【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ

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三章 犯人を追って【オーギュスト】

第26話 パーティー

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 公開尋問の翌日、フルーナ王国の王宮では社交シーズン最後のパーティーが盛大に行われている。

 オーギュストはミシュリーヌとともに会場内でワインを飲みながら、ノルベルト一家の登場を待っていた。普段であれば、すでに会場入りし王族席に座っている時間だが、神殿で儀式を行っているため遅れている。出席者はそれを知っているため、どこかソワソワしていた。

 やがて、楽隊が明るい曲を奏で始め、ノルベルトの到着を告げる。歓声とともに入ってきたノルベルトの頭には、フルーナ王国の国王のみが着用を許された王冠が輝いていた。

 十年以上の長きに渡り、病気を理由に政務から逃げ続けてきた前国王から、やっと王冠を引き継ぐことができた瞬間である。

 実権はノルベルトにあったが、次期国王にヘクターを推す声も多く、王座にしがみつく前国王から強引にその座を奪い取ることは難しかった。

 これで『国王代理に過ぎないのだから、勝手に決められては困る』と嫌がらせとしか思えない横槍を入れてくる者もいなくなるだろう。

「新国王陛下、バンザイ!」

「ノルベルト国王陛下、おめでとうございます!」

 第一王子ノルベルト派だった貴族たちが真っ先に声を上げる。他の貴族たちも口々にお祝いを述べていた。

「戴冠式が無事に終わったみたいで良かったよ」

 オーギュストは威厳に満ちたノルベルトの顔を見てホッと息を吐く。今年の社交シーズン中、送り続けられていたノルベルトへの殺害予告状も、今日は届かなかったと聞いている。

 誰が送っていたのかは未だ捜査中だが、送られてこなかったのはヘクターと王妃が拘束されているからだろう。

 ヘクターの部屋の金庫は今朝早くに魔導師団の解析班によって解錠された。中に入っていたのは大量の手紙だ。これから精査する必要があるが、王妃とその協力者とのやり取りだと思われる。ヘクターが王妃のもとから盗み出したのだろう。

 王妃の協力者にはソルベ王国の人間や、フリルネロ公爵領の神官長、ビビ伯爵など今回の事件の主役たちの名前がずらりと並んでいる。手紙から推測される時期から考えると、ヘクターは王妃の企みを利用して事件を起こしたと思われる。

 現在、王妃は世話をする侍女や側近ごと離宮に移され、魔導師団の監視下に置かれている。表向きは息子であるヘクターの連座だ。証拠が固まり次第、本人の罪を清算して貰うことになるだろう。


 全てが終わるまでにはまだ時間がかかるが、ノルベルトに殺害予告が出されることは、もうないだろう。だが、第三王子派の過激な者が、何かしてくる可能性はゼロではない。

 パーティ会場にはオーギュストがいるが、神殿の式典会場に入れる者は少ない。どうしても、警備が薄くなるので心配していた。

「オーギュスト様だけでも、式典に出席なされば良かったのに。王太……国王陛下からも出席してほしいと言われていたのですよね?」

 ミシュリーヌがオーギュストを気遣うように尋ねてくる。顔に出したつもりはなかったが、不安が伝わっていたのだろう。

「兄上は出席してほしかったみたいだけど、国のためにはこれで良いんだよ」

 戴冠式に出席できる王族は、王位継承権を持つ者だけだ。聖女を妻に持つオーギュストが出席すると、新たな火種にもなりかねない。オーギュストの王位継承順位は四位だが、一位の王子が小さいうちにノルベルトに何かあれば、あっさりと覆る可能性もある。放棄させてはもらえなかったが、欠席することで玉座に興味がないと示すことはできただろう。

 王位継承順位三位のガエルとは未だに連絡が取れていない。そんな状況でも、彼が戴冠式を欠席したことで、ノルベルトの第一王子の立太子は継承権保持者全員に認められたことになっている。ガエルのこれまでの素行が影響し、誰も彼の不在を不思議には思っていない。

「挨拶に行こう」 

「ええ」

 歓声が静まると爵位の順に挨拶をしていく。この国において、聖女は国王と対等なので、本来はミシュリーヌを伴って挨拶に行く必要はない。ミシュリーヌが王弟妃として挨拶に行くことで、聖女の権力を政治に利用しないということを暗に示すのだ。

 ミシュリーヌの祖国では、聖女は皇帝の所有物だったと聞いている。そのため、彼女にとって国王に仕えることは当たり前で、権力への執着はないようだ。これまでに何度も確認してきたオーギュストからすると、ミシュリーヌはむしろ権力から遠ざかりたいのだと思う。

 オーギュストは離してあげられないので、王族の地位は持ち続けてもらうしかない。これからは聖女ではなく王弟妃として扱われることも多くなるだろう。

「陛下、戴冠おめでとうございます」

 オーギュストとともにミシュリーヌが国王に頭を下げても、貴族たちは驚かなかった。今までも、聖女ではなく妃殿下と呼ぶようにお願いしていたので、予想していた者が多かったのだろう。
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