって幸福な暮らしが続いていた矢先、今度は別れたはずの王子がリリナを求めて実力行使に訴えてきた。 けれど、それは彼にとって破滅の序曲に過ぎず―― ※8/11完結しました。 読んでくださった方に感謝。 ありがとうございます。

冷徹侯爵の契約妻ですが、ざまぁの準備はできています

鍛高譚
恋愛
政略結婚――それは逃れられぬ宿命。 伯爵令嬢ルシアーナは、冷徹と名高いクロウフォード侯爵ヴィクトルのもとへ“白い結婚”として嫁ぐことになる。 愛のない契約、形式だけの夫婦生活。 それで十分だと、彼女は思っていた。 しかし、侯爵家には裏社会〈黒狼〉との因縁という深い闇が潜んでいた。 襲撃、脅迫、謀略――次々と迫る危機の中で、 ルシアーナは自分がただの“飾り”で終わることを拒む。 「この結婚をわたしの“負け”で終わらせませんわ」 財務の才と冷静な洞察を武器に、彼女は黒狼との攻防に踏み込み、 やがて侯爵をも驚かせる一手を放つ。 契約から始まった関係は、いつしか互いの未来を揺るがすものへ――。 白い結婚の裏で繰り広げられる、 “ざまぁ”と逆転のラブストーリー、いま開幕。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

処理中です...