お見合い結婚。

真條 沙織

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1-♂ お見合い

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毎日、会社とマンションの往復…。
これと言った趣味は無く、ただ仕事でミスをしないように日々を過ごすだけ。

そんな毎日が8年、無難に継続中だ。
幸い大きなミスは無く32歳を迎ようとしていた。

係長が定年退職し、穴埋めとして俺が代理をさせられている…なんで俺?首切り要員とか勘弁してくれ…。

そんな胃の痛くなる毎日を過ごしていたら、部長から呼び出し。何かミスしたのか?心当たりは無い、あれば対処してるって話だけどな。

「部長、お呼びですか?」
「あぁ、並木君、呼び出してすまないね、君に話があってね。」

「なんでしょう?」
「このままキミに係長をやってもらいたいんだ。」
「はい?」
「構わないかな?」
「それはちょっと…。」
「構わないかな?」
「いえ、有能な方は他に居るのでは?」
「構わないよね?」
「……。」
「ありがとう、頑張ってくれ。」

え~…。嘘だぁ!  首切り要員は他の人にしてくれょ…。

「それと、キミ独身だったよね?」

めっちゃ嫌な予感するんですけど?

「はい。」
「お見合い。してみない?」

きた~。今どき見合いって…ないわぁ~。

「いえ、お気遣いは有難いのですが、見合いはちょっと。」
「ん?」

その笑顔なに?スゲー怖いっすわ…。

「友人のお嬢さんでね、誰か居ないかと頼まれたんだよ。」

そのまま話 続けんの?

「えーと…。」
「来週の日曜日でどうかな?」

日取りまで決まってんの!?
……これ逃げられんやつ…。

「…会うだけなら…。」
「そうか、では先方に連絡しておくよ、お相手は28歳の綺麗なお嬢さんだから。」

とか言われて強引に見合い…。
並木  司 31歳  係長昇進の見合い決定。
いろいろデカい人は勘弁して下さい。

で…今日その日曜日だ…。
喫茶店の前で待ち合わせって…今時は見合い写真も無く2人で勝手に会って来いなんだな…誰が相手か分からんじゃん。

って…それっぽい人が近くに居ますが…?
28には見えんし普通に綺麗な人なんだよ、声を掛けて間違ってたら恥ずかしすぎるんだよ、部長…余計なお世話してくれましたね。

10分経過…これ間違い無いんじゃ?
なんかナンパされて困ってますが…。


「あの、本郷さんでしょうか?」
「はい、並木さんですか?」
「すいません、お待たせしました、並木 司と申します。よろしくお願いします。」
「こちらこそ、近くに居るのは知ってたんですけど、もし間違ってたら恥ずかしいので…すいません。本郷 楓です。よろしくお願いします。」

合ってたよ、写真ぐらいあっただろ部長ッ!!

「顔も解らず待ち合わせとかムリありますよね?俺も同じだったんですよ、もし間違ってたら逃げてます(笑)」
「なにも逃げなくても(笑)」
「今世紀最大の全力疾走です( ・ㅂ・)و ̑̑」
「そこまで走らなくても(笑)」

とりあえず掴みはOK的な?
これ仕事より疲れない?大丈夫か俺。

「とりあえず喫茶店の前って事で、ここ入りますか?」
「はい、多分そのお膳立てだと思います。」

喫茶店に入り、飲み物を注文。
まあまあ話をした、父親に突然に見合いだと言われて、日取りまで決まっててビックリしたとか、趣味は無いとか。
当たり障りの無い会話で時間を潰す。

1時間ぐらいして、間も持たなくなった頃、そろそろお開きにしようと店を出た。

「今日は有難うございました、久々に女性と話せて楽しい時間を過ごす事が出来ました、断って頂いて結構ですので。」

男から断るのは礼儀としてタブーだと聞いた事がある、めんどくさい、オレ振られる側だよチキショーッ!!

「あ、はい、前向きに検討したいと思います、では失礼します。」


…前向き?










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