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終章 未来に向かって【ミシュリーヌ】
最終話 未来に向かって
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王都の南にひっそりと建つ神殿は、いつになく澄んだ空気に満ちていた。近くに住む人々は心地良く感じていたが、神殿に近づく者は一人もいない。国内最強の魔導師が王宮より強固な結界を張っているからだ。
聖女の成人を祝うパーティーの翌日、南町の神殿では、フルーナ王国を守った聖女と王弟の二度目の結婚式の準備が街の人に知られることなく密かに行われている。
ミシュリーヌが着替えを済まして講堂に向かうと、扉の前に王族らしい正装をまとったオーギュストが待っていた。胸元には魔導師団長として得た、いくつもの勲章が輝いている。そのきらめきは、聖女であるミシュリーヌを守ってきた証でもある。
「オーギュスト様、素敵です」
「ありがとう。ミシュリーヌの方がずっと素敵だよ。早くベールを取り払って、顔を見せて欲しいな」
オーギュストが色気のある笑顔で囁くので、ミシュリーヌは長いベールの内側で真っ赤になった。
オーギュストには見えていないと思ったのに、青い瞳を見上げると楽しそうに細められる。慌てて視線をそらすと、小さく笑う気配がして、ミシュリーヌが落ち着くまで何も言わずに待ってくれた。
「行こうか」
「はい」
オーギュストが差し出してくれた腕に、自分の腕を絡める。慣れ親しんだオーギュストの温もりが、緊張を和らげてくれた。
「白いドレスも新鮮で良いね。美しいミシュリーヌをエスコートできて、私は世界一の幸せ者だ」
オーギュストが扉を開ける音に隠すように言った。
ミシュリーヌは真っ白なAラインのドレスを着ている。一年かけて作ってもらったドレスは、繊細な刺繍が施されていて美しい。
結婚式に白いドレスを着るのは、聖女様がもたらした異世界の風習だと言われている。異世界では、一生に一度、結婚式のときにだけ白いドレスを纏うらしい。その文化に敬意を称して、フルーナ王国でも白いドレスは結婚式の一度だけと決めている女性が多い。ミシュリーヌも着るのは初めてだ。
十歳のときにミシュリーヌの祖国モルフォ帝国で挙げた式では、淡いピンク色のドレスを着ていた。突然決まった結婚だったのに、オーギュストが急遽ドレスを三着用意してくれたが、ミシュリーヌが選ばなかった他の候補の中にも白はなかったと思う。
今思い返すと、オーギュストは違う未来を想像して、白を避けたのだろう。だからこそ、オーギュストが今回のために準備してくれた生地が全て白だと分かったときには本当に嬉しかった。
『まだ、疑っていたのか?』
『そんなことはないですよ』
拗ねたようなオーギュストの顔さえ愛おしく思い出される。
最近、オーギュストはミシュリーヌにいろんな顔を見せてくれるようになった。それが気を許してくれている証拠のように思えて何よりも嬉しい。ミシュリーヌが子供扱いだと怒らずに、素直に甘えられるようになったおかげかもしれない。
「ミシュリーヌ」
優しく呼ばれて顔をあげると、オーギュストが愛おしそうな目でこちらを見つめていた。オーギュストに促されて講堂に入ると、ステンドグラスから差し込む温かい光に包まれる。
「おめでとうございます」
歩みを進めると、二人を心から祝福するたくさんの笑顔が出迎えてくれた。国王夫婦まで参列しており、当初思い描いたこじんまりとした式とは程遠いが、新たな一歩を皆に見届けてもらえて幸せだと思う。
ミシュリーヌがこの幸せを一緒に感じたくて見上げると、オーギュストも幸せに満ちた笑顔で応えてくれた。
終
――――
最後までお読みいただきありがとうございました(^o^) 来月あたりにアダン(変装術をしていた新人)の故郷に行く話を出せたら出そうと思っています。短編になる予定なので、良かったら読みに来てください✨
聖女の成人を祝うパーティーの翌日、南町の神殿では、フルーナ王国を守った聖女と王弟の二度目の結婚式の準備が街の人に知られることなく密かに行われている。
ミシュリーヌが着替えを済まして講堂に向かうと、扉の前に王族らしい正装をまとったオーギュストが待っていた。胸元には魔導師団長として得た、いくつもの勲章が輝いている。そのきらめきは、聖女であるミシュリーヌを守ってきた証でもある。
「オーギュスト様、素敵です」
「ありがとう。ミシュリーヌの方がずっと素敵だよ。早くベールを取り払って、顔を見せて欲しいな」
オーギュストが色気のある笑顔で囁くので、ミシュリーヌは長いベールの内側で真っ赤になった。
オーギュストには見えていないと思ったのに、青い瞳を見上げると楽しそうに細められる。慌てて視線をそらすと、小さく笑う気配がして、ミシュリーヌが落ち着くまで何も言わずに待ってくれた。
「行こうか」
「はい」
オーギュストが差し出してくれた腕に、自分の腕を絡める。慣れ親しんだオーギュストの温もりが、緊張を和らげてくれた。
「白いドレスも新鮮で良いね。美しいミシュリーヌをエスコートできて、私は世界一の幸せ者だ」
オーギュストが扉を開ける音に隠すように言った。
ミシュリーヌは真っ白なAラインのドレスを着ている。一年かけて作ってもらったドレスは、繊細な刺繍が施されていて美しい。
結婚式に白いドレスを着るのは、聖女様がもたらした異世界の風習だと言われている。異世界では、一生に一度、結婚式のときにだけ白いドレスを纏うらしい。その文化に敬意を称して、フルーナ王国でも白いドレスは結婚式の一度だけと決めている女性が多い。ミシュリーヌも着るのは初めてだ。
十歳のときにミシュリーヌの祖国モルフォ帝国で挙げた式では、淡いピンク色のドレスを着ていた。突然決まった結婚だったのに、オーギュストが急遽ドレスを三着用意してくれたが、ミシュリーヌが選ばなかった他の候補の中にも白はなかったと思う。
今思い返すと、オーギュストは違う未来を想像して、白を避けたのだろう。だからこそ、オーギュストが今回のために準備してくれた生地が全て白だと分かったときには本当に嬉しかった。
『まだ、疑っていたのか?』
『そんなことはないですよ』
拗ねたようなオーギュストの顔さえ愛おしく思い出される。
最近、オーギュストはミシュリーヌにいろんな顔を見せてくれるようになった。それが気を許してくれている証拠のように思えて何よりも嬉しい。ミシュリーヌが子供扱いだと怒らずに、素直に甘えられるようになったおかげかもしれない。
「ミシュリーヌ」
優しく呼ばれて顔をあげると、オーギュストが愛おしそうな目でこちらを見つめていた。オーギュストに促されて講堂に入ると、ステンドグラスから差し込む温かい光に包まれる。
「おめでとうございます」
歩みを進めると、二人を心から祝福するたくさんの笑顔が出迎えてくれた。国王夫婦まで参列しており、当初思い描いたこじんまりとした式とは程遠いが、新たな一歩を皆に見届けてもらえて幸せだと思う。
ミシュリーヌがこの幸せを一緒に感じたくて見上げると、オーギュストも幸せに満ちた笑顔で応えてくれた。
終
――――
最後までお読みいただきありがとうございました(^o^) 来月あたりにアダン(変装術をしていた新人)の故郷に行く話を出せたら出そうと思っています。短編になる予定なので、良かったら読みに来てください✨
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